テーマ : 医療・健康

ゲノム編集治療、承認広がる 重い貧血にノーベル化学賞の技術

 狙った遺伝子を書き換えるゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」を利用した重い貧血症に対する治療が英国、米国に続き、比較的患者が多い中東のサウジアラビアでも11日までに承認された。2020年のノーベル化学賞の対象となった技術の医療応用。欧州医薬品庁(EMA)も昨年12月に承認を勧告しており近く正式決定される見通し。日本では現時点で承認申請されていない。

ゲノム編集による重い貧血症の治療
ゲノム編集による重い貧血症の治療

 対象は12歳以上の鎌状赤血球貧血症の患者ら。酸素運搬を担うヘモグロビンというタンパク質に異常があり、本来円盤状の赤血球が三日月形に変形して、重度の貧血や臓器損傷が起きる。アフリカ・中東系に多く、世界の新規患者は年間約30万人との推計がある。
 承認された治療は患者から赤血球のもととなる細胞を取り出し、ゲノム編集で遺伝子を改変。酸素運搬能力の高いヘモグロビンが作れるようにする。患者が元々持つ細胞を薬で減らした後、改変した細胞を体内に戻す。
 米国のバイオ企業バーテックス・ファーマシューティカルズなどが申請。臨床試験では患者の9割に効果が見られた。英国とサウジでは、同様に正常な赤血球が足りなくなる「ベータサラセミア」という病気の患者も対象となった。
 バーテックス社の米国の規制当局への提出書類によると、治療費は患者1人当たり220万ドル(約3億円)という。

 クリスパー・キャス9 DNA配列の狙った場所に結合する案内役の「クリスパー(CRISPR)」と、DNAを切断するはさみとして働く酵素の「キャス9(Cas9)」から構成される。クリスパーは、DNAの特定の繰り返し配列を意味する「Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats」、キャス9は酵素の名称「CRISPR―associated protein 9」の頭文字がもとになった。細菌などが外敵を排除するために備えた免疫システムとして見つかった。

いい茶0

医療・健康の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞