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【静岡県知事選】政党公認、推薦3候補が政策語る 森氏、鈴木氏、大村氏 リニア整備/最重点政策/浜松市新野球場建設/浜岡原発再稼働/人口減少対策

 静岡新聞社は、知事選(26日投開票)に立候補した共産党県委員長森大介(55)=同党公認=、元浜松市長鈴木康友(66)=立憲民主党、国民民主党推薦=、元副知事大村慎一(60)=自民党推薦=の3候補に、最も重視する政策や県政の諸課題についての考えを聞いた。全国から静岡県の対応が注目されているリニア中央新幹線問題をはじめ、浜松市の新野球場整備、中部電力浜岡原発の再稼働、人口減少対策などへの対応を巡り、各候補が具体策を語った。(6日に実施)

(左から)森大介氏、鈴木康友氏、大村慎一氏
(左から)森大介氏、鈴木康友氏、大村慎一氏



リニア整備

 ■森氏 水問題解決できぬ
 ■鈴木氏 4者で課題を克服
 ■大村氏 一定めど1年以内

 大村氏 責任をもって課題を解決する。そのために五つのことを約束する。JR東海にリニア開業のメリットを示してもらう。水問題は決して妥協せず解決する。大井川流域の皆さんとしっかり対話する。最終的にJRと協議した上で合意していくが、国に(合意内容を)担保してもらう。手順を踏んでいき、着工許可に向けためどを1年以内につける。
 (鈴木氏 1年以内に着工を認めるということか)そうではない。JRと対話が必要な課題は47項目中30項目残っているが、1年以内に解決の方向に一定のめどをつけるということ。
 鈴木氏 一番の問題は県と流域市町、JR、国の4者がきちんと意思疎通できていなかったこと。連携し、物事を前に進める姿勢で課題に当たらないといけない。これまでの県の取り組みによって課題はクリアになってきた。水問題も、田代ダム案という現実的な解決策が出てきた。工事によって下流域に影響が出れば、JRには期限を決めずに責任を取ってもらう。それなら流域も納得できる。関係する全員が、課題をいかに克服して事業を実現するのかという姿勢を持つことが、問題解決の大きな前進につながる。
 森氏 重視するのは大井川の水と南アルプスの自然を守れるか否か。県内のトンネル工事湧水全量を大井川に戻す方策として「田代ダム取水抑制案」が議論され始めているが、県外に流れ出す湧水は、JRが試算する300万立方メートル(から500万立方メートル)で収まるのか県専門部会の委員から疑問が出ている。田代ダム案が水問題の解決になるとはみていない。JRと議論は続けるとして、自然環境や南アルプスユネスコエコパークを守ってほしいという声を上げ続ける。


最重点政策

 ■森氏 くらし・福祉最優先
 ■鈴木氏 企業誘致 全県拡大
 ■大村氏 防災通じ産業強化

 鈴木氏 「オール静岡で幸福度日本一の静岡県をつくろう」というスローガンを掲げて活動をスタートした。産業、福祉、教育、医療、防災など、トータルで幸福度を高めていくことが必要。中でも産業政策に力を入れたい。川勝平太知事の時は少し産業政策が弱かった。市長として国の総合特区制度を活用し、16年間で343社の企業を誘致した。全国でもトップレベルの成果で、これを全県に拡大していく。それぞれの地域の良さを生かして産業政策を強力に前に進めたい。
 森氏 キャッチコピーは「リニア・原発を許さず、くらし、いのち最優先の温かい県政」。リニアは水と環境の問題がある。南海トラフ巨大地震が控える中、浜岡原発は再稼働させず、廃炉にして再エネの開発・普及に転換していく。税金の使い方をくらし・福祉最優先にする。大企業を潤せば中小企業、地域経済が回るという発想ではなく、既存の中小企業や農業など地域で雇用を支えているところを支援する。知事として最低賃金の引き上げもバックアップしていく。
 大村氏 「県政を県民の手に取り戻す。オール静岡で県政を前進させる」というのがスローガン。重点は防災。防災を通じて豊かな暮らしと強い産業を実現する。防災で重要なのは、普段からの道路や河川の環境整備。平時の備えをしていく中で、有事には防災のための道路になる。能登半島地震で発生したような道路の寸断がなくなり、スムーズに人命を救助できる。生産性向上のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れることも災害に役立つ。


浜松市新野球場建設

 ■森氏 津波や370億支出 問題
 ■鈴木氏 ドームで稼働率向上
 ■大村氏 ゼロベースで考える

 大村氏 県営球場は西部にはなく、野球場を県で造ることには合理性がある。ぜひやっていきたい。県の3案のうち二つは普通の野球場、一つはドーム型。浜松市内を歩き、いろいろな意見があるとの印象を持った。ドーム型は県の試算で370億円かかり、県民1人当たり1万円ぐらいの負担だ。資材価格高騰でさらに価格が上昇する可能性がある。運営費も3億円。アカウミガメや風の問題もある。3案を基本にするが、ゼロベースで総合的に考えたい。
 鈴木氏 これからのスポーツ施設は単体ではなく、周辺整備をして集客力を上げ、稼働率を上げる。ドームありきではなく、エリアをどのように一体的に開発していくか、県と市と民間の役割、責任分担を考える。まずは県と市が調整会議で運営まで含め検討する。個人的見解としては開放型ドームがいい。多目的に使え、稼働率が上がる。将来を考え、安物買いの銭失いにならないようにしないといけない。長期間の民間委託とすれば単年度の財政負担は低くなる。(大村氏 市長当時と考えの違いは)立場が違う。市長の時は県にドーム球場を造ってもらい、周辺整備は市が責任を持ってやると伝えていた。今度は球場の設置者になるので当然、コストを考えないといけない。
 森氏 新野球場建設は中止すべきとの立場。建設予定地が津波の想定浸水区域で、ドーム球場をわざわざ災害リスクのある場所に造るべきではない。財政難の中、370億円の支出は問題がある。アカウミガメの産卵地で、照明や騒音などの影響があり得る。人間や地域のエゴで生物を絶滅させていいのか。

浜岡原発再稼働

 ■森氏 安全安心守れず反対
 ■鈴木氏 11市町の意見集約が鍵
 ■大村氏 避難路の実効性検証

 森氏 県民の安全安心を守れない浜岡原発は再稼働するべきではない。地元同意に関しては、できるだけ多くの意見を反映するために緊急防護措置区域(UPZ)内の首長の意見はもちろん、県内全市町の首長の考えも聞く必要がある。さらに言えば、県民投票を考えてもいいのではないか。原子力規制委員会の適合性審査の対象には、避難計画が入っていない。実効性のある避難計画なしに、県民の命と安全は守れない。
 大村氏 国の議論を踏まえた上で、県としても安全性を確認していくことが必要と考える。再稼働の判断は原発が立地する御前崎市の同意が非常に重要。その上でUPZ内の市町にもしっかり対応すべきだ。本県は交通の要衝が集中していて、何かあれば日本経済に大影響を及ぼす。そのため県内市町の意見も大切だ。避難計画は避難路が特に重要。広域道路の整備が必要であるとともに、避難経路に実効性があるのかしっかり検証する必要がある。
 鈴木氏 原子力規制委員会が、世界で最も厳しい基準で、それぞれの原発再稼働の是非を審査している。まずは国の所見を受け、周辺市町や関係者にきちんと説明することが必要と考える。再稼働を判断する上で、浜岡原発から31キロ圏内のUPZ内の11市町の意見を集約することが大事になる。広域避難計画は策定したら終わりではなく、実効性がなければいけない。常に見直しをかけ、ブラッシュアップしていくことが必要だ。

人口減少対策

 ■森氏 賃金保証へ条例改正
 ■鈴木氏 地域の活力を高める
 ■大村氏 第2子保育料無償化

 鈴木氏 人口減少の理由は出生率の低下以外の何物でもない。出生率が下がる大きな原因は非婚化と晩婚化。合計特殊出生率が2・07を下回ると人口が減少する。国が「2040年に2・07に回復」との目標を掲げているが、達成してもある程度の年になると人口は減る。これを受け入れなければいけない。子育てしやすい環境をつくると同時に、人口減に対してしっかりと対応できる活力ある地域をつくっていくことがトップとしての責任だ。
 森氏 働きに見合った賃金が保証されないことが、人口流出の大きな原因ではないか。静岡県の最低賃金は時給984円。月10万円程度ではとてもやっていけない。県ができることとしてケア労働者、保育士、看護師は十分な賃金が保証されるように条例改正する。また、地域で仕事を増やすという観点から、県がエネルギーの地産地消を大胆に進めていくべきだ。西部地域は日照時間が長く、再生可能エネルギーのポテンシャルは高い。
 大村氏 県の人口減少はかなり顕著になっていて、自然減と社会減の二つの側面がある。自然減については、県庁組織の見直しを含めて子育て環境を総合的につくる必要がある。市町と連携し、第2子の保育料も無償化したい。社会減については、特に多いという若い女性の県外流出を防ぐため、女性が働きやすい環境をつくることが必要。女性が活躍しやすい県にしていくことが非常に重要で、効果を期待できる。

     森大介[もりだいすけ]氏 55歳 共新
     鈴木康友[すずきやすとも]氏 66歳 無新 立民、国民推薦
     大村慎一[おおむらしんいち]氏 60歳 無新 自民推薦

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