
英語が話せない親世代は知らない!?イマドキ最先端の英語教育とは
イマージョン教育!?授業の6割を英語で行う小学校も!
今、英語の授業が、私たち親世代が学校で学んできたものから大きく変わろうとしています。イマージョン教育やバイリンガル教育を通して英語教育を全国で進めてきた、静岡聖光学院(静岡市駿河区)の英語教諭、西山哲郎(にしやまてつろう)先生にお話をうかがいました。牧野アナ:まず、西山先生が前任校(大阪府の香里ヌヴェール学院小学校。静岡聖光学院には2021年4月より赴任)で実践されていた「イマージョン教育」というのは、どんな英語教育なのでしょうか?
西山先生:カナダのケベック州などで、フランス語が母語という子どもたちに英語を学ばせるために実施されていた教育法です。単に外国語を言語として学ぶのではなく、外国語を通していろんなことを学ぼうというもの。私の前任校は私立の小学校でしたが、国語と社会、生活以外は全て英語で授業を行っていたんです。理科、算数、体育、音楽などは外国人の教員と英語ができる日本人の教員が小1から英語で指導していました。
牧野アナ:小1からですか? 帰国子女のお子さんが多い学校なんでしょうか?
西山先生:僕も最初はびっくりしました。みんな母語は日本語の子どもたちなのに、普通にナチュラルスピードの英語で授業を受けて、レスポンスも英語! 近隣にはインターナショナル保育園、幼稚園が増えてきているので、そういうところ出身の子どもたちも多いですが、そうでない子ももちろんいます。簡単な意味がわかるレベルからでいいので、小さな頃から英語に親しんでいくとかなり英語力は高まりますね。
これからの時代も英語はやはり必要?
牧野アナ:そこまでしてでも……、英語ってやっぱり必要なものなんですか?西山先生:僕自身、英語ができただけで人生が開けた部分があります。日本人の英語はアジアの他の国の人たちに比べると、レベルが低いと言われているのですが、語学ができることで選択肢が増えるというのは、自分の人生を振り返っても強く思います。
子どもたちには日本で活躍するにしても、海外で活躍するにしても、選択肢を狭めてほしくないと思いますし、これから日本の人口はどんどん少なくなってきて内需が狭まってきます。例えば20年後、子どもたちが社会に出るときに外に出ていく準備をしてあげたい!
これまでの日本の英語教育のままでは、英語が話せない……
牧野アナ:僕らの世代でも社会に出る前に、10年は英語をやっていたわけですよね。でも全然しゃべれない。日本の英語教育は何が足りていないのですか?西山先生:単刀直入に言いますが、勉強の仕方が悪いです。6年間物事を続けて何もできないって英語教育以外にはない気がします。自転車の練習を6年間やって、乗れない人なんて見たことがないです!
そもそも言語は音が重要! 僕はカタカナ英語に大反対なんです。「フォニックス」という英語圏の子どもが読み書きを学ぶために開発された学習法があるんですが、それは英語を音できちんと耳に入れて学ぼうというもの。知らない単語でも、耳で聞いただけでスペリングがわかり、正しく書くことができるようになるんです。
特に感性がみずみずしい中学1年生には、自分と同じような英語学習の体験をしてもらいたいと思っているので、英語は音で学んでもらう。授業では洋楽を流したりしています! 一緒にノリノリで歌いますよ。
牧野アナ:授業で洋楽を?楽しそうだなあ。西山先生ご自身も、海外に長く留学していて英語が上手くなったわけではないんですよね? 日本にいながらにして、その発音を手に入れられた。日本にいてもできるんですね。
日本にいながら、英語が話せるようになるには?
西山先生:僕は生粋の熊本県人です。今の方が僕の子ども時代よりも環境が整っているので、絶対にできると思います。牧野アナ:家でどのように勉強したら、発音もよくなって英語を話せるようになりますか?
西山先生:発音に関しては授業できちんとした先生につくということが前提ですが、海外ドラマに触れるなど英語の会話に接点を持つことが重要です。今は動画配信サービスで海外のドラマがたくさん見られますよね。僕は小6のとき「ビバリーヒルズ高校白書」が好きだったのですが、まずは日本語で見て、次に英語字幕で見て、最後は英語音声で見るということをしていました。内容はわかっているので、「ここの場面ではこういう風に言うんだ」とか楽しみながら、英会話に触れていました。それを続けていたら、熊本県で育ちながら、カリフォルニア西海岸の発音になったんです。外国人の方と話すと「カリフォルニアにいたの?」とよく言われるんですけど、「有明海付近の熊本の田舎で育ったよ」と返しています(笑)。
牧野アナ:今は教材になるものが無料で豊富にありますからね。まずは日本語で見て、内容を把握してから英語で見るというのはよさそうですね!
多読多聴!まずは英語にたくさん触れ、発音を矯正していく
西山先生:自分のレベルにあった意味の分かるものをたくさん読んでたくさん聴く。「多読多聴」を学校では行っています。内容が面白い、子どもたちが読みたいものを難易度の低いレベルからたくさん読ませる授業をしているのですが、家で動画を見たりするのも同じ発想ですね。牧野アナ:学校で英語を習ってきましたが、「多読多聴」。一番大事なことをしてこなかったなと気づいてしまいました……。
西山先生:それを行った上で発音を矯正するなどの学習法がとても有効なんです。でもそもそも、英語と日本語では、発音と文法の構造が違う。もっと言えば、元々の文化の違いも大きいので、多読多聴だけでは残念ながら不十分。
英語は「結論、説明、説明」という日本語とは大きく異なる言語構造です。これを日本人が習得するには、「英語の正しいフォームを意識的に学ぶトレーニング」が必要になってくるんです。質の高い素材を教材に、音の仕込み、構造理解、意味の仕込みを行い、自分の頭でかたまりごと捉える、回路作りのためのトレーニング。これを「基軸トレーニング」と呼んで本校では中2から導入しています。
僕はほかにも西南学院中学・高校(福岡県)の田中十督(じゅうごう)先生と「暁の会」という英語の勉強会を共同主宰しているのですが、そこでも基軸トレーニングで英語の発音矯正をしています。ただ音読やシャドーイング(聞いた英語を真似して繰り返す)をすればいいわけではありません。発音をカタカナではなく、正しいフォーム(発音)に矯正し、トレーニングを行う。自分がやってきた勉強法をそのまま子どもたちに伝えれば、将来自分以上になるのは明らかですからね。
牧野アナ:日本人は英文法を長く勉強するので、仕組みの部分は入っているのかと思っていたのですが、それもやり方が違っていましたか?
西山先生:そうですね、英文法は確かに重要ですが、どのような状況でこの文法を使うのか、ということを理解しないまま勉強しているケースが多いと思います。この前、中1の子ども達にBe動詞を教えたのですが、「Be動詞はイコールを表す符号なんだよ」と言うと納得します。僕は教材として簡単な英辞書を使っているんですが、そこには僕が惚れこむような素晴らしい表現がいっぱいあります。子どもたちにそういうものに触れてもらったうえで、好きな野球選手や俳優さんについて英語で説明してもらったのですが、中1でも十分立派なプレゼンができました。そういった学習を繰り返していくうちに、Be動詞を使う場面というのがわかってきますので、英文法の授業も楽しくなるというわけです!
牧野アナ:なるほど、西山先生の学習法は本当にどれも楽しそう! 「海外ドラマを観る」「カタカナ英語を使わない」すぐにできそうなことから、取り組んでみたいと思います。
今回お話をうかがったのは……西山哲郎先生
静岡聖光学院、英語教諭。前任校、大阪府の香里ヌヴェール学院小学校では41歳にして校長を務める。香里ヌヴェール学院小学校では全授業の6割を英語化するなど、日本の子どもたちの持つ可能性を最大化すべく英語改革を行ってきた。2021年春から聖光学院に赴任し、「偏差値教育にとらわれない、体験を重視する英語教育」をモットーに中学一年生から英語脳を作り上げる、多読を学ばせるなど、従来の英語教育とは一線を画した授業を行っている。
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