【ジェンダーギャップ】平等度表す「指数」を見ると静岡は改善に一層の努力が必要。女性も社会参画しやすい環境づくりが大切!
(山田)3月8日に国際女性デーがあったということですね。
(橋本)はい。世界ではまだ女性の地位が低かったり、差別があったりするということだと思いますが、女性の地位向上や差別の払拭を目指す国際的な連帯と統一行動の日とされています。1977年に国連総会で決まりました。各国で次第に重視されるようになってきていて、祝日として制定されている国もあるそうです。
(山田)休みになる国もあるんですね。
(橋本)日本では、さまざまなイベントが行われたり、男女共同参画担当大臣がメッセージを発したりします。新聞各紙も、8日付の朝刊は一面で関連の記事を大きく扱っていたり、紙面の体裁を国際女性デー向けにちょっと変えたりして、工夫をしていたところもありました。
黄色いふわふわとしたミモザの花がシンボルになっていて、静岡新聞の国際女性デーのワッペンも、ミモザをイメージした黄色で作っていました。
ジェンダーギャップ指数って何?
(山田)先週の3時のドリルでも話題にも上がっている「ジェンダーギャップ指数」。改めて、どういうものか教えていただけますか。(橋本)そもそもは、スイスに本部を置く世界経済フォーラムというところが、2006年から毎年発表しています。直訳すれば、「男女格差指数」ですね。
世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数は、経済、教育、保健、政治の各分野ごとのデータをいろいろな項目にウエイトをつけて分析し、完全不平等なら0、完全平等なら1というようにして各国の男女格差の状況を示す数値になっています。日本は、2006年には対象となった115カ国中80位でした。
(山田)低いですね。
(橋本)しかも徐々に順位が低下し、2023年は146カ国中125位でした。保健と教育は、数値が1に近いんですが、政治と経済の指数がすごく低いので、全体の足を引っ張っているという状況です。
(山田)日本でも、男女平等はずっと言ってるわけじゃないですか。でも、日本が146カ国中125位ということは、周りの国の方がもっと平等になってきてるってことですか?
(橋本)それも一つありますし、日本の場合は、国会議員とか地方の議員にも女性がすごく少なくて、女性の進出度合いが少ないという文化的な背景もあったりします。経営者にも女性が少なく、それも要因の一つになっていると思います。
(山田)男性社会が根強く、まだまだ残っているということですね。
都道府県版の指数も存在。静岡は経済が低順位
(橋本)世界経済フォーラムの指数は国ごとですが、上智大学法学部の三浦まり教授らがつくる「地域からジェンダー平等研究会」が、世界経済フォーラムの指数に準じて作った日本の都道府県版の指数を2022年から発表しています。同研究会が、8日の国際女性デーに合わせ、各地域の男女平等度を政治、行政、教育、経済の4分野で分析した2024年の「都道府県版ジェンダーギャップ指数」を公表しました。都道府県版は、世界経済フォーラムの指数とは項目が少し違い、政治、経済、教育は同じですが、独自に「行政」という項目があります。例えば、歴代知事の在職年数、都道府県庁の管理職数、給与の男女比などの統計を基にウエイト付けをして各都道府県ごとを比べているということです。
(山田)ジェンダーギャップ指数の都道府県版、ちょっと興味深いですね。ちなみに静岡はどうなんですか。
(橋本)政治は0.200で47都道府県中の16位。行政が、0.260で32位。教育は0.560で、数値としては高いんですが37位です。8日付の静岡新聞にもあったように、昨年全国最下位だった経済の指数は、今年は0.415で42位でした。
指標に使うデータが年によって変わっていたりするので、昨年の状況からどうなったというように単純比較はできないんですが、前年は政治が16位だったので横ばい。行政は33位から一つ順位を上げ、教育は36位から一つ下げて、経済は47位から5つランクアップしたという形です。あまり細かく順位を気にするより、全体的な傾向として、他県と比べてどのぐらいなのかをざっくり見ればいいんじゃないかと思います。
(山田)個人的な肌感覚だと、経済が42位ってちょっと意外ですね。僕の周りに結構女性経営者がいるので、高いのかなと思ってたら、そういうわけじゃないんですね。
(橋本)静岡県の産業構造は、製造業がどうしても中心なんです。製造業は技術者や理系の人が多く働いていますから、やっぱりまだ日本の場合は理系だと女性よりも男性のイメージが強く、そういうことが影響してるんじゃないかと思われます。
女性も外で働きやすい環境づくりが必要
(山田)男女格差、当然なくして行くべきなんですよね。
(橋本)先週火曜日の「3時のドリル」で日本の出生数が過去最低になったという話をしましたが、それにも関係してると思います。いろいろなところでこれから人手不足が顕在化してきます。今までだと「男は仕事、女は家庭」みたいな古い価値観がありましたが、それではもう、なかなか社会が回っていかない状況です。女性も社会に参画して外で働き、報酬を得ていく方向に流れていかないといけない社会になってくるということが一つあるんじゃないかと思います。
人権の問題で、男女の間で扱いの差があってはいけないということももちろんありますし、できるだけこのギャップを少なくする方向に向かっていかなくてはいけないのだと思います。
そのためには、このジェンダーギャップ指数を見て、今の地域や国の状況を知り、どこを改善していけばいいのかをフィードバックしていくことが重要だと感じます。
(山田)各家庭でも、差がありますからね。
(橋本)そうですね。女性が外に出ると、家庭でやることを補わなければいけませんね。男性も育児に参加したり家事をやったりしないといけないけれど、社会全体に「長時間労働しないと出世できない」みたいな考え方があったと思います。
だから、男性も家事をやりやすいように制度を整えていったり、考え方を変えていったりしないと、やはり負担が女性ばかりに行くことになりかねません。そこを変えていかなければいけないということだと思います。
(山田)僕、番組で「子育て頑張ってます」って言いますけども、リアルな話、9対1で9割妻が子育てをしていて、1もやってないかもしれない(笑)
(橋本)女性が出産で一時期休んでもまたすぐに仕事に戻れて、キャリアを諦める必要はない、あるいは、公的なサービスなども使って仕事をしながら無理せずに子育てもできるー。そういう環境を整えていかなければいけないということだと思います。
(山田)特に静岡県としてはどうですか。
(橋本)少子化に加えて、静岡では若年女性の県外流出が多く、人口減の大きな要因の一つになってると言われています。首都圏には大企業が多く職場環境も整っているところが多いです。
静岡は首都圏に近いため、高校生まで地元にいても、大学は首都圏に行き、就職もそちらで、というふうになってしまうのは自然で仕方がない部分もありますよね。そういうこともきちんと認識して、県内でも行政や企業が考え方を変えていくということが必要じゃないかと思います。
(山田)それでいうと、ジェンダーギャップ指数の都道府県版だと、東京などは順位が高いんですか。
(橋本)東京では政治の指数が高いですね。ちょっと驚きなのが、行政と経済の今年のトップが鳥取だったんです。
鳥取県では、以前総務大臣を務めた片山善博さんが1999年から2期県知事を務められました。片山さんはさらに前には、総務省から鳥取県に出向して総務部長をしていて、30年ほど前から女性の登用を進めようとしてきたそうです。自分が知事になったときにさらにそれを推進し、流れを作ってきているんですよね。行政はトップの考え方で大きく変わるというところもあります。
(山田)なるほど。静岡も良くなってもらいたいですね。男女平等について、国際女性デーなどを機に、もう一度われわれも考えてみる必要がありますね。今日の勉強はこれでおしまい!
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