【大井川鉄道】2.9キロ運行再開も、見通せない全線復旧。地域ぐるみの議論が必要!
(橋本)大井川鉄道は10月1日、昨年秋の台風被害で運休していた大井川本線家山ー千頭間22.4キロのうち、島田市の家山ー川根温泉笹間渡間2.9キロの運行を再開しました。観光客らを乗せた列車が大井川本流をおよそ1年ぶりに渡り、沿線住民が延伸を歓迎しました。
(山田)大井川鉄道、復旧まで時間がかかってますね。
(橋本)昨年の台風15号の被害に遭われて、苦労された方もたくさんいらっしゃると思います。9月23日から24日にかけて各地に大雨を降らせ、特に県内に大きな被害をもたらしました。大井川鉄道が運行する大井川本線は、金谷ー千頭間の39.5キロで33カ所、それからその先の井川線の千頭ー井川間25.5キロで26カ所も、土砂崩れなどの被害があり、24日から両線で運行の見合わせをしたということです。
さまざまな復旧の努力をして、井川線は昨年10月8日に千頭ー接岨峡温泉間、10月22日には接岨峡温泉と井川の間が復旧し、全線の運行が始まりましたが、本線の方は復旧が遅れ、12月16日にようやく金谷から家山までの部分開通にこぎ着けたという経緯になっています。
(山田)北側と南側部分は開通したけども、真ん中辺りがまだという。
(橋本)残る家山ー千頭区間ですが、被害が出た33カ所のうちの26カ所がこの区間にあり、それぞれの地点の被害の度合いが大きいために代行バスの運行をして運送を繋いでいるということです。今回開通したのはそのうちの2.9キロ区間で、1年あまりかけて、ようやくということになります。これによって本線は全体の約半分が運転区間になりました。
(山田)約40キロのうち20キロを、約1年かけて開通してきたとは大変ですね。結構お金もかかってるんですもんね。
(橋本)大井川鉄道が調べたところでは、家山ー千頭間の復旧に概算で19億円ぐらいかかるようです。しかし、赤字路線なので、それだけの額を鉄道で負担して開通させることが難しいということで、今年1月に沿線の島田市と川根本町、静岡県、国土交通省に支援の要望書を提出しました。
これを受け、3月に静岡県が中心となって「大井川鉄道本線沿線における公共交通のあり方検討会」を発足させ、「全線復旧にはどうしたらいいのか」「大井川鉄道の将来のあり方はどういうふうにしていけばいいんだろうか」ということを、地域ぐるみで考え始めたんです。ですが、この議論もなかなか進んでないという状況です。まだ時間が相当かかるんじゃないかと思います。
(山田)やっぱり大井川鉄道だけだとこの19億円、無理ですもんね。
(橋本)被災した公共交通機関へ補助する制度というのは色々あるので、それを活用して復旧したいところなんですが、ローカル路線のうちの大井川鉄道の特殊性というのもあるんですよ。
大井川鉄道は、客の7割が観光で利用
(橋本)大井川鉄道は観光が中心なんですね。SLやきかんしゃトーマス号を運行していて、全国的に知られています。SLは今から47年前に、全国に先駆けて観光向けに動態保存を始めました。大井川鉄道は、通勤や通学以外のお客さんの割合が7割、あとの3割は定期を使って乗る地元の方などです。つまり7割が観光の方。収益でいうと9割が観光によるもので、その度合いが非常に高い。ここまで観光の度合いが高い地方路線はあまりないんですよ。
地域住民の足を確保するための制度だと、どこまで補助できるのか難しくなったりするので、どういう制度が使えるのか、もうちょっと検討していかないといけないと思います。
(山田)行政からすると、通勤通学のために絶対に必要って場合は補助金を出しやすいけども、その割合が少なくて観光となると、なかなかお金が降りないところがあるということですね。
(橋本)元々は林業資源などを運ぶために使われていたので、お仕事のための路線だったんです。だんだん人口も減ってきて林業も低迷してきて、仕事で使う度合いが少なくなってくる中で、先駆けて観光の路線として頑張っていくことを選び、早くから取り組んできました。
(山田)でも、観光でこれだけ人が来るっていう路線もいいような気がしますけどもね。
(橋本)ちょっと考えてみると、静岡の観光地としては伊豆や浜名湖周辺などが有名ですけど、中部って観光資源が東部、西部に比べると少ないじゃないですか。そういう中、全国に知られている大井川鉄道は本当に残ってほしいなと、乗り物好きとしては思うんですけど。
(山田)確かに、県中部の観光の代表格ですよね。
(橋本)ただ、復旧にはまだまだ多額のお金がかかり、それをどこが負担するのかっていうのが決まってない。時間も相当かかるということだと思います。
検討会の方でその議論をするので、地域ぐるみで大井川鉄道をこれからどういうふうにしていったらいいのかということを、もっと真剣に考えなきゃいけないなというふうに思います。
地方鉄道は経営難…再編考えるための「再生法」も
(橋本)経営難の地方鉄道の存廃を巡っては、「地域公共交通活性化再生法」という法律があり、4月に改正されました。それら地方鉄道の再編に向けた関連法が10月1日に施行されたんです。
改正の主な内容ですが、経営難の鉄道の事業者や自治体が参加する再構築協議会を設けるという制度を作ったんですね。事業者や自治体から国が要望を受け、国主導で今後のあり方を考えていく。その中では、廃止を検討することもあると思います。
この制度は、複数の都道府県をまたぐ路線が対象なので、大井川鉄道には直接は関係ありません。
JR西日本はきょう(3日)、広島、岡山県の芸備線について、地元と国土交通省を交えて協議をしてくださいという申請をしたということです。改正法が施行されて初めて国に申請したということでニュースになっていました。芸備線もかなり利用者が少なく、存廃を含めて検討していくということになるんだと思います。
今まで、JR西日本や東日本といった大きな会社は儲かる路線があって、そこで儲けたお金でローカル線の赤字をカバーして補っていくということが成り立っていました。しかし、コロナ禍で鉄道の利用そのものが大幅に減ってしまった。リモートワークも普及し、コロナ以前の通りに戻るかどうかわからないという状況の中で、赤字路線を今までのように儲けたところでカバーするというのが難しくなっている。そういう背景があります。
(山田)全国のローカル路線で、利用者が少なくなってるところはたくさんあるわけじゃないですか。この法律で、廃線になっていくところが増えてくるということですか。
(橋本)可能性はあるかもしれません。ただ、存続するっていう選択肢もあるわけですよね。その場合でも、事業者だけではちょっと持ちこたえられないので、地元の自治体にお願いする、あるいは何らかの方法でもっと地域住民に呼びかけて、活用してもらうような方策をとることを話し合う、といったことになると思います。その中で、バスに切り替えた方がいいんじゃないかという判断になれば、廃線になるというところも増えていくということです。
(山田)鉄道って、すごくファンがいる乗り物で、廃線していくのは寂しいですし残っていったら嬉しいですよね。そのためには、われわれの利用が大事ですね。今日の勉強はこれでおしまい!
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