【岸田政権の女性活用は看板倒れ?】女性閣僚は過去最多に並ぶも副大臣・政務官はゼロ 見え隠れする派閥への配慮!?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「岸田政権の女性活用は看板倒れ?」。先生役は静岡新聞論説委員長橋本和之です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年9月26日放送)

(山田)今日は第2次岸田再改造内閣の副大臣と政務官で女性の起用がゼロだったという話題ですね。

(橋本)9月13日に岸田文雄首相が第2次再改造内閣を発足させ、閣僚19人中5人が女性でした。岸田さんは女性活躍の促進を目標に掲げていて、過去最多に並ぶ人数だったので、「頑張った」と肯定的に評価する声が割と多かったんです。

その2日後に、大臣を補佐して各省庁の指導的な立場に立つ副大臣、政務官を決めたんですが、任命された54人全員が男性でした。改造前は女性の副大臣と政務官が11人いたんですが、ゼロになってしまった。これは自民党が政権復帰した2012年の第2次安倍内閣以降、初めてのことです。このため、岸田さんの女性活用は看板倒れじゃないかという批判の声が上がりました。

(山田)僕は外務大臣に上川陽子さんが選ばれたことで、女性活躍の時代を象徴するのかなと思ってましたけど、その後こういうことがあったわけですね。

「女性活躍は最重要課題」と強調した2日後…

(橋本)自民党は今年6月、党所属の女性国会議員の割合を今後10年間で現状の約12%から30%に引き上げる目標を表明しました。岸田さんは内閣改造後の記者会見で、自民党は女性議員を増やそうという目標を掲げているということを言いつつ、女性の議員の活躍推進を最重要課題としてると強調したんです。でも翌々日に蓋を開けてみたらこの状況だったんで、「言ってることとやってることが矛盾してませんか」という話になったんです。

(山田)確かに矛盾してますね。ペーパーレスにしますよと言ってるのに、その説明資料がめちゃめちゃ紙っていうような感じですよね。

(橋本)岸田内閣は、どの閣僚にどの副大臣と政務官を補佐としてつけるのかというチームとしての人選を考えたらこういう結果になりました、適材適所です、というような説明をしています。

(山田)適材適所で人を選んだら、結果的に女性がいなかっただけということなんですね。

(橋本)そもそも大臣、副大臣、政務官という「政務三役」について説明しますね。

(山田)教えてください。

(橋本)先ほども申し上げたように各省庁の指導的な立場に立つ役割で、基本的には与党が所属の国会議員にポストを割り当てるというのが慣例になってます。当選回数が少ないうちは政務官、当選を重ねて期数が上がってくると副大臣、さらに上がると大臣を任されるようになります。

(山田)なるほど。そういうふうになってるんですね。

(橋本)政務三役になって政府の中で経験を重ねることで政策に詳しくなったり、人脈が広がったりして、次のステップに繋がったりするということがあります。このため、議員としてもそのポストに入りたいという思いがあるわけです。

国会議員は当選回数を重ねるごとに、だんだん重要なポストにつけるようになります。そうすると、政策に関われるようになります。

(山田)だから議員としてもポストを狙うというわけですね。

(橋本)自民党には現在、6つ派閥があります。派閥にはそれぞれトップがいて、それぞれ自分の派閥の所属議員を副大臣にしてください、この若手を政務官にしてくださいというような要求を首相にします。

(山田)岸田さんにするんですね。

(橋本)岸田さんにも「自分はこの人を起用したい」という思いはもちろんあると思うんですが、各派閥の要求も勘案して人材を配置していくことになります。

(山田)今回、副大臣、政務官になった女性がゼロになったのは、その派閥の思惑に配慮した結果ということなんですか。

来年の自民党総裁選を見据えた人事?

(橋本)岸田さんは来年秋に自民党総裁としての任期が満了になり、総裁選を迎えます。各派閥は所属している議員の投票行動に大きな影響を持っています。派閥から「前の人事で冷たい対応をしたから自分たちはもう推さないよ」と言われてしまったら、(再選を目指す)岸田さんとしては困るわけです。

今回の閣僚人事や副大臣・政務官人事は、来年の総裁選を見据えてだいぶ派閥に配慮して決めたんじゃないかというふうに評価されています。

(山田)さきほど話があった適材適所ではない可能性もあるということですか。

(橋本)この人はある程度期数を重ねているけどまだ政務官や副大臣を経験していないからぜひ起用してほしいと言われ、順送りの人事になったという側面もあったと思います。全部が適材適所だったかというと、ちょっとどうなのかなという感じですね。そうであれば、女性をもっと活用する余地はあったのではないかと思います。

(山田)選んだ段階で、女性がいないのはまずいと思わなかったんですかね。

(橋本)そこが不思議なんですよね。ゼロってやはりインパクトが大きいですからね。

要因としては2つあると思います。1つは、そもそも自民党の中に女性議員が少ないことです。先ほど申し上げたように380人ぐらいの中に40人ぐらいしかいない。今までの政権も女性活躍と言ってきているので、期数が浅い段階で副大臣に抜擢したりしてきて一巡しちゃったなという感があります。

一方で、男性議員は9割近くを占めますから、1回も政務三役を経験していない人たちが、たくさん残っているという状況があります。そこを何とか解消しなければいけないという事情もあると思います。


(山田)それでもゼロとなったときにいろいろ考えると思うんですが。結局、派閥の影響が大きいということですか。

男性社会から脱却するには…


(橋本)もう1つの要因は、人材が育ってないという部分があります。本来であれば「女性が何人入った」ということではなく、一番仕事ができる人がポストに就けばいいと思います。とは言っても、今の政治の世界はものすごい男性社会になっていて、一般の社会とはかけ離れた状況です。このため、女性を活用する一方で、人材も育てていかないと、正常な社会になっていかないと思います。

それができていけば、女性が少ないとか多いとか、改造するたびにそこが問題になるようなことはなくなってくと思うんですけどね。そういう方向に向かっていかなければいけないんじゃないかなと思います。ただ、今の政治の状況を見ると、やはりそこを少し問題にせざるを得ないですね。

(山田)われわれの普段の生活では女性の活躍はすごいし、もう女性の活躍なんて言ってること自体も時代遅れな感じがする中で、この国の中枢はまだそんな状況なんですね。

(橋本)遅れてるということだと思います。選挙ではよく「地盤(組織力)、看板(肩書・知名度)、カバン(資金力)」と言いますけど、立候補すること自体がすごく大変なんです。そこから変えていかなければいけない。もっと女性も志があれば積極的に選挙に出て、政治の世界に身を投じられるような社会にしていかなければいけないということじゃないかと思います。

(山田)なるほど。これからもいろいろと国政について教えてください。今日の勉強はこれでおしまい!

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