
(山田)エッフェル塔ポーズが炎上しましたね。
(市川)自民党の女性局が7月、フランスに研修に行っていたという話です。参加した38人中、国会議員は4人で、その他は地方議員や女性局に所属している党員が参加していました。問題になったのはパリの観光名所エッフェル塔前での〝塔ポーズ〟ですよね。女性局長の松川るい参院議員が投稿した写真は誰が見ても観光しているというようなものだったので、「視察に行ってるのにけしからん」ということでSNS発で炎上したんです。
SNSで観光と見られても仕方ない写真をアップしたのは軽率だったなと思うんですよね。僕もSNSをやっていますが、静岡県内の県議会議員や市議会議員、市長らも、視察の様子をよくアップしています。政治家の方の視察の投稿を見ると、「こんなとこ行ってるのか」っていうのを知ることができるんです。ただ、今回のような観光っぽい写真をアップしているのは異例です。
今は物価高で庶民の生活が苦しく、円安で海外旅行もなかなか行けません。だから「こんなときに何を楽しそうな写真をあげているんだ」「国会議員であるならば、他にやるべきことがあるんじゃないか」などの批判は、庶民感覚としては真っ当かなとは思ってます。
(山田)それは当然、炎上するだろうというところですね。
(市川)擁護派も現れています。言い分としては「フランスに行ったらエッフェル塔で写真撮るのは当たり前じゃないか」という意見や、SNSにアップするのは政治に関心が薄い女性や若者向けのコミュニケーションだという意見、視察は視察でしっかりやっているはずなのに「写真1枚で視察そのものを批判するのは切り取り批判じゃないか」といったような声も。あとは「視察の合間に撮った写真をSNSでアップすることを批判することで息苦しい社会にしていないか」といった批判も目にしましたね。
(山田)個人的な感想ですが、最初にこれがポンとニュースに出てきたときに、多分皆さんも会社の出張とかでエッフェル塔の近くに行ったら写真撮るでしょと思ったんです。でも後々記事を読んでいくと、国会議員だし税金を使っているのでやっぱりダメなんだなってところに気づきまして。
研修の意義を伝えるのが先だった
(市川)今回の批判に関しても、視察の合間にエッフェル塔にちょっと行ったり、そこで写真を撮ったりすること自体を批判してる人ってそんなにいないと思うんですよ。研修の目的や意義を伝える前に、観光旅行をしているかのような誤解を与えるような投稿をしたこと。この軽率さがまず責められていると思います。研修が国民にとって意義あるものであるかどうかの評価は難しいとは思いますが、参加した議員は、誤解されたままではなく、「こういう意義のある研修だった」ということを帰国後でいいので説明してほしいと思うんです。一方で、週刊誌に続報がどんどん出ていますよね。研修の日程表も出てきていて、3日間のうち研修と呼べるような時間は6時間しかなかったとか。クルーズ船でディナーをしたり、他の観光地にも行ったりしたようなことが出ていて、こうした研修だとしたら、本当に意義があったかどうか議論にはなるのかなと思います。
税金は、本当に使っていない?

(市川)「税金を使ってるのにけしからん」っていう話も出ましたが、自民党は税金を使っていないって主張してるんですよ。今回の研修は自民党の女性局の主催で、参加者の私費と党費でまかなっていると説明しています。
党費というのは、自民党がお金を出しているので、これは税金じゃないという主張です。
(山田)なるほど。
(市川)一方で、これがごまかしだと言われています。というのは、その自民党に対して政党交付金というものが交付されているからです。これは議員数に応じて、政党要件を満たした政党に対して国から交付されます。自民党には1年間で大体315億3600万円交付されていて、これは100%税金です。自民党の収入の7割が政党交付金なんですよ。
茂木敏充幹事長は、今回のフランス研修について「政党交付金は使っていない」と説明しました。ただ、「この収入をこの支出に」っていうのは帳簿上わからないんです。だからこれは言い訳としては苦しいのかなと。収入の7割が税金である党がお金を出したことを考えれば、今回の研修は税金を使っていたと言われても仕方ないと思います。
(山田)研修に行く前の段階で、その理由や目的をわれわれが知ることはできるんですか。
(市川)それはほぼ知ることができなくて、報告書は終わった後に出るんですよ。例えば僕が取材していた2019年、静岡市議会は1年間に10回海外視察に行きました。これも税金で行っていたのですが、県議や市議には、政務活動費というものがあり、静岡市議会で言えば一人当たり月25万円交付されています。それを貯めて海外視察などに行くんですが、ここに行きますよっていう報告は、基本的には行った後の報告書で行います。
静岡市議会の政務活動費についてはオープンにしていて、誰でもホームページで見ることができます。公開された昨年の政務活動費を見ていたら、高知で開かれた日台交流サミットに、6人の市議が参加して51万円使っていたんですね。この報告書を見ると、こんなところに行った、こんな講演があったというようなことがつらつら書いてあるんです。基本的には、有権者の方がこれは意義あるものだったかどうかを判断されるものなのかなと思います。
(山田)オープンにしてあるからわれわれも見ることができるんですね。
昔からあった税金の使い道問題
(市川)こうした税金の使い道についての問題は昔からずっとある話なんです。2016年に当時東京都知事だった舛添要一さんの海外出張が問題となって大炎上しました。これは静岡県にも飛び火して、川勝平太知事の海外出張も当時問題視されました。川勝知事は2009年から2016年までの間に32回海外出張へ行き、72泊していましたが、そのうち54泊で県条例が定める宿泊費の規定額を超えていたことが当時明らかになり、県議会と大揉めになったんです。「血税」という言葉がありますが、税金の使い道に関しては、みんなすごく敏感になりますね。こういうわかりやすい税金の無駄遣いが、古今東西炎上し続けているのだと思います。
(山田)今回のニュースを見て、海外視察の意味というのはどのように感じていますか。
(市川)基本的には税金を使って海外視察に政治家が行くことの是非を決めるのは、やはり有権者だと思います。全部「ダメ」とひとくくりに考えるのではなく、ケースバイケースで考えるべきですね。政治家の側にも一つ一つ意義を説明していただきたいし、私たちも報告書などをホームページで気軽に見られる時代になったので、そうしたものに関心を持ち続けることが大切だと、今回の炎上で学べたとは思います。
(山田)この放送を聞いていきなり市役所のホームページのアクセス数が上がる可能性もありますね。覗いてみてはいかがでしょうか。今日の勉強はこれでおしまい!