仁科漁港「はんばた市場」

堂ヶ島で遊覧船を楽しんだ二人は堂ヶ島から南に1キロほど下ったところにある、仁科漁港にやってきました。夏にはイカ漁でにぎわう港です。

この港のすぐ横に2020年5月にオープンしたはんばた市場を訪ねました。「はんばた」とは「浜の端」という意味の方言。海の幸だけではなく、西伊豆で採れる野菜やこの辺で作っている加工品も置いているので、まさに西伊豆のおいしい物が集まっている場所といえます。西伊豆町役場農林水産係、職員の松浦さんにお話を伺いました。

松浦:こちらには凍眠という特殊な冷凍機がありまして、マイナス30度のアルコールを使って急速冷凍をすることができます。西伊豆町の名産であるスルメイカとの相性がよく、細胞が壊れないので、肝も刺身で食べることができるんです。よくとれる時期に凍眠冷凍しておけば、海が荒れるために漁獲量が落ちる冬の時期でも、安定してお客様に提供することができます。

こちらにあるのはもちろんスルメイカだけではありません! いけすには地元の旬な魚が集まっています。
チャン:ウツボは海のギャングですよ。食べられるんですか?
松浦:未利用魚(市場に出回らない魚)の活用の取り組みとして、ウツボも始めたのですが、食べるとおいしいんですよ。小骨が多いのが難点でしたが、除去してさばく技術をスタッフが身につけたので、ウツボも商品にすることができたんです。

※値段は仕入れ状況によって変わります
調理された魚も並んでいます。チャン:すごいですね。マダイが尾頭つきの刺身でこのお値段とは安い!
松浦:マダイは今が旬です。港から直接なので、この値段で出せるんです。イサキも旬に入っておいしくなってきました。

松浦:こちらは未利用魚のアイゴとニザダイを使った加工品です。「おひつブレイカー」はご飯がすすみすぎておひつを壊しちゃうということでつけました。「酒樽デストロイヤー」は辛めの味つけなので、お酒がすすみすぎて酒樽を壊しちゃうと!
チャン:プロレスラーみたいな名前(笑)!
特別に試食させてもらいました!
ウツボの唐揚げ

チャン:ウツボの唐揚げからいただきます。大きいな〜。(一口食べて)おいしい〜!ごはんのおかずでいけますね。しっかりした味つけを飛び越えてくる旨味があります。こんなにふわっとしてるのはどうしてですか?
松浦:骨を取っているからこそ、この食感が実現するんです。

左上:スルメイカの刺身、右上:イサキの刺身、左下:酒樽デストロイヤー、右下:おひつブレイカー
名産スルメイカ

チャン:凍眠冷凍で保存していたスルメイカの刺身をいただきます。(一口食べて)噛んだ時のイカのねと〜っというところにぎゅっと旨味があり、それをしっかり噛みしめたら甘味にたどり着きます。
松浦:これが新鮮なうちに凍眠冷凍したおいしさなんです。
チャン:肝は一体どんななんだろう?(一口食べてしばし絶句)側の白い部分がシャリっとしていて、肝がにゅるんっと甘い、溶け出した〜!コクがすごい!
松浦:細胞が壊れないので、肝がしっかりしているんですよ。
旬のイサキ
近江:私は旬のイサキを! 今日の朝とれたものをさばいたんですって。(一口食べて)ん〜!ブリンブリン! おいしすぎてもう何も言いたくないです(笑)。チャン:その気持ちわかる!
酒樽デストロイヤー
松浦:使っている魚はニザダイという未利用魚です。味噌と玉ねぎとごま油で和えて、そこに醤油を強めにきかせ、さらに一味を結構入れています。チャン:初めて聞く魚です。(一口食べて)うん、しっかり辛味がついてるんですが、魚の旨味もしっかり味わえる。これはお酒に合いますね。
おひつブレイカー
未利用魚のアイゴを糸づくりにして、甘めの醤油で漬け込んでから、イカの肝の塩辛を和えてあります。近江:(一口食べて)アイゴが弾力があってしっかりした食感です。
松浦:もともとしっかりした身質の魚なんですが、醤油で漬けることで、更にぎゅっとつまるんですよね。
チャン:それぞれの身のおいしさを知っているから、加工するときに特徴をさらに上げられるんですね。さすがプロだな〜。

「ツッテ西伊豆」とは?

松浦さんははんばた市場を作るに当たり、西伊豆町の産品を地元の人と観光客にも来てもらって買ってもらおうと考えました。おもしろいアイデアも実現しています。
松浦:日本でもここでしかやっていない「ツッテ西伊豆」というサービスで、はんばた市場と提携する釣船で釣った魚を、サンセットコインという地域通貨で買い取り、売っています。西伊豆町は県内で一番高齢化が進んだ町で、地域の一次産業が危うい状況になっていますので、地元の漁師や農家がこちらに産品を出すことで、少しでも効率的に収入を得られるようになってくれればと思っています。
チャン:この取り組みがモデルケースになってくれるといいですね!
ちょっと変わったこんなお肉も

松浦:ダチョウを飼育している方がいるんです。もともとは東京でシェフだったんですが、Iターンで移住してきて、ダチョウの飼育を始め、食肉の加工場をつくって、飲食店もやっています。私も食べたんですが、ダチョウ肉は脂が少なく、さっぱりしていて赤身の旨味があります。
チャン:おいしそう!食べてみたいな〜。(ダチョウ料理を食べに行った記事はこちら)
魚も野菜も肉もある、はんばた市場。西伊豆町のおいしい物が集まっている直売所です。
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■はんばた市場
住所:西伊豆町仁科980−4
電話:0558-36-3950
営業時間:8:30〜15:00
休み:毎月第4火曜日