
富士茶農協(同市)の植松弘毅代表理事専務(53)によると、市内で和紅茶の製造が始まったのは15年ほど前。富士山麓で育つ茶葉はポリフェノールの一種であるタンニンを多く含み、その渋みのおかげで砂糖やミルクに負けない本格的な和紅茶が出来上がるという。荒茶の取引価格低迷もあり、二番茶をやめて和紅茶を製造する事業者が増加。現在は少なくとも11の茶農家や茶工場が製造販売している。
地元産和紅茶をPRしようと、市内の茶農家や販売業者らでつくる「富士のお茶振興推進協議会」は2024年12月、市役所の給茶機で試飲サービスを実施した。富士市産茶葉を100%使った和紅茶は、品種ごとに個性のある豊かな香りと味わいが魅力。11事業所が日替わりで茶葉を提供した。担当した市農政課の望月美玖さん(27)は「若者の茶離れが進む中で、紅茶は女性を中心に若い世代が親しみやすい。和紅茶を入り口に茶の消費拡大につなげていけたら」と語る。
今年1月には、地元産和紅茶にこだわるカフェ「紅茶店367(サンロクナナ)」が同市富士見台6丁目に開業した。店主の掛橋つかささん(42)が市内の茶農家らと連携し、15種の茶葉を取りそろえる。オープン当初から交流サイト(SNS)などで話題を呼び、女性客を中心に人気を集めている。
地元で生産される農作物の中で、茶は最大の作付面積を誇るが、市況低迷で栽培面積や産出額は減少。和紅茶の期待が高まる一方で、植松専務は「作業の機械化」を課題に挙げる。和紅茶は生葉を完全に発酵させて仕上げるが、現在はほとんどの事業者が手作業で製造。今後、香りや味を生かしたスイーツなどの商品展開も考える中で、作業の効率化を追求する方針だ。