浜松の伊場遺跡群出土品 国の重要文化財指定へ 静岡市の小梳神社と浮月楼明輝館、登録有形文化財に

伊場遺跡から出土し、国の重要文化財に指定するよう答申された品の一部=浜松市役所 文化審議会は21日、伊場遺跡群(浜松市中央区)の出土品など42件を重要文化財に指定するよう文部科学相に答申した。答申通り指定される見通しで、美術工芸品の重要文化財は1万953件(うち国宝916件)となる。審議会は小梳(おぐし)神社本殿、拝殿及び幣殿(静岡市葵区)、浮月楼明輝館(同)など135件の建造物を登録有形文化財にすることも求めた。

■伊場遺跡群(浜松・中央区)の605点 弥生文化圏の東限示す
 国の重要文化財(重文)への指定を答申された伊場遺跡群(浜松市中央区)の出土品は、市博物館で所蔵する弥生時代後期(1~2世紀)の土器、青銅品、木製よろいなど605点。弥生時代後期における九州北部からの文化圏の東限域であることを示す資料として評価された。
 土器のうち、高坏(たかつき)は皿の部分が外側に沿った特徴がある。こうした高坏は「畿内第Ⅴ様式」と呼ばれ、天竜川より東側ではほぼ出土しない。青銅製品は銅鐸(どうたく)の破片などがある。銅鐸も天竜川以東ではほとんど分布していないことが確認されている。
 伊場遺跡群は伊場遺跡とその周辺9カ所の総称で、東西2・3キロ、南北1・2キロの範囲に広がる。中心となる伊場遺跡は三重の環濠(かんごう)に囲まれた東西120メートル、南北150メートルの集落。環濠は外の世界との隔絶を表し、市博物館によると首長の王宮のような場だったと考えられるという。環濠内からは赤漆と黒漆で彩られ、祭祀(さいし)に使われたとみられる木製のよろいも見つかっている。
 調査は太平洋戦争中に受けた艦砲射撃の爆裂坑から1949年に土器が採集されたのをきっかけに2020年まで行われた。市としては21件目の重文となる。市博物館の鈴木一有館長は「文化財行政の柱に据え、広く市民に伝えたい」と話した。

■小梳神社本殿、拝殿及び幣殿(静岡市葵区)
  静岡市の中心市街地に位置する小梳神社は静岡大火や戦災で焼失後、拝殿と幣殿が1951年に、本殿が63年に再建された。鉄筋コンクリート造りによる耐火構造で柱や側面、軒回りまで丁寧に造形されている。特に、柱上部に突き出た「木鼻」は鎌倉時代の大仏様風の意匠が見られる。拝殿の銅板平ぶきの屋根を重ねた抑揚感のある外観は、社殿全体に重厚な趣を与えている。

■浮月楼明輝館(静岡市葵区)
 料亭「浮月楼」は1891年、静岡市中心部の15代将軍徳川慶喜の屋敷跡に開業した。その一角に建つ「明輝館」は、戦災後の1950年に再建された木造2階建て、広さ480平方メートルの上質な数寄屋造り。広大な池泉回遊式庭園に面して大広間や控えの間付きの座敷を備える。近年は、将棋のトップ棋士10人が対局する名人戦のA級順位戦最終局の舞台としても知られる。

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