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眞子さまが発症した「複雑性PTSD」とは? 今さら聞けない「PTSD」

PTSDは、誰にでも起こりうる病気

「PTSD」という言葉を聞いたことはありますか? 2021年の10月、宮内庁は秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんの結婚を発表しました。あわせて眞子さまが「複雑性PTSD」と診断されたことを明らかにしました。今回は「今さら聞けない PTSD」というテーマで、臨床心理士で、All About「心の健康」ガイドの矢野宏之さんにうかがいます。
※10月7日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

PTSD
牧野アナ:
まずは「PTSD」について、どのような病気なのか教えてください。

矢野さん:PTSDは、日本語で「心的外傷後ストレス障害」といって、生死に関わるようなトラウマを体験したあとに発症する病気です。

牧野アナ:何か大変なことを経験したあとに発症するものなんですね。どのような症状が現れますか?

矢野さん:代表的な症状はフラッシュバックです。嫌な過去の出来事やトラウマが、頭の中で映像が再生されるように思い出されます。また、神経過敏や寝ているときに悪夢を見たり、悪夢を見るから不眠になったりします。

牧野アナ:誰にでも起こりうる病気なんですか?

矢野さん:はい、PTSDに該当するような生死にかかわるトラウマを経験すれば、誰でも発症する可能性があります。

牧野アナ:トラウマはどの程度なのでしょうか。個人によって違うのですか?

矢野さん:個人によって異なりますが、基本的には生死にかかわるようなトラウマがPTSDの発症に繋がるといわれています。

牧野アナ:こういった人がなりやすいなどはありますか?

矢野さん:もともと何らかのトラウマがある人や家族のなかで問題がある人、人間関係でサポートがない人、相談できる友達がいない人などがなりやすい傾向にあります。

「PTSD」が知られるようになったきっかけは?

牧野アナ:いつ頃から「PTSD」が一般的にいわれるようになったのですか?

矢野さん:日本では、1995年の地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災から一般的に知られるようになりました。

牧野アナ:トラウマになる体験から発症するまでの期間は、人によって違いますか?

矢野さん:生死にかかわるトラウマを経験すると、一カ月以内にフラッシュバックがひんぱんに現れますが、普通の人は一カ月くらいで収まるんです。ただ、一カ月後からフラッシュバックがどんどん出てくる人がいて、そういう人たちがPTSDになっていきます。

牧野アナ:何年もしてから症状が出てくることはありえますか?

矢野さん:そういうパターンもあります。たとえば阪神淡路大震災を経験して、その時は意外とそうでもなかったのに、東日本大震災の報道を見てそこで初めて記憶がよみがえって発症する人もいました。

新しい病気「複雑性PTSD」!?

牧野アナ:そういった人のケアも大切ですね。あと、「複雑性PTSD」となると、また違う病気なのでしょうか?

矢野さん:WHOからICD-11という新しい診断基準が出されています。「複雑性PTSD」は、そこで初めて記載されるようになった新しい病気です。PTSDの症状に加えて、不安・イライラ・落ち込みが出てきやすくなる、感情調節の困難や人を信頼できなくなったり、感情的になってぶつかりあってしまい人間関係が続かないといった対人関係の問題が新たに出ている状態を「複雑性PTSD」といいます。

周囲の人はどう対応すればいい?

牧野アナ:普段の生活に影響が出てきそうですね。そういった場合に、周囲の人間はどのような対応やケアをすればいいですか?

矢野さん:まずフラッシュバックなどの症状が、トラウマを経験したら出てくることだと知っておくことが大事です。まったく知らないで苦しんでいる人が多いのです。あとは、音楽など気持ちを落ち着けるもの(グッズ)を用意してあげたり、「人間関係で辛いことがあったら話を聞くよ」などのあたたかいサポートがあると症状が収まりやすいです。

牧野アナ:「安心」がキーワードですね。これは治療をしたり時間をかけることで治る病気なのでしょうか?

矢野さん:安心できる環境にあれば、時間とともに症状が落ち着いてくることもあります。ただ、症状が長引く場合や薬での治療が必要な場合や、特殊なカウンセリングを受けて治療をしていくことになります。

牧野アナ:今、PTSDの人は増えているのでしょうか?

矢野さん:増えているよりは、認知されるようになってきたというのが正しい状況なのかなと思います。

牧野アナ:ということは、自分でなっているけど気づいていない人もいるかもしれないのですね。

矢野さん:知識として知らないがために、自分の症状に気づかない人も過去には結構いたと思います。

牧野アナ:みんなに知識が広がっていくことで救える部分もあるかと思います。みなさんもぜひ今回の話を活かしてください。

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免責事項
今回お話をうかがったのは……矢野宏之さん
大学院卒業後、精神科病院勤務等を経て、現在はEMDRカウンセリングルーム リソルサに勤務。専門は、強迫症、社交不安症、恐怖症、パニック症、PTSD、解離症。認知行動療法、EMDRなどの治療を主に用いて支援に当たっている。強迫症の研究者でもあり、同時にブログ・twitterなどで病気に対する情報発信も行っている。

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