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今さら聞けない「脱炭素社会」とは?生活にどんな影響が?

話題の「脱炭素社会」、正しく説明できる?

「脱炭素社会」という言葉を、聞いたことはありますか? このところ話題になっている言葉ではあるのですが、ホントのところはよく分からないという方も少なくないと思います。そんなみなさんのために、今回は経済評論家の加谷珪一さんに初歩から解説していただきました。
※8月9日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
脱炭素社会

加谷さん:
私たちの日常生活や企業活動など、あらゆる局面で温室効果ガスを出さないようにする社会のことです。わかりやすいのは、太陽光や風力で電気を作るとか、EV(電気自動車)を普及させることですが、それだけではありません。工場での生産プロセスなどを工夫して二酸化炭素を出ないようにしたり、家の断熱性を上げて、冷暖房のエネルギーを減らすことも取り組みの一つです。
  
牧野アナ:脱炭素は大企業がやっているイメージを持っている方が多いかもしれませんが、家庭レベルでも脱炭素はできるんですか?

加谷さん:我々の生活からやらなければいけないんです。

世界が脱炭素に向かうことになったきっかけは?

牧野アナ:そうなんですね。日本でも菅総理が、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言して話題になりましたが、ここにきて、世界が脱炭素に向かうことになったきっかけはなんですか?
 
加谷さん:地球の温度が上昇は二酸化炭素のせいではないかという指摘自体はかなり前からあって、なんとかしなければという話ではあったのですが、技術的な問題から脱炭素には時間がかかると思われていました。数年前、関連技術が驚異的に進歩したことで、一気に現実化しました。これまで脱炭素に消極的だった中国やアメリカが前向きに転じたことから、一気に流れが変わった印象です。

牧野アナ:取り組んでおいた方が世界の主導権を握れる、とかそういう思惑もあるんでしょうか?

加谷さん:いつかはやらなければいけないことですので、どうせやるのであれば先にやってその分野でリーダーになった方が、主導権を握れるという政治的な駆け引きも当然あるかと思います。

世界が脱炭素社会に向けて進むことで、日本にはどんな影響が?

加谷さん:一番大きな影響があるのが、製造業です。世界は「二酸化炭素を出す企業の製品は買わない」という流れになってきています。一刻も早く対応しないと物が売れなくなるという危険も。日本は製造業に大きく依存していますから、迅速な対応が必要です。

牧野アナ:もう脱炭素は取り組んでおいた方がいい、ではなく必須となっているんですね。

加谷さん:アップル社はすでに二酸化炭素を出す企業から部品は買わないと宣言していますので、そのくらい事態は切迫しています。

日常生活にも影響はある?

加谷さん:今後は冷暖房の利用を減らすためにも、リフォームを含め断熱性能が高い家を作る人が増えてくると思います。これは初期費用はかかりますが、冷暖房代は安くなりますから結果的にはお得になるともいえます。

牧野アナ:世界はかなり脱炭素社会に向けて進んでいると言われていますが、日本は世界と比べて、遅れをとっているのでしょうか?

加谷さん:日本は遅れ気味でしたが、菅政権が決断をしたので全体として世界の潮流に乗ることができました。ただ、個別では色々課題があり、EV普及のための充電ステーションの設置や工場の対応は欧米や中国よりも遅れていますから、対策が必要です。

牧野アナ:今はあまりEVカーの充電ステーション見かけないですが、これから増えてくると考えられますか?

加谷さん:EVカーの台数が増えてくると、充電ステーションも増えてきます。これから2、3年の間にはだいぶ増えてくるのではないでしょうか。

今後、注目すべきポイントは?

加谷さん:再生可能エネルギーの発電所を作らないことには何も始まらないので、カギを握る洋上風力発電所がどの程度建設されるのかという部分に注目したいと思います。

牧野アナ:私たちの生活で、脱炭素に近づくためにはどんなことを心がければいいですか?

加谷さん:単に「消費を減らす」「無理に節約をする」というのではなくて、同じ用途の物を買うのであれば、二酸化炭素を出していないことが証明されている商品を買うとか。今後は、こうした情報が商品に表示されるようになると思います。あるいは、二酸化炭素の削減に積極的な企業の商品を買う。そうすることで消費を減らさずに、環境に貢献する道が開けてくると思います。

牧野アナ:国も企業も個人も脱炭素を心がけて、世界に遅れをとらず、地球のためにもやっていきたいですね。

加谷さん:はい、最終的にはそれが目標になります。
 
今回、お話をうかがったのは……加谷 珪一(かや けいいち)さん 
仙台市生まれの経済評論家。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は「ニューズウィーク」など数多くの媒体で連載を持つ。「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)「日本は小国になるがそれは絶望ではない」(KADOKAWA)など著書多数。
 

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