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「悲しい」「怖い」ニュースを見ると不安になる……体にどんな影響が?

共感力の強い人は注意を

日々のニュースには、痛ましい事件や事故などの報道も多数あります。例えば、ロシアのウクライナ侵攻のニュースでは、民間人が多く住む地域にロシア軍の攻撃が及び、痛々しい映像がテレビを通して流れてきました。こうしたニュースを見ているなかで、不安を感じている人も多いかもしれません。そこで今回は「悲しい・怖いニュースを見るのがつらいときの対処法」について、公認心理師・産業カウンセラーで、All About「ストレス」ガイドの大美賀直子さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※4月6日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:ニュースを見て不安になったり、生活に支障が出てしまう人もいるそうですね。

大美賀:はい、実際に少なくありません。ニュースを通じて爆撃された町や負傷した人々の様子を見て、毎日不安でたまらない……、眠れなくなったり食欲が落ちてしまう人も少なくないですね。

牧野:どのようなニュースが不安な気持ちにさせるのでしょうか?

大美賀:たとえ自分にとって身近な出来事ではなくても、毎日のように、誰かの命や安全が脅かされることを報じるニュースに触れていると、人の不安は掻き立てられます。特に映像は、戦争などの残酷なシーンをありのままに伝えていますので、そのシーンが強烈であればあるほど記憶に残りやすくなってしまうんです。

牧野:不安を感じると、どのような症状が出てしまうのでしょうか? 

大美賀:まず人間の脳の真ん中あたりに、扁桃体という器官があるのですが、危険を察知すると作動して交感神経が過剰に興奮し、「逃げるか、闘うか」という心理にさせてしまいます。この反応は、実際に危険が迫っているときには、本人の身を守るための非常に重要な働きとなるのですが、通常の生活においては支障が出すぎてしまいます。

牧野:具体的には、どんな症状になりますかすか?

大美賀:不眠、食欲不振、血圧の上昇、焦燥感の持続、動悸、筋肉のこわばりなどの症状が現れてきます。

牧野:同じニュースを見ていても不安を感じないし平気な人もいますが、症状が出やすい人の特徴はありますか?

大美賀:人の気持ちに共感しやすい人は、特に注意が必要です。こうした共感力の強い人は、仮に遠いところで起こっている出来事、自分の暮らしている国ではない外国で起こっている出来事でも、まるで自分のことのように痛みを感じて疲れてしまうんです。これを共感疲労といいます。特にやさしい人、親切な人、困った人を放っておけないような人は、共感疲労を起こしやすいのでぜひ注意していただきたいです。

牧野:自覚しておいた方がいいのでしょうか?

大美賀:そうですね。自分自身が、物事に共感しやすい、人の痛みがすごく分かるし一緒に喜んだり悲しんだりすることが強いなと思ったら、こうした痛ましいニュース、特に映像シーンを見るときには、視線をずらしたりして、刺激からいったん距離を置くのがいいかと思います。

牧野:具体的な対処法としては、まず、いったん距離を置くと。他にはどのような対処法がありますか?

大美賀:いったん距離を置いたあとの対処法なんですが、吸って吐くという深呼吸を、ゆっくり1分くらい静かな場所でしてください。その後で水を飲んだり、そのままお風呂に入るなど気分転換をすると、応急処置としてまずは役に立つかなと思います。

牧野:他にはどうでしょうか?

大美賀:今お伝えしたのは短期的な応急処置の方法ですが、長期的な対策として、報道番組とどうつきあっていくかを考えておくことも大切ですね。自分は、強烈な映像に恐怖を感じやすい、共感疲労しやすいと感じたら、怖い映像シーンが流れたときは別の部屋に移動して、そのシーンが終わったら戻るなど、日ごろから自分なりの報道番組との付きあい方を考えいくといいと思います。

牧野:最近はテレビ局側も「このあと津波の映像が出ます」など、注意書きのテロップを出すところが多くなってきました。そういう番組も含めてどう付き合っていくか、自分なりに対策をとっていくということですね。

大美賀:そうですね。同じ家族でも感じ方は人それぞれですので、ありのままの報道を見て自分が不安定になりやすいなら、自分の身や心をを守るために、そういった処置をしていただくといいと思います。

牧野:最後にみなさんにメッセージをお願いします。

大美賀:ニュース番組は、世の中の出来事をいち早く知り、ありのままの現実を理解するための大切な媒体です。ですがその一方で、自分自身に必要以上にストレスを与えない付き合い方を考えることも、またとても大切なことだと思います。

特に、お子さんへのニュースの見せ方には注意してください。恐怖を掻き立てるような生々しい映像シーンを見ると、そのときの恐怖がトラウマとして心に残りやすくなってしまいます。小さなお子さんには、できるだけ怖い映像を見せないようにすること。もし見てしまったときには、しっかりと抱きしめてください。そして、「大丈夫だよ」「心配いらないよ」と優しく語りかけながら安心させてあげることが大事だと思います。

牧野:大美賀さんの経験からいって、小さいお子さんはだいたい何歳くらいを指しますか?

大美賀:やはり小学生ですね。特に低・中学年のお子さんたちは、怖い映像シーンに非常に過敏に反応します。ニュース番組そのものが大人向けに作られていますので、子どものへの刺激を考えて、見せ方や付き合い方を考えてみてください。

牧野:分かりました。ありがとうございました。
今回お話をうかがったのは……大美賀直子さん
1994年早稲田大学教育学部卒業。公認心理師、精神保健福祉士(以上国家資格)、産業カウンセラー。企業、公的機関、教育機関において相談業務、研修講師活動に従事。相談者の悩みに耳を傾けながら、ストレス対処法を分かりやすく解説している。2002年より、総合情報サイトAll About「ストレス」と「人間関係」のコーナーでコラムを執筆中。著書・監修多数。

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