月の名所・吐月峰柴屋寺を訪ねる
語り:春風亭昇太
静岡市駿河区丸子にある吐月峰柴屋寺は、今川家に仕えた連歌師、宗長ゆかりの名刹。宗長が京都の銀閣寺を模して造らせたと言われる庭園には、丸子の自然がたくみに取り入れられています。
庭には月見石が置かれ、そこで月が出るのを待つと、東にある山から吐き出されるように月が昇るのを見ることができます。柴屋寺の雅号である「吐月峰」は「月を吐く山」を意味しています。今も月の名所として知られ、中秋の名月には、琴や琵琶の音色に包まれながら月を待つ時間を楽しむ「観月会」が開かれます。銀閣寺から招いたお坊さんのために、宗長は京都・嵯峨から竹を取り寄せて竹林を造らせ、京の月見を再現しました。
この竹林の竹で宗長が作り始めたと伝わる竹細工は、今も民芸品として継承され、柴屋寺は「竹の寺」としても知られています。かつて煙草盆にそえる竹の筒 「灰吹」を作り、「吐月峰」の焼印をして売っていたところ、「灰吹」が別名「吐月峰」と呼ばれるようになったのだとか。
柴屋寺には、宗長最愛の茶道具とされる「茶釜」が残され、むかし話「文福茶釜」の茶釜は、この茶釜のことであったとも伝えられています。月を愛で、茶を楽しんだ、連歌師・宗長の風流を今もこの寺で感じることができます。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。
静岡市の観光親善大使でもある春風亭昇太師匠の語りで、歴史や文化、特産品など、静岡市の魅力を紹介するミニ番組です。(毎週日曜日ひる12時54分放送)