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「かわいい」と「リアル」を追求する木彫り作家 川崎誠二

駿府博物館(静岡市駿河区)で7月15日から9月3日まで、展覧会を開催

駿府博物館が応援したい作家を紹介します。沼津市出身の川崎誠二さん。姪の宿題を手伝い、木彫りのトーストをSNSに投稿したところ、大反響!SNSが生んだ現代型アーティストです。

対象を観察すると見えてくる

沼津港の近くにあるアトリエ。「サクサクサク」と小気味の良い音が響きます。「ズバズバズバと形を決めないとならない」。緊張感が漂います。川崎さんは手彫りにこだわります。「彫るからできる面、彫るからできる形がある」と言います。

川崎さんの作品を大きく分けると2種類でしょう。「リアル」と「かわいい」です。「かわいい」動物を作ることを「動物らしさを拾う」と表現します。「対象を観察すると見えてくる」という言葉の通り、作品をイメージし、動物の愛らしさを引き出します。そして「顔」に目などを入れるとき、緊張は最高潮に達します。「集中すると、呼吸が止まる」という言葉の通り、周囲の空気も動きを止めます。

そのような川崎さんの思いを込めた海の生き物、陸の生き物、恐竜、さまざまな生き物が展示台の上で、一瞬のかわいらしさを見せてくれます。

その形、その色になるには理由がある


本物そっくりのミョウガ、アスパラ、靴、サクランボ…。川崎さんはこれまで、多くのホンモノを超えた木彫りを作ってきました。「物の形は履歴」という言葉で、作ろうとしているものが、これまで、どのような道のりをたどり、現在存在するのかを考えています。

「納得するところまでやる」「普通になるまで作り込む」、求道者のように作品に向き合います。「作業を繰り返していると、いろいろなことを考えてしまう」という思いも打ち明けてしまうところに川崎さんの「人間臭さ」を感じます。

アトリエで見た作品たち


川崎さんと話をしていると、「強い人」という印象を持ちます。しかし、川崎さんは、膝を抱え込んだり、頭を抱え込んで寝転がっている人の姿も表現しています。川崎さんの作品というと、刃の跡にリズムを感じるのですが、悩む人を表現する作品群は、削り出された跡を見るだけで、苦悩を感じ、胸が締め付けられます。川崎さんがこれから「木」に何を彫っていくのか、どんな表現を生み出していくのか、応援しています。
(駿府博物館)

<DATA>
川崎誠二のちいさな木彫り展
期間:2023年7月15日(土)~ 9月3日(日)
会場:駿府博物館(静岡市駿河区登呂3-1-1)

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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