芸術家ではなく職人でいたい。看板づくりの技をいかした、緻密で楽しい作品たち

やってきたのは、沼津市に本社を置く看板専門店「微助人(びすけっと)」の富士工房。工房内で作業をしているのが社長の野口大さんです。

高校を卒業してから看板職人として働いてきた野口さんは、2018年から二代目社長に就任。叔父さんから教えてもらった技術を受け継いで、今は弟さんと一緒に看板専門店を経営しています。

野口さんは持ち前の高い技術をいかして家の表札から立体的で巨大なものまで、依頼があれば何でも作ってくれるんだとか。

ところで、余った材料の寸法を測っていますが、これから何を作る予定なんですか?
「この廃材を使って、看板ではなく僕の作品を作りたいと思います。」
えっ、作品!?

実は野口さんは看板作りから出た廃材を使って作品を作る、今注目の造形作家なんです。
作品の一部がこちら。作品の多くは昆虫やは爬虫類です。その迫力と質感は今にも動き出しそうなほどリアル!

社長として日々忙しく仕事をする野口さんですが、合間をぬって定期的に個展も開催しているんです。

「もっと会社を繁栄させたいから作品を作っているというよりは、僕が楽しいから作品を作っているんですよね。『気持ち悪い』とか『怖い』とかいわれると、内心めちゃくちゃ嬉しいんです!」

ところで奥さんは正直どう思っているんでしょうか?
「本人が楽しそうに作っているのが一番なので、家族で応援しています。ちょうど昆虫や恐竜に興味を持ち始めた息子に、図鑑を買うふりをして自分が読み込んでいますけどね。作品は重いし壊したら大変なのでノータッチです(笑)」

野口さんは今、個展に向けて新しい作品作りに取り組んでいる真っ最中。1つの作品を作るのに、長いもので3カ月もかかるそうです。

「新しいことができるようになると、あれもこれもと技術を詰め込みたくなるんですけどね。最初の頃に感じた『下手だけど楽しい』という気持ちも忘れたくなくて」

作品は全て手作りで、試行錯誤を重ねて自己流で作っているというから驚きです。
「僕を芸術家といってくださる方もいますけど、『すごい職人だね』といわれる方が嬉しいです」
廃材をいかした素晴らしい作品、ぜひ個展に行って間近で見てみたいですね。
(SBSテレビ『しずおかびっくりTV』2023年4月8日放送)