
再開発により解体が進む「アーケード名店街」。取り壊された建物の一部がステンドグラスの作品としてよみがえりました。失われゆく風景を未来につなぐ、ひとつのかたちです。
陽の光で外の葉が透けて見えるステンドグラス。静岡県沼津市内浦地区に明治時代に建てられた旧郵便局です。ステンドグラス作家・木村洋介さんの個展が開かれています。
<ステンドグラス作家 木村洋介さん>
「水口園さんとか、実際にそこの建物で使われてたガラスをはめている」
<見学者>
「すごい素敵」
作品は、地元の歴史的建造物「沼津アーケード名店街」のかつての風景を再現しています。ステンドグラスの材料は「名店街」の建物の廃材です。
<木村さん>
「例えば、お風呂の換気窓についていた建具だが、『昭和型板ガラス』というでこぼこした筋の入った模様がすごく綺麗なガラス」
「昭和型板ガラス」は、ガラスの片面に凹凸の模様を施したガラスで、昭和初期に窓や食器棚の扉などで人気を集めました。
<東部総局 竹川知佳記者>
「いま、アーケード名店街は工事中だが、見ていかがか?」
<木村さん>
「通った時に、空が広くなっちゃった、すごくガラーンとしちゃったなっていう印象がある」
戦後間もない1954年に誕生した、「沼津アーケード名店街」。せり出した2階以上の居住スペースが屋根となり、雨の日も濡れずに買い物ができました。
沼津を象徴する景色でしたが、百貨店ができたことや後継者不足などにより、2024年秋から解体工事が進んでいます。木村さんは、取り壊し前の見学会をきっかけに、建物の一部を使って作品を作ることを決めました。解体の際に譲り受けた思い出が染み込んだガラスに新しい命を吹き込みます。
<木村さん>
「型板ガラスの模様を生かしたいということで、色はステンドグラスから1色だけ。その分、透明のガラスと模様のガラスの抜け感の違いを生かせるように」
作品では、店の看板や街路樹などに9種類ほどのガラスを使いました。
5月13日、ガラスを提供してくれた店の人に作品を見せました。
<だいこくや 海野美保子さん>
「壊されて寂しいと思っていたけど、またこれを見ると感無量」
<水口園 水口隆太さん>
「過去の思いとか、いろんなものをずっと未来へつなげていこうという気持ちの結晶かなと」
作品は、個展が終了した後、2人に贈られ、移転した店舗に飾られます。
<木村さん>
「若い世代の子たちは、作品を見て初めて見たという子たちもいると思うので、昔の日本にも良いものがたくさんあったと知ってもらえたらうれしい」
木村さんの個展は、沼津市内浦三津で5月25日まで開かれています。