富士山の新しい魅力を発信―駿府博物館
駿府博物館(静岡市駿河区)で10月14日から12月10日まで、展覧会を開催
「すごい富士山 絵画と富士山の共演」が10月14日から12月10日まで、静岡市駿河区の駿府博物館で開かれています。作品構成を組み立てるなど、キュレーションをしている同館学芸員の森下善彦さんに話を聞きました。展覧会の概念を変える
「今までの富士山でなく、見方を変えた富士山を鑑賞していただきたい」が基本理念です。展覧会は知名度の高い作品を並べるのがセオリー。既存の価値観では作者不詳の作品は避けますが、あえて展示します。所蔵品1,200点の中には一度も展示されていない作品もありますが、選んでみました。あえて皆さんにご覧になっていただくことで「現代まで伝わってきた作品に込められた意味を感じていただける」と考えています。日本画、版画など多彩な作品がそろっているので、今までの富士山とは違った魅力を発見できるはずです。
富士山写真家の作品との「和音」
日本画、版画とともに展示するのが富士山写真家 橋向真(はしむき・まこと)さんの作品。SNSを駆使して作品を発表していて、"バズっている" 現代ならではの写真家です。橋向氏の作品の特徴の一つは「雲」でしょうか。笠雲をまとった富士山は、橋向氏ならではの表現です。幻想的な作品、おどろおどろしさを感じる作品、これまでの富士山写真に革命を起こしたと言っても過言ではありません。
和紙の伝統と革新的な写真の化学反応
橋向さんは、富士山写真の可能性を広げるとともに、気軽に楽しんでもらえる提案をしようとしています。「スマホの画面だけでなく、リアルな作品を日常生活で気軽に見ていただきたい。日本の伝統を踏まえた上で、皆さんに新しい提案をしたい」と和紙の額装、軸装の作品を出品しました。山梨県身延町の「山十製紙」さんとの「合作」と言っていいでしょうか。版画のような色彩と、和紙の風合いが見事な作品に仕上がりました。とっておきの見どころ
私は月見里茂さんの版画、富岡惣一郎さんの洋画に惹かれています。静岡市生まれの月見里茂さんの日本平から見た富士山と橋向さんの同じ場所の写真を比べると、作家によって表現が異なる面白さを見つけられます。
新潟県出身の富岡さんの作品は「富岡ホワイト」と言われるくらい、白の使い方に特徴があります。富岡さんは雪国に対する望郷の精神が基本にあって、雪国の旅、巡礼を 通して白の不思議な美を発見したそうです。橋向さんの雪をまとった作品と比較するのも楽しいかもしれませんね。10月22日、11月19日の午後2時からは、橋向さんのギャラリートークも行われます。
(駿府博物館)
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企画展「すごい富士山~絵画と写真の共演」
期間:2023年10月14日(土)~ 12月10日(日)
会場:駿府博物館(静岡市駿河区登呂3-1-1)
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