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下着の色を指定?理不尽すぎる 「ブラック校則」。そもそも校則は何のため?

理不尽なことを要求する「ブラック校則」

「ブラック校則」という言葉を聞いたことがありますか? まわりから見ると明らかにおかしい校則などを指す言葉なんですが、具体的にどんなものなのか、問題点や今後どのような動きがあるのか、名古屋大学大学院教育発達科学研究科の内田良教授に、SBSアナウンサー原口大輝がお話をうかがいました。
※4月15日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

原口:「ブラック校則」という言葉を最近耳にすることが多くなった気がします。具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

内田:下着の色を指定する、ツーブロック禁止、腕まくり禁止など、かなり理不尽なことを要求する校則が「ブラック校則」と言われています。

原口:いつ頃から「ブラック校則」という言葉が使われるようになったのでしょうか?

内田:ここ数年ですごくよく聞くようになりました。そのきっかけは、2017年に大阪府立高校の女子生徒が、生まれつきの茶色の髪を黒くするよう学校から強制されたとして訴訟を起こしたんです。この訴訟をきっかけに、学校の校則の在り方が徐々に問われるようになりました。特にこの2年くらいですかね、全国各地の学校で校則の見直しが始まっているのかなと感じています。

原口:元々おかしいと思っている人は多かったけれど、声を出す人が少なかったということですよね。

内田:それまでは、校則は学校にあって当たり前のものだったんですね。なので、けっこう理不尽なものもあったんですが、そう言われたら従うしかないと、あまり疑問を持つこともなかったんです。でもよく考えてみたら、頭の上から足の先まで事細かに決まっているのはおかしいよねと、今、声があがりつつあります。

校則はなぜあるのか?

原口:そもそも、校則ってなぜ作られているんでしょうか?

内田:校則の起源まではわかりませんが、これまでに特に校則が厳しくなった時代があります。80年代あたり、学校が本当に荒れていた時代です。当時は刑務所のように厳しい規則を作ることで、子どもたちを落ち着かせようとしていました。

原口:80年代はルールを守らない人が多く、取り締まる意味合いがあったと思いますが、最近はそこまでルールを守らない人が多いわけではないのに、校則を厳しくする必要はあるのでしょうか?

内田:一つには、学校が落ち着いてきても、子どもたちが制服を着崩したり自由な髪形で外を歩いていると、地域住民から「もっとちゃんとしろ」とクレームの電話が学校にかかってくることがあったんです。学校側はそういったクレーム対策として、より細かい身なりについての校則を作ってきたという面もあります。

でもそれ以上に学校側としては、生徒を守っている、学校の秩序を守っているという意識がすごく強いんです。例えば身なりに関し、「黒のヘアゴム」という指定をなくすと、最初は紺など控えめな色を選ぶと思いますが、それが赤や黄色の派手な色になり、ゴムがシュシュなどの髪飾りに変わっていく。一つ自由を許すと、子どもたちはより派手な持ちもので競争していき、80年代のような大きな荒れにつながるんじゃないかと、遠い先の荒れることを想像して根こそぎ抑えこんでいる状況です。

原口:わずかな隙間も許さないように校則が作られているんですね。

静岡県での校則に対する動きは?

原口:静岡県内の動きとしてはどうでしょうか?

内田:私は校則の問題をずっと追いかけているのですが、静岡県は先駆け的なところがあります。浜松市で2019年頃に、全国に先駆けてジェンダーレス制服を市全体の取り組みとして進めた経緯があります。ジェンダーレス制服というのは、男子でも女子でも、特にどちらか決まった制服ではなく自由に着ましょうというものです。そういった意味では、先を進んでいる自治体が静岡県内にあるのかなと思います。

原口:ジェンダーレス制服を使っている学生は多いんですか?

内田:浜松市の事案をきっかけに全国的にかなり広がりました。本当に自由化が進んでいるかというと、内実はもうちょっと時間が必要かと思いますが、それでもまずは決まりをなくしましょうということで全国的な広がりをみせています。

生徒が校則を変えていく

原口:最近だと、「生徒が主体となって校則を変えようとする動きもある」という記事も見るようになりました。実際に生徒によって変わったものはあるのでしょうか?

内田:全国各地で校則見直しの具体的な取り組みが報道されています。報道されないレベルを含めても、見直しが進んでいるなと思います。ただ、校則は変えるのに半年から1年くらいかかるんです。その多くが「靴下の色が1色増えました」とか「腕まくりをしてもよくなった」など。腕まくりするくらいは、好きにしたらの一言で本当は済むんです。それが、こういった小さい自由を獲得するために子どもたちが、ものすごく時間をかけて戦っています。

原口:生徒にとったら「勝ち取った」という意味合いもあると思いますが、1年かけてそれだけの進捗というと、努力に見合わないものもあるなと思ってしまいます。生徒が変えていく動きは、広がっていきそうですか?

内田:子どもたちがルールを変えていくのはとても大事な動きだと思います。それがもっと、のびのびできるようにやっていかないといけないと思います。全国でこの動きは広まってきているので、学校の先生だけでなく、地域の方や保護者の方にもこの動きがもっと広がるように、子どもを応援して欲しいなと思います。

原口:生徒と学校側の問題だけではなく、それを囲む地域住民みなさんの協力も「ブラック校則」を変えるのに必要だということを教えてもらいました。今回はありがとうございました。
今回お話をうかがったのは……内田良さん
名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教授。博士(教育学)。専門は教育社会学。学校のなかで子どもや教師が出遭うさまざまなリスクについて、調査研究ならびに啓発活動をおこなっている。著書に『#教師のバトン とはなんだったのか』(岩波書店、共編著)、『校則改革』(東洋館出版社、共編著)、『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)、『教師のブラック残業』(学陽書房、共編著)など。ヤフーオーサーアワード2015受賞。

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