箱根「山の神」 現役に別れ 39歳今井 優しい努力家、後進育成へ
東京箱根間往復大学駅伝で活躍して「山の神」と呼ばれた男子マラソンの今井正人(トヨタ自動車九州)が、39歳で現役生活に別れを告げた。優しい人柄と熱心な姿勢で周囲に慕われてきたランナーは、最後のレースを終え「山あり谷あり、谷の方が長かったが、そのたびに成長させてもらった。乗り越えた時の喜びもたくさん経験できた」と語った。
集大成に選んだのは、2月25日に福岡市で行われた日本選手権クロスカントリー。家族やファンから温かな声援を浴びながら、起伏のあるコースを一歩一歩、名残惜しそうに走った。両手を広げて44位でゴールし「こんなに幸せなことはない。晴れやかな気持ちで終われた」と涙を浮かべた。
福島県出身。原町高から本格的に競技を始め、順大時代に箱根駅伝の山上り5区で3年連続区間賞に輝いて一躍脚光を浴びる。だが、実業団入りして挑んだマラソンでは苦悩が多かった。2015年世界選手権の代表になったが、直前に髄膜炎にかかり欠場。昨秋のパリ五輪代表選考会は故障の影響もあって走りきれず「日本でも勝負できる位置にいないと痛感した」と、引退を決断した。
約24年間、愚直に向き合った陸上競技を「何段飛ばしもできるようなものじゃない」と言う。今後は所属先で後進の育成にあたる予定で「一緒に考え、悩み、悔しがれるような存在になりたい」。険しい道を上ってきたからこそ、その言葉に重みがあった。