
コメの価格を下げるため、農水省が備蓄米をめぐる動きを加速させる一方、大手企業と、まちの小さな米店の格差が広がっています。60年続く米店は、売りたくても売るコメがない、厳しい状況を嘆いています。
<小泉進次郎 農林水産大臣>
「あさって29日にも備蓄米の引き渡し、6月の1週目に店頭に並ぶめどが見えてきた」
6月早々に「2000円台の備蓄米」が店頭に並ぶと強調した小泉農林水産大臣。「随意契約」について、5月27午前9時の時点で19社から申し込みがあったと明らかにしました。
コメが安く買えるようになるかもしれない。静岡県内の消費者からも期待の声が聞かれました。
<買い物客>
「消費者としてはうれしい。あったら一回は買ってみたい」
「高すぎちゃって手が出なくて、今の値段から半額になればうれしい」
消費者が待ち望む「2000円のコメ」。しかし、すべてのスーパーで販売されるわけではありません。
<スーパー田子重 増田克己店長>
「いつ入りますか、という声はあるが、入荷計画はないので、入る計画はないと伝えている。コメを切らさないで、売り場に並べるという使命がありますので、コメが無くなるということは防いで行きたい」
ローカルのスーパーでは厳しいのが現状です。
まちの米店はさらなる苦境を強いられています。静岡県富士市で60年にわたって店を構える加藤米店です。ここ1か月、シャッターを閉めています。
<加藤米店 加藤勝さん>
「正直言って、売るものがない。こんなことは60年間やってきて初めて」
4月下旬、仕入れ先から必要な量のコメを確保できなくなりました。備蓄米を調達できる見通しも立っていません。
5月27日、店にはコメを求めて常連客がやってきました。
<加藤米店の常連客>
「コメ確保のために来た。底をつく。加藤さんのところで(コメが)あれば加藤さんのところで買う。なければ切羽詰まっているから(スーパーで)買う」
<加藤米店 加藤勝さん>
「50年来のお客様がいても、分けてあげられない」

コメ不足を背景にいま、まちの米店の廃業が目立っています。帝国データバンクによりますと、米店の休業や廃業は2年連続で増加。仕入れるコメの量が確保できず、業績悪化によって休業や廃業を余儀なくされる店が増えているとみられています。
今回の政策で備蓄米を契約できるのは年間1万トン以上のコメを扱う小売業者。備蓄米をめぐる動きが加速する一方で、まちの小さな米店では売りたくても売るコメがない苦しい状況が続いています。
<加藤米店 加藤勝さん>
「備蓄米は我々には入ってこない。今年の新米に期待しているが、入ってこなかったら廃業しようと思っている」
コメを客に届けようと身を削る関係者にも多くのコメが行き渡るよう、国の早急な対策が求められいてます。