判決理由で来司直美裁判官は、「医療行為だった」とした被告の主張をことごとく退けた。胸を執拗(しつよう)に触ったり、下半身を露出させたりしたのは「必要性がなく不自然」とした。背骨が曲がる病気「側彎(そくわん)症」の治療との主張に対しカルテに十分な記載がないと指摘し、別の複数の医師による意見を踏まえた上で「完全に性的な目的だった」との判断を示した。
患者や親から全幅の信頼を寄せられる医師の立場を逆手にとり、わいせつ行為を長期間にわたって常習的に繰り返したのは「極めて卑劣で悪質」と断じ、公判でも「誠実な反省の態度は見られなかった」と述べた。一方、被害者に計750万円の弁償金を支払ったことなどを量刑で考慮したとした。
判決によると、2017年12月27日から23年6月19日までの間、診療を装って10代女性4人の胸などを触ったほか、わいせつ行為を撮影して計10人の女性患者の児童ポルノ39点を製造したり、自宅で動画115点を所持したりした。
■被害者の母「償う思い持ち続けて」
小児科医の男(44)に懲役7年6月を言い渡した静岡地裁浜松支部判決を受け、被害者参加人として傍聴した、被害女性の40代の母親が取材に応じ、「求刑が懲役14年だったことを考えると納得できない」と語った。被告には「自分が起こした事件について自覚を持ち、償う思いを持ち続けてほしい」と語気を強めた。
10代の娘は事件が発覚してしばらくの間は食事をとれず、精神的に落ち込んだ状態が続いたという。現在は表面的には回復している様子だが、「思い出さないようにしていると感じる。心の底に、晴れない思いを抱えて続けているはず」と気遣った。
母親は「出所後、娘がどこかで(被告と)会ってしまうのが怖い」と表情を曇らせた。その上で「病院関係はもちろん、女性と関わるような仕事は二度としないでほしい」と求めた。
■中東遠総合医療センター 第三者委で対応検証へ
中東遠総合医療センター(掛川市菖蒲ケ池)は9日、小児科医の男(44)の有罪判決を受け、対応の検証を進めるため、第三者委員会を設置する方針を明らかにした。男については判決内容を精査して厳正に対処するとした。
宮地正彦院長は「大変遺憾に思う。被害を受けられた方々ならびにご家族の皆さまには心より深くおわび申し上げる」とコメントした。男は2023年に逮捕されて以降、休職になっている。同病院は事件を受け、他者の目が届く環境下で診察することや、診察時間を原則午後6時までとし、遅くなる場合は院長の許可が必要とするなどの再発防止策を示している。
久保田崇掛川市長と大場規之袋井市長は同日、被害者と家族、市民に謝罪するコメントを発表し、病院には適切な管理での診療体制の確保を求めるとした。