
同省は全国の県庁所在地と政令市の結果を公表している。年により変動があるが、静岡市は22年にも2位につけた。購入額は1年間の2人以上世帯の平均額。冷凍食品や外食は含まず、スーパーなどで販売される生や冷蔵商品が対象だ。
■「3分に1個」
売り場の様子は。4月中旬、静岡市葵区のしずてつストア田町店の精肉コーナーの一角を占める「ハンバーグ工房」には、看板商品の「和牛入り生ハンバーグ」をはじめ、小さいサイズの商品、ステーキとの食べ比べセットなど、さまざまな自社商品が並んでいた。
静鉄ストア精肉バイヤー桜井祐次さん(50)は「人気が高まりハンバーグには特に力を入れている」と説明する。同社は3年前から主力品の一つに位置付け、小型店を除く全店に同工房を設置、毎週金曜を「ハンバーグの日」として販売を強化している。
「和牛入り-」は「3分に1個売れている計算」(同社)で、派生品を含む同商品の売り上げは21年度の約1500万円から24年度は約1億円に急増した。桜井さんは「さらなる人気商品を生み出したい」と語る。
■1キロの名物商品
フードマーケットマムは同市駿河区の下川原店など一部店舗で、重さ約1キロの「自家製ハンバーグの種」を販売している。運営するタカラ・エムシーによると10年以上前、パート従業員の提案がきっかけで商品化したところ「意外にも売れた」。ひき肉の配合は店舗や日により異なるが、インパクトのある商品として定番化したという。
同店精肉チーフ松島一匡さん(42)は「1日当たり数個販売して大体売り切れる」と明かす。子育て世帯や2世帯同居の家庭が、小分けして使っているケースが多いとみられる。
同社広報課の白鳥那琉子さん(26)はインターネットでは巨大ハンバーグの料理投稿もあるとして「種が入るくらい大きなフライパンをお持ちならば、ぜひ丸ごと巨大なハンバーグ作りも楽しんでほしい」と呼びかけている。
■まちづくりの動き
家計調査で近年、上位を維持している浜松市では、市内の洋食店が中心となり「浜松ハンバーグ食文化推進会」を設立。昨年に第1回シンポジウムを開くなど、食文化を核にしたまちづくりに取り組んでいる。
同会の斎藤清治会長(48)=洋食屋みさくぼ=は「食を通じた世界への本県の魅力発信に向け、今後は静岡市側ともタッグを組んでいけたら」と目標を述べた。
■東西食文化の融合地
市民のハンバーグ愛に売り場が応える以前から、人気の“種”は県内にあった。県内の企業や生産者有志が協力する「静岡ハンバーグ王国プロジェクト」のリーダーで、日本ハンバーグ協会理事長も務めるバーグマン田形さん(51)=写真・藤枝市=は、スーパーの独自商品以外にも複数の理由を挙げる。
一般的に西日本は牛肉の、東日本は豚肉の食文化とされる。田形さんは「静岡県は食文化の融合地で、牛肉も豚肉も分け隔てなく愛する県民性がある」とみている。また「炭焼きレストランさわやか」の人気や、共働きの増加による簡便な主菜の需要高まりなども要因として指摘する。
湖西市のボートレース浜名湖で5月5、6の両日午前10時~午後4時、「ハンバーグフェス」が開かれる。県内の人気店のキッチンカーが集まり、田形さんもトークショーでハンバーグの魅力を語る。