
(山本)総務省が2月6日に発表した2023年家計調査で、浜松市はギョーザの世帯当たり購入額が4041円で前年比606円増と、全国の県庁所在地・政令市別で3年ぶりに1位となりました。2位は宮崎市、3位は宇都宮市。浜松市はウナギの蒲焼の購入額も3年ぶりの1位でした。
(山田)いいですね、家計調査。なんか社会の授業みたいです。
(山本)毎年この時期の風物詩のように、ギョーザの1位がどこかということに注目が集まっています。6日にこの家計調査の結果の速報が公表されて、1位を奪還したことがニュースになりました。
(山田)ずっと宇都宮と一騎打ちだったのに、2021年くらいから「宮崎のダークホースが来た!」みたいな感じになり、そこから連覇してきましたね。
(山本)何年か前までさかのぼると、2020年に宮崎市が3位に入って、2021年と2022年が連続で1位ということで、その間は上位だったんですね。宇都宮と浜松の争いに宮崎も加わって熾烈な1位争いをしていました。
国が行う重要な統計の一つ
(山田)順位付けのベースになっているのが家計調査という話ですけども。(山本)大きな話題にはなっていますが、そもそもこの「家計調査」って何だろうということで、改めてちょっと調べてみました。
(山田)教えてください。
(山本)これはかなりきちんとした国の調査です。総務省の統計局というところが都道府県を通じて全国的に実施している調査で、基幹統計調査といって国が行う最も重要な統計調査の一つだということです。1946年から、名称は変わっているものの同じような趣旨で毎年続けています。
調査対象は、全国全ての市町村ではなく、県庁所在地、政令指定都市プラスその他市町村ということで、全国168市町村。県内では、静岡と浜松はこういうふうに数字が出てくるわけです。
(山田)なるほど。
(山本)今、県内では他に菊川市も調査対象になっているということです。県内のどこの市や町が対象になるかは、総務省が指定しています。菊川市としての公表はないんですが、現在は菊川市のどこかの世帯が調査対象になっているんですね。
実はこの調査は常時、行っているんですね。この時期に発表があるから、昨年のどこかの段階で行ったというものではなくて、ずっと調査に応じていただいているということです。しかも誰が調査を受けているかがわからないように、恣意的な操作がないように留意して行われて、かなりきちんとした調査として信頼できる調査だと思ってます。
(山田)「あなたのおうちが調査対象ですよ」っていう通知を送るわけですか。
(山本)県知事が任命する統計調査員の方が事前に地区を回って説明をしています。無作為に抽出した世帯を調査対象にしていて、どこが調査を受けているかは当然公表されていません。その代わり、選ばれると、納税と同じように国民の義務ということで応じなくてはいけないという仕組みです。
(山田)「義務」になるんですね。
半年間、収入と支出をかなり細かく記入
(山本)今、家計簿の見本をこちらに持ってきています。(山田)なんか分厚い!
(山本)家計簿を配られて、全て記載してくださいということで、今日何を買ったかを記入しなくてはいけません。例えば本を買ったなら、単行本なのか、雑誌なのか。麺を買ったなら中華麺なのか焼きそばなのか、カップ麺なのか、うどんは生麺か乾麺かなどを分けて書いてもらい、品目別の統計を作成しています。
(山田)これは、恥ずかしくなりそう。
(山本)かなりプライバシーに関わってくる内容ですよね。全て秘密が守られていて、書いたものはいったん静岡県が集めてそれを精査し、総務省統計局で集計し、最終的にこの数字が出てくることになります。かなり手間と労力と、それから協力を得られてやってる調査だなと思いました。
最近は、家計簿をつけなくてもオンライン上で打ち込んで、報告することもできますが、その作業を一つの世帯で半年間やってもらうことになります。半年間経ったら、同じ地区の別の世帯の方が受け持ってまたやるということで、静岡市と浜松市では必ずどこかのご家庭が行って、成り立っているという調査です。
(山田)日頃からそれぐらい僕もちゃんとやっておけば、確定申告も楽になりそうですね。
(山本)家計簿を普段からつけている方もいるとは思いますが、「家計調査をやってみて、勉強になった」というような声もあると聞いています。
(山田)選ばれたら、そこから家計簿をつけるようになったと。
(山本)収入ならばお給料がいくら得られたかとか、支出だと、光熱費は電気代やガス代をいくら払ったとか、全てきちんと整理して渡すという形です。「静岡県は全国的にも、真面目に協力してくれる率が非常に高い」と県の担当者が話していました。
「米」は浜松が1位、「マグロ」は静岡が1位

(山田)でも、そんなに細かいんですね。
(山本)非常に細かく、数百品目に分かれて分類されるわけですね。不十分な場合はもう1回調査員の方が聞き取りに行き、きちんと分けているということです。
ニュースを見てちょっと不思議に思われた方もいるかもしれませんが、ギョーザの場合、レストランで食べたり、冷凍の餃子を買ってきて家庭で解凍して食べたりしたものは、実はこの統計には含まれてないんです。この項目はあくまで「生」の餃子か、あるいは調理済みでもお惣菜として買ってくるものです。冷凍ギョーザは冷凍食品という別の項目にカウントされ、外食は外食としてカウントされます。ということで、本当にギョーザに親しんでいると言えるんじゃないかなと思います。
(山田)なるほど。
(山本)他にも、年間購入額で浜松市、静岡市が上位だった品目があります。なぜか、お米で浜松市が1位でした。浜松市は米に平均2万6724円使っているそうです。全国平均は2万397円ということで、6000円ほど多いです。それから、マグロについては、静岡市が全国1位で、1万254円使っているということです。全国平均は5158円でした。ウナギの蒲焼も浜松が1位で、6366円。全国平均は2471円です。
(山田)へえー。面白い家計調査。
(山本)これがさまざまな品目で分かるんですが、結構、地域性が出ています。他には、緑茶の項目は、静岡が1位で1万124円、浜松市は3位で4865円。全国平均が3214円ということで、大きく上回っています。これは贈答用も含むということで、やはり茶どころ静岡ならではの数字じゃないかなと思います。
一方でお茶について言うと、緑茶の全国平均3214円という数字はここ3年連続で前年を下回っているので、お茶の県としては気がかりなところです。
(山田)家計調査をこうやって見ていくと地域色も出てくるし、改めて自分がどうやってお金を使うかもわかりますね。
(山本)これは選ばれるとかなり勉強にもなるし、結果についても非常に面白いんじゃないかなと思います。ただ、いつ選ばれるかわかりませんし、立候補してなるものでもないということですね。
(山田)記者として今回この家計調査を調べてみて、どういうことを思いましたか。
(山本)元々これは基礎的な統計で、重要な調査でもあります。先程(※2月15日午前)、2023年のGDP(国内総生産)が速報で発表になったんですが、591兆円という数字も、実はこの家計調査がその算出の一つの根拠になっています。政府が景気の状況について示す月例経済報告にも使われています。そうした重要な指標に使うための調査ですが、今では地域のPRにもかなり役立てられています。
(山田)まさにそうですね。ギョーザもそうですもんね。
(山本)宮崎市でギョーザの購入額が多いことは以前は知らなかったんですが、実はギョーザで町おこしのようなこともしているようです。「ギョーザが美味しいまち」ということで訪れる人ももしかしたらいるかもしれませんね。
(山田)これからいろいろ見ていくと、面白いかもしれませんね。今日の勉強はこれでおしまい!