
青空が広がり汗ばむ陽気の中、車で清水港へ向かった。隣接する清水魚市場河岸の市の駐車場は満車で、JR清水駅東口駐車場に回った。チケットを購入して船に乗り込むと、河岸の市のにぎわいとは裏腹に乗客はまばら。平日の利用者確保の難しさを実感した。
出航してすぐ、左舷側には雪化粧した富士山が顔を出し、船上ならではの眺望を満喫できた。ただ、デッキにある売店は平日休業。90分弱の船旅はやや手持ち無沙汰だった。
土肥港で下船し、海沿いの歩道を歩くこと約15分。古民家を改装した宿に到着し、併設のカフェのジェラートやコーヒーで一息ついた。何度も訪れているという県観光振興課の担当者は「第1便で来て、パンを食べるのがお勧め。普段とは違う朝を楽しめる」と教えてくれた。
次に向かったのは土肥金山。一行は砂金取りを体験した。400年以上前の伊豆最古の手堀り坑道とされる「龕付(がんつき)天正金鉱」にも立ち寄った。山の神を祭った最深部の「龕」には厳かな雰囲気が漂い、新たなパワースポットとして発信する価値を感じた。
「船旅は非日常」。参加者の1人がそう答えた。確かに船が汽笛を鳴らして出航する瞬間は高揚感に包まれる。思わず岸壁の人たちに手を振ってしまった。
土肥港側は交通手段の乏しさが課題になっているが、徒歩圏内にも観光資源がそろい、車がなくても楽しめた。一方、船内施設や乗船中の娯楽の充実、清水港側の駐車場確保など、改善が必要な点も多い。
駿河湾フェリーは運航再開と同時にターミナルがJR清水駅直結のエリアに移転し、利便性向上による利用者増への期待もある。赤字が続き、廃止すべきとの議論がたびたび起こる中、経営改善戦略で掲げる「27年度の収支均衡」の達成に向け、実証実験を踏まえた抜本的な対策が急務だ。