テーマ : 台風15号(2022.9.23-24)

記者コラム「清流」 温泉の力 信じて再起へ 

 「取り壊す時は身を削られる思いだった」。昨秋の台風15号の土石流で全壊の被害を受けた静岡市葵区の油山温泉元湯館の海野博揮社長(41)は、旅館が解体された時の胸中を語った。
 同温泉は戦国時代の1556年、今川義元の母・寿桂尼が湯治で滞在。義元も見舞いに足を運んだと史料に記され、長い歴史を誇る。当時、梅ケ島温泉(同区)は武田氏の統治下にあり、今川氏の負傷兵は油山温泉で湯治したと言われる。
 海野社長は1964年創業の旅館を継ぐ3代目。今川氏を陰で支えた寿桂尼を癒やした温泉として「寿桂湯」と名付けた浴場もあった。2年後の再建を目指し、断腸の思いで解体した。
 「心が折れるたび支援者に励まされた。再建を諦めちゃいけない」と海野社長。傷ついた人々を癒やす力が、温泉にはきっとある。
(社会部・瀬畠義孝)

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