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開発に“お墨付き” 雨水流入を市も軽視か【残土の闇 警告・伊豆山⑱/第3章 放置された10年⑤完】

 水や湯が豊富で、急峻(きゅうしゅん)な地形の山肌を湯が勢いよく流れることから「走り湯」の言い伝えも残る熱海市伊豆山。逢初(あいぞめ)川の源頭部は、地形や歴史を重んじているとは言いがたい開発が行われ、さらに水が集まりやすい地形に改変されていった。地域を守るべき行政も水の流れを甘くみていたのか、疑問の残る手続きを行っている。

崩落した盛り土の北側に隣接する宅地造成地。側溝のふたの上には落ち葉が積もり、破損した箇所もある=4月下旬、熱海市伊豆山
崩落した盛り土の北側に隣接する宅地造成地。側溝のふたの上には落ち葉が積もり、破損した箇所もある=4月下旬、熱海市伊豆山
第3章 放置された10年
第3章 放置された10年
残土の闇
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崩落した盛り土の北側に隣接する宅地造成地。側溝のふたの上には落ち葉が積もり、破損した箇所もある=4月下旬、熱海市伊豆山
第3章 放置された10年
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 「宅地造成地に降った雨水が道路や側溝を通じて盛り土の流域へと流れ込んだ可能性がある」。土石流発生から9カ月後に市内で開かれた原因究明に関する有志の勉強会。講師を務めた土木設計エンジニアの清水浩氏(54)は強調した。
 問題視した宅地は崩落した盛り土の北側隣接地にある。約5万平方メートルで、盛り土の旧所有者である神奈川県小田原市の不動産管理会社の関係会社が開発した。熱海市は2007年7月、全3工区のうち盛り土に近い2工区の工事終了を受け、検査を行い設計通り施工されていることを確認した。開発行為にお墨付きを与えたが、未完成の1工区(約2万平方メートル)分の雨水をどう処理するのか、業者に適切な対応を取らせた形跡がない。
 未完成の宅地の雨水は完成した宅地に向かい、合流して盛り土に流入した。市から完了検査を受けた2工区も業者の資金繰りが悪化して最終的に分譲されず雑木林に変わり果てた。側溝などの排水施設は厚く土砂がたまり、コンクリートのふたも破損した箇所が至る所にある。維持管理が適切に行われておらず、当初の設計通りの流量が確保されていないのは明らかだった。
 「造成地から盛り土側に雨水が集中的に流れ込んだ痕跡は確認されていないが、気象条件次第で流入する可能性は否定できない」。市まちづくり課の渋谷義男課長は微妙な表現で不備を事実上認める。
 造成地からは、地下水も盛り土側に流れ込んだ可能性が県の検証で判明している。本来、盛り土と造成地の間には分水嶺(れい)がある。流域が異なるはずだが、一帯の開発で造成地側の谷が埋められ、尾根が切り取られたことで、流れが変わったとみられる。
 こうした状況は見過ごされ続け、所有者変更後の10年間も是正する機会を失った。
 2021年7月2日-。逢初川の下流で異変が起きていた。コンクリートのり面や側溝から雨水が噴き出しているのを通勤途中だった志村信彦さん(41)=同市伊豆山=が目撃した。夜には自宅近くの逢初川からゴン、ゴンゴンという奇妙な音。違和感を抱きながらも眠りについた。土石流で自宅が全壊する事態が半日後に迫っていると知らずに。
 >危機感と楽観のはざまで 見送られた「避難指示」【残土の闇 警告・伊豆山⑲/第4章 運命の7・3①】

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