【野外フェス「朝霧JAM」を支える「朝霧JAMS’」】フェス誕生から四半世紀。「村祭りの舞台」を一緒に作る

静岡新聞論説委員がお届けする、アートやカルチャーに関するコラム。今回は2001年から毎秋開催が定着している富士宮市の野外音楽フェスティバル「朝霧JAM」の運営を支えるボランティアグループ「朝霧JAMS’(ジャムズ)」を題材に。現在、今年のメンバーを募集している。(文=論説委員・橋爪充)

今年は10月18、19の両日に開催が決まっている朝霧JAM。2001年に始まった同フェスは、台風やコロナ禍での中止はあったものの第1回開催から25年目の秋を迎える。毎年約1万人が集まり、国内外のアーティストの演奏とキャンプを楽しむ。

朝霧JAMS’提供

朝霧JAMS’、通称「ジャムズ」はこのフェスが始まった年に発足した。「笑顔と元気のおもてなし」を合い言葉に、会場内外のさまざまな場所で運営をサポートする。富士宮市をはじめとした地元のメンバー「コアスタッフ」が約30人、当日全国から集まる「当日ボランティア」が200人弱。全国各地で開かれる野外フェスには会場ボランティアがつきものだが、その多くがジャムズをお手本にしているのではないか。

朝霧JAMS’提供

筆者は毎年このフェスを取材しているが、ボランティアは文字通り「日本各地」からやってくる。年代の広さも特徴で、下は10代の高校生、上は還暦をとうに過ぎた方までいる。ここ数年は富士宮市内の高校とも連携。ボランティアという行為が初めての高校生もいる。

2011年に彼らの活動に密着して記事を書いた際に、企画制作する「スマッシュ」(東京都港区)の関係者がこんなことを言っていた。「村祭りの舞台を一緒につくっているようなもの」。朝霧JAMにおいては、ボランティアは単なる「人的リソース」ではない。彼らもまたフェスの「参加者」なのだ。

朝霧JAMS’提供

当時のジャムズ代表はこう話してくれた。「観客を楽しませることはもちろん、自分たちが楽しむことも大切」。この伝統はずっと引き継がれている。フェスが始まって四半世紀が過ぎようとしているというのに。

朝霧JAMS’提供

そろいのTシャツを着たジャムズの皆さんは、とにかく楽しそうだ。ごみステーションにいる人、ステージ間を移動する客を誘導する人、子ども向けスペースで遊び相手になる人。「笑顔と元気のおもてなし」という極めてシンプルなスローガンを、一人一人がきちんと理解しているのだろう。それは、フェスの会場全体に漂う多幸感の一因になっている。

ジャムズは朝霧JAMの大きな財産であり、紛れもなくこのフェスの魅力の一部である。

(は)

<告知>
10月18、19の両日に富士宮市の朝霧アリーナなどで開催する「朝霧JAM」のボランティア団体「朝霧JAMS’」は、会場で活動するメンバーを募集している。

来場者の入場受付、場内の誘導、ごみ分別の案内、地元のPRエリアの運営、写真・動画撮影、子ども向けエリア「キッズランド」の運営(専門資格が必要)などを行う。活動時間は各日8時間程度。

交通費は自己負担だが、駐車場は用意される(乗り合い推奨)。スタッフ専用サイトでテント泊が可能。常設テントもある。活動時間に応じて会場内で使える食券を支給する。

10月4日に現地研修会を実施する。申し込みはジャムズのウェブサイトから。締め切りは9月19日。


朝霧JAMS’提供

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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