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【朝霧JAMの歴史と意義】今年で20回目! 地方創生への挑戦を続ける〝老舗〟音楽フェスの中身は!?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「朝霧JAMの歴史と意義」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年10月25日放送)
 
 (山田)今日は音楽フェスティバル「朝霧JAM」の話題です。今回で20回目なんですね。橋爪さんも、行ってきたということですか。

(橋爪)10月21、22日に、富士宮市で行われました。朝霧JAMは、標高800mの位置にある朝霧アリーナとその周辺にあるキャンプ場などを使って、2日間、ほぼ全員がキャンプインすることを前提にして開かれる野外音楽フェスティバル。毎年秋に開かれています。今年は全国から延べ1万6000人、1日あたり8000人ぐらいが、ほぼみんなキャンプをしながら楽しんだということです。

最初にやったのは2001年なんですが、2019年は台風で、2020年、2021年はコロナ禍で開催中止となっていました。3年のブランクを経て、2022年は4年ぶりに開かれ、今年は2週間時期をずらして開催しました。

このフェスは地元住民でつくる実行委員会が運営をしています。ずっと委員長をやっている秋鹿博さんを会場で取材したら、「ついに成人を迎えた」と感慨深げに話してくれました。

(山田)20回目ということですもんね。

(橋爪)国内屈指って言ってもいいぐらい、老舗のフェスティバルなんです。その歴史と開催の意義についてちょっと考えてみたいなと思います。

開催20回目も、幅広いジャンルの音楽で魅了

(橋爪)これまで2009年以降は、スポーツの日を含む3連休のうちの2日間に開催していましたが、今年は、今までよりも開催時期をちょっと後ろにずらしたんですね。悪天候のリスクを低くするためだと思うんですが。

私は2010年から毎年参加していますが、会期のどこかで必ず雨が降る印象がありました。ところが今年は一切雨が降らず、日差しが降り注いで時々曇る、最高の天気でした。一方で、2週間ずれると夜が冷えるなっていう印象がありました。

(山田)難しいですね、この時期のフェスは。

(橋爪)でも、冷える分にはいいんです。2日目の朝、午前6時半に起きて散歩していたら、国道沿いに寒暖計があり、見たら1℃でした。それ相応の準備をして行けば良いと思います。

朝霧JAMは、例年すごく幅広いジャンルの音楽家が勢ぞろいするんですが、今年は特にジャズを起点にした楽団が目立っていて、演奏内容も良かったです。

例に挙げるとしたら、印象に残ったのが、アメリカ人のドラマーのカッサ・オーバーオールさん。4人編成のバンドなんですが、ドラマーの他に、コンゴを叩く人、キーボード担当、サックス担当がいて。曲ごとに担当楽器を入れ替えて演奏したり、ドラマーだけれどラップをやったりとかして、リズム天国という感じで強烈でしたね。

(山田)面白そうです。

(橋爪)日本人も多数出たんですが、今年は特に初日のオープニングを飾った若手バンドの「CHO CO  PA CO CHO CO QUIN  QUIN」というバンドが良かったです。エキゾチックな音を鳴らす、音楽性の幅が広いバンドで、感動しました。

もう1つ事件だったのが、最後に韓国人DJのNightTempoさんが出たんですけれども、この方は日本の昭和歌謡とか1970年代、1980年代のアイドルの曲をミックスして、4つ打ちのビートに乗せて聞かせるというDJスタイルだったんです。

(山田)へえ、皆結構知ってるような曲を。

(橋爪)すごくいい曲を次から次へと30曲ぐらい流したと思うんです。

(山田)みんな踊りやすいんじゃないですか。

(橋爪)踊ってましたね。ただ曲を流すだけじゃなくて、そこに自分なりの音を加えたりとか、繋ぎに工夫があったりとか、DJとしてのクリエイティビティが加わってるなって印象もあって、大変素晴らしかった。

そして、朝霧JAMというフェスティバルの20回目の歴史の最後を飾るのが、何と、松田聖子さんの曲だったんですよ。朝霧JAMを何年も見てきてますけども、前代未聞ですよ。新しい扉が開かれた感じがしましたね。「夏の扉」じゃないですよ(笑)。

(山田)わかってますよ。

(橋爪)1日目も、終演後に(10月8日に亡くなった)谷村新司さんの「昴」をかけていました。先達の音楽があって今の音楽があるという、単純ではあるけれど大事なことに気づかせてもらったなという印象があります。

(山田)野外フェスとかDJとか聞くと、悪い言い方をすると、ちょっとチャラチャラしてるとか、最近の言葉だと「パリピ感」みたいなことを連想する人もいると思いますが。今の話を聞いてると、先輩たちのリスペクトがあって今の音楽があると。

(橋爪)リスペクトはめちゃくちゃありますね。

地元の人の関わりが強いフェスティバル


(橋爪)朝霧JAMには、キャンプインフェスの文化を根づかせたという存在意義があるんですよね。2001年に第1回が始まりましたが、もしかしたら「フジロック」という名前で、あそこでやってたかも知れないんです。

フジロックフェスティバルは結局、新潟県の苗場で行うようになったんですが、その前に主催者が開催場所を探していて、朝霧高原はその候補地だったんですよね。地元の人たちと主催者の方々やスタッフが、長年関係を培って酒を酌み交わしたりとかいろんな話をしたりして、そういった中でフジロックとは別に生まれたのがこの朝霧JAMということになっています。本当に、地元の人たちが関わっている度合いが非常に高いフェスティバルなんですね。

(山田)若者たちが来てバーンとやってるわけじゃなくて、地元と一緒に作ってきたんですね。

(橋爪)時間もかけて、本当にゆっくり作ってきました。実際に始まったのは2001年からですが、1998年から数年かけてやっと作っていって、最初は2000人ぐらいしかお客さんが来なかったらしいんです。しかし、その後はどんどん増えていき、今のように1万人規模で開催できるようになったという感じです。

今も地元の人たちの力はすごく大きくて、一緒に運営しているボランティアチームの朝霧ジャムズという団体があるんですね。富士宮市内の事業者や会社員の方を中心にしたコアメンバーが24人いて、当日のボランティアが全国から150人ぐらい来るんです。

受付や人の流れの整理、ゴミの分別の指示などを行い、非常に現場で活躍していました。音楽フェスにボランティアが参加するというのは大事なんですが、ここまでディープに関わっているところはあんまりないのかもしれないなと思います。

行政も、ブースを出して富士宮市の魅力をアピールしていて、富士宮市にこういういいとこあるよ、こういう街ですよということをいろんな遊びを通じて紹介しています。今回は、輪投げを通じて、富士山本宮浅間大社や白糸の滝などをアピールしていました。できれば移住者を増やしたいという思いがあるんですよね。

音楽フェスっていうものが地方創生にいかに貢献できるかということに、チャレンジしているようなフェスティバルだなと思っています。

(山田)ちゃんと地元に根付いて、時間もかけてやってきたっていうことですね。

(橋爪)そうですね。周りは酪農家さんが多いので、例えば夜遅くまでやりすぎると牛のストレスになったりすることもあり、音出しは午後10時までにするなど配慮しています。

(山田)これ、全国各地にこういう大きな広場を有効活用したいという街はたくさんあるんじゃないですかね。

(橋爪)1つの方法論として、シビックプライドを上げることと、移住定住に結びつけることの両輪で野外フェスティバルを活用するということは、いろんなところで考えていると思います。

(山田)そのモデルにもなりそうですね。今日の勉強はこれでおしまい!

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