「ヘブンがやってきた」というムード
記念すべき第1回の朝霧JAMは、2001年10月13、14の両日に富士宮市の朝霧アリーナで行われた。開催発表は約1カ月前の2001年9月中旬。大きなステージは一つだけで、現在は「キッズランド」が設けられている場所にDJブースが設けられたという。石飛:朝霧高原は1997年に初開催したフジロックの次の開催地候補に入っていたんです。1999年の開催の可能性もあったけれど、結局苗場開催が定着した。そんな中で、富士宮市の関係者が初開催のフジロックを見に来て、ぜひ地元でもやりたいということになりました。
メインステージの出演者はザ・ディスコ・ビスケッツ、オゾマトリ、ギャラクティック、エイドリアン・シャーウッド、東京スカパラダイスオーケストラ、KEMURIなど延べ15組だった。
石飛:その年のお客さんは2000人ぐらいだったかな。今とは会場のレイアウトがちょっと違っていました。アリーナの北側に駐車場があって、林を抜けて今のキャンプサイトに入る形。ステージはさらにその先だったから、結果的にステージのエリアにテントを張ったのは、10組ぐらいでしたね。
滝沢:ステージが一つだったから、フジロックの(フィールド・オブ・)ヘブンみたいな感じでした。ステージの装飾や意匠も相まって、「ヘブンが やってきた」みたいなムードがあったと思います。
今はびっしりとテントが立ち並ぶ朝霧アリーナには、数えられるほどしかテントが立っていなかったという。
滝沢:贅沢な空間でしたね。(ステージ前のフロアスペースでの)巨大キャンプファイアは当時から実施していました。煙の管理と安全管理。キャンプファイアを囲みながら音楽を聴くというのはアウトドアの原初風景じゃないですか。エンタメ度も高まるし。ただ、お客さんは酔っ払っているのもあって、みんな焚き火の周りで寝ようとするんですよ。そういう人たちに「生きてますかー」って声かけて回って(笑)。
初回ならではのアクシデントもあった。
石飛:初年度は オールナイトの予定だったんです。でも明け方4時ぐらい、DJの演奏中に周囲の牧場からクレームが来た。競走馬が光に対して神経質になっているって。それで音を止めて、昼前に再開しました。今は深夜は自然の静けさを楽しんでくださいと呼びかけています。逆にそれがお客さんの支持を得ているようです。

アウトドアを「イケてるユースカルチャー」に
滝沢さんは当時、山と溪谷社(東京)の雑誌「アウトドア」の編集部員だった。1999年のフジロックで初めて野外音楽フェスティバルに触れたという。滝沢:すごいマーケットがあるぞ、と思いましたね。当時は「アウトドア」というジャンルの中に「フェス」っていうものはまだなかったんです。アウトドア雑誌で初めてフェスというカルチャーを紹介しました。
2000年からフジロックで「キャンプよろず相談所」の運営を任され、その流れで2001年の朝霧JAMにも参加した。
滝沢:朝霧は初めから「キャンプインフェス」を強く打ち出していて、秋開催だからフジロックよりもしかしたら寒くなるかもしれないよねと。お客さんのサポートもより強化しましょうということで、(アウトドアブランドの)コールマンさんと一緒にやっていました。
朝霧JAMでは特に、来場客とのコミュニケーションを重視した。
滝沢:ドラム缶の半割みたいなたき火台で、仔羊を炭火で丸焼きして。それをナイフでそいでお客さんに食べてもらうんです。ちょっとワイルドアウトドアな感じで。たくさん集まってくれました。
雑誌やアウトドアブランドがフジロックや朝霧JAMに期待をかける背景には、マーケットの状況があった。
滝沢:業界は、オートキャンプブームを経て、1990年代後半はちょっと斜陽になっていました。アウトドア派と言われるとちょっと恥ずかしくなるというか、ファミリーレジャーみたいな捉え方をされていたんです。それが、フジロックや朝霧JAMの登場で「イケてるユースカルチャー」になった。
購買力の高い若者世代が主役になることで、業界も活気づいたという。
滝沢:朝霧JAMは、フジロックの余韻、同窓会みたいに楽しむお客さんが多かった。そうすると、もう一歩ステップアップするんですね。フジロックよりも寒いからあったかい寝袋がないとダメだし、テントに敷くマットもほしいねといったように。雨具だって、おしゃれのデザインがほしいわけです。当時はまだアウトドアショップがなくて、登山用具店、釣り用具店でみんなそろえていました。とはいえ、 店員の人たちは「フェス」って言われてもピンと来ていなかったと思います。
第1回から24年が経過した。朝霧JAMが長続きしている理由について、こう分析する。
滝沢:単なるレジャーとして消費されていない。背後にあるのがロックであり、ファッションであり、アートであり。カルチャーがしっかりあることが大きいですね。自然との共生や環境保全、環境保護というテーマも大事にしているのも支持を得ているポイントでしょう。
数ある野外フェスの中でもフジロックと朝霧JAMは特別だという。
滝沢:アウトドアとロックはどちらもカウンターカルチャーだから、義兄弟のようなもの。フェスは、ラブ&ピースをしっかりステージ上から届ける必要がある。そういう意味で、フジロックや朝霧はオンリーワンの存在だと思います。
〈告知〉
▼タイトル
~It’s a beautiful day~ASAGIRI JAM ’25
▼出演者一覧
10月18日(土)
HIATUS KAIYOTE
ANGIE McMAHON
ANTHONY NAPLES
D.A.N.
FULLHOUSE
グソクムズ
んoon
JONAH YANO
竹原ピストル
YOGEE NEW WAVES
(CARNIVAL STAR出演)
CUMBIA KID
DJ GONCHAN
DJ HANA-G (Fujirockers)
Dr. IHARA
NAOKI IENAGA (Dubstore Records)
POKASKA
RIHO
SOLITARY CIRCUS
SUNSUKE (Snokey Records)
10月19日(日)
GLASS BEAMS
ANNIE & THE CALDWELLS
BIALYSTOCKS
DJ SPINNA
忌野清志郎 ROCK'N'ROLL DREAMERS
ケロポンズ
Nariaki Obukuro(DJ)
鬼の右腕
PEARL & THE OYSTERS
柴田聡子 (BAND SET)
田島貴男(Original Love)
YOUR SONG IS GOOD
ZAZEN BOYS
(CARNIVAL STAR出演)
CARNIVAL STAR ALL STARS
DJ HADI
DJ MAHO (Viva Mexico Cabrones!)
DJ TXAKO
EKD y LOS CHANGARAS
ELL (Mobstyle)
桂九ノ一
MARTIN KINOO (Chelsea Movement)

▼チケット情報
2日通し券:2万5000円
1日券:1万5000円
18歳以下:2日 8000円/1日 5000円
※12歳以下無料(保護者同伴)
キャンプ利用:2日通し券のみ可
駐車券
・場内 1万5000円(完売)
・ふもとっぱら 1万5000円
・場外2日 5000円
・場外1日 3000円
詳細はオフィシャルサイト(https://asagirijam.jp/ticket/)参照
▼会場
朝霧アリーナ・ふもとっぱら(富士宮市)
電車利用:最寄駅 新富士駅・富士駅 → 会場直行バス(要予約)
車利用:
・東名「富士IC」/新東名「新富士IC」経由 → 国道139号で会場
・駐車券必須(場内/ふもとっぱら/場外、各所)
・ふもとっぱら・場外駐車場 ? 会場は 無料シャトルバス(約10分)
詳細はオフィシャルサイト(https://asagirijam.jp/access/)参照