【野外フェス「朝霧JAM」ブッキング担当の平田さん、三田さんインタビュー(下)】柴田聡子さん、ザゼン・ボーイズ、田島貴男さんが朝霧初登場

静岡新聞論説委員による、アートやカルチャーに関するコラム。10月18、19両日の開催が迫った野外音楽フェスティバル「朝霧JAM」のブッキングを担当したスマッシュ(東京都港区)の平田天志さん、三田創さんとの語らいの第2回をお届けする。今年出演アーティストの傾向に加え、2人のおすすめアクトも聞いた。(文、インタビュー写真=論説委員・橋爪充、アーティスト写真=スマッシュ提供)

スマッシュの平田天志さん(左)、三田創さん

柴田聡子さんと岡田拓郎さんが朝霧に並び立つ

-さて、続いては日本のアーティストについての話です。今回の朝霧では「この人、意外にも朝霧は初登場だったんだ」という例が複数見受けられます。具体的に言えば柴田聡子さん、ザゼン・ボーイズ、田島貴男さん。朝霧と相性はいいだろうに、なぜかこれまで出ていなかった。そんな方々です。まず、柴田聡子さんですが。

平田:最後に決まって、最後に発表しました。朝霧だけでなくフジロックも出演いただいたことがないんですよね。うち(スマッシュ)で好きな人も多いので、1 回当たってみようよっていう話になって当たったんですよ。開催期間が近かったんで厳しいかなと思ったんですが、先方も「ありがとうございます」と。

-すんなりOKだったのでしょうか。

平田:やっぱりメンバーのスケジュールが合わなくて。代役を見つけてくださって、何とかお願いできました。

-柴田さんの「Your Favorite Things」(2024年)はすごく好きなアルバムなんですが、ライブという意味ではこれまで引き語りでしか聴いたことがありません。もちろん、弾き語りも素晴らしいのですが、今回はバンドセットが初めて見られるので、とても楽しみです。

平田:こちらとしてもバンドセットでというお願いでした。それに 最大限、応えてくださった。

三田:ステージも(大ステージの)レインボーですからね。

-「Your Favorite Things」のプロデュースも務めた岡田拓郎さんと柴田さんが、ついに並んでステージに立つ。静岡県内では初めてかもしれません。

三田:拓郎さんはほかのバンドで何度か朝霧に出ていますね。 never young beachのサポートメンバーとして出演したこともありました。

2024年の「朝霧JAM」の会場風景


-柴田さんの音楽についてはどうお感じですか。

三田:「Your Favorite Things」ですごく雰囲気が変わりましたね。(デビュー直後だった)10年ぐらい前は、阿佐ケ谷あたりで演奏していそうな、文学的な雰囲気がある人だというイメージだったんです。それからちょっと離れていたんですが、「Your Favorite Things」を聴いて、こういう方向になったんだと驚きました。岡田さんがプロデューサーになっているから音を空間として聴かせる音楽になったのかな、と思いました。
 

「バキバキ」のザゼン・ボーイズ。「贅沢感」の田島貴男さん

-続いてザゼン・ボーイズです。どういうバンドか、説明するとしたらいかがでしょうか。 

三田:僕ら大好きなんですよ。ザゼン・ボーイズ。ベースがMIYAさんに変わりまして、昨年10月の武道館ライブもソールドアウトでした。3 時間ぐらい演奏していました。

平田:MCを含めてプログレですよ。(前身バンド)ナンバーガールの影響を受けたバンドがたくさん出てきて、レジェンドと化している。

-ザゼン・ボーイズよりナンバーガールの方が楽曲としてはキャッチーですよね。メロディーに起伏があるし。シンガロング的な部分もあるし。

平田:ザゼン・ボーイズはいい意味で分かりづらいですからね。でも引っかかりがあるんです。

三田:エモーショナルな部分で聴かせるのがナンバーガールなら、音にフックを付け続けるのがザゼン・ボーイズという気がします。

平田:グラス・ビームスとかハイエタスは多分、朝霧で見てぴったりくると思うんです。ただ、ザゼン・ボーイズは音がバキバキ。それをあえてレインボー(ステージ)でやる。このミスマッチが面白いんじゃないかな。

-音に緩さがないですよね。あえて違和感を投入するような感じですか。

平田:そうですね。個人的にはそのチグハグ感を楽しみたい。

ザゼン・ボーイズ


-田島貴男さんについてはいかがでしょうか。近年は「一人ソウルレビュー」的なステージを展開していますが。

平田:めちゃめちゃたくさんライブをやっていますね。ああいう姿勢がすごくかっこいいなと思います。

-以前見た時は、ものすごく黒っぽいステージでした。ブルースマンのような。

平田:うちの担当から聞いたんですが、田島さん、未だにギターの練習をめっちゃしてるらしいんです。

-ギターと身体が一体化している感じが強まっていますね。朝霧との相性についてはどう考えていますか。

平田:今回はムーンシャイン(小ステージ)でぜひとお願いしました。

-近いところで見られて贅沢感がありますね。

平田:田島さんはお客さんを盛り上げるのも上手ですね。フジロックのプレイベントにソロで出ていただいた時も、足でビート 刻んで歌ってギター弾いて。みんなが一緒に楽しむ空気を作り上げるのがうまい。演奏する曲を全く知らなくても楽しめる雰囲気がありますね。

2024年の「朝霧JAM」の会場風景


「歌声で目が覚める」アニー&コールドウェルズ

-そのほかの出演者の話もしましょう。パール&ジ・オイスターズはどういうバンドですか。

平田:星野源さんとかにフックアップされた、とても面白い男女2人組。2回目の来日です。

三田:フランス出身で今はアメリカで活動しています。

-ジャズ的な演奏ですが、女性メンバーのジュリエット・パール・デイヴィスさんのキュートでキャッチーな歌声が魅力的ですね。

平田:3 人編成で演奏するようです。現時点ではそう聞いています。今のロサンゼルスのシーンをよく表しているバンド。緩さもありつつタイトなところはタイト。そこにジャズっぽさが出てくる。

パール&ジ・オイスターズ


-続いて、米ミシシッピ州を拠点に活動するアニー&コールドウェルズ。ステイプルズ・ジュニア・シンガーズの紅一点、アニー・コールドウェルを中心にしたゴスペル、ファンク、ディスコを融合させた音楽、と資料にあります。2日目の昼下がりという、とても気持ちの良い時間帯に出演です。

平田:音源がデヴィッド・バーンのレーベル「ルアカボップ」から出ています。これは是非見ていただきたい。歌声で目が覚めると思います。米国では次世代のシャロン・ジョーンズと言われていますから、相当なボーカリストだと思います。

-米国南部の、こういうゴスペル的要素がある音楽は、静岡にいるとなかなか見られません。

平田:東京でもなかなか難しいと思います。アメリカの中でも今、相当期待されてる人なんで。

アニー&コールドウェルズ


-個人的に日本のバンドで楽しみなのはグソクムズ。1日目のムーンシャインのトップバッターです。レインボーのヨギー・ニュー・ウェーブスの終了直後に演奏スタートです。

三田:彼らは2年前、フジロックのルーキ・ア・ゴー・ゴーに出演しています。はっぴいえんどっぽさがありますね。昔のフォークとロックっぽい感じが今の若手に受け継がれていますが、その中で特にクオリティーが高いバンドの一つではないでしょうか。野外フェスという形にもよく合うと思います。

-竹原ピストルさんについてはどうですか。個人的には俳優としての印象が強いです。「永い言い訳」「悪い夏」「ファーストキス 1ST KISS」など、いい映画に出ているなと。

三田:竹原さんは今のように売れる前、ドサ回り的に引き語りをしていました。だから音に筋肉がある感じがしますね。ライブを筋肉で効かせるというか。初めて見る人も振り向かせる力があるのでは。やっぱり「よー、そこの若いの」と歌われたら来てしまいますよね。やり続けた人のすごみが感じられます。

竹原ピストルさん


-ほかに語り逃した出演者はいますか。

三田:今回 DJ セットですが小袋成彬さん。今年1月にロンドンから帰ってきました。新しいアルバム「Zatto」がめちゃくちゃ良かったんですよ。ロンドンのミュージシャンを使っていて、ジャズとかソウルを日本語の言葉で聴かせるアルバムでした。ロンドン特有の多国籍な音楽状況を日本で見せられることができる人だと思っています。

平田:アンソニー・ネイプルズ。米ニューヨークのプロデューサー兼 DJです 。自身の近作は(米音楽メディア)ピッチフォークでもいい点を取ったりして世界的に注目されています。レインボーのハイエタスとかぶっているんですが、タイトさに疲れたらムーンシャインのアンソニーで踊ってもらって。


〈告知〉
▼タイトル
 ~It’s a beautiful day~ASAGIRI JAM ’25 
▼出演者一覧
10月18日(土)
HIATUS KAIYOTE 
ANGIE McMAHON
ANTHONY NAPLES
D.A.N.
FULLHOUSE
グソクムズ
んoon
JONAH YANO
竹原ピストル
YOGEE NEW WAVES
(CARNIVAL STAR出演)
CUMBIA KID
DJ GONCHAN
DJ HANA-G (Fujirockers)
Dr. IHARA
NAOKI IENAGA (Dubstore Records)
POKASKA
RIHO
SOLITARY CIRCUS
SUNSUKE (Snokey Records)

10月19日(日)
GLASS BEAMS 
ANNIE & THE CALDWELLS
BIALYSTOCKS
DJ SPINNA
忌野清志郎 ROCK'N'ROLL DREAMERS
ケロポンズ
Nariaki Obukuro(DJ)
鬼の右腕
PEARL & THE OYSTERS
柴田聡子 (BAND SET)
田島貴男(Original Love)
YOUR SONG IS GOOD
ZAZEN BOYS
(CARNIVAL STAR出演)
CARNIVAL STAR ALL STARS
DJ HADI
DJ MAHO (Viva Mexico Cabrones!)
DJ TXAKO
EKD y LOS CHANGARAS
ELL (Mobstyle)
桂九ノ一
MARTIN KINOO (Chelsea Movement)

▼チケット情報
2日通し券:2万5000円
1日券:1万5000円
18歳以下:2日 8000円 / 1日 5000円
 ※12歳以下無料(保護者同伴)

キャンプ利用:2日通し券のみ可
駐車券
・場内 1万5000円(完売)
・ふもとっぱら  1万5000円
・場外2日 5000円
・場外1日 3000円
詳細はオフィシャルサイト(https://asagirijam.jp/ticket/)参照
▼会場
朝霧アリーナ・ふもとっぱら(富士宮市)
電車利用:最寄駅 新富士駅・富士駅 → 会場直行バス(要予約)
車利用:
・東名「富士IC」/新東名「新富士IC」経由 → 国道139号で会場
・駐車券必須(場内/ふもとっぱら/場外、各所)
・ふもとっぱら・場外駐車場 ? 会場は 無料シャトルバス(約10分)
詳細はオフィシャルサイト(https://asagirijam.jp/access/)参照

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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