
(山田)今回のテーマは、楽器、ですか。
(高松)今日、このテーマを選んだのは、浜松市に本社を置く大手楽器メーカー、ヤマハと河合楽器製作所の2社が相次いで社長交代を発表したからです。ヤマハは11年ぶり、河合楽器製作所は35年ぶりの社長交代で、この二つの世界的なメーカーが同時期に社長交代するというのは、偶然とはいえ、歴史的なタイミングです。静岡県は世界に冠たると言ってよい楽器産業の街なので、まさにそれを引っ張る会社のトップが今回変わるというのは、一つの節目で大きな話だと思います。
今、ヤマハとカワイを挙げましたが、県内には浜松市を中心に有名な楽器メーカーが多くあります。電子楽器で有名なローランドもありますし、ハーモニカや鍵盤ハーモニカもそうですね。ピアノやギターなどアコースティックの楽器もそうですし、電子楽器もそうなんですけど、静岡県は都道府県別で楽器を一番生産している県とされていますし、これだけの分野の楽器を同一県で製造しているというのは世界的に見てもおそらく非常に珍しいと思います。静岡に住んでると当たり前に感じてしまいますが、もっと誇っていいことだと思います。
(山田)新幹線の浜松駅でヤマハのピアノとか弾けたり、写真撮ったりできますよね。
(高松)あれももう当たり前になっちゃってますけど、他の県から来た人に聞くと、ものすごいびっくりされますよね。
林業、木材加工の技術が楽器産業発展のベースに
なぜ浜松なのか、という話もします。元々ヤマハの創業者の山葉寅楠さんという方がおりまして、この方が明治時代に、浜松で修理を手がけたことをきっかけにオルガンを試作したことから、その歴史が始まっていきます。ピアノには、音を鳴らすためのアクションという機構や、音を反響させるための大きな胴体の部分がありますが、基本的には木で作られています。静岡県は元々、天竜川などの上流部に広い森があって木材がたくさん採れていました。これは以前、この番組でプラモデル産業の回の時にも話しましたが、県内に木材加工の技術が元々あったということが、楽器産業のベース、背景にあったと言えると思います。
(山田)なるほど。僕もヤマハの工場に見学に行ったことがあります。アップライトピアノでした。
(高松)楽器メーカーの取材に行くと本当に驚くんですけど、かなり手作業なんですよね。木を切り出して削って、微妙な調整をして、と本当にすごい職人技の世界ですよね。
(山田)ローランドにも行ったこともありますが、すごいアイデアのある、面白い方たちがいましたね。
日本の楽器は世界で人気。生活スタイルの変化が楽器のトレンドにも反映

(高松)最近のトレンドっていう話になるんですけど、伝統的なピアノや管楽器、ギターとかも当然世界で人気なんですけど、電子楽器も人気ですよね。住宅事情も含め、この20年、30年で楽器のニーズも幅広く変わってきています。大きな音を出せないから、電子楽器にしてイヤホン付けて楽しむとか、あとはパソコンで音楽を作るというのも当たり前になってきていますよね。
昭和の頃と、今の令和で、楽器メーカーのあり方は本当に変わってきていますし、今の人たちの生活スタイルに合った楽器をどう作るのか、メーカー各社が模索しているところです。
(山田)経済的な目線で見ると、浜松を中心とした静岡県の楽器メーカーの現状はどうなんですか。
(高松)大手各社は世界的なメーカーなので、当然、日本だけで勝負してるわけではなくて、全世界に楽器を販売しています。例えば中国は一つの大きな市場になっていますが、やはり新興国は生活水準が上がることで、例えば一家に1台ピアノが欲しい、となれば、ものすごい需要が生まれますよね。
ヤマハはインドに工場を作りました。これから伸びていく国は、生活が豊かになれば楽器がほしい、となるので、世界的には楽器の市場はこれからまだまだ広がっていくと思います。
(山田)冒頭の話に戻すと、この2人の新社長にも本当に期待というところなんですよね。
(高松)メーカー単体もそうですが、地域全体で考えた場合、文化、技術などいろいろな切り口で静岡県、浜松への期待は大きいと思います。特に浜松は「音楽のまち」としていろんな国際コンクールを開催したり、音楽イベントもたくさんやっていますよね。生産面では、楽器を作る技術や調律の技術など、こうした高水準の技術の継承を日本でちゃんとできるかっていうのは、世界の音楽文化を支える上でも非常に重要です。
今、ポップミュージックなどで日本の音楽の注目度は上がっていると思います。日本の楽器そのものや開発の技術、音楽文化について、生産県である静岡県からどういう発信ができるのかっていうのは実はすごい大事なことで、静岡県民の方もちょっと思ってもらえるといいんじゃないかなと思います。
(山田)そうですね。きょうの勉強はこれでおしまい!