
(山田)今日は国産新型ロケットの話題ですね。
(橋本)宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2月17日、国産新型ロケット「H3」2号機を鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げて目標の軌道への投入に成功しました。このニュースを18日に各紙が朝刊1面で報じたので、今日取り上げてみました。
今回打ち上げに成功したのはH3。現在の日本の主力ロケットH2Aの後継機とされていて、今後20年間にわたり日本の宇宙輸送を担うことが期待されています。JAXAと三菱重工が2014年から共同開発に取り組んできたということで、H2Aよりも全長が10m長くて最大63m、直径が1.2m大きくて5.2m。主力エンジンの推進力も1.4倍に高めています。
H2Aは主に国の政策による衛星とか、探査機の打ち上げに使われてきました。H3はそればかりではなくて、商業衛星の打ち上げを受注することを想定して開発されたそうです。
(山田)ほう。
(橋本)開発費が2200億円のロケットです。
(山田)商業衛星の打ち上げということをおっしゃってましたけども、H3はどういう役割を果たしていくんだと思いますか。
(橋本)通信分野では、今よく知られている例だと、テスラを経営するイーロン・マスクさんが率いる「スペースX」が、「スターリンク」というたくさんの衛星を打ち上げて地球上のどこでもインターネットが使えるようにするサービスを始めています。
通信、放送といった分野の衛星の打ち上げを企業から受注し、お金をいただいて打ち上げることを目標にしているということですね。
(山田)今回打ち上がったのが国産の新型ロケットで、結構久しぶりなんですね。
(橋本)打ち上げ自体はほぼ毎年やっていますが、「新開発」というのは久々ですね。H 2Aの元のH 2の打ち上げは1994年が最初なので、それからすると30年ぶりの新型ということになります。
高まる人工衛星の打ち上げ需要
(橋本)昨年の3月にH3の1号機を打ち上げたんですが、失敗してしまいまして。2段目エンジンに着火ができず、爆破させました。このときには、地図などを作れる機能を持つ地球観測衛星「だいち3号」を打ち上げる予定で、H3に載せられていましたが、370億円ほどかけて作ったその衛星は消失してしまいました。今年、能登半島地震がありましたが、もしその衛星が上がっていれば災害状況なども地図を比べて確認できたかもしれません。打ち上げ失敗でそれもできなかったということですね。
(山田)本当に、われわれの生活にとって重要な役割を果たすわけですね。
(橋本)災害時も役立つ通信などの機能を持った衛星が、どんどん打ち上げられているということです。今回は模擬の衛星を積んで打ち上げ、便乗して小型の衛星を打ち上げていて、それは軌道に乗っているみたいですね。
(山田)毎年、一応打ち上げをやってるわけですね。
(橋本)H2Aは50号まで打ち上げる予定で、今48回ぐらいまで打ち上げているようです。H2Aは技術力が高いと言われていて、あまり失敗しないんです。失敗のニュースが大きくニュースになるので、そちらが記憶に残っているかもしれませんが、H2Aの成功率は98%です。
(山田)そうなんですね。各国、打ち上げ競争という感じなんですか。
(橋本)宇宙の利用が進み、人工衛星の打ち上げ需要が高まっているため、各国が競って打ち上げに投資をし、開発を急いでいるというところだと思います。
通信や放送で、衛星の大型化に加え、「衛星コンステレーション」という小型の衛星を連携させる仕組みも作られています。先程の「スターリンク」もその事例の一つです。ウクライナ戦争の際に通信が途絶え、イーロン・マスクさんにウクライナ軍が直訴をして使わせてもらうようになったとも報じられています。
光の列が空を移動してるのを見たことないですか?僕は一度だけあるんですけど…。
(山田)スターリンクが見える!?
(橋本)見えることがあります。ちょっと不思議な感じですけどね。上空の小さな光の点が等間隔で1列に並んで、ずっと移動していきました。
「インターネットを地球上どこでも使えるようにしよう」というイーロン・マスクさんのように、さまざまな会社が宇宙での事業をやろうとしているので、ロケットを打ち上げたいというニーズがたくさんあります。イーロン・マスクさんはスペースXのロケットで、自前で衛星を打ち上げることができますが、そうではない企業は「もっと打ち上げたいけど打ち上げるロケットがない」という状況だそうです。日本もそこに参入して、商業的にペイできるようにしていくための取り組みを進めています。
(山田)宇宙ビジネスですね。
(橋本)少し前の記事には35兆円の市場規模になっていると書いてありましたが、どんどん拡大しているようです。
(山田)お金持ちの方って、なんかロケット打ち上げますよね。
(橋本)アマゾンの創業者のジェフ・ベゾスさんもブルー・オリジンという会社を立ち上げて、宇宙旅行をしようと計画しているようですね。2024年にロケットを打ち上げる計画だそうです。
(山田)ホリエモンさんもそうだし、前澤友作さんもそうですよね。日本もこの宇宙ビジネスにどんどん参入していこうということですね。
(橋本)今、H2Aの打ち上げコストが100億円ぐらいと言われていますが、これだとちょっと高くて、コスト的に他と競争しにくいそうです。
信頼性は高いので、H3でもっとコストを下げようということで、半分の50億円を目標に開発しています。先日の発射がその開発の一つの過程ということになります。
(山田)これからどんどん安くなっていくかもしれないということですね。
県内企業の部品が使われている!

(橋本)実は静岡も無関係ではないんです。静岡新聞の2月18日付に掲載した「打ち上げに成功した」というニュースの横に、清水町の航空宇宙部品メーカー「エステック」の製品がH3の部品として使われているという記事が載っています。打ち上げの様子を見守る社員の皆さんの様子を、取り上げていました。
(山田)リアル「下町ロケット」ですね。
(橋本)ステンレスやチタンの精密加工の技術を持っている会社で、メインエンジンに製品が使われました。従業員は約40人ぐらいだそうで、まさにその「下町ロケット」のリアル版かと思います。
また先日、静岡新聞の別の記事に、浜松商工会議所が2024年度に、航空宇宙産業への参入支援に乗り出すという話が出ていました。
実務経験のあるアドバイザーを置き、管内の中小企業を訪問して今持っている技術が航空や宇宙関連の産業に活用できないかを見ていくといったことをやるそうです。
(山田)エステックさんみたいな企業はこれから県内に増える可能性もあると。
(橋本)航空宇宙産業の集積地として愛知が有名ですが、静岡もその一つとして知られるようになれば、人口が減っている地域の活性化に役立つんじゃないかなと思います。
(山田)それがビジネスとして成り立っていけば、将来新しく参入してくれる企業がどんどん増える可能性もあるということですね。今日の勉強はこれでおしまい!