語り:春風亭昇太

庶民文化が花開いた江戸後期、十返舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」が人気を博し、人々を東海道の旅に誘いました。かつての東海道で薩埵峠と宇津ノ谷峠の、二つの峠と、蒲原、由比、興津、江尻、府中、丸子の6つの宿場が現在の静岡市にあたります。
膝栗毛の作者、十返舎一九は、駿府城の城下町、府中の出身で、登場人物の弥次郎兵衛も府中、喜多八は現在の清水駅にほど近い江尻の出身と設定されていました。
蒲原宿にある「旧和泉屋お休み処」。もともと旅籠だったこの建物は、天保年間に建てられたと言われ、東海道を行き来する旅人たちが宿泊していた当時の風情を今に伝えています。
東海道中膝栗毛に、由比宿の名物として登場した「さとう餅」。その形から「たまご餅」と呼ばれるようになり、現在も、あんこを上新粉で作った餅でくるむ、江戸時代からの製法を守って、作られています。
弥次さん、喜多さんは府中名物の安倍川もちが有名な安倍川では、川越し人足に銭をふんだくられ、丸子では、とろろ汁を食べようと寄った茶屋で、夫婦喧嘩が始まって、とろろ汁を食べ損ねる。東海道中膝栗毛に登場する名所や名物のいくつもが今も静岡市に残ります。
令和2年度には、現在の蒲原宿から藤枝宿まで「日本初の旅ブームを起こした 弥次さん喜多さん駿州の旅」が日本遺産に認定されました。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。