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地震や事故など、続く災害報道を見た子どもへの接し方、心のケアは?ごっこ遊びは止めなくていい?

元日に発生した令和6年能登半島地震から2週間が経ちました。災害報道を見ることで被災地だけでなく、そうでない地域の子どもたちも心に傷を負ってしまうことがあるそうです。今回は、心理カウンセラー・公認心理師のイム・ソネさんに、SBSアナウンサー影島亜美が話を聞きました。

SOSは普段の遊びにも表れる!?

影島:連日テレビなどで災害報道の映像を見ることで、被災地ではない子どもたちにも変化が起きていると報じられています。衝撃的な映像が子どもたちに影響を与えているという声もあります。

イム・ソネ:地震に加え、飛行機の衝突事故が起こり、心を痛める映像が続きました。先週、保育園や小学校に講演に行った際も子どもたちが不安を抱えて「一人でトイレに行くのが怖い」と言ったり、「地震ごっこ」を始めるなど普段とは違う様子が多く見られると聞きました。

影島:「地震ごっこ」という単語に驚きましたが、メンタルに影響を受けるとどうしていつもと違う行動をしてしまうのですか。

イム・ソネ:人間は不快な体験をしたり強いストレスを受けたときに本能的に心理的な安全を保つために「防衛機制」が働くようになっています。赤ちゃん返りがそのひとつです。例えばよく見られるのは、第一子の子どもが第二子の赤ちゃんが生まれたときにお母さんを取られてしまったと不安を感じて、指しゃぶりを始めたり、赤ちゃん言葉を使ったりすることが挙げられます。これは不安感を解消するために起こることで、攻撃的になったり、自分や家族がけがをして死んでしまうようなイメージをなぜか急に抱くようになります。不安感が身体症状に出て、原因のない頭痛や腹痛など体の不調に出る場合もあります。

「地震ごっこ」や「津波ごっこ」は頭ごなしに怒らないで

影島:そして「地震ごっこ」や「津波ごっこ」という遊びも始まるんですね。

イム・ソネ:不謹慎だと思ってしまう遊びですが、地震や津波、火事など普段ありえないようなショッキングなことに触れてしまうと不安感やストレスを解消するためにそんな遊びをすることがよくあります。

影島:親御さんや大人はびっくりしますね。

イム・ソネ:つい「そんなことはやめなさい」と頭ごなしに怒ってしまいがちですが、子どもは気持ちを言葉で表現したり自分の中で区別したりすることができないので、思考が未発達な分、ごっこ遊びで感情やストレスを消化しています。だからこそ頭ごなしに止めない方がいいと思います。

影島:たしかにごっこ遊びをしている最中は、ストレスや怖さを感じることはないと思います。遊びによって心を整頓しているということですね。

イム・ソネ:お人形遊びの時に人形の家を揺らして「地震、地震〜」と言ったり、言葉が乱暴になったりと、そんな風に「体験をアウトプットする」ことがよくあります。この気持ちを無理に止めてしまうと不安な感情を溜め込んでしまうので、少し様子を見てあげてください。

影島:では、もしごっこ遊びをしていても、放っておくのが一番ですか。

イム・ソネ:まずは不安なんだな、ストレスを感じているんだなと子どもの気持ちや変化を受け止めてください。止めずにやらせておくより「おやつを食べようか」「ぬりえを一緒にやろうか」など、ほかに気持ちを切り替えてあげることも大切です。

影島:こういった変化は正常な反応なのでしょうか。

イム・ソネ:はい。正常な反応で、自分の心を安定させるために本能的にやっています。急にお漏らしをしてしまったり、一人でトイレに行けなくなった時はぜひ寄り添ってあげてください。普段より幼くなってしまっているんだと理解して受け止めてあげることが大事です。

影島:親としてどんな声かけをして、寄り添っていけばいいですか。

イム・ソネ:今回の地震の場合は、「今ここは安心安全なんだよ」と言葉とともにスキンシップを通して伝えてあげる。さらに言葉で不安を訴えてきたら「一緒に募金をしてその人たちの力になれることをしよう」など、具体的な体験を通して安心を取り戻すようにできるといいと思います。

影島:子どもだから地震のことを話しても分からないではなく、今起きていることをしっかりと伝えることが大切ですね。

大人もSNSから離れ心休まる時間を1日10分

影島:子どもだけでなく大人はどうですか。

イム・ソネ:普段何気なく使っているSNSや携帯からもニュースが流れてくるので、無意識のうちに被災者や衝撃的な映像を視聴してストレス反応は高まっていると思います。特に、元々トラウマ的な体験を持っていたり、精神的に不安感を感じたりする人は特にトラウマとして残ってしまう危険性もあります。

影島:場合によっては医師や専門家に相談した方がいいですか。

イム・ソネ:人間の最低限の欲求に睡眠や食事があります。寝付きが悪くなる、夜中に何度も起きる、食が細くなってしまったという場合は、医師や専門家に相談することをお勧めします。それはハードルが高いと思う人は、周りの人に不調や不安感を伝えてください。「大人だから、子どもだから」は関係なく、自分の心がゆっくり休まる時間を1日10分でも取ってください。

※2024年1月16日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。​
今回お話をうかがったのは……イム・ソネさん
心理カウンセラー・公認心理師。6才と3才の子を持つ、二児の母。十数年の教員経験を生かして、延べ2000人の子育て世代の悩み相談を解決へ。アメリカ発祥の感情コントロールメソッド「アンガーマネジメント」を専門とした講座を多数開講中。企業や学校教職員向けのマネジメント研修講師も務める。

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