【トコジラミ被害拡大】海外では社会問題に。人の往来が増えている今、国内でも蔓延の可能性!
(橋本)南京虫の名で知られる害虫トコジラミに関する相談が、昨年と比べ東京都や大阪府で増加し、両都府で過去最多になっています。専門家が、全国での被害拡大を指摘しているという内容の記事が12月17日の静岡新聞に掲載されました。
(山田)全国で拡大しているということですけども。小学生の頃とか、泥だらけになって遊んだのにお風呂入らなかったら、おふくろから、「あんたシラミが湧くよ」なんて言われたことありますけど。
(橋本)終戦直後に、子供を並ばせてDDTという薬剤をかけて駆除する映像を見たことがあるかもしれません。今日、話題にするのはトコジラミで、髪に寄生するアタマジラミとかケジラミと違い、シラミ目ではなくカメムシ目に属する昆虫です。成虫の体長は5ミリぐらい。乾燥した場所を好み、普段は柱と壁の隙間や、壁の割れ目、あるいは家具の隙間に潜んでいます。
夜行性で、人が寝ている間に首や手足など比較的柔らかいところを刺して吸血するそうです。刺されると、1度目はあまりかゆみはないけれど、2度目以降はアレルギー反応で強いかゆみが出るようです。
吸血中に刺し口を変えるため、刺し跡が二つ残る場合があり、それが特徴的だといいますが、そうならない場合もあるようです。
先日、静岡新聞の記者がミニコラムに書いていました。沖縄の宿泊先にトコジラミがいて、そのときは知識がなくてトコジラミとわからなかったらしいのですが、帰宅して1週間後に手足に赤い刺し跡が50カ所も現れ、経験したことのない痒みが1カ月ぐらい続いたということです。
(山田)いやー、かわいそう。経験したことがない痒みなんて。
(橋本)決して、遠い話ではないんですね。
フランス、韓国でも大きな騒ぎに
(橋本)ちなみに、トコジラミ自体は、もう江戸時代から日本にいて、一時は国内に蔓延したんですけど、強力な殺虫剤が普及して、1970年代には一旦姿を消しました。被害を受けたというのを、ほぼ聞かなくなったんですね。しかし今世紀に入って、アメリカなどで大発生し、直後から日本でもちょこちょこと発生が見られるようになった。殺虫剤に耐性を持つ個体が出現したことが一因とされています。(山田)すごいですね。
(橋本)今年10月に、フランスで発生して社会問題になっているという小さな記事が静岡新聞にも載り、ちょっと気になってたんです。そうしたらそのうちに韓国でも広がってるというのが話題になっていて。
(山田)韓国、なんかすごいみたいですね。
(橋本)先ほど取り上げた記事が17日付けでしたので、いよいよ日本でもという感じなのかなと思います。
(山田)その新聞記事を読むと、韓国では、トコジラミのことを「ピンデ」っていうんですね。ピンデとパンデミックを合わせて「ピンデミック」だと。嫌ですねー。
(橋本)フランスでは、全世帯の1割が被害に悩まされていると言われていて、パリの地下鉄や高速列車、空港の待合室、映画館などで刺されたという報告があるそうです。
来年パリ五輪があり、外国からたくさん人が来ることが想定されるので、政府が駆除作戦に乗り出す事態になっているということです。
(山田)パリは衛生面では結構綺麗なのかなと勝手に思っちゃってましたけど。
(橋本)必ずしも、不衛生だから増えるというわけではないみたいです。フランスでは、学校を休校にしてトコジラミの駆除を行ったケースもあるそうです。韓国でも政府が合同対策本部という組織を立ち上げて、対応に追われているようです。
韓国の電車事情は詳しくわかりませんが、電車に乗っていて衣類に付いたりするのを防ぐために、座席に座らないようにしてるというような記事がネット上に出ているのを見ました。
(山田)本当に社会問題になっているわけですね。日本でも増えつつある。いつ頃から始まってるのかな。
(橋本)僕が気が付いたのは、10月にフランスでの被害のニュースが出たころですが、過去記事をデータベースで検索したら、2009年に「旅先の海外から持ち込んだトコジラミに刺されて困ってるんだけども、駆除方法を教えて」というような記事が静岡新聞に載ってました。
もう少し後になると、2019年の7月に「宿泊施設のトコジラミ警戒」という結構大きな記事が出ていました。東京五輪を控え、トコジラミの発生が増えてるので宿泊施設が海外から客を迎えるにあたって対策に頭を悩ませてますというような内容です。最近、始まったということではないんです。
(山田)流れがあったんですね。
(橋本)コロナ禍でその流れが少し止まっていましたが、収束して人の往来が激しくなってきましたよね。そういう中で、例えば流行っているフランスや韓国から持ち込まれることもあるだろうし、逆に日本の方が家からそれを海外に持って行っているケースもあるかもしれません。国内でも蔓延する可能性が高まっていると言えるのかなと思います。
荷物に潜り込んだり、あるいは衣類や所持品に付着して、それが移動していく。このトコジラミ自体には羽がないので飛べないんです。
(山田)東京と大阪で相談過去最多ということでしたけど、静岡でも…?
(橋本)人の往来が激しいですし、コロナ禍前からも増える傾向があったわけで、全くないとは言えないと思います。ここにきてそういう報道が目立ち始めたので、これから増えていく可能性があるのかなと思いますね。
11月には大阪メトロで、電車内でトコジラミの目撃情報があり、それがSNSに流されて広がりました。大阪メトロが保有する1380両を清掃する羽目になったということで、多分費用も相当かかったんじゃないかと思います。
ポリ袋に荷物を入れると入ってこない!小さな対策から…
(山田)万が一のために、何か対策方法もちょっと教えてもらいたいんですが。
(橋本)駆除するのが大変なので、家に持ち込まないようにするというのがまずは大事だということです。
トコジラミはポリ袋のツルツルした表面は登っていけないらしいので、旅先で荷物を使わないときには、ポリ袋に入れて口を縛って密閉しておくと、寝てる間にそこに潜り込むリスクが減ります。夜寝るとき、トコジラミがいる可能性が高いベッドなどから離してポリ袋入りの荷物を置く。さらに、入口付近や洗面所などに荷物をおいたらそこの電気をつけておくと、夜行性で照明下では動きが鈍いため、荷物に入るリスクが少なくなるということです。
(山田)とにかく家に持ち込まないことが大事。
(橋本)そうですね。ただ、そうは言っても、これだけ旅行が盛んになってるので、自宅に持ち込んでしまう可能性もないとは言えませんよね。
自宅に侵入されたら、まずこまめに掃除機をかけるのが大切です。それから、血を吸ったトコジラミは栄養を取り込んだら糞として排出するため、潜伏場所の周辺に黒いシミが残るそうです。部屋の隅などを見てこの黒いシミがあったら、潜伏していることを疑ってそこに集中的に殺虫剤を吹付けたり、燻煙剤を使ったりするのも方法かと思います。
ただ、薬剤に耐性のある個体が増えてるということなので、効かないことも考えられます。その場合は地元のペストコントロール協会や自治体に相談し、紹介された信頼できる業者に依頼して欲しいと、記事では呼びかけていました。
(山田)そうなんですね。本当にもう増えないことを祈るというか。
(橋本)一度いなくなったと思った害虫の被害がまた増加しているわけですが、国境を越えて被害を拡大させているのも、殺虫剤への耐性を作ったのも、ある意味人間だということもできます。なかなか根絶するのは難しいのかなと思います。
まずは自宅に持ち込まないようにする。旅行先で荷物をポリ袋に包むなど少し面倒な作業ですが、そうした地道な対策を心がけることが大切だと思います。
(山田)もう日本でも増え始めていますから、これから年末年始お出かけの方は自宅にトコジラミを持ち込まないような対策をした方がいいかもしれませんね。今日の勉強はこれでおしまい!
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