
10月1日より法で規制
近江:ステルスマーケティング(以下、ステマ)広告とは、具体的にはどういうものなのでしょうか。高橋:金銭などの対価をもらって宣伝しているのに、それを隠しているものをステマ広告といいます。広告主が一般人のふりをして宣伝したり、インフルエンサーなどが対価をもらっていることを隠して宣伝したりするケースが該当します。
近江:インスタグラムなどSNSの投稿で、「PR」などをつけていないのは、ステマ広告になりますか。
高橋:お金をもらっている場合は該当します。
近江:ステマ広告に関して、このほど政府が動き出したと報道がありました。今後はどのような形に変わりそうですか。
高橋:2023年10月1日から景品表示法の不当表示になり、法で規制されます。広告表示がないなど違反をすると、措置命令などの行政処分の対象になります。消費者庁の運用基準も明確にしたので、ステマの基準や表示方法、どういう投稿が広告になるのかなどの基準も明らかになりました。
近江:私の調べたところですが、「依頼した側」だけが処分を受けるという点がポイントだと思いました。
高橋:そうなんです。インフルエンサーは「依頼された側(=投稿した側)」になり、「依頼した側」の広告主が処分対象となります。
近江:では、「依頼された側(=投稿した側)」には、特に罰則とかはないのですか。
高橋:投稿したということは「依頼した側」がいるので、「依頼した側」が処分されるということになります
近江:今後、ステマ広告について、どういった形に変わりますか。
高橋:それまで一切法規制がなかったのが、ステマ広告をすると違反になるということが、最大のポイントです。
なぜステマ広告が違反になるのか
近江:改めてお聞きしますが、ステマ広告ってダメなんですよね?高橋:消費者に誤った情報を与え、正しい判断をできなくしてしまうので、ダメなんです。そしてステマ広告が増えることで、情報への信頼性も下がります。ステマ広告はいろいろな国で規制されていますので、日本の対応は遅れていたのです。
近江:ちなみにステマ広告のトラブルが減らない原因は、どんなところにありますか。
高橋:業界団体の自主規制くらいのものは以前からありましたが、罰則はありませんでした。「PRを付けない方が売上が上がる」「ステマ広告をしたほうが儲かる」と認知されてしまったため、堂々とステマ広告を行うところが多くなってしまいました。有名無実化して、ステマ広告が蔓延してしまったため、法で規制せざるを得ない状況になってしまいました。
近江:私も手軽にSNSを利用していますが「気づいたらステマ広告に加担していた」「騙されていた」という人もいるかもしれないですよね。
高橋:みなさんがご存知のような大手企業も、「これはステマ広告だった」と後日判明し、謝罪するケースもありました。実際にかなり多かったことは間違いないですね。
近江:騙されたということを見分ける方法はありますか。
高橋:後日に調べたら疑いが出てきたものはありますが、その時点ではすぐにはわかりません。そのため1つの投稿だけでなく複数の投稿やレビューを確認して、「本当はどんなものなのか」を客観的に判断することが大事になります。
広告主側は今後は処分されますのでステマ広告を行わない。そしてインフルエンサー側も広告主から依頼された場合に投稿しない、ということが重要です。
近江:広告主もインフルエンサーも気をつけていかないと、ということですね。高橋さん、いろいろと教えていただきありがとうございました。
今回、お話をうかがったのは……高橋 暁子さん
ITジャーナリスト/成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホ やインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。NHK『あさイチ』『クローズアップ現代+』などメディア出演多数。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など、著作は20冊以上。教育出版中学校国語の教科書にコラム掲載中。