
防災の知見を兼ね備えた気象の専門家「気象防災アドバイザー」とは
「気象予報士」と聞くとSBSテレビ「Soleいいね!」「LIVEしずおか」で気象キャスターをしている田中健太郎さんが思い浮かぶかと思いますが、今回は「気象防災アドバイザー」について静岡地方気象台次長の永井千春さんにSBSアナウンサー近江由佳がお話をうかがいました。
気象防災アドバイザーによる自治体における講習会の様子
「気象防災アドバイザー」とはどんな仕事?
近江:気象防災アドバイザーは、どんなことをしているのか教えてください。永井:地域の気象と防災の両方の知識を持った専門家です。平常時には住民や自治体職員に向けて講習や講演会、また訓練などに参加して気象や防災に対する知識を広める活動をしています。
その一方で台風の接近や大雨のときには、自治体職員に気象の状況や予報を解説したり、それらを踏まえて幹部などに避難指示の発令などの助言を行ったりしています。
近江:どのような人がなることが多いのですか。
永井:気象庁で防災に関する業務をやられていて退職した人や、気象予報士で気象庁の行う研修を受けた人がなることができます。
近江:いつから気象防災アドバイザーという制度ができ、また全国に何人いますか。
永井:2017(平成29)年度に最初の育成研修を行い、2018(平成30)年度から各地で活動をしています。今年(令和5年)の3月の時点で約110人います。
広島での大きな土砂災害を教訓に
近江:制度ができたきっかけを教えて下さい。永井:2014(平成26)年8月に広島で大きな土砂災害が起こりましたが、自治体が事前に避難情報を出すことができませんでした。その経験から専門家が自治体を支援していくための体制が必要だと考えたことがきっかけです。
近江:気象防災アドバイザーは、普段から自治体で仕事をしているというわけではないんですね。
永井:自治体で気象や防災の専門家として働いている人もいますが、民間企業で気象予報士など別の仕事をしている人など、いろいろです。
近江:どのくらいの自治体で活動しているのですか。
永井:2022(令和4)年度の情報ですが、全国34の自治体で様々な活動をしています。静岡県内では伊豆市と函南町で活動実績があります。
地域×気象防災アドバイザー
近江:気象防災アドバイザーが必要とされる理由を教えてください。永井:各自治体に気象の専門家がいるとは限らないので、防災について不安や困難を抱えている自治体もあると思います。そうした自治体に対して、気象条件や地形など、地域のことをよくわかったうえで詳しく防災のアドバイスをする必要があると考えています。各都道府県にある気象台が、市町村一つひとつに細やかな対応をするのは難しいのが現状です。だからこそ気象防災アドバイザーを活用していただけたらいいなと考えています。
近江:重要視されるのはどんなときですか。
永井:大雨などで状況が差し迫ったときに市町村長などが行う重要な判断をサポートすることが最も重要な役割だと考えています。そしてそのような場面でしっかりサポートができるよう、普段から自治体と話のできる関係を整えることも大切だと考えています。
近江:地震や噴火などの場面でも気象防災アドバイザーは活躍していきますか。
永井:災害の起こる前も起こった後も対応していきます。
近江:最後にリスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
永井:毎年多くの人が大雨などの災害で命を落としたり被害を受けています。そういった災害の被害を減らすために、住んでいる場所が災害の危険性のあるところなのか、各自治体が作っているハザードマップを見てください。危険性のある場所であったなら、気象台や地元の自治体から出される情報に耳を傾けてください。そのうえで危険を感じたときは速やかに安全な場所に避難してください。静岡地方気象台では、気象防災アドバイザーなどの専門家とも連携するなどして、地域の防災の力の強めることに努めていきます。
今回お話をうかがったのは……永井千春さん
1985年静岡県内の大学を卒業し、気象庁入庁。以来、主に海洋気象業務(特に沿岸防災)に従事し、2021年から現職。
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