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異文化理解の助けに?専門家に聞く、ゾンビ映画の楽しみ方

今回は、ゾンビ学などを専門とされ「大学で学ぶゾンビ学」という本も出版されている、近畿大学総合社会学部准教授 岡本健さんにSBSアナウンサー近江由佳がお話をうかがいました。
※2023年3月29日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

ゾンビは何者なの?

近江:そもそもゾンビって一体何者なんですか?

岡本:ゾンビというとなんとなくイメージが湧くと思いますが、時代によって変化するので、はっきり定義するのが難しい存在です。昔のゾンビは、呪術によって死体が蘇り、ヨロヨロ歩く存在でした。

それが今では、ウイルスが原因でゾンビになったり、または携帯電話で感染してゾンビになったり、わけのわからないものまで出てきました。最大公約数で言うなら、「人に似ているが、人でなくなってしまった存在」なのかなと思います。

近江:ゾンビは何種類くらいあるんですか?

岡本:何種類か定義をするのは難しいです。時代や文化、そしていろいろな国で作られているので、それぞれの解釈があります。また新しいものがどんどん出てくるので、ゾンビはとても多様なんです。

近江:ゾンビの由来は?

岡本:実は、現実の世界で本当にあった話なんです。ブードゥー教を信仰していたハイチという地域で、「呪術によって死体を蘇らせて使役にする」という伝承からきています。映画にゾンビが初めて登場したのは、1932年の「ホワイト・ゾンビ」といわれていて90年ほどの歴史があります。

近江:ゾンビという存在は、いつから世の中で認知されるようになったんでしょうか?

岡本:ゾンビ映画のブームが来るのが1980年代です。ジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」という映画が公開された後、ゾンビが人を食べるという性質が広まり、今のゾンビになっていくのかなという感じです。
 

ゾンビ映画が「他者理解」のきっかけに?


近江:以前、静岡新聞に掲載された岡本さんの記事では、異文化への理解としてゾンビについて語られていたと思います。
 

岡本:人の姿をしているが、人とは少し違うという点で、ゾンビは異文化に属する人の比喩として機能します。例えば、黒人差別をそのまま描くとショッキングな内容になりますが、一旦ゾンビという別のものに置き換えて架空の話や出来事を語ると、批評や批判をしやすくなるのではないでしょうか。

ちなみにゾンビ映画では、対処法がわかってくるとゾンビのほうが一方的にやられていくような感じになります。そのため映画を見ているとゾンビが可哀想で、むしろ人間のほうが残酷ではないかと思ってしまいます。その点で、ゾンビ映画は他者への理解について考えるきっかけになると思います。

近江:ゾンビ映画がきっかけで、相手への理解について考えられるというのは、初めての視点です!

岡本さんのおすすめゾンビ映画

近江:おすすめのゾンビ映画を教えてください!

岡本:携帯電話でゾンビに感染する「セル」や、邦画なら"ゾンビパニック"の中で人間同士の殺人が起こるという「屍人荘の殺人」がおすすめです。

近江:みなさんもぜひチェックしてみてください!ゾンビに対する知見が深まりました。岡本さんありがとうございました!
今回お話をうかがったのは……岡本健さん
1983年生まれ。近畿大学 准教授。総合社会学部、情報学研究所に所属。
専門は観光社会学、メディア文化研究。VTuber「ゾンビ先生」の中の人としても活動中
「ゾンビ先生の『YouTubeゾンビ大学』」。著書に『巡礼ビジネス』(KADOKAWA)、『大学で学ぶゾンビ学』(扶桑社)などがある。

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