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生活習慣も原因! 専門家に聞く「正しいむし歯の予防法」

今回は、正しいむし歯の予防法について、目白大学短期大学部歯科衛生学科 専任講師の鈴木誠太郎さんに、SBSアナウンサー井手春希がお話をうかがいました。
※2023年6月9日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

むし歯は非感染性疾患のひとつ

井手:そもそも、なぜむし歯になるのでしょうか。

鈴木:むし歯は細菌が酸を産生することにより歯の表面が崩壊して穴が開いてしまう病気です。以前は感染症で細菌が主な原因だと思われていました。むし歯の原因には、細菌だけでなく、生活習慣や経済状況などさまざまな要因が深く関わっていることが明らかになり、近年はがんや糖尿病といったNCDs(非感染性疾患)のひとつと考えられています。

井手:むし歯を予防するには、どのようにすればよいですか?

鈴木:科学的根拠が確立したむし歯対策は、フッ素(フッ化物)を活用することと、砂糖の摂取量を減らすことです。歯磨き粉に含まれるフッ素を正しく有効利用することが、最も簡単で効果的な方法です。

歯磨き後の「ゆすぎ」は最小限に! 口の中にフッ素を残す

井手:むし歯予防にはフッ素、とよく聞きますね。

鈴木:フッ素入りの歯磨き粉(フッ化物配合歯磨剤)を年齢に応じた正しい量で使用し、歯磨き後のゆすぎを最小限にして、口の中にフッ素を残すことが重要です。むし歯になりやすい部分から磨くと、濃い状態のフッ素を歯に届けることができるため、効果的であると考えられています。定期的に歯科医院を受診して、むし歯以外にも異常がないか確認してもらうことも重要です。

井手ゆすぎは何回がよいですか?

鈴木:海外では、歯磨き粉を吐き出した後にゆすがないことも推奨されています。ちょっと気持ち悪かったり、口の中に汚れが残っているような感じがしたりする方も多いので、極力少なくということで、日本では少量の水で1回程度とされています。ゆすぎで出るような汚れは歯の表面にはくっついていないので、むし歯や歯周病の原因になる汚れではないですね。

井手子どもと大人のむし歯対策は違うものですか?

鈴木:フッ素の活用と砂糖の摂取量を減らすことは共通の予防法です。子どもの頃の食習慣は大きく影響するので、2歳ごろまでは砂糖入りの飲食物は控え、それ以降もおやつや甘い飲み物を摂取するのならば時間を決めましょう。砂糖を長時間口の中に残らないようにすることが重要です。

永久歯の形成時期にフッ素を摂りすぎてしまうと、後に生えてくる永久歯の見た目に影響が出てしまうことがあります。フッ素入り歯磨き粉は2歳まで米粒程度(長さ 1〜2ミリ)、3〜5歳まではグリーンピース程度(長さ 5ミリ)、6歳以降から歯ブラシ全体(長さ 15〜20ミリ)を使用するようにしましょう。

食後すぐ歯磨きしても問題ない

井手「食後にすぐ歯磨きするのは良くない」と聞いたことがあります。実際はどうなんでしょうか。

鈴木:これはよく言われる誤解です。むし歯とは違う酸蝕症(酸性の飲食物を摂取することで歯が溶けてしまう病気)についての実験が、「食後すぐに歯磨きをするのはよくない」という説として出てきてしまいました。口の中にある唾液のような防護機能が考慮されていない状況で得られた実験結果です。日本の歯科に関する専門学会は「食後すぐに歯磨きをして問題ない」と発表しています。

ただ、酸性の飲食物を食べた後には歯磨きまで少し時間を開けた方がよい、という意見もあります。かかりつけの歯科医院と相談しながら検討していただくとよいと思います。

意外と知らない"正解"歯磨き

井手個人的な話なのですが、私は毎晩3回歯磨きをしていて、やりすぎなのかなと思っています。

鈴木:やりすぎは良くないというのはありますね。むし歯予防の面では1日最低2回、正しくフッ素入りの歯磨き粉を使用した歯磨きが推奨されています。3回以上磨いてもむし歯予防効果は上がらないです。歯磨きの回数が多すぎると歯肉や歯ぐきなどを傷つけてしまうリスクが上がります。基本的には朝、昼、晩の3回程度でよいのではないかと考えています。

井手歯磨き1回あたりの時間ですが、目安はありますか?

鈴木:むし歯予防の面では、フッ素を歯に効かせるため最低2分間の歯磨きが推奨されています。ただ歯周病の予防は少し考え方が違うところがありまして、歯周病は歯の汚れ(プラーク)を除去することが重要なので、2分間では少ないという意見もあります。適切な時間を決めるのはなかなか難しく、口の中の状況によって変わってきます。

井手仕事の都合などで日中に歯磨きできない方もいらっしゃると思います。

鈴木:むし歯予防の面では、朝と晩の2回きちんとフッ素入り歯磨き粉を使用した歯磨きが出来ていれば問題ないと考えられます。日中歯磨きができずむし歯が心配という方は、うがいやドラックストアで販売されているフッ素入りの洗口剤を使用することも有効であると考えられます。

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免責事項
今回お話をうかがったのは……鈴木誠太郎さん
目白大学短期大学部歯科衛生学科 専任講師。2014年東京歯科大学卒業、東京歯科大学大学院歯学研究科(衛生学専攻)修了。2019年より東京歯科大学衛生学講座助教、2022年より国立がん研究センターがん対策研究所コホート研究部研究員を経て、2023年より現職。歯科医師、博士(歯学)、歯科公衆衛生専門医。

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