気になる春の天気について、素朴な疑問を気象予報士に聞いてみた
※2023年3月17日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています
原口：みなさんから来た質問について、どんどん聞いていきます！
質問1：花粉症で大変辛い季節です。よくテレビやラジオで花粉が「多い」「少ない」という予報が出ていますよね。あれは何を基準に決めているのですか？
田中：1平方センチメートルあたり（親指の先くらい）の面積に、明日1日で花粉が何個付くだろうと予想しています。「LIVE静岡」（SBSテレビ）でも花粉予報を扱っていますが、「少ない」「やや多い」「多い」「非常に多い」の4段階に分けてお伝えしています。例えば、「少ない」という予報の場合は「明日は1平方センチメートルあたりの面積に花粉が0〜9個付きそうだ」と予想し、「非常に多い」 という場合は「1平方センチメートルあたりの面積に花粉が50 個以上付きそうだ」というように、数の予想をもとに段階を分けて花粉予報を発信しています。
原口：例年に比べて花粉が多いというときは、「非常に多い」の基準は変わるのですか？
田中：変わりません。「1平方センチメートルあたりの面積に花粉が50個以上付きそう」なので、「非常に強い花粉症の症状が出てしまうので気をつけてください」と呼びかけているというわけです。
質問2：桜の開花予想はどうやって算出しているんですか？
田中：これは、春の暖かさがとても重要になってきます。週間予報や、気象庁から出る1ヶ月予報、3ヶ月予報などの気温の予測をもとに、桜開花の計算式に当てはめて、予想日を算出しています。僕は、ウェザーマップの桜開花予想を使っています。その計算式に当てはめると、気温の推移によって１万通りの予想が、コンピューターで弾き出されるんです。そこから「予想日はこの日だ」と発表しています。ただ、春の暖かさだけでなく、冬にしっかり寒くないと、桜は目覚めないんです。ですから静岡より東京の方が桜の開花が早いんです。原口：「温暖な地域だからこそ早く咲く」というわけではないんですね。
質問3：富士山に笠雲ができると天気が崩れるといいますが、どういった条件が重なって笠雲ができるんですか？
田中：空気が湿っているときや、風が強く吹いているときは、湿った強い風がピューッと吹いてきますよね。その風が富士山にぶつかると、どんどん強制的に上に登っていきます。高いところほど気温が低くなるので、湿った風がどんどん上に登って冷やされていくと、ちょうど上のほうだけ笠雲ができるんです。これは天気下り坂のサインです。原口：では「笠雲ができているときに天気が崩れる」のは、当たっているということになりますか？
田中：もちろんです。湿った空気が入っているということは、雨を降らせる前線や低気圧が近づいている証拠で、これから雨が降りやすいというサインなんです。ちなみに、笠雲ができると次の日の雨の確率は70%くらいです。
質問4：晴れているのに雨が降る。雨雲がないのに不思議です。これはなぜでしょうか？
田中：これには2つ原因があります。1つ目は風によって雨粒が飛ばされてくるときです。頭の上に雨雲がなくても近くにある雨雲から飛んできているんです。
そして2つ目は、雨雲から地上までに雨粒が落ちていく間に、雨雲が消えてしまうということが考えられます。実は雨雲から地面まで雨粒が落ちていくのには、時間がかかるんです。原口さん、何分くらいかかると思いますか？
原口：何分ですか？！10秒くらいで落ちてくると思いました。
田中：もっとかかるんです。例えば上空2,000メートルの雨雲から落ちてくる雨粒は、10分ほどかけて落ちてきます。ですから10分の間で雨雲が消えるのはあることなんです。
原口：今降っている雨は、もう上空にない雨雲から落ちてきているということがあるんですね。
質問5：そろそろ暖かくなってきたので、スタッドレスタイヤを夏タイヤに変えようと思っています。でもなぜか４月に入ってから急に雪が降ったりしますよね。暖かくなったのになぜ雪が降るんですか？この先、雪が降る予想はできますか？
田中：静岡県東部の山沿いや中部の井川などは、 3月や4月の暖かい日が多くなってきた時期でも雪が降るんですよね。これは南岸低気圧が原因です。南岸低気圧とは、静岡県の南の海上を西から東へと進んでいく低気圧のことです。低気圧が近づくと雨が降りますが、この南岸低気圧は静岡県に北風を吹かせます。北風が吹くタイミングで天気が崩れると、いくら暖かい日でも急に寒くなり、山沿いは雪になってしまうというわけなんです。原口：田中さん、ありがとうございました。
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