一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践8校 成果と課題(下)

2021年05月01日(土)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2020年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた8校の担当教諭が、取り組みの内容や成果、課題を説明した。全8校の発表概要を紹介する後半の今回は、湖西白須賀小、清水西高、常葉大付属橘高、浜松西高の4校。

 

■情報を取捨選択し表現 湖西市立白須賀小 鈴木芳樹教諭 加藤健太郎教諭
 本校児童が長文を読むことや端的に文章にまとめることを苦手とする実態を踏まえ、新聞を活用した言語能力の育成を目標にした。
 「新聞クイズ」は記事の内容からクイズを出し、答え合わせをしながらどんな記事だったか児童が説明した。関心を持って楽しみながら取り組み、文字数が多くても正確に情報を読み取ろうとしていて非常に効果的だった。見出しが隠された記事の見出しを考え、実際のものと比較する実践では情報を取捨選択して簡潔にまとめ、表現を工夫しようとする姿が多く見られた。
 新聞の概念が「大人が読むもの」から「自分たちでも読めるもの」に変化したと感じる。説明文への抵抗感が減り、長文の要約力も向上した。リアルタイムを意識した上で各発達段階に適し、目的に応じた記事を選択、教材化することは難しかった。

 

20210501_01.jpg

 

■切り抜いて自分ごとに 常葉大付属橘高 塚本学教諭 杉山光輝教諭
 新聞記事を通じて生徒が自分と社会を結び、自分の意見をまとめて表現する力を養成することや、自分にできることを見つけて取り組んでいくことを狙いとした。
 授業の一環で、興味を持った記事の感想を書く「NIEノート作り」を実施した。スクラップすることで人ごとから自分ごとになる。記事について意見交換も行い、生徒からは受験の小論文や面接で役立ったと評価された。
 本校独自の課題探求型授業「タチバナクエスト」にもNIEを活用し、SDGs(持続可能な開発目標)の中から一番関心のあるテーマに関する記事を集め、掘り下げた。自分の身近なことで、どんな課題があるのかも考えてまとめた。
 生徒の様子や感想から、社会や世の中のことに関心を持つようになったと感じる。自分の言葉で意見を持てるようにもなった。

 

20210501_02.jpg

 

■即時性が学習意欲喚起 清水西高 吉川契子教諭
 一般教養や生活の知恵を身に付ける姿勢を養うために、理科の授業や自然科学部の部活動、進路指導などで新聞を活用した。
 授業では単元に応じてスクラップした記事を提示した。即時性が学習意欲を喚起するので、台風や地震などのニュースの記事は学習順序にかかわらず年間を通じて紹介した。6年ぶりに地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ2」に関しては、生徒に興味を持たせる上で新聞が非常に適切な教材だった。生徒がスクラップをして感想を書いたり、災害対策を話し合ったりもした。
 ニュースを生活に生かす習慣ができ、学習意欲の向上にもつながった。文章を読んで理解する力、書く力が向上し、誤字が減ったとも感じた。新聞の活用はさまざまな学習が深まり、広がる上で非常に重要だと考える。

 

20210501_03.jpg

 

■文章要約する能力向上 浜松西高 吉田忠弘教諭
 情報リテラシーの向上を目的とし、学習面では各教科の内容理解の深化、進路関係では大学入試の小論文や面接試験対策として効果を期待した。
 現代社会の授業の中で10分間の「新聞タイム」を設け、生徒が興味、関心を持った記事を選び、意見や感想を記録用紙にまとめた。夏休み中も新聞に触れる機会を持たせるため、「しずおか新聞感想文コンクール」への挑戦も課題とした。
 生徒へのアンケートでは文章を読み取る能力について約半数が、文章の内容を簡潔にまとめて表現する力は約6割が高まったと回答した。
 成果としては、実社会への興味の高まりや情報リテラシーの向上が挙げられる。ただ授業進度を落とさずにNIE活動を行うことは大変だった。今後はデジタル化の進行に対応したNIEの検討が急務だと感じる。

 

20210501_04.jpg

 
               ◇........................◇ 
 

■紙面授業 英語 自分の考え表現しよう 静岡英和女学院中・高 スチュアート・フレッチャー先生

 日本で働き始めた頃、日本とイギリスの生徒の違いをよく聞かれました。そんな時はいつもイギリスでは生徒は教室を掃除せず、テストも少ないと答えていました。しかし、8年近く日本での経験を経た今、日本の生徒は自分の意見を述べることが少ないと感じています。
 この違いは、両国の教え方の違いに原因があると思います。イギリスの授業では、考えることと話すことに重きを置きます。まず教師がトピックを示し、知識と理解度をチェックするための質問をします。そして生徒は議論に集中します。一方日本では、教師が講義をして、生徒がノートを取る形が続いていました。そのせいか日本人は知識を暗記することは得意ですが、自分の考えを表現することが苦手です。近年、文部科学省はアクティブラーニングの概念を「主体的・対話的で深い学び」として新学習指導要領の柱の一つに据え、この問題に取り組み始めました。最近は実践事例を紹介する記事も新聞紙面に掲載されています。
 しかし、その方法が曖昧なため教育現場は悩んでいます。イギリスでは"Pause Procedure"(一時停止法)がよく用いられます。この指導法は、教師が短い話をした後、いったん話を止め生徒にノートをチェックする時間を与えます。教師はwhyやhowのような自分の考えを深めるための質問をし、生徒同士が活発に意見を交換する場を作ります。この方法なら、授業のスタイルを大幅に変えずに実施できます。
 日本の生徒たちは自分の考えが欠けているのではなく、自分の意見を話す機会が欠けているのです。話し合いによって生徒は理解が深まり、教師も共に学ぶことができるのです。「教師は生徒の議論から学ぶ」=ラシ(フランスの神学者)=。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇ 
 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(49)「声」が社会を動かす

 今年4月、約70年ぶりに新しい1円切手が発行されました。日本郵便の公式キャラクターのクマをデザインしたもので、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密を描いた現在のものと並行しての限定販売です。きっかけは新聞の投書欄。日本郵政の社長が「他の絵柄も欲しい」といった1円切手に対する投稿に目を留めて、新切手誕生の検討を促したといいます。
 静岡新聞4月7日付の1面コラム「大自在」では、「情報源は新聞の投書欄。そこにはドラマがいっぱい転がっていますよ」という脚本家橋田寿賀子さんの言葉を紹介していました。橋田さんは投書を読みながら、人々の生活の営みや心の動きを感じ取り、ドラマ作りに反映していったのでしょう。視聴者は、主人公と自分とを重ね合わせて一喜一憂し、それがいつしか社会現象となりました。
 提供される情報に好奇心を持って向き合うと、感想以外に疑問や要望が生まれてくることがあります。それをぜひ「あなたの声」として発信してみてください。あなたの意見に共感した人々が新たな形で発信を続け、社会を動かすきっかけになるかもしれません。
 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践8校 成果と課題(上)

2021年04月03日(土)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2020年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた西伊豆町立田子小、伊豆の国市立韮山南小、静岡市立清水飯田小、吉田町立自彊小、湖西市立白須賀小、清水西高、常葉大付属橘高、浜松西高の8校の担当教諭が、取り組みの内容や成果、課題を説明した。全8校の発表概要を2回にわたり紹介する。前半は西伊豆田子小、伊豆の国韮山南小、静岡清水飯田小、吉田自彊小の4校。
 

■情報伝達力向上に効果 西伊豆町立田子小 土屋由子教諭 落合つかさ教諭
 小規模校であることを強みとして全教職員でNIEに取り組み、自分の学びを他の人に理解してもらう力、情報伝達力の向上を目指した。新聞が子どもたちの身近なものになるような環境づくりから始め、授業での活用、学習ツールとしての定着を進めた。
 1年生の授業では新聞から季節が分かる写真を探し、そこから感じたことを書く活動を行った。児童は写真が同じでも、いろいろな表現があることを学んだ。社会科で特色ある地域の暮らしについて学び、新聞形式でまとめた5年生は新聞のレイアウトや見出しを手本にし、読者の興味を引き、分かりやすくなるように生かした。
 児童は自分の思いを分かりやすい文章で書き、情報の取捨選択もできるようになった。情報伝達力の向上にNIEが大きな効果を発揮したと感じる。

 

20210403_1.jpg

 

■環境問題の視野広がる 静岡市立清水飯田小 小川訓靖教諭
 知識や体験、社会事象などがつながり、自己の中で再構築、系統化されていく「喜び=目標達成から生まれる自信」を味わうことが、知識獲得や語彙(ごい)力向上、豊かなものの見方を育むことにつながると考え、そのための資料やツールとして新聞を活用した。
 「なぜ水は飯田にとって宝なのか」をテーマにした総合的な学習の締めくくりに新聞を用いた。地元の川にはごみが多いと気付いた児童に海洋プラスチックに関するいくつかの記事を提示した。地域から世界的な環境問題へと視野を広げ、自分事として考えられた。
 毎週1回、共通の記事を読んで要約し、自分の考えを書いてまとめる活動も行った。家庭学習としても取り組み、知った事実や考えを家族に伝える児童も多く見られた。新聞への抵抗感が薄れ、親しみを抱くようになった。

 

20210403_2.jpg

 

■多面的に考える力養う 吉田町立自彊小 大柳知穂乃教諭 森祐介教諭
 校内研修にNIE教育を効果的に絡めることにより、本校が目指す「対話を通して、より客観性のある考えをつくる授業」に迫ろうと考えた。各学年、道徳科とそのほか各教科の重点単元に絞り、身に付けさせたい力を押さえた上で記事内容を選定して活用した。
 4年生の道徳科では、発達障害のある子が特別席でJリーグを観戦するという記事について考えた。児童が多面的、多角的に考える姿が見られた。授業以外にも日常的に新聞を身近に感じる環境づくりを進めた。いつでも新聞を見られるようにし、新聞切り絵作家を招いた授業で新聞に対する親しみを育んだ。
 児童からは「内容が面白くて思うことがたくさんあったから、学習に役立っていると思う」などの感想があった。子どもの成長と教員の授業力向上につながった。

 

20210403_3.jpg

 

■自分なりの考え深める 伊豆の国市立韮山南小 山本順也教諭
 「自分の考えを深め、広げるNIE」をテーマに実践を重ねた。新聞は情報を詳しく知ることができ、時間をかけて何度も読み直せる良さがある。世の中の出来事に対する関心が高まり、考えを深め、広げていけるのではないかと考えた。
 児童が新聞をいつでも手に取れることを第一に考え、昇降口に新聞コーナーを設置した。ジャンルを決めずに教員が興味を持った記事も掲示し、児童がいろいろな出来事に関心を持てるようにした。近くに付箋を置き、記事についての感想を書けるようにもした。これによって自分なりの考えを持つ子が増え、考えを深めることにつながった。
 関心が高まれば成果が表れることは実感できたが、自主的に新聞を読む児童はまだ少ない。授業で新聞を計画的に取り扱うことが今後の課題になると感じた。

 

20210403_4.jpg

 
               ◇........................◇ 
 

■紙面授業 理科 シラスに混じる生物 島田樟誠高 近藤正先生

 春の風物詩として、静岡県ではシラスがその一つに挙げられます。近年は不漁続きで心配ですが、幸いに今年も県内のシラス漁が解禁になり、新聞紙面でも大きく取り上げられました。
 シラスは、主にカタクチイワシの稚魚です。県内では釜揚げシラスとして売られているのをよく見掛けます。カタクチイワシの稚魚は群れで生活していますが、イワシだけを狙って取るのは困難でさまざまな生き物が混獲されます。
 それらは、独特な形をしているものが多くチリメンモンスターと呼ばれて観察会が行われています。私も以前、授業で扱うためにシラス漁の混獲物を業者の方からいただき、朝から晩までピンセットでつまみ続けたことがあります。その中からは、魚類だけでなく甲殻類、頭足類、底層を引いたわけでもないのに貝類まで出てきました。さらに詳しく調べていくと、この小さなチリメンモンスターがあの成体になるのかという驚きがある一方で、種を判別できないこともありました。知識や経験が不足していることは否めませんが、ウナギがそうだったようによく知られている生物の子どもがどんな形をしているのか、いつどこで産卵するのかいまだに分かっていない場合があるのです。
 何の子どもかを明らかにするためには、海で採集した標本から少しずつ小さく未熟な個体を見つけてつなげていくか、親から卵をとって飼育した結果と比較をする必要があります。DNAを調べることができればより正確に種を判別することができます。購入したシラスからよく知られた生物の子どもが初めて発見されることも十分に起こり得ます。まだ誰も知らないチリメンモンスターの正体を明らかにするのは、これからシラスを食べるあなたかもしれません。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇ 
 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(48)想像力を深める契機に

 20年ほど前、筆者が教員を目指し再入学した大学では、鳴門教育大学の大学院生との間で行われる「遠隔授業」という科目がありました。大学院でさらに深く学ぶ現職教員もいて、そうした院生と大学3年生が、徳島と京都を映像を介してつなぎ、チャットを使って教育に関して討論するというものでした。それが現在のオンライン授業の先駆的な取り組みであったことを、最近の記事を読み込む中で振り返りました。
 新聞に日常的に接していく意義は、読者が過去の自身の体験を振り返ったり未来の社会の姿を思い描いたりと、想像力を深めるきっかけを与えてくれることです。
 そのような新聞に興味をもった生徒の1人が、この春メディアを研究する大学に進学しました。彼は総合学習の一環であった筆者のゼミ活動に参加し、静岡新聞社を訪問した際にも記者の方の話に熱心に耳を傾け、より積極的に新聞を探究していました。
 彼の進路に一つのきっかけを与えた新聞の魅力、想像力を深める魅力をこれからも伝えたいと思います。
 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=ワークシートで情報力磨く ニュース「自分ごと」に 三島徳倉小

2021年03月06日(土)付 朝刊


 静岡新聞の記事を教材に学習するワークシートを活用した授業が、三島市立徳倉小で行われている。児童らが身近なニュースを読み解き、自分ごととしてとらえて新たな発見やアイデアを見いだす楽しさを実感する。正しい情報を見極める能力も身に付け、ネット時代を生きる子どもたちの考える力を養うのが狙いだ。

 昨年12月、同校の6年生がワークシートと向き合っていた。記事は、県警がスマートフォンのアプリで歩行者用信号機の情報を視覚障害者に知らせる装置の運用を開始した―との内容で、舞台は三島駅周辺の交差点。児童らは写真や記事のキーワードから要点をつかみ、さらに便利な装置にするためのアイデアを考えた。
 三島駅の周辺は景観学習の授業で訪れたばかり。佐藤由紀枝教諭が「自分のこととして考えてみよう」と呼び掛けると、児童からは「道路の段差をスマホで教えてあげられないか」「信号が変わるまでの時間を伝えられたら」などの声が上がった。視覚以外の聴覚や発声の障害がある人も想定し、「音を大きくしたい」「文字を使ったらどうか」など次々と意見を出し合った。
 同校では、6年生の全3クラスでワークシートを授業に取り入れている。社会のめまぐるしい変化に気付いて対応する力を身に付けるとともに、新聞記事に必ず登場する「人」のつながりが世の中を作っていると知ってほしいからだ。朝のスピーチでニュースに対する考えを述べる6年生も出始めるなど、情報に対する意識は高まっている。
 今春からは1人1台のタブレット端末を配布する「ギガスクール」が始まる。情報をいかに理解して取捨選択し、自身の人生に活用できるか。佐藤教諭は「ネットは便利だが頼りすぎず、新聞やテレビなどさまざまなメディアも上手に活用できるようになってほしい」と語る。
 

2021030601.jpg

本紙記事のワークシートに取り組む児童ら=三島市立徳倉小
 

2021030602.jpg

授業に活用したワークシート
 
               ◇........................◇ 
 
■紙面授業 英語 学びがつながる喜び 浜松開誠館中・高 伊藤亮先生
 昨年9月に発足した菅内閣は、2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会を実現することを宣言し、新聞でも大きく取り上げられました。
 そんな中、昨年9月3日に気候変動・環境対策に関するオンラインの閣僚級会合が行われました。
 Platform for REDESIGN2020と名付けられたこの会合で、勤務校の生徒たちが英語のスピーチを投稿することになりました。
 伝えたいことを英語にする場合、日本語を単純に英語にするのではなく、聞き手の心に響く表現や単語選びをすることが大事です。
 例えば「地球温暖化は深刻です」という言葉をそのまま言っても印象が強くありません。"Climate Change is no longer a change.It's acrisis.(気候変動はもはやただの変動ではなく、危機だ)"
"Global Warming isn't a prediction.It'shappening.(地球温暖化はこれから起こることではなく、すでに現在起きている)"など、聞き手に思いが伝わる表現を心掛けるべきなのです。
 スピーチを作ったときには他教科で学習した知識も活用できました。green house effect(温室効果ガス)やcarbon dioxide(二酸化炭素)など社会や理科で学習した単語が登場しました。それぞれの教科で学んだ内容が教科横断的に結びつき深い学習をすることができます。
 中学・高校は新学習指導要領の実施を控えており、今後はこのような教科横断的な学びがより重要になってくると考えられます。各科目で学んだことがどこかでつながります。つながる瞬間...その瞬間を楽しみにしながら、学習していきましょう。
 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
               ◇........................◇ 
 
■NIEアドバイザーのワンポイント講座(47)総合的な探究学習と連係
 既に発表されているところもあるが、今日から悲喜こもごも国公立大学の前期合格発表のラッシュが始まる。本年度は初の大学入学共通テストということであったが、国語に関していえば、案に相違して問題傾向の激変は見られなかった。
 しかし、今後は共通テスト対策の問題集で試みられているように、写真や図、グラフ、表のコメントに正解が隠されていたり、設問字数が激増したり、そして複数文書の読み比べが求められたりすることが予想される。この対策にこそ、NIEが効果的なのである。
 この先、高校におけるNIEへの取り組み方はより細分化されるであろう。大別すれば、受験対策か社会で通用するスキルや人間性を高めるキャリア教育か、ではないだろうか。
 新教育課程の学習指導要領では、総合的な探究の時間が設定される。まずはこの時間にNIEとしてどのように関わるか、が喫緊の課題であろう。文部科学省の「未来社会を切り拓くための資質」や、経済産業省の「人生100年時代の社会人基礎力」との連係に向けての研究が肝要である。
(静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載="大人の一員" 取材で成長 「社会と接点 視野広がる」 沼津東高新聞部紙面づくりで考え深く

2021年02月06日(土)付 朝刊


 2020年度県高校新聞コンクールで最優秀賞を受賞したうちの一校、県立沼津東高新聞部。創刊は1948(昭和23)年で、現在も取材交渉からレイアウトまで部員が一貫して紙面づくりに励み、歴史をつないでいる。企業を取材することもあり、より広く社会を知る機会になっている。

 主な活動は6月と1月に発行するタブロイド紙の制作。全部員に企画案を募り、時事問題や部員の関心度などで取り上げるテーマを絞っていく。3~4人の班ごとに具体的な方針を決め、取材と執筆に取りかかる。部長の2年松永明香里さん(16)は「学校から一歩外に出て社会と接点を持つことで視野が広がる」と新聞づくりの魅力を語る。
 企業取材では、企業に直接取材を申し込むことも大きな経験。電話連絡の前に伝えたいことを書き出したり、メールは複数の部員で見直したりとマナーに配慮する。松永さんは「〝大人の一員〟として取材相手と接することを心掛けている。一足先に社会に出たよう」と振り返る。
 取り上げたテーマは多岐にわたる。安全な自転車の乗り方、文化祭など身近な話題から、高校生の政治参加、外国人労働者などの社会問題まで、受け身で学ぶのではなく、テーマごと問題を知り考えを深めるきっかけになったという。
 昨年は新型コロナウイルス拡大の影響を受け、紙面づくりに知恵を絞った。20年度の第1号は8月発行に延期となり、休校中のインターネットを活用した学習や、大会中止に追い込まれた部活動について、生徒の思いを取材した。休校中はオンラインで企画会議を実施し、延期となった東京五輪特集の代わりに教員の休校対応を掲載するなど工夫を凝らした。
 取材したことが、記事を書くことによって整理されていくのは、新聞づくりの醍醐味。副部長として紙面全体を統括する2年鈴木佑典さん(17)は「取材相手の伝えたいことを伝えるのが新聞」と力を込める。
 「話を聞いていて相手が前のめりで伝えようとしてくれるとうれしくなる。自分の解釈でニュアンスの異なる文章を書かないよう、相手を尊重する姿勢を持ち続けたい」と新聞発行への決意を語った。
 
20210206_01.jpg
新聞のレイアウトを話し合う新聞部員=沼津市の沼津東高
 
20210206_02.jpg
これまでに発行した学校新聞

 

               ◇........................◇ 

 

■紙面授業 情報 「プログラミング」とは 浜松聖星高 園川香おり先生

 小学校のプログラミング教育が必須化されると新聞報道があったのは2017年2月のことでした。小学生からプログラミングを学ぶということに賛否両論あったことを覚えています。
 しかし2018年の国際学習到達度調査(PISA)の結果、授業や家庭学習でパソコンなどを活用する割合が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で日本が最下位と報じられてからは、否定的な意見も徐々に変化していったと感じています。
 そもそもプログラミングは「問題を解決」するための行為であり、「プログラミングをする」ことが目的ではありません。そして情報機器は「使う」道具であり「所有する」だけのモノではありません。
 はじめは、例題をまねしてプログラムを作ってみましょう。「問題を解決する行為」を「情報機器を使って」行う体験が、プログラミングの楽しさを教えてくれます。コンピューターは、何度間違っても文句を言いません。飽きもしません。それが人とは違うコンピューターの特殊能力なのです。そして面倒だったり大変だったりすることをプログラムで解決できないかと考えてみましょう。皆さんの周りにある情報システムは、そういう気付きからできているのです。
 また、ゲームや動画視聴が大好きならば、なぜ時間を忘れるほど楽しいのかも考えてみてください。きれいなグラフィックスや美しい音楽をもっと感じてください。一度見ただけで内容が伝わるコンテンツの表現方法、滞りなくなめらかな通信など、目の前の小さな箱の中には、さまざまな技術が詰まっています。
 来年度には中学校、再来年度には高校でもプログラミング教育が本格化します。コンピューターの膨大な記憶領域と日々進化する判断力を味方に目の前の問題にぜひ挑んでください。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇ 

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(46)線引きながら記事読む

 生徒に書く力をつけるためには、新聞記事を読ませ、感想を書かせる取り組みが有効です。新聞に掲載されている写真を見て、感想を書くなどの発想力のウォーミングアップが終わったら、記事の感想・意見を書きます。授業内容と関連するものや、生徒に考えさせたいテーマの記事を選び、書かせます。「NIEワークシート」を使うのもお勧めです。
 ステップ1、線を引きながら読む。分からない言葉や言い回しには傍線を、興味を持ったところには波線を引かせます。波線を引いた箇所を周りの生徒と見比べさせるのも違う視点に気付かせる方法の一つです。
 ステップ2、感想・意見を書く。正解・不正解はないので自由に感想・意見を書かせましょう。しかし、なかなか書けないという生徒には、「つなげる」「くらべる」という視点を示します。「つなげる」は因果関係、原因・結果や影響を考えさせることです。「くらべる」は、他国や昔はどうだろうなどと比較することです。
 よく書けたものは、静岡新聞の投書コーナー「ひろば10代」に投稿させると生徒の励みになります。
 (常葉大常葉中・高・塚本学)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2020年12月05日(土)付 朝刊


■紙面授業 宗教 身近な環境に関心を 静岡サレジオ高 内藤紗絵先生

 故郷の匂いが思い出せなくなった。大学進学と就職を機に地元を離れ、15年ぶりに戻ってきた私は、最近ふと、このことに気付きました。その匂いは、サクラエビを天日干しした時の匂いです。今でも富士川の河川敷で見られる光景ですが、幼少期は家の近所でも天日干しされているサクラエビが空き地を赤く染め、その匂いが一帯に広がり季節を感じる瞬間の一つでした。しかし、今ではその様子が近所では見られなくなり寂しさを感じます。

 近年、駿河湾の漁港を騒がせるサクラエビの水揚げ量の減少。そのニュースは、私が働いていた九州の職場にまで届きました。本質的な原因が何かはまだ解明されていません。駿河湾に流れ込む河川やその沿岸にダムなどが建設されたことで、川から駿河湾に流れ込みサクラエビの餌となっていた植物プランクトンが減っているのではないかという説もあり調査中です。こうした経過を追うニュースが度々、新聞紙面で報じられています。

 昨年、キリスト教ローマ教皇フランシスコが訪日されました。その根本的なテーマとなった回勅「ラウダート・シ」は、2015年に環境問題に対するカトリック教会の責任について述べられたものです。全ての命は神によって創造され、その中でも人間は神の似姿に造られています。そのため、人間には地上のものを従え、守る責任があります。しかし、人間は暮らしを良くすることだけを考え、環境への配慮が欠けてしまいました。その結果、改善が迫られています。

 私は故郷の匂いを忘れたことによって、改めて身近な環境問題に目を向けることができました。もしかしたら、それは私たちがともに暮らす地球からのメッセージだったのかもしれません。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇ 

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(45)はやぶさ2 軌跡紹介を

 飛行時間6年、52億キロの長旅を経て、探査機「はやぶさ2」が地球に帰って来ます。6日未明に、小惑星りゅうぐうの石などが入っているとみられるカプセルを、オーストラリアに投下予定です。世界が注目しているプロジェクトであり、帰還を伝える新聞を教室に掲示し、紹介したいものです。

 天文分野の話題に興味を示す児童生徒は多いものです。この機会に、今までスクラップしていた記事を活用しましょう。理科の授業はもちろん、特別活動で取り上げることができます。

 手元に、2014年のはやぶさ2打ち上げ前や、タッチダウン成功時の感動の記事があります。折々に新聞はその軌跡を取り上げてきました。長期間に及ぶ旅路を振り返ると、宇宙の壮大さを実感できます。科学者の挑戦魂にも関心を向けさせたいものです。

 11月12日に亡くなられたノーベル物理学賞受賞者、小柴昌俊先生の追悼記事や、日本などの国際チームがブラックホール初撮影といった宇宙分野における日本人の活躍を報じる記事も示して、天文学者を夢見る子どもたちの未来にエールを送りましょう。

 (清水西高・吉川契子)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=社会問題 記事で気付き 吉田・自彊小で公開授業 「コロナ禍 自分にできることは」議論 深く読み込み視野広く

2020年11月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の吉田町立自彊小でこのほど開かれたNIE教育研究発表会。国語、社会、道徳の授業を同校教諭が公開した。新型コロナウイルス感染症に関する新聞記事を活用しながら授業を展開し、児童は多角的な視点から学びを深めた。

 社会科の授業は、森祐介教諭(34)が4年生約30人に対して行った。テーマは「コロナ禍の生活の中で自分たちにできること」。外出の自粛による家庭ごみの増加、マスクのポイ捨て、ごみを収集する作業員の感染リスクといった社会問題を伝える記事を選び、児童に読んでもらった。

 森教諭の音読に合わせて傍線を引くなどして記事に目を通した児童ら。「使い捨てではなく、繰り返し使える布マスクをなるべく使う」「マスクのポイ捨てをしないように周りの人に呼び掛ける」と、ごみを減量する方法を積極的に発表した。

 「新聞記事を根拠に考えてみて」。森教諭のアドバイスを受けてさらに記事を深く読み込むと、児童に新たな気付きが生まれた。ごみ収集の作業員や清掃員の感染リスクを踏まえ、「ごみ袋からマスクが飛び出さないよう、別の袋に入れてから捨てる」などと、違った視点からの意見が出てきた。

 県内小中学校の教諭など教育関係者約70人が参加した。自彊小は実践指定校2年目で、休み時間や読書の時間に新聞を読む児童の姿がよく見られるようになったという。森教諭は「子どもたちが自分の思い込みではなく、ニュースを読んで物事を考えることで、視野が広がっている」と効果を実感する。

 公開授業の後に行った全体会では、同校の取り組み状況を参加者が共有した。教室内に設けている「新聞コーナー」や、朝の会で日直が興味を持った記事をクラスメートに紹介する「新聞スピーチ」など、日常的に新聞に親しむことを目的とした取り組みを同校の担当教諭が説明した。

 

20201107.jpg

森祐介教諭(右)の授業で新聞記事を読み込む児童ら=吉田町の自彊小

 

               ◇........................◇ 

 

■紙面授業 理科 陸守る茶草場農法  不二聖心女子学院中・高 平本政隆先生

 6月、コロナ禍で減少した茶の販売を促進するために、JA静岡経済連などが国の支援を活用し、県内の学校等に茶の配布を検討しているというニュースが新聞に掲載されました。既に各校への配布は始まっているようです。

 日本一の生産量を誇る茶どころである静岡の茶草場農法が世界農業遺産に認定されているのはご存じでしょうか。茶草場農法とは茶草場と呼ばれる草地から草を刈り取り、茶園の畝の間に敷き込む伝統農法で、土壌の状態が良くなり、おいしいお茶ができるといわれています。認定されているのは掛川地域4市1町ですが、県内で広く実践されています。本学院は裾野市にありますが、約69ヘクタールのキャンパス内にある不二農園でも100年以上前から茶草場農法で茶を栽培しています。

 茶草場は絶滅危惧種を含む豊かな生物多様性が見られる貴重な環境でもあります。毎年、人の手が入り、草刈りが行われる茶草場で豊かな生物多様性が見られるというと、意外に思われるかもしれません。生物基礎の授業では植生遷移を学びます。草地は時間がたつと、樹木が侵入してきます。樹木が育ち、地面に届く光が少なくなると、草地を好む多くの植物は生育ができなくなり、植物の種類は減ってしまいます。人が草を刈り、樹木が侵入する前に遷移を止めることで、地面に多くの光が届き、多様な植物が生育できる環境が保たれるのです。

 茶草場農法は、茶栽培という人間の営みと生物多様性とがうまく両立していることが高く評価され、世界農業遺産に認定されました。静岡のおいしいお茶を飲みながら、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、15「陸の豊かさも守ろう」や、人間と自然との共生について考えてみてはいかがでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇ 

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(44)新聞で学んだ「音楽の力」

 このコロナ禍において、文化や芸術は不要不急なものとする向きがあります。私自身も「衣食住ではなく、娯楽のひとつ」と思っていた音楽。しかしこの時期に音楽と向き合う意味を考えさせてくれたものがあります。

 現在は歌うことも楽器で演奏することもままならず、音楽への取り組み方を見失っていた矢先、本校では音楽集会を開催することになりました。選曲する段階で、「この状況下で何ができるのだろう」と考えた時、ある新聞記事を思い出したのです。それは、小学校の音楽会で決して主役になれない地味な楽器カスタネットを主要パートにした小学生向けの合奏曲を紹介したものでした。子どもたちに記事を見せると「やってみたい...」と反応。そこでその合奏曲を音楽集会で演奏しました。

 いつもは脇役の子どもたちが飛沫[ひまつ]心配なしのカスタネットで主役になり、のびのびと自分の演奏表現ができたことが、音楽の楽しさへとつながったのです。

 最近は「コロナ禍に音楽の力」と銘打った見出しが目につきます。新聞記事で「音楽って楽しい」の気持ちを育ててみませんか。

 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=自宅学習にも新聞を スクラップ 記事と自分 結び付けて コラージュ 色、質感 選ぶ練習 静岡井宮小 中村都教諭 寄稿

2020年10月03日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルスの感染対策による休校や外出の制約は、自宅学習に取り組むきっかけになった子どもたちも多いことだろう。家で過ごす時間が多くなれば、じっくり新聞に親しむ好機。自宅で気軽に取り組める新聞を活用した学習を、NIEアドバイザーの静岡井宮小教諭、中村都さんに紹介してもらった。

 

 コロナ禍でも家庭でできる、新聞を使った二つの「自分の学び」を紹介します。

 まずは、切り抜いた記事を基に、自分の思いや考えを書き込んでいく新聞スクラップです。記事の内容と自分とを結び付けて、そこから見えてくるもの・考えられることをまとめていくものです。

 最初は、自分が気になる記事を集めていきますが、次第に自分がどのような分野に興味・関心があるのかが分かってきます。それが一つの分野に集中しているとすれば、次回からはそこに注目して見ていけばいいのです。例えばそれが食の分野ならば、今話題の、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)から食品ロスにつなげていくことができます。窓口を狭めると、事実を深く掘り下げて考えるために、記事から離れ新聞以外の手段での情報収集が始まります。それが自分の学びとなるのです。

 二つ目は、新聞から色鮮やかな写真や広告を好きな形に切り取りレイアウトする「新聞コラージュ」です。従来のコラージュと違い、そのままの形を切り抜くわけではないので、新聞という素材のどの部分から、どんな形を切り抜こうかと考えるのです。それは色・質感・形という情報を取捨選択する情報リテラシーとなり、幼い子どもたちでも十分に取り組めるNIEと言えるでしょう。

 「この洋服の模様はクラゲの体に使えるよ」「この丸いチョコレートは魚の目になるね」。このような会話を交わしながら、親子で取り組んでみると楽しいですね。

 幼稚園・保育園児や小学校低学年にお勧めのテーマは、「たのしいうみのなか」です。「スイミー」(レオ・レオニ作)の絵本を参考に海の中の様子がイメージできると、子どもたちは材料集めに動きだします。

 中学年以上は、自分のイメージをより明確に表現するために、新聞紙特有の柔らかな紙質や微妙な色合いを利用し、細かい作業に挑戦してみてください。きっと楽しい学びになるはずです。

 

2020100301.jpg

中村都教諭が作成した新聞スクラップ例。SDGsをテーマに記事から考えをまとめた

 

2020100302.jpg

海中をテーマに、新聞素材でコラージュした中村教諭の作品

 
               ◇........................◇ 

 
■紙面授業 家庭 食品選択の学び方 加藤学園高 坪内春花先生

 都心を中心に街でよく見かけるようになったウーバーイーツ。今年6月、静岡、浜松市の一部地域限定ではありますが、ついに県内でもサービスが開始され、新聞でも大きく取り上げられました。
 ウーバーイーツをはじめとするデリバリーやお持ち帰り文化が定着しつつある現代では、食べ物に簡単にアクセスできます。家にいながらスマートフォン一つで、家庭で作るのは難しい本格料理から海外の食事まで、簡単に手に入るようになりました。
 現在、高校生が使用している家庭科の教科書には、「食品の選択」という項目があります。期限表示やアレルギー表示、栄養成分表示などを学びながら、より良い食品選択ができるようになろうという内容です。この授業では、コンビニ弁当や菓子パンのパッケージなどを見て、一日に必要なエネルギー量と比較をしてみたりします。しかし、ウーバーイーツで頼んだ商品にはこの食品表示の記載はありません。栄養成分はおろか、期限表示の記載すらない場合も多いのです。
 実は現行の法律では、外食店でのデリバリーやテークアウトは店舗でのメニュー表示と同じ扱いとされ、食品表示法に基づく表示義務はありません(店舗内調理施設で調理した場合)。そのため、消費者は栄養成分やその他の項目を知らないまま、商品名や「映え」を意識した写真から注文をすることになります。
 時代が変化する中で生まれる、生活を助けるアイテムは活用すべきです。しかし、その中で健康な生活を送るためには、根本は見失わず、時代に合わせた生き方や学び方が必要なのかもしれません。
 私も、「映えた写真からバランスの取れた食事を選んでみよう!」なんて授業をしたら、面白いだろうかと、日々の生活の中で若者に合った学び方やネタを探し続けている最中です。
 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇ 

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(43)新聞の面白さに気付く

 「これで、勝負しない?」。妻の手には毎週土曜日の静岡新聞別刷り「とっとこ静岡」に掲載されている数独の問題。試しにやるも悪戦苦闘。ほほ笑む妻の姿に悔しさ倍増といったところでした。私事ながら、このささいな出来事が、筆者のNIE活動に大きなヒントとなりました。

 例えば、先日高校1年生の政治経済の授業で安倍首相辞任会見の新聞記事の比較を行いました。生徒に意見を求めると、新聞による安倍首相の写真の大きさの違いや、政権への評価の記述の違いなどに関する発言もあり、非常に丁寧に生徒たちが記事を読み込んでいることが分かりました。

 数独の例と同じく、新聞には読者の興味をひくさまざまな要素があり、読者は新聞の面白さに気付く時間が少ないだけなのでは、と思いました。

 そこでこんな取り組みはどうでしょう。勤務校の新聞掲示板に今年、「社会の縮図 新聞を、味わおう!」という言葉を筆者は貼りました。1982年にコピーライターの糸井重里氏が世に出した有名な言葉「おいしい生活。」のように、新聞を生徒が味わえる、そんな現場を生み出していきたいと思っています。

 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=コロナ禍の社会 歴史に学ぶ 常葉高 関連記事で授業 公益、人権テーマに議論

2020年09月05日(土)付 朝刊


 静岡市葵区の常葉大常葉高で8月下旬、過去の感染症の世界的流行に今のコロナ禍をなぞらえた新聞記事を読む授業が行われた。「感染防止のための隔離政策」が「個人の自由を奪う」―という相克関係が主題。生徒は公益と個人の両方の視点に立ち、迷いながら議論を進めた。

 参加したのは1年生23人。20世紀初めのニューヨークで、健康保菌者として自覚がないままチフス菌を拡散し、島に隔離された米国人女性「メアリー」について取り上げた「大自在」(2月25日付)や、社会不安が差別や分断に転じていくカミュの小説「ペスト」の紹介記事を読んだ。生徒は関心ある部分に書き込みなどをしながら読み込み、社会不安を招く感染症の流行が世界で過去に何度もあったことに驚いていた。
 続いて、大自在の「感染拡大の防止という公益のためには個人の自由を奪ってもいいのか」との一文を重視し、グループワークで賛否を話し合った。「未来の自由のための我慢」「隔離するのは仕方ない」と個人の犠牲を消極的に肯定する意見がある一方、「健康保菌者になりたくてなったわけではないのに責任を取らされることは不条理だ」とメアリーの苦境に同情する意見も。「自由を奪われることはつらい。でも個人に自由を許せば感染が拡大してしまう」と、両立の難しさを実感する声も多く上がった。
 生徒の意見を集約したNIE担当の塚本学教諭は「社会の不特定多数の命を救うためには少数の人間の自由が制限されても仕方ないのかな、と私も思う」としつつも「ただ、弱者を虐げることをいとわない、そのつらさに気付きもしないことは大きな問題だ」と指摘。現在のコロナ禍に触れ、「記事をきっかけとした意見交換を通じて違う視点に触れ、自らの考えをバージョンアップしていくことがNIEの意義」と話した。

 

2020090501.jpg

記事のコピーで関心のある部分を囲ったり、関連して気付いたことを書き込んだりして記事への理解を深めていく

 

2020090502.jpg

感染拡大を防ぐために個人の自由の制限がどの程度まで許されるかについて、話し合う生徒たち=静岡市葵区の常葉大付属常葉高

 
               ◇........................◇ 

 
 
■紙面授業 地歴・公民 人類と感染症の戦い 藤枝明誠中・高 山内正邦先生
 新型コロナウイルス感染拡大のニュースが連日、新聞紙面を埋めています。振り返ってみれば、これまでの人類の歴史は、感染症との戦いの歴史でもありました。
 世界史上で有名なものはペストです。この病気は何度もパンデミックを引き起こし、特に中世ヨーロッパでは当時の人口全体の3分の1が失われたとされています。また、20世紀前半に猛威を振るったスペイン風邪では、全世界で5千万人以上が死亡したということです。
 日本史上の感染症としてまず挙げられるものは天然痘です。天平時代の8世紀前半に大流行、当時の日本人の3割以上が亡くなったとされています。その後、江戸時代のコレラ大流行など、感染症の影響は大きいものでした。
 しかし人類も負けてはいません。18世紀末、イギリスのジェンナーが始めた天然痘の予防接種を19世紀にフランスのパスツールが研究しワクチン開発に成功、医学発展につながりました。さらに20世紀前半にはイギリスのフレミングにより初の抗生物質ペニシリンが誕生、以降多くの薬学研究が進められました。
 病理学研究だけではありません。天然痘が流行した天平時代の日本では、社会不安を除く願いを込め、毘盧遮那仏[びるしゃなぶつ]つまり奈良の大仏や、国分寺を建立しました。また743年に発布された墾田永年私財法は、経済復興の手段でもありました。
 現在、私たちも先の見えない不安にさいなまれています。しかし、人類は多くの犠牲を払いながらも知恵と工夫、そして社会を変えようとする勇気により何度も立ち直ってきました。今回も日本、そして世界の明るい未来を信じ、人々が安心して手と手を取り合う世の中を私たち自身により再興できることを願ってやみません。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
 
               ◇........................◇ 

 
 
■NIEアドバイザーのワンポイント講座(42) 医学部入試対策にも新聞
 現在、筆者は2年連続で3年生の担任をしている。激動の卒業生を送り出したと思ったら、波乱の受験生を受け持つこととなった。さまざまな情報が飛び交い、刻々と状況が変わる昨今だが、受験生は一意専心、粛々と勉強にいそしもう。
 今年は特に、医師になることを希望している生徒が多いクラスを担当しているので、新聞を利用した医学部受験対処法を紹介したい。
 医学部は国公立・私立を問わず、面接と小論文の双方を課すところがほとんどだ。
 面接と小論文の対策は、実は表裏一体である。世間で話題になった医療ニュースについてはあらかじめ、しっかり自分なりの意見を持っておこう。スクラップノートを作り、考えをメモしておくと良い。難しいことを言ったり書いたりする必要はなく、新聞記事の書き方である「逆ピラミッド型」で対応するのだ。
 その体得は文体獲得という目的を持ち新聞を読む・情報取得からの思考形成ツールとして新聞を捉える、という意識醸成しかない。
 実際、過去に静岡新聞の記事より、浜松医科大学医学科の小論文の課題文が引用されている。医学部合格は、教科学習だけでは勝ち取れないことを肝に銘ぜよ。
 (静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=人思いやる大切さ学ぶ 掛川・桜が丘中 「コロナ差別」防ぐ道徳授業 新聞活用し意見交換

2020年08月01日(土)付


 NIE実践指定校の掛川市立桜が丘中で休校期間が明けた5月下旬、新聞を使い「コロナ差別」を防ぐ道徳授業が行われた。全校生徒が四つの新聞記事から差別が起きる理由を考え、人を思いやる大切さを学んだ。
 
 休校期間中に発熱者待機部屋を校内に設置した同校は、県内外で相次ぐ新型コロナウイルス感染症に対する差別が学校でも起こる可能性があると考え、授業を企画した。記事は長距離トラック運転手が差別を恐れる話、病院スタッフがタクシーの乗車拒否を受けた事例、感染者の家に落書きがされた被害、県外ナンバーの車に傷がつけられた事件の四つ。生徒はそのうち一つの記事を読み、感想を発表した。
 生徒からは「病院スタッフなど感謝しなくてはいけない人を傷つけるのはよくない」「人を傷つけているのはウイルスではなく人間だ」などの意見が上がった。さらに「自分が感染したくないから」「不安に思う気持ちがあるから」など差別が起こる仕組みも分析した。2年の鈴木煌也さん(13)は「感染した人はなりたくて感染者になったわけではない。差別をする人は相手を大切に思う気持ちが足りない。全ての人に感謝する気持ちを忘れないようにしたい」と意見を述べた。
 意見交換後、教員は生徒に空き教室に設置した発熱者待機部屋の写真を見せた。「クラスの仲間がこの部屋にいたらどうするか」という教員の問いに、生徒は「普段通りの態度をとる」「心配して嫌がるような発言は絶対にしない」と答えていた。
 NIE担当の石神克海教諭(27)は「生徒にはコロナに対する恐怖心があると思うが、怖さから人を差別してはならない。弱い心を乗り越え、他者を思いやって生活していくことを考えさせたかった」と授業を計画した狙いを語った。複数の記事を活用したことについては「生徒の視野が広がり、タイムリーな話題をさまざまな角度から考えることができたのでは」と手応えを感じたようだ。
 

20200801_01.jpg

新聞記事を読み差別が起こる理由を考え、意見を共有する生徒=掛川市立桜が丘中
 

20200801_02.jpg

空き教室に設置された発熱者待機部屋
 
               ◇........................◇ 
 
■紙面授業 化学 進化する単位の定義 磐田東中・高・外山昌介先生
 新型コロナウイルスが流行しなければ、ちょうど今ごろ、東京五輪・パラリンピックで盛り上がっていたことでしょう。何年もかけて鍛えた選手たちの100分の1秒や、1センチを競い合う熱い姿を早く見たいものです。
 さて、その時間や長さの定義が変更されたのはご存じでしょうか。世界では、国際的に統一された時間や長さ、質量などの七つの単位があります。2019年5月20日からその単位の定義が新しくなりました。例えば秒の定義は、「セシウム周波数Δν、すなわち、セシウム133原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位㎐(s-1に等しい)で表したときに、その数値を9192631770と定めることによって定義される」となりました。一度読んだだけでは、理解できないような内容です。以前の定義は、地球の自転や公転に基づくもので、1日の86400分の1を1秒とする、などでした。しかし、地球の運動周期も微妙に変動していることが判明し、もっと正確な1秒が必要となりました。今回の変更で1秒は、「セシウム133原子が91億9263万1770回振動するのにかかる時間」と新しくなりました。では、なぜセシウムが選ばれたのでしょうか? なぜ、9192631770回の振動なのでしょうか? 調べてみると面白いですよ。
 普段、何げなく使っている秒やメートル、キログラムといった単位は、不確かなものを排除して絶対的な基準を作り、細かな定義の上に成り立っているのです。今ではさらに研究が進み、300億年に1秒しかずれない時計がストロンチウムを使って開発されています。また定義が変更される日がくるかもしれませんね。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
               ◇........................◇ 
 
■NIEアドバイザーのワンポイント講座(41)記事読み 発想力育てる
 書く力の重要性は近年、とみに増している。それは入試ではもちろんのこと、「生きる力」にもつながる大事な力だ。しかし小論文指導をしていると、何を書いたらよいか分からないという生徒、そもそも課題文を読み取れない者などが続出である。
 そんな問題の解消のため、新聞記事を読ませ、感想を書かせている。新聞に載っている写真を見て、感想を書かせることもある。「感じる力」を引き出すためだ。「発想力」のウオーミングアップである。
 例えば、東日本大震災の「奇跡の一本松」の写真。あの写真を見て、「前の姿を知らない人からすれば、この一本松は希望の象徴に見えるかもしれない。でも、7万本もあった前の姿を知っている人からすれば、津波の威力を証明する以外の何物でもない」という感想があった。このように立場や視点を変えてみると違って見える。正解・不正解はないので自由に発想することから始め、自分なりに表現することの楽しさを味わってほしい。
 入試に使えるか否かを考えず、世の中のあらゆることに興味・関心を持たせたい。そのために新聞は有効なツールだ。
 (常葉大常葉中・高・塚本学)

 
               ◇........................◇ 
 
■NIE実践校 県内新規4校 本年度 日本新聞協会
 日本新聞協会はこのほど、2020年度のNIE実践指定校535校を決定した。新規指定校は227校で、県内からは県NIE推進協議会が推薦した新規4校と継続10校の計14校が認定された。
 県内の新規校は、三島南中、静岡大河内小中、掛川桜が丘中、清水特別支援学校。継続校は、2年目が伊豆の国韮山南小、吉田自彊小、浜松城北小、湖西白須賀小、小山中、浜松西高、常葉大橘中・高。3年目が西伊豆田子小、静岡清水飯田小、清水西高。
 実践期間は原則2年間で、新聞を活用してもらうため同協会と新聞社が購読料を補助する。

 

20200801_03.jpg
 
               ◇........................◇ 
 
■新聞感想文コンクール 児童・生徒の作品募集 来月、締め切り
 静岡新聞社・静岡放送は、児童・生徒を対象にした「しずおか新聞感想文コンクール」の作品を募集している。
 同コンクールは、児童・生徒が新聞を通じて活字に親しみ、読解力と表現力を養い、地域や社会への関心を高めることを目的に行われている。対象は小学4年生から高校生まで。小、中、高の3部門に分かれて審査し、上位入賞作品は新聞紙面に掲載する。応募者全員に参加賞を贈る。
 応募概要は次の通り。
 【課題】2020年1月1日~8月31日の新聞記事を読んでの感想
 【締め切り】9月7日必着
 【応募方法】応募要項を取り寄せて確認する。
 【問い合わせ・要項請求先】静岡新聞社読者部内コンクール事務局<電054(284)8984>へ。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2020年07月04日(土)付 朝刊


■紙面授業 数学 論理的思考力養う 御殿場西高・桑迫雄大先生
 「数学は何に使うの?」。教員になってまだ10年もたたないのですが、このような質問を何度も耳にします。中学校・高校で学習する数学は、移動する点Pについて考えたり、2乗してマイナス1になる虚数iについて考えたりと、算数とは違って日常生活から離れていることが多いのです。数学で学んだ知識を直接利用する人は限られています。「では、数学は習わなくてもいいのではないか」という問いには、そうではないと答えます。
 数学では「~を証明せよ」「(条件)を満たすaの値を求めよ」といった問題をよく目にします。答えが与えられていて、その過程を問われることが多いからです。これらの問題は一つ一つの工程で「~であるから、~になる」という根拠のある道筋を立てながら、論理的に解いていきます。根拠があいまいなまま進めてもどこかで矛盾が生じたり、欠点が見つかったりします。このように数学では、論理的に解くということを意識します。そのため、数学を学習していけば論理的思考力を養うことができるはずです。
 今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中が混乱状態になり、新聞には連日関連のニュースが掲載されています。非常事態の中では、原因と結論が結びついていないデマ情報に惑わされ、それによって日用雑貨の買い占めなど感情的な行動が目立ちました。自身を守ろうとする行動が他人を傷つけてしまい、多くの混乱を招いたりしてしまいます。
 コロナウイルスによる社会の混乱は誰もが初めての経験です。今後も、さらに初めてのことを経験するでしょう。人々が協力して生活しなければならないときこそ、感情的ではなく数学で学ぶ論理的な思考による正しい行動が大切になります。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
               ◇........................◇ 
 
■NIEアドバイザーのワンポイント講座(40)隠れた問題から気付きへ
 新型コロナウイルス関連ニュースが、連日報じられています。その中に「環境」分野に関するものが潜んでいます。教室で、「地球温暖化に関する記事を探してみよう」と呼び掛けました。
 夏の暑さが年々厳しくなり、熱中症対策が大切になっています。しかし今夏は、新型コロナ対策としてのマスク着用が求められ、熱中症リスクを高める、と指摘する記事に多くの生徒が関心を寄せました。生徒たちの感想は「こまめな水分補給などの熱中症対策を心掛け、健康管理に留意したい」と冷静です。
 個々のライフスタイルを工夫することも大切ですが、地球規模で考える対策にも目を向けさせたいものです。
 新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停止で、二酸化炭素排出量が減少する、と試算する記事に興味を持った生徒もいます。地球温暖化防止のために新しい生活様式をどのように生かすか、ということが、今後の課題と気が付いたようです。
 新聞を読み、考え、感想を書くという一連の作業を通じ、今年遭遇した局面を若い生徒たちが、柔軟な思考力で前向きに乗り切ることを期待しています。
 (清水西高・吉川契子)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=学校新聞 休校中ネット配信 3カ月56回 情報で生徒つなぐ 韮山高 写真報道探究部

2020年06月06日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休校期間中、県立韮山高(伊豆の国市)の写真報道探究部は学校新聞の速報紙「龍城学報」の発行を続けた。生徒たちの学校生活の情報不足や不安に応えようと、制作と配信はネットを活用し、3月から5月末までの約3カ月間で計56回発行。普段のペースを上回る充実ぶりだった。

 記事は新型コロナをテーマに、高校生活への関わりを切り口にした企画を打ち出した。オンライン授業やマスクの作り方、自宅での過ごし方といった身近な話題から、9月入学案や10万円給付金の使い道などを考える全校アンケート結果など社会情勢を踏まえた企画も展開した。
 入学後間もなく休校期間に入ってしまった1年生向けには、例年4月に地域を巡る遠足で訪問する予定だった史跡を写真付きで解説する回もあった。
 全国高校総体中止に伴う各競技の代替大会の動向や全国高校総合文化祭の縮小開催など高校生ならではの話題も記事化した。
 速報紙はこれまで週2回ほどのペースで制作して校内に掲示してきたが、休校中は生徒同士が顔を合わせられないからこそ、情報を積極的に発信して自粛生活に役立ててもらおうと、ラインやフェイスブック、ツイッターで生徒に配信した。
 部員は在宅でネタ探しや執筆を分担し、レイアウトは顧問の上杉剛嗣教諭とネットでやりとりして決定。4月18日以降は土日曜と祝日を含めて毎日発行を続けた。
 校内掲示だけでは見る生徒が限られていたが、ネット配信によって全生徒の元に届くため、読まれる機会が増え、「他の生徒の様子が分かり楽しかった」「ほっとした」といった反応が寄せられた。
 部員は「休校中も生徒やクラス、学校全体をつなげる役割を果たせた」と胸を張る。部長の鈴木翔馬さん(3年)は「これまでの速報紙発行の経験がネットでも生かせた。部員の企画力は確実に伸びた。今後の長期休業期間中の発行方法も変わってくる」と振り返った。情報発信の大切さを改めて感じたという次期部長の加藤大智さん(2年)は「これからはまだ活動できていない1年生のスキルアップに力を入れたい」と抱負を語った。

 

2020060601.jpg

休校期間中も発行を続けた学校新聞の速報紙を手にする鈴木翔馬さん(左)と加藤大智さん=5月、伊豆の国市の県立韮山高

 

2020060602.jpg
(左)9月入学案に対するアンケート結果を掲載した速報紙 (右)地域の史跡を紹介した速報紙

 
               ◇........................◇ 

 

■紙面授業 日本史 過去と現在 比較を 西遠女子学園中・高 氏原秀先生

 新聞を見ると、新型コロナウイルス関連の記事がほとんどを占めています。特に、一人の教員として学校の休校やオンライン授業関連の記事は見落とせません。
 ICT関連産業が発展した現代社会では休校によるオンライン授業の実施・導入が叫ばれていますが、昔の学生たちはどのような授業を受けていたのでしょうか。
 日本史の授業では、律令制下の大学や国学、空海がつくった綜芸種智院[しゅげいしゅちいん]に加えて足利学校や寺子屋など、さまざまな教育機関が登場します。そのうちの足利学校では、自学自習が中心でした。そのため、卒業のタイミングなども生徒一人一人に任されていたそうです。江戸時代の庶民の教育機関である寺子屋も、先生が一人に対して生徒複数の教育が行われていましたが、一斉講義ではなく、寺子屋の先生が生徒一人一人に対して個別の内容を教えていました。
 今、授業と言えば、教室で同時に同じ内容を学ぶ一斉講義型の授業を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、その歴史は実は浅いものです。18世紀中ごろから始まった産業革命がターニングポイントとなりヨーロッパで採用されたこの形式が、明治時代を迎えた日本にも導入されていった結果、今の学校教育が成り立っていきます。
 昔の学生たちは自ら学ぶ意欲に満ちあふれ、まさに主体的に深い学びに取り組んでいました。現代でも科学やテクノロジーが発達し、産業社会から知識社会に変化していく中で、対話的で主体的な深い学びが求められています。
 イギリスの歴史家E・H・カーの言葉、「歴史とは、過去と現在との絶え間ない対話である」の通り、今起きている事と過去の出来事を比較する視点を持って、過去と対話してみてはどうでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇ 

 

NIEアドバイザーのワンポイント講座(39)新聞で培う「自分の学び」

 学校の休校措置が長引きましたが、「自分の学びができた」と前向きに捉える機会はあったでしょうか。
 娘が5年生の時、社会科「これからの食料生産」で「食」に関心を持ち、新聞を使って夏休みの自由研究を行いました。「食」に関する記事を切り抜いたものを分類(食生活・添加物・農薬・健康食品・その他)し、ジャンルを問わず気になった記事にはシールを貼ってスクラップしながら、記事の要約や感想などを書きました。そうすることで、自分が「食」のどの分野に興味があるのかが分かるだけでなく、社会の中での「食」の問題の傾向をつかみ、自ら追究していく内容を絞りこむことができました。
 当時59円に値下げしたハンバーガーの記事を基に、研究テーマは「59円ハンバーガーから見えてきたもの」となりました。
 最近の「食」の問題として、「食品ロス」が挙げられます。話題のSDGsと意識せず、「食」のテーマの一つと捉え、年齢に合った目当てを設定すれば、誰でも自分の学びができるのではないでしょうか。学び方の入り口が見つからなかったら、ぜひ、新聞を手に取ってみてください。
 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=矢沢さんのやさしいNIE こんな時こそ 新聞切り抜き 話し合いながら楽しく

2020年05月02日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルスの感染拡大により県内の小中高校も一斉休校となり、子どもたちが家庭で過ごす時間が増えた。この機会に、新聞を身近な学習素材として活用してはいかがだろう。在宅学習の助けになるだけでなく、家族とのコミュニケーションツールにもなる新聞の使い方を、静岡新聞NIEコーディネーターの矢沢和宏さんが紹介する。

 

 なんと言っても、おすすめは「新聞スクラップ」。家族でそれぞれが気に入った記事を切り抜きます。まずは、お父さん、お母さんから。楽しく、興味深そうに、お話ししながら、にぎやかに切り抜きましょう。

 とても楽しそうにやっていると、子どもたちは気になりますし、「自分もやってみようかな」という気持ちもわいてきます。そうなったら、声を掛けるチャンス。「一緒に切り抜きをやってみよう」と誘いましょう。

 スクラップには不思議な魅力があります。切り抜く前の記事はあくまで、新聞紙上の「他人事[ひとごと]」。ところが、切り抜いた記事を手にした瞬間に「自分事」になるのです。「自分だけの大切な情報」になるという魔法をもっているのです。各自が記事を切り抜いたら、それを家族で紹介し合いましょう。どんなところが気に入ったのか話したり、感想を伝え合ったり質問し合ったりすると、話が弾みます。それとともに子どもの個性や関心も分かってきます。

 切り抜いた記事はぜひ、スクラップノートに貼り一言感想を書いて残しておきましょう。価値ある家族の成長記録にもなります。大切なことは、あくまで「自分の好きな記事、気になる記事」とすること。そして、教え込んだり、叱ったりすることなく、楽しく話すための材料とすること。それが長続きさせる秘訣[ひけつ]です。このように、新聞記事を材料に家族で話す様子が寄せ鍋をしている姿に似ていることから、「家族・新聞鍋」と名付けた人もいます。

 「新聞スクラップ」はそんな家族の楽しい時間になると思います。

 

 やざわ・かずひろ 静岡新聞NIEコーディネーター。県中部の中学校校長を歴任したほか、焼津市教育委員会に勤務し、2020年3月、定年退職。専門は社会科。学校教育に新聞活用を広めるNIEアドバイザーを13年間務めた。同年4月から現職。歴史地理学会会員、元焼津市史編さん委員。焼津市在住。

 

20200502.jpg

 
               ◇........................◇ 

 

■紙面授業 英語 コトバは出合いの種 東海大静岡翔洋高・中 高塚純先生

 子どものころ、父親に「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引け」と言われました。おかげで人並みの語彙[ごい]力は手に入った気がします。英語の教師になった今も「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引きなさい」と生徒には同じことを言っています。

 さて今、全世界が新型コロナウイルスの脅威にさらされており、新聞もテレビも関連ニュースでもちきりです。そんな中、よく見聞きする言葉がありますね。クラスター、パンデミック、オーバーシュート、ロックダウンなどがそうです。

 その時に皆さんはどうしますか。この言葉はそういう意味なのだと単純に理解しますか。それとも本当にこの意味でいいのかなと疑いますか。

 例えば、クラスターという言葉は「感染者の集団」という意味で使われていますが、もともとは花や果実の房という意味です。何となくイメージはできますね。ちなみに、英語のつづりは"cluster"です。

 では、オーバーシュートはどうでしょうか。言葉を聞いて、絵をイメージできますか。コロナウイルスの文脈においては「患者の爆発的急増」という意味で使われていますが、本来は、(場所を)うっかり通り越す、(予算を)使いすぎるなどの意味で使われています。

 また、アメリカ海軍の病院船「コンフォート」が医療支援を行うためにニューヨークに派遣されました。コンフォートとは快適さ、安らぎというまさに病院船にぴったりの名称で"comfort"とつづります。

 この度、学校が休校になり、自由に使える時間が増えたと思います。メディアで新しい言葉に出合ったら、ぜひ普段と違う角度から調べたり考えたり、接してみてほしいと思います。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇ 

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(38)日常から世界を変える

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、筆者の勤務校では3月からオンライン授業が始まりました。4月も年度始めから生徒の自宅に向けてライブで授業を行っていますが、筆者の授業の中で早速、新聞を活用した場面がありました。

 高校1年生の政治経済の授業で、複数の新聞を手に取って1面を比較して画面に映しました。なかなか外出できないこのような状況だからこそ、社会をより広く深く学ぶチャンスであるということを伝えようとしたところ、画面越しの生徒が新聞の見出しを食い入るように見つめる姿が印象に残りました。

 また、別の場面では米大統領選挙の記事を生徒に見せ、時事問題に興味をもたせようと試みました。

 自分の目で文字を見て読み、考える。じっくり立ち止まって考えさせる新聞の良さを、現在のような厳しい環境だからこそ授業で再確認できました。

 以前、筆者が高校サッカー部の顧問として指導者講習会に参加した時、「日常から世界を変えていこう」という言葉を研修担当者から聞きました。現在の厳しい環境から、今度は新聞で日常を変えていきたいと思っています。

 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践4校 成果と課題

 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2019年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた県立静岡聴覚特別支援学校、川根本町立本川根中、富士宮市立西富士中、菊川市立菊川西中の4校の担当教諭が取り組みの成果や課題を説明した。

 

■プレゼン力の向上も 川根本町立本川根中 滝井玲緒教諭

 学年混合で新聞に触れる活動を展開した。全校生徒が20人の小規模校だからこそ、NIE活動でもそれぞれの生徒への丁寧な指導につながった。

 15分間の放課後学習で、新聞記事を紹介する取り組みを実施した。最初は苦戦した1年生も、上級生のプレゼンテーションを見て発表が上達した。コンビニ店の24時間営業問題の記事を題材にしたディベートではグループ内での話し合いが盛り上がりを見せ、生徒たちが自分の考えを固めていた。

 生徒と教員間でやりとりする「NIEノート」も作成。相手の価値観を理解する力が付いたほか、教員が生徒の考えを知ることにも役立った。複数の新聞を読み比べることで、一つのニュースへの異なる見方や微妙な言葉の違いを楽しむ姿勢が見られた。生徒には今後も、正しい情報収集や広い視野で考える力に身に付けてほしい。

 

20200404_01.jpg

 

■多彩な情報得る力に 県立静岡聴覚特別支援学校 勝又一歩教諭 山根渉教諭

 自然に周囲の音が入ってこない聴覚障害児は、視覚で得られる情報で不足分を補うことが大切だ。一度に多彩な情報に触れられる一覧性や、何度も読み返せる確認性といった長所がある新聞は、非常に効果的な学習素材と考えられる。

 気になるニュースを子どもが選んで発表する学習では、初めて知る言葉を手話で説明する勉強につながった。サッカーワールドカップ(W杯)の記事を集めて結果を予想したり、紙面に出てきた地名を地図帳で調べたりする授業も行った。

 一方、子どもたちが手話でニュースを紹介し合う際、相手がニュースの文脈や意味を取り違えるケースも多かった。新聞を繰り返して読み、情報を正しく理解する力を養っていくべきだと実感した。実践を通し、指導する教員側がどのような効果を期待して新聞を取り入れるのか、明確に意識する重要性を感じた。

 

20200404_02.jpg

 

■読解力の育成に効果 富士宮市立西富士中 大口拓真教諭 渡辺操教諭

 「読解力の育成」をテーマに文章の主題をつかみ、コンパクトに要約する力を養うことを目指した。テストでの無回答率が減少し、社会の動きに関心を持つ生徒が増える効果が出た。

 朝学習の時間では、教員が選んだ記事を題材に見出しづくりや語句探し、感想などを記入した。要約を行う際には、生徒たちが取り組みやすいように使用するキーワードを指定した。

 国語や社会だけでなく、数学や理科でも新聞を取り入れた。消費税に関する記事から、グラフを読み取る関数の学習に発展させた。リチウムイオン電池の研究で吉野彰さんがノーベル化学賞を受けた記事を使い、イオンを学ぶ授業で生徒の興味を引き出した。

 一方、記事と学習内容を関連付ける難しさなど課題も残った。新聞をさらに活用するための実践の必要性を感じた。

 

20200404_03.jpg

 

■楽しめる活動を意識 菊川市立菊川西中 増田浩己教諭 丹所明日香教諭

 新聞を学習に取り入れる上で、生徒が興味を持ちやすいように"訓練のような雰囲気"を出さずにしたほか、教員も過度な負担なく楽しめる活動を意識した。教務主任をはじめとする7人の教員でNIE小委員会を組織し、このメンバーを核に展開した。廊下の掲示板に掲示する記事は、それぞれの個性や担当科目の話題があふれる内容になった。

 朝学習の時間には、記事を読んで質問に答えるワークシートを用意した。ニュースをテーマに自由な発想を求める取り組みも実践。若者を中心に人気が爆発したタピオカミルクティーに関する記事では、さらに売り上げを伸ばす方法を一人一人考えた。

 語彙(ごい)の増加やコミュニケーション能力の向上、知識の獲得という、読解力の素地になる三つの力が付いたと感じられた。

 

20200404_04.jpg

 
               ◇........................◇ 

 

■紙面授業 地歴 歴史を学ぶ意義は 誠恵高・木下佳也先生

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴うさまざまな動きは、新聞で連日大きく取り上げられ、一斉休校など教育界にも大きな影響が及びました。そうした中でフェイクニュースも横行し、トイレットペーパーの買い占めが行われました。しかし、このような騒動は今回が初めてではありません。1973年、第4次中東戦争の際の「オイルショック(石油危機)」がそうでした。日本ではこれを背景に、トイレットペーパーの買い占めが起こりました。

 ローマの歴史家クルチュウス・ルーフスの言葉に「歴史は繰り返す」がありますが、歴史の授業を展開していると、今回のようにかつての事象と同じような出来事に出合います。それは、私たちが歴史上の人物と同じ「人間」だからです。

 人の行動に影響を与える心理をまとめた「チャルディーニの法則」には、社会的証明(みんながしてるからOK)、権威(立場のある人の推薦)、希少性(残り○個)といったものがあります。今回われわれはフェイクニュースに引っ張られ、この原理に沿ってトイレットペーパーを買い占めました。この原理が「人間」にもともと備わっているものだからです。

 「歴史は繰り返す」。それは仕方のないことかもしれません。しかし、それでは歴史を学ぶ意味がありません。先人たちの「成功」は繰り返すために、「失敗」は繰り返さないために、「人間」は歴史を残し、歴史を学ぶのです。

 今回のトイレットペーパーの買い占め騒動はおおよそ終息しました。かつての「オイルショック」の失敗を学んだわれわれが冷静に対応できたからです。

 歴史は繰り返しますが、同じ結果にはなりません。なぜならば、われわれ「人間」は歴史を学んでいるからです。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇ 

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(37)記事読み批評 小論文対策に

 筆者は、この3月に卒業生を送り出した。

 その際、小論文入試の受験指導を多く行ったが、己の進路に関連のある時事問題には常に関心を持ち続けていないと太刀打ちできない、と実感している。記事を読み、思考する。そして手を動かして「文章化する」という日々の訓練が大切だ。難関大学であればあるほど、付け焼き刃は通用しないのである。コツコツと努力する姿勢を、この4月から身に付けたい。

 では、その具体的方法はどのようなものか。 

 見出しだけで良い、毎日必ず新聞紙に目を通すのだ。まずは、紙をめくるという身体を獲得すべし。どんなに部活や課題で疲れていようとも、意地でやり続けよう。1カ月で完璧なNIEの身体を得ているはずだ。

 次に、ノートに記事内容への批判をヒタスラ展開しよう。本当はそんなに反対じゃないんだけど、と思ったとしても、とにかく、批評せよ。なぜならば、クリティカルシンキング的な記述は理由を伴わなければならないからだ。この理由がある文章こそ、論文と言えるのであり、その体得が現段階での目標なのである。

 (静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=気になる記事 地域とシェア 住民と交流、世代超え意見交換 裾野高「まわしよみ新聞」

2020年03月07日(土)付 朝刊


 新聞を通じた地域との交流手段として、県立裾野高が1月下旬、新聞の切り抜きを基に意見交換する「まわしよみ新聞」を同校で開いた。1年生約200人と住民約30人がグループに分かれ、気になった記事を紹介し合って、感想や意見を共有した。

 生徒らは机に新聞を広げると、スポーツや事件、事故、コラムや読者投稿など気になった記事をチェック。身近な話題から国際問題まで自由に選んだ記事を切り抜き、思い思いに感想を語った。
 中国・武漢市で発生した新型肺炎関連の記事を取り上げる参加者が特に目立った。「人が集まる場所に行かない方がよさそう」「治療法が見つかっていないが東京五輪・パラリンピックは大丈夫だろうか」など、さらなる流行拡大や国際イベントの開催を危ぶむ声が上がった。このほか、「プロ野球選手の契約更新。年俸をたくさんもらえてすごい」「振り込み詐欺で高齢者が被害に遭っている。おばあちゃんが心配」などと率直な感想を発表した。
 本田凜さん(16)は「まわしよみ新聞は同じ記事でも人によって違う感想を持って楽しかった」と話す。普段はスマートフォンのアプリでニュースを確認していて「アプリでは興味のあるものを中心に読む。新聞はいろいろな記事が目に入るので便利」と今回の経験を通じてそれぞれの媒体の長所、短所を実感した様子だった。
 裾野市の会社員菊池勇一さん(55)は「新聞は世代間の交流のツールになる。自分は生徒の親世代。新聞の面白さを伝えたい」と述べた。
 同校の大端大教諭は「生徒と地域の方が記事を読んで思ったことを言い合うことで、地域との親密度を高めたい」と活動の意義を説明。若者の新聞離れにも触れ、「大人がどのように新聞を読むかを学び、手に取るきっかけになれば」と期待を寄せる。

 

20200307_01.jpg

切り抜いた記事を紹介し、感想などを話す生徒=裾野市の裾野高

 

20200307_02.jpg

机に新聞を広げ記事に目を通す生徒

 
               ◇........................◇

 

■紙面授業 商業 近未来都市への道 浜松啓陽高 増田正一先生

 浜松市のゆるキャラ、出世大名家康くんと出世法師直虎ちゃんは今も大活躍です。徳川家康は浜松発展の礎を築き、井伊直虎は大河ドラマで脚光を浴びて、観光客が多数訪れました。観光面では浜松ギョーザも名物になっています。残念ながら、2019年の世帯当たりギョーザ購入額は2位で、宇都宮市に首位を明け渡したことは新聞でも取り上げられました。浜松地域の温暖な気候は綿花栽培に適し、「織機」から「機械」の発展につながりました。繊維、オートバイ、自動車、楽器、光学など高度な技術力は、世界に名だたる企業を誕生させています。
 温暖な気候と長い日照は、お茶、ミカンなどの農作物だけでなく水産物にも恵みをもたらしています。こうした恵まれた環境の中で、地域経済は進化、発展を遂げてきました。
 今後、都市構想を練る中で、浜松が近未来型都市として一層の発展を遂げるには、人と人、人とモノ、人と企業などの「つながり」が、緊密で円滑に機能することが一層必要になります。それは発電エネルギー事業、農林水産・自然環境開発、水質保全、AIとロボット技術の融合であり、さらには市内周遊周回無人モノレール、シェアカー輸送、ドローン輸送などに必要な法律やインフラの整備です。そして、ポテンシャル相応の着想と創意工夫が不可欠になります。
 人々が暮らしやすく、それぞれが関わりを深め合える社会の構築を期したいという思いがあります。そこで大切なことは、「経済は経世済民」ということです。常に経済は、生活の基盤として「人のため」のものであることが第一条件なのです。
 さて、家康くん、直虎ちゃんに続く、「近未来型主要都市#浜松」の創生に登場する令和の創造者の一人は、あなたかもしれませんね。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(36)「自分の個性」新聞で発見

 私の学校では、「個性輝く人」を目指しています。子どもたちには、「個性を輝かせ、新たな道をつくる人になろう」と言い続けています。
 ところで、どうしたら自分の個性を発見できるでしょうか。そんなとき、役立つのが新聞です。新聞は「社会の現実を知らせる窓口」であると同時に、「新たな生き方」を示し「未来を照らす希望」を伝える意義を持つと考えます。
 暗い記事が多いと思われがちな新聞ですが、実は未来を開く発見や個性的で魅力的な生き方がたくさん紹介されています。「新たな生き方に出合う」「自分の可能性に気付く」など、自分の個性を発見するチャンスが詰まっているのが新聞です。
 最近の記事でも、イモリ研究に情熱を注ぐ中学生「イモリ博士」、フランスで日本人初のミシュラン三つ星獲得など、「初めて」「挑戦」「個性」などを紹介した記事には魅力があります。自分にも新しい世界や新たな道を開く人になれそうな勇気が湧いてきます。
 そんな記事と出合い、「個性を輝かせて未来をつくる人」が次々と登場してくれることを心から願っています。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事基に考察、議論 現代文授業で新聞活用 受験多様化に対応 星陵高(富士宮)

2020年02月01日(土)付 朝刊


 富士宮市の星陵高で、現代文の授業に新聞記事を取り入れた実践的な試みが進められている。AO入試をはじめ受験形態が多様化し、大学が求める力も変化する昨今。記事を基に生徒が意見を交わし、問題を理解することで、小論文などに必要な考える力や社会への関心を養う場となっている。

 同校で行われた1月中旬の授業。英数科総合コースの文系2年生が、本紙に掲載された記事を基に考察を始めた。題材は「男性の美容への関心の高まり」。男性がメークをし、外見の印象を良くすることでビジネスや就職活動に生かす動きをまとめた記事だ。論文問題が添えられていて、各自がどう思うか賛成・反対の立場でまとめるのが終着点となる。
 生徒は早速、グループに分かれて議論を始めた。タブレット端末を活用し、裏付けとなる資料や文献を探していく。議論が進むと、各グループの代表が自身の考察に対して根拠となる情報を交えて発表し、クラス全体で共有する。
 議論は週に計4コマある現代文の授業時間を使う。賛否が分かれる題材を扱い、議論の途中で生徒の立場が変わる場合もある。
 この取り組みは5~6年前、現在は大学進学指導課長を務める奥村裕樹教諭が始めた。当初は生徒が新聞記事の要約や感想などを書き、奥村教諭が添削して返信する一対一のスタイル。そのやりとりを発展させ、クラス全体で議論を深める形式を確立した。
 取り組みを開始してから、難関とされる大学にAO入試や推薦で合格する生徒の率が上昇してきているという。2年の芦沢真優さん(17)は「視野や見聞が広がり、自然と力が伸びている」と手応えを語る。奥村教諭は「取り組みは畑を耕しているようなもの。新しい常識をつくっていく世代の生徒たちが今に対する疑問を持ってもらいたい」と話す。
 (富士宮支局・白柳一樹)

 

2020020101.jpg

新聞記事を基に議論を深める生徒たち=1月、富士宮市の星陵高

 

2020020102.jpg
自身の意見を述べる生徒

  
               ◇........................◇

 

■紙面授業 地歴・公民 入試 公平性保って 常葉大橘中・高 塚本学先生

 大学受験が本格的になり、受験生はラストスパートの時期です。昨年は大学入学共通テストの「英語民間試験導入」で、学校現場は混乱しました。文部科学大臣の「身の丈」発言により、導入が延期されたことは新聞でも大きく報道されました。
 私は地歴・公民の教師ですから、この件で中国の「科挙制」を連想しました。科挙制は、隋の時代の587年に始められ、清代の1905年まで継続された役人選抜試験です。その目的は、貴族の子弟の役人世襲を防ぐことです。科挙が万民に門戸を開放した制度であったことは画期的でした。家柄も血筋も問わず、誰でも科挙を受けることができるという精神だけでも、当時の世界では、類をみない制度といえましょう。それが極めて公平に行なわれたことも利点に挙げられます。答案審査は姓名を見ずに、座席番号だけで行われました。ペーパーテストで「公平」な選抜を行い、人民の中の最も賢明な者を登用しようとしたのです。
 今日の英語民間試験導入は、まさに「公平」という点が問題の一つではないでしょうか。経済力や住んでいる場所という、本人の努力だけではどうにもならない要素が結果の差に結び付きかねないことが問題なのです。
 科挙がかくも長く行われ、周辺地域にも影響を与え続けたことに注目する必要があります。この制度の永続を可能ならしめた中国の社会文化の基盤を著名な歴史家、宮崎市定は、「科挙なるものは本来、文を重んずる精神の上に成立した」と述べています。
 なるべく公平であり、また受験がゴールではなく、入学した大学で学問をスタートするんだという意欲がわく入試であってほしいものです。なぜなら大学こそが、文を重んじる世界の入り口になるのですから。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(35)チバニアン 地球史身近に

 理科の教科書にある、ただ一言で表現される結論を紡ぎ出すために、科学者は日夜研究に勤[いそ]しんでいる。研究が深まり、新しい言葉が生まれ、認められる。理科授業で、最新の科学成果を紹介すると、生徒たちは、目を輝かせて熱心に学ぶ。科学研究の最前線の話題を分かりやすく伝える新聞記事を探してみよう。関連する記事を読ませた後、生徒の理解に応じた補足説明を行うとよい。
 地球史の学習で、欧米の地名に由来するなじみのない名称を覚えるのに苦労する生徒もいるが、彼らに紹介したい記事が「地球史に『チバニアン』 千葉の地層から」(1月18日付静岡新聞)だ。国際地質科学連合が、約77万年前~約12万年前の地質時代を千葉県の地層から「チバニアン(千葉時代)」と命名することが正式に決定したのだ。
 記事の見出しに大きく「チバニアン」とあり、ユニークな名称なので、思わず声に出して読む生徒がいる。行政や地元の人々が一丸となって協力した命名に至るまでの過程やその他のエピソードも興味深い。
 地質分野の学習を、「覚えにくく暗記しなければならない学習」ではなく、「多数の人が関わる創造的な研究の成果を学ぶこと」と感じてもらえるのではないだろうか。
 (清水西高・吉川契子)

  
               ◇........................◇

 

■指定校が実践事例を報告 22日、静岡で県推進協

 県NIE推進協議会は22日午後2時から、実践報告会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。
 実践指定校としてNIEに取り組んできた富士宮市立西富士中、川根本町立本川根中、菊川市立菊川西中、県立静岡聴覚特別支援学校の担当教諭が、2~3年間の取り組みの成果や課題を発表する。
 参加希望者は14日までに、県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>へ申し込む。参加無料。

  
               ◇........................◇

 

■全国大会は11月都内で

 教育現場で新聞を活用する「NIE」の実践報告や情報交換をする「第25回NIE全国大会東京大会」(日本新聞協会主催)が11月22、23の両日、都内で開かれる。
 例年、全国大会は7月下旬~8月上旬に開かれるが、今年は東京五輪・パラリンピック開催と重なることから、時期をずらした。
 会場は、初日が日本大学文理学部百周年記念館(東京都世田谷区)、2日目が十文字中学・高校(同豊島区)。詳細は追って発表される。

 
               ◇........................◇

 

■19年、写真で振り返り 横浜、来月29日まで

 2019年の国内外の報道写真を集めた「報道写真展」(ニュースパーク、東京写真記者協会主催)が3月29日まで、横浜市のニュースパーク(日本新聞博物館)で開かれている。
 新聞、通信、放送の同協会加盟35社の写真記者が撮影した膨大な報道写真から300点を厳選。天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」やラグビーワールドカップ日本大会、台風19号の被災現場など、19年の時代をとらえた写真を、「一般ニュース」「企画」「スポーツ」「文化芸能」と多様な分野で紹介している。昨年8月に本紙夕刊で連載した「県鳥サンコウチョウ」の写真も展示している。
 開館時間は午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。入館料は一般400円、大学生300円、高校生200円、中学生以下無料。
 問い合わせはニュースパーク<電045(661)2040>へ。