一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=矢沢さんのやさしいNIE こんな時こそ 新聞切り抜き 話し合いながら楽しく

2020年05月02日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルスの感染拡大により県内の小中高校も一斉休校となり、子どもたちが家庭で過ごす時間が増えた。この機会に、新聞を身近な学習素材として活用してはいかがだろう。在宅学習の助けになるだけでなく、家族とのコミュニケーションツールにもなる新聞の使い方を、静岡新聞NIEコーディネーターの矢沢和宏さんが紹介する。

 

 なんと言っても、おすすめは「新聞スクラップ」。家族でそれぞれが気に入った記事を切り抜きます。まずは、お父さん、お母さんから。楽しく、興味深そうに、お話ししながら、にぎやかに切り抜きましょう。

 とても楽しそうにやっていると、子どもたちは気になりますし、「自分もやってみようかな」という気持ちもわいてきます。そうなったら、声を掛けるチャンス。「一緒に切り抜きをやってみよう」と誘いましょう。

 スクラップには不思議な魅力があります。切り抜く前の記事はあくまで、新聞紙上の「他人事[ひとごと]」。ところが、切り抜いた記事を手にした瞬間に「自分事」になるのです。「自分だけの大切な情報」になるという魔法をもっているのです。各自が記事を切り抜いたら、それを家族で紹介し合いましょう。どんなところが気に入ったのか話したり、感想を伝え合ったり質問し合ったりすると、話が弾みます。それとともに子どもの個性や関心も分かってきます。

 切り抜いた記事はぜひ、スクラップノートに貼り一言感想を書いて残しておきましょう。価値ある家族の成長記録にもなります。大切なことは、あくまで「自分の好きな記事、気になる記事」とすること。そして、教え込んだり、叱ったりすることなく、楽しく話すための材料とすること。それが長続きさせる秘訣[ひけつ]です。このように、新聞記事を材料に家族で話す様子が寄せ鍋をしている姿に似ていることから、「家族・新聞鍋」と名付けた人もいます。

 「新聞スクラップ」はそんな家族の楽しい時間になると思います。

 

 やざわ・かずひろ 静岡新聞NIEコーディネーター。県中部の中学校校長を歴任したほか、焼津市教育委員会に勤務し、2020年3月、定年退職。専門は社会科。学校教育に新聞活用を広めるNIEアドバイザーを13年間務めた。同年4月から現職。歴史地理学会会員、元焼津市史編さん委員。焼津市在住。

 

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■紙面授業 英語 コトバは出合いの種 東海大静岡翔洋高・中 高塚純先生

 子どものころ、父親に「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引け」と言われました。おかげで人並みの語彙[ごい]力は手に入った気がします。英語の教師になった今も「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引きなさい」と生徒には同じことを言っています。

 さて今、全世界が新型コロナウイルスの脅威にさらされており、新聞もテレビも関連ニュースでもちきりです。そんな中、よく見聞きする言葉がありますね。クラスター、パンデミック、オーバーシュート、ロックダウンなどがそうです。

 その時に皆さんはどうしますか。この言葉はそういう意味なのだと単純に理解しますか。それとも本当にこの意味でいいのかなと疑いますか。

 例えば、クラスターという言葉は「感染者の集団」という意味で使われていますが、もともとは花や果実の房という意味です。何となくイメージはできますね。ちなみに、英語のつづりは"cluster"です。

 では、オーバーシュートはどうでしょうか。言葉を聞いて、絵をイメージできますか。コロナウイルスの文脈においては「患者の爆発的急増」という意味で使われていますが、本来は、(場所を)うっかり通り越す、(予算を)使いすぎるなどの意味で使われています。

 また、アメリカ海軍の病院船「コンフォート」が医療支援を行うためにニューヨークに派遣されました。コンフォートとは快適さ、安らぎというまさに病院船にぴったりの名称で"comfort"とつづります。

 この度、学校が休校になり、自由に使える時間が増えたと思います。メディアで新しい言葉に出合ったら、ぜひ普段と違う角度から調べたり考えたり、接してみてほしいと思います。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(38)日常から世界を変える

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、筆者の勤務校では3月からオンライン授業が始まりました。4月も年度始めから生徒の自宅に向けてライブで授業を行っていますが、筆者の授業の中で早速、新聞を活用した場面がありました。

 高校1年生の政治経済の授業で、複数の新聞を手に取って1面を比較して画面に映しました。なかなか外出できないこのような状況だからこそ、社会をより広く深く学ぶチャンスであるということを伝えようとしたところ、画面越しの生徒が新聞の見出しを食い入るように見つめる姿が印象に残りました。

 また、別の場面では米大統領選挙の記事を生徒に見せ、時事問題に興味をもたせようと試みました。

 自分の目で文字を見て読み、考える。じっくり立ち止まって考えさせる新聞の良さを、現在のような厳しい環境だからこそ授業で再確認できました。

 以前、筆者が高校サッカー部の顧問として指導者講習会に参加した時、「日常から世界を変えていこう」という言葉を研修担当者から聞きました。現在の厳しい環境から、今度は新聞で日常を変えていきたいと思っています。

 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践4校 成果と課題

 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2019年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた県立静岡聴覚特別支援学校、川根本町立本川根中、富士宮市立西富士中、菊川市立菊川西中の4校の担当教諭が取り組みの成果や課題を説明した。

 

■プレゼン力の向上も 川根本町立本川根中 滝井玲緒教諭

 学年混合で新聞に触れる活動を展開した。全校生徒が20人の小規模校だからこそ、NIE活動でもそれぞれの生徒への丁寧な指導につながった。

 15分間の放課後学習で、新聞記事を紹介する取り組みを実施した。最初は苦戦した1年生も、上級生のプレゼンテーションを見て発表が上達した。コンビニ店の24時間営業問題の記事を題材にしたディベートではグループ内での話し合いが盛り上がりを見せ、生徒たちが自分の考えを固めていた。

 生徒と教員間でやりとりする「NIEノート」も作成。相手の価値観を理解する力が付いたほか、教員が生徒の考えを知ることにも役立った。複数の新聞を読み比べることで、一つのニュースへの異なる見方や微妙な言葉の違いを楽しむ姿勢が見られた。生徒には今後も、正しい情報収集や広い視野で考える力に身に付けてほしい。

 

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■多彩な情報得る力に 県立静岡聴覚特別支援学校 勝又一歩教諭 山根渉教諭

 自然に周囲の音が入ってこない聴覚障害児は、視覚で得られる情報で不足分を補うことが大切だ。一度に多彩な情報に触れられる一覧性や、何度も読み返せる確認性といった長所がある新聞は、非常に効果的な学習素材と考えられる。

 気になるニュースを子どもが選んで発表する学習では、初めて知る言葉を手話で説明する勉強につながった。サッカーワールドカップ(W杯)の記事を集めて結果を予想したり、紙面に出てきた地名を地図帳で調べたりする授業も行った。

 一方、子どもたちが手話でニュースを紹介し合う際、相手がニュースの文脈や意味を取り違えるケースも多かった。新聞を繰り返して読み、情報を正しく理解する力を養っていくべきだと実感した。実践を通し、指導する教員側がどのような効果を期待して新聞を取り入れるのか、明確に意識する重要性を感じた。

 

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■読解力の育成に効果 富士宮市立西富士中 大口拓真教諭 渡辺操教諭

 「読解力の育成」をテーマに文章の主題をつかみ、コンパクトに要約する力を養うことを目指した。テストでの無回答率が減少し、社会の動きに関心を持つ生徒が増える効果が出た。

 朝学習の時間では、教員が選んだ記事を題材に見出しづくりや語句探し、感想などを記入した。要約を行う際には、生徒たちが取り組みやすいように使用するキーワードを指定した。

 国語や社会だけでなく、数学や理科でも新聞を取り入れた。消費税に関する記事から、グラフを読み取る関数の学習に発展させた。リチウムイオン電池の研究で吉野彰さんがノーベル化学賞を受けた記事を使い、イオンを学ぶ授業で生徒の興味を引き出した。

 一方、記事と学習内容を関連付ける難しさなど課題も残った。新聞をさらに活用するための実践の必要性を感じた。

 

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■楽しめる活動を意識 菊川市立菊川西中 増田浩己教諭 丹所明日香教諭

 新聞を学習に取り入れる上で、生徒が興味を持ちやすいように"訓練のような雰囲気"を出さずにしたほか、教員も過度な負担なく楽しめる活動を意識した。教務主任をはじめとする7人の教員でNIE小委員会を組織し、このメンバーを核に展開した。廊下の掲示板に掲示する記事は、それぞれの個性や担当科目の話題があふれる内容になった。

 朝学習の時間には、記事を読んで質問に答えるワークシートを用意した。ニュースをテーマに自由な発想を求める取り組みも実践。若者を中心に人気が爆発したタピオカミルクティーに関する記事では、さらに売り上げを伸ばす方法を一人一人考えた。

 語彙(ごい)の増加やコミュニケーション能力の向上、知識の獲得という、読解力の素地になる三つの力が付いたと感じられた。

 

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■紙面授業 地歴 歴史を学ぶ意義は 誠恵高・木下佳也先生

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴うさまざまな動きは、新聞で連日大きく取り上げられ、一斉休校など教育界にも大きな影響が及びました。そうした中でフェイクニュースも横行し、トイレットペーパーの買い占めが行われました。しかし、このような騒動は今回が初めてではありません。1973年、第4次中東戦争の際の「オイルショック(石油危機)」がそうでした。日本ではこれを背景に、トイレットペーパーの買い占めが起こりました。

 ローマの歴史家クルチュウス・ルーフスの言葉に「歴史は繰り返す」がありますが、歴史の授業を展開していると、今回のようにかつての事象と同じような出来事に出合います。それは、私たちが歴史上の人物と同じ「人間」だからです。

 人の行動に影響を与える心理をまとめた「チャルディーニの法則」には、社会的証明(みんながしてるからOK)、権威(立場のある人の推薦)、希少性(残り○個)といったものがあります。今回われわれはフェイクニュースに引っ張られ、この原理に沿ってトイレットペーパーを買い占めました。この原理が「人間」にもともと備わっているものだからです。

 「歴史は繰り返す」。それは仕方のないことかもしれません。しかし、それでは歴史を学ぶ意味がありません。先人たちの「成功」は繰り返すために、「失敗」は繰り返さないために、「人間」は歴史を残し、歴史を学ぶのです。

 今回のトイレットペーパーの買い占め騒動はおおよそ終息しました。かつての「オイルショック」の失敗を学んだわれわれが冷静に対応できたからです。

 歴史は繰り返しますが、同じ結果にはなりません。なぜならば、われわれ「人間」は歴史を学んでいるからです。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(37)記事読み批評 小論文対策に

 筆者は、この3月に卒業生を送り出した。

 その際、小論文入試の受験指導を多く行ったが、己の進路に関連のある時事問題には常に関心を持ち続けていないと太刀打ちできない、と実感している。記事を読み、思考する。そして手を動かして「文章化する」という日々の訓練が大切だ。難関大学であればあるほど、付け焼き刃は通用しないのである。コツコツと努力する姿勢を、この4月から身に付けたい。

 では、その具体的方法はどのようなものか。 

 見出しだけで良い、毎日必ず新聞紙に目を通すのだ。まずは、紙をめくるという身体を獲得すべし。どんなに部活や課題で疲れていようとも、意地でやり続けよう。1カ月で完璧なNIEの身体を得ているはずだ。

 次に、ノートに記事内容への批判をヒタスラ展開しよう。本当はそんなに反対じゃないんだけど、と思ったとしても、とにかく、批評せよ。なぜならば、クリティカルシンキング的な記述は理由を伴わなければならないからだ。この理由がある文章こそ、論文と言えるのであり、その体得が現段階での目標なのである。

 (静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=気になる記事 地域とシェア 住民と交流、世代超え意見交換 裾野高「まわしよみ新聞」

2020年03月07日(土)付 朝刊


 新聞を通じた地域との交流手段として、県立裾野高が1月下旬、新聞の切り抜きを基に意見交換する「まわしよみ新聞」を同校で開いた。1年生約200人と住民約30人がグループに分かれ、気になった記事を紹介し合って、感想や意見を共有した。

 生徒らは机に新聞を広げると、スポーツや事件、事故、コラムや読者投稿など気になった記事をチェック。身近な話題から国際問題まで自由に選んだ記事を切り抜き、思い思いに感想を語った。
 中国・武漢市で発生した新型肺炎関連の記事を取り上げる参加者が特に目立った。「人が集まる場所に行かない方がよさそう」「治療法が見つかっていないが東京五輪・パラリンピックは大丈夫だろうか」など、さらなる流行拡大や国際イベントの開催を危ぶむ声が上がった。このほか、「プロ野球選手の契約更新。年俸をたくさんもらえてすごい」「振り込み詐欺で高齢者が被害に遭っている。おばあちゃんが心配」などと率直な感想を発表した。
 本田凜さん(16)は「まわしよみ新聞は同じ記事でも人によって違う感想を持って楽しかった」と話す。普段はスマートフォンのアプリでニュースを確認していて「アプリでは興味のあるものを中心に読む。新聞はいろいろな記事が目に入るので便利」と今回の経験を通じてそれぞれの媒体の長所、短所を実感した様子だった。
 裾野市の会社員菊池勇一さん(55)は「新聞は世代間の交流のツールになる。自分は生徒の親世代。新聞の面白さを伝えたい」と述べた。
 同校の大端大教諭は「生徒と地域の方が記事を読んで思ったことを言い合うことで、地域との親密度を高めたい」と活動の意義を説明。若者の新聞離れにも触れ、「大人がどのように新聞を読むかを学び、手に取るきっかけになれば」と期待を寄せる。

 

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切り抜いた記事を紹介し、感想などを話す生徒=裾野市の裾野高

 

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机に新聞を広げ記事に目を通す生徒

 
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■紙面授業 商業 近未来都市への道 浜松啓陽高 増田正一先生

 浜松市のゆるキャラ、出世大名家康くんと出世法師直虎ちゃんは今も大活躍です。徳川家康は浜松発展の礎を築き、井伊直虎は大河ドラマで脚光を浴びて、観光客が多数訪れました。観光面では浜松ギョーザも名物になっています。残念ながら、2019年の世帯当たりギョーザ購入額は2位で、宇都宮市に首位を明け渡したことは新聞でも取り上げられました。浜松地域の温暖な気候は綿花栽培に適し、「織機」から「機械」の発展につながりました。繊維、オートバイ、自動車、楽器、光学など高度な技術力は、世界に名だたる企業を誕生させています。
 温暖な気候と長い日照は、お茶、ミカンなどの農作物だけでなく水産物にも恵みをもたらしています。こうした恵まれた環境の中で、地域経済は進化、発展を遂げてきました。
 今後、都市構想を練る中で、浜松が近未来型都市として一層の発展を遂げるには、人と人、人とモノ、人と企業などの「つながり」が、緊密で円滑に機能することが一層必要になります。それは発電エネルギー事業、農林水産・自然環境開発、水質保全、AIとロボット技術の融合であり、さらには市内周遊周回無人モノレール、シェアカー輸送、ドローン輸送などに必要な法律やインフラの整備です。そして、ポテンシャル相応の着想と創意工夫が不可欠になります。
 人々が暮らしやすく、それぞれが関わりを深め合える社会の構築を期したいという思いがあります。そこで大切なことは、「経済は経世済民」ということです。常に経済は、生活の基盤として「人のため」のものであることが第一条件なのです。
 さて、家康くん、直虎ちゃんに続く、「近未来型主要都市#浜松」の創生に登場する令和の創造者の一人は、あなたかもしれませんね。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(36)「自分の個性」新聞で発見

 私の学校では、「個性輝く人」を目指しています。子どもたちには、「個性を輝かせ、新たな道をつくる人になろう」と言い続けています。
 ところで、どうしたら自分の個性を発見できるでしょうか。そんなとき、役立つのが新聞です。新聞は「社会の現実を知らせる窓口」であると同時に、「新たな生き方」を示し「未来を照らす希望」を伝える意義を持つと考えます。
 暗い記事が多いと思われがちな新聞ですが、実は未来を開く発見や個性的で魅力的な生き方がたくさん紹介されています。「新たな生き方に出合う」「自分の可能性に気付く」など、自分の個性を発見するチャンスが詰まっているのが新聞です。
 最近の記事でも、イモリ研究に情熱を注ぐ中学生「イモリ博士」、フランスで日本人初のミシュラン三つ星獲得など、「初めて」「挑戦」「個性」などを紹介した記事には魅力があります。自分にも新しい世界や新たな道を開く人になれそうな勇気が湧いてきます。
 そんな記事と出合い、「個性を輝かせて未来をつくる人」が次々と登場してくれることを心から願っています。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事基に考察、議論 現代文授業で新聞活用 受験多様化に対応 星陵高(富士宮)

2020年02月01日(土)付 朝刊


 富士宮市の星陵高で、現代文の授業に新聞記事を取り入れた実践的な試みが進められている。AO入試をはじめ受験形態が多様化し、大学が求める力も変化する昨今。記事を基に生徒が意見を交わし、問題を理解することで、小論文などに必要な考える力や社会への関心を養う場となっている。

 同校で行われた1月中旬の授業。英数科総合コースの文系2年生が、本紙に掲載された記事を基に考察を始めた。題材は「男性の美容への関心の高まり」。男性がメークをし、外見の印象を良くすることでビジネスや就職活動に生かす動きをまとめた記事だ。論文問題が添えられていて、各自がどう思うか賛成・反対の立場でまとめるのが終着点となる。
 生徒は早速、グループに分かれて議論を始めた。タブレット端末を活用し、裏付けとなる資料や文献を探していく。議論が進むと、各グループの代表が自身の考察に対して根拠となる情報を交えて発表し、クラス全体で共有する。
 議論は週に計4コマある現代文の授業時間を使う。賛否が分かれる題材を扱い、議論の途中で生徒の立場が変わる場合もある。
 この取り組みは5~6年前、現在は大学進学指導課長を務める奥村裕樹教諭が始めた。当初は生徒が新聞記事の要約や感想などを書き、奥村教諭が添削して返信する一対一のスタイル。そのやりとりを発展させ、クラス全体で議論を深める形式を確立した。
 取り組みを開始してから、難関とされる大学にAO入試や推薦で合格する生徒の率が上昇してきているという。2年の芦沢真優さん(17)は「視野や見聞が広がり、自然と力が伸びている」と手応えを語る。奥村教諭は「取り組みは畑を耕しているようなもの。新しい常識をつくっていく世代の生徒たちが今に対する疑問を持ってもらいたい」と話す。
 (富士宮支局・白柳一樹)

 

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新聞記事を基に議論を深める生徒たち=1月、富士宮市の星陵高

 

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自身の意見を述べる生徒

  
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■紙面授業 地歴・公民 入試 公平性保って 常葉大橘中・高 塚本学先生

 大学受験が本格的になり、受験生はラストスパートの時期です。昨年は大学入学共通テストの「英語民間試験導入」で、学校現場は混乱しました。文部科学大臣の「身の丈」発言により、導入が延期されたことは新聞でも大きく報道されました。
 私は地歴・公民の教師ですから、この件で中国の「科挙制」を連想しました。科挙制は、隋の時代の587年に始められ、清代の1905年まで継続された役人選抜試験です。その目的は、貴族の子弟の役人世襲を防ぐことです。科挙が万民に門戸を開放した制度であったことは画期的でした。家柄も血筋も問わず、誰でも科挙を受けることができるという精神だけでも、当時の世界では、類をみない制度といえましょう。それが極めて公平に行なわれたことも利点に挙げられます。答案審査は姓名を見ずに、座席番号だけで行われました。ペーパーテストで「公平」な選抜を行い、人民の中の最も賢明な者を登用しようとしたのです。
 今日の英語民間試験導入は、まさに「公平」という点が問題の一つではないでしょうか。経済力や住んでいる場所という、本人の努力だけではどうにもならない要素が結果の差に結び付きかねないことが問題なのです。
 科挙がかくも長く行われ、周辺地域にも影響を与え続けたことに注目する必要があります。この制度の永続を可能ならしめた中国の社会文化の基盤を著名な歴史家、宮崎市定は、「科挙なるものは本来、文を重んずる精神の上に成立した」と述べています。
 なるべく公平であり、また受験がゴールではなく、入学した大学で学問をスタートするんだという意欲がわく入試であってほしいものです。なぜなら大学こそが、文を重んじる世界の入り口になるのですから。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(35)チバニアン 地球史身近に

 理科の教科書にある、ただ一言で表現される結論を紡ぎ出すために、科学者は日夜研究に勤[いそ]しんでいる。研究が深まり、新しい言葉が生まれ、認められる。理科授業で、最新の科学成果を紹介すると、生徒たちは、目を輝かせて熱心に学ぶ。科学研究の最前線の話題を分かりやすく伝える新聞記事を探してみよう。関連する記事を読ませた後、生徒の理解に応じた補足説明を行うとよい。
 地球史の学習で、欧米の地名に由来するなじみのない名称を覚えるのに苦労する生徒もいるが、彼らに紹介したい記事が「地球史に『チバニアン』 千葉の地層から」(1月18日付静岡新聞)だ。国際地質科学連合が、約77万年前~約12万年前の地質時代を千葉県の地層から「チバニアン(千葉時代)」と命名することが正式に決定したのだ。
 記事の見出しに大きく「チバニアン」とあり、ユニークな名称なので、思わず声に出して読む生徒がいる。行政や地元の人々が一丸となって協力した命名に至るまでの過程やその他のエピソードも興味深い。
 地質分野の学習を、「覚えにくく暗記しなければならない学習」ではなく、「多数の人が関わる創造的な研究の成果を学ぶこと」と感じてもらえるのではないだろうか。
 (清水西高・吉川契子)

  
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■指定校が実践事例を報告 22日、静岡で県推進協

 県NIE推進協議会は22日午後2時から、実践報告会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。
 実践指定校としてNIEに取り組んできた富士宮市立西富士中、川根本町立本川根中、菊川市立菊川西中、県立静岡聴覚特別支援学校の担当教諭が、2~3年間の取り組みの成果や課題を発表する。
 参加希望者は14日までに、県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>へ申し込む。参加無料。

  
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■全国大会は11月都内で

 教育現場で新聞を活用する「NIE」の実践報告や情報交換をする「第25回NIE全国大会東京大会」(日本新聞協会主催)が11月22、23の両日、都内で開かれる。
 例年、全国大会は7月下旬~8月上旬に開かれるが、今年は東京五輪・パラリンピック開催と重なることから、時期をずらした。
 会場は、初日が日本大学文理学部百周年記念館(東京都世田谷区)、2日目が十文字中学・高校(同豊島区)。詳細は追って発表される。

 
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■19年、写真で振り返り 横浜、来月29日まで

 2019年の国内外の報道写真を集めた「報道写真展」(ニュースパーク、東京写真記者協会主催)が3月29日まで、横浜市のニュースパーク(日本新聞博物館)で開かれている。
 新聞、通信、放送の同協会加盟35社の写真記者が撮影した膨大な報道写真から300点を厳選。天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」やラグビーワールドカップ日本大会、台風19号の被災現場など、19年の時代をとらえた写真を、「一般ニュース」「企画」「スポーツ」「文化芸能」と多様な分野で紹介している。昨年8月に本紙夕刊で連載した「県鳥サンコウチョウ」の写真も展示している。
 開館時間は午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。入館料は一般400円、大学生300円、高校生200円、中学生以下無料。
 問い合わせはニュースパーク<電045(661)2040>へ。

月刊一緒にNIE@しずおか=読解、発信力 新聞で育成 社会に目を向ける契機に 常葉大橘高「タチバナクエスト」

2020年01月11日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の常葉大橘高(静岡市葵区)では、英数科の1、2年生を対象に、新聞を使った選択授業「タチバナクエスト」を毎週実施している。テーマに沿った新聞記事を読んで、自分の意見を他者に伝えることで、社会への興味関心を持つとともに、読解力や発信力を育むことが狙いだ。

 この日は大学入学共通テストの「英語民間試験導入延期」をテーマに授業を実施。生徒12人は3グループに分かれ、記事を読む前に自分の意見をワークシートに記入。その後、グループごとに英語民間試験の導入について論じた社説や記事を読み込んだ。分からない単語や面白いと感じた部分に線を引きながら内容を確認し、生徒同士で意見を共有。「英語新入試の問題点は」「英語力とは」など教諭が用意した設問を考え、代表生徒が他のグループの生徒に記事の内容をプレゼンした。
 生徒からは「試験費用を考えると所得によって格差が生まれる」「テストの種類が多いので評価が曖昧になるのでは」などの意見が上がった。その上で、テーマに対する自分の意見を再度、ワークシートにまとめ、記事を読んで考えを深めることができたかを確認した。同校2年の福井千晴さん(16)は「授業を通じて、自分の意見を自信を持って伝えられるようになった」と成長を語る。
 タチバナクエストは、NIE担当の塚本学教諭を中心に3年前から始めた。併せて、スクラップノートも作成し、タチバナクエストや他科目の授業でも活用している。生徒がテーマ設定し、自由に新聞記事を選択してノートに自分の意見を記す。
 「いずれも社会に目を向けるきっかけづくりに非常に有効」と評価する塚本教諭。社会の出来事に触れ、視野を広げることは「興味関心の域を大きく広げ、生徒の成長を後押しする力になっている」と強調した。

 

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新聞記事を活用して意見交換する生徒ら=2019年11月中旬、静岡市葵区の常葉大橘高

 

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生徒が新聞記事をまとめたスクラップノート

  
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■紙面授業 地理・歴史 世相を読み解く鍵 静岡大成中・高 山本翔生先生

 昨年6月から長期間続く「香港デモ」。新聞紙面でもたびたび大きく取り上げられました。6月、「逃亡犯条例」改正案に反対する抗議活動としてデモは始まりました。9月の香港政府による法案撤回表明後、大規模デモはより大きな民主化を求めるものへと変化し、現在も続いています。
 なぜ香港がこのような状況になってしまったのか歴史を見てみましょう。
 1840年に起こったアヘン戦争が大きく関わっています。当時の清国を破ったイギリスは、南京条約で香港島を譲り渡すことや貿易の拡大を認めさせました。さらに、1898年に残りの香港を99年間の期限付きで借りることを認めさせたのです。その後、1997年7月1日に香港はイギリス植民地から、中国の特別行政区になりました。長い年月をかけて香港は中国とは全く異なる形で経済発展を遂げ、今ではアジアNIES(新興工業国・地域)としてアジア最大の金融センター、かつ重要な港湾都市となりました。このように、香港は中国でありながら中国とは違う政治・経済政策が行われ、「高度な自治」が認められた「一国二制度」の状態にあるのです。
 では、中国はどのような政治・経済政策のもと建国70年を迎えたのでしょう。また、香港を長らく植民地支配してきたイギリスの議会制度はどのようなもので、EU(欧州連合)からの離脱問題(BREXIT=ブレグジット)は世界経済にどれほどの影響があるのでしょう。
 こうした世相を読み解く鍵を見つけたり身の回りで起きていることを解決したりするために、社会科目があります。地理分野と歴史分野の土台の上に公民的分野が存在し、土台部分をしっかりと身に付けることで、今後求められる「思考力」がより豊かになるのではないでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(34)SDGs 付箋で「見える化」

 皆さんは、SDGsを知っていますか。2030年までに地球の問題を解決する取り組みのことで、未来を変える17のゴール(目標)を設定しています。そのゴールに向かって、一人一人ができることを見いだし、行動を起こそうというものです。そのためには、まず地球の問題を理解するところから始めなければなりません。
 そこで、新聞を使ったSDGsの「見える化」を紹介します。これは、神奈川県NIE推進協議会の公開セミナーで行われたものです。新聞には、この17のゴールと関連する記事が多数掲載されています。ゴールを意識し読み込むことで、おのずと課題が見えてくるので、それらを色分けして見える化していきます。SDGsのゴールには、全世界共通のアイコン(色とマーク)が決められています。そのアイコンを17種類のSDGs付箋として記事に貼るのです。
 同じ記事でも個々の読み方や問題の捉え方が異なると、同じ色の付箋が付くとは限りません。付けられた付箋の意味を皆で共有し、問題解決に向けて行動していくことは、物事を自分ごととして考えるきっかけとなるはずです。
 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=世界の問題 新聞と実験で「自分ごと」に 身近な体験とつなぐ 静岡・清水飯田小 「海洋プラごみ」テーマに公開授業

2019年12月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の静岡市立清水飯田小(同市清水区)でこのほど行われた、新聞記事を使った総合学習の公開授業。5年生27人が海洋プラスチックごみに関する新聞記事を通し、身近な環境問題を考えた。

 担任の小川訓靖教諭の狙いは、地球レベルで進む環境汚染を子どもたちに自分の問題として考えてもらうこと。新聞記事は、社会情勢に目を向け多角的な観点で考えるきっかけと位置付ける。
 小川教諭はまず、海洋ごみの影響で死んだジュゴンの記事や、マイクロプラスチックが人体に与える影響を説いた論説記事など3種類の記事をグループごとに配布、子どもたちは7分で読み込んだ。
 「分からない漢字は飛ばして、大体の内容をつかもう」。小川教諭の助言で、子どもたちは気になる部分に線を引きながら概要把握に取り組んだ。3人一組で記事に見出しを付ける場面では、なかなか答えを出せないグループも見られたが、子どもたちから「見出しに入れたい言葉に丸をつけよう」といった言葉も飛びだした。
 「記事をただ読ませるだけでなく、いかに自分ごととして考えさせられるかが重要」と言う小川教諭。子どもたちに「マイクロプラスチックって目に見える?」「私たちに関係あるかな?」と問い掛けた。最初はけげんそうな表情を見せた子どもたちも、以前、地元の山原川で自然探索を行ったワークシートを取り出すと「山原川にもごみが落ちていた気がする」との声が上がった。
 さらに、海洋ごみを子どもたちに身近な問題として捉えてもらうために、小川教諭が取り出したのは地元三保松原の海岸の砂。砂を入れたビーカーに水を入れてかき混ぜると赤や緑色のプラスチック片が浮かび上がった。子どもたちは「三保の海岸全部で考えたらすごい量」などと素直な驚きの声を上げ、海洋ごみが身近にも存在することを実感した。
 小川教諭は「新聞記事を通し、世界の話題と身の回りのことがつながる喜びを味わってほしい」と話した。
 

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児童が考えた見出し

 

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三保海岸の砂に水を混ぜる実験を行う児童=静岡市清水区の清水飯田小

  
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■紙面授業-美術 自分だけの表現を 藤枝順心中・高 佐藤滋先生

 新聞を開くと見開き2㌻に、SNS(会員制交流サイト)などインターネット関連の記事がありました。トランプ米大統領の投稿の半数以上が攻撃的内容であるという記事、その隣には時の人、環境活動家グレタ・トゥンベリさんの呼び掛けに援助の手を差し伸べる人々の記事、そしてその左側のページには文化芸術欄があり、美術雑誌出版社の新しいネット配信に関する記事が掲載されていました。こうした記事を比べてみると、SNSは一瞬で情報を発信し良くも悪くも変化を生みだすことが分かります。
 新聞記事はその配置によってもいろいろなアイデアにたどり着くきっかけになります。
 また、私が静岡新聞でよく読んでいるコーナーが「窓辺」という夕刊コラムです。以前、浜松アーツ&クリエイションディレクター菱沼妙子さんのコラムを読んで感銘を受け、実際に会いに行きました。それは「今なぜ芸術教育が必要なのか」という見出しがつき、自ら課題を見つけ、答えを生み出せる力を芸術によって強化できるのでは? という提案でした。切り取って今も手帳に挟んでいます。
 皆さんには、自分なりの表現方法がありますか? 美術デザインであったり、文芸であったり得意な分野で良いのです。自らの手でじっくりと作る姿勢を忘れず、スピード社会に押し流されないよう、しっかりと立ち行動するクリエイティブな力(創造力)をつけてください。これからの芸術教育は他の教科との共有性を持ち、実社会に問い掛けのできる教科になっていかなければならないと思っています。作品制作に頑張る生徒を見ていつも励まし、励まされている日々です。学ぶこと、創作することのすてきさ、素晴らしさをぜひ伝えていきたいと思っています。
 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(33)「地域欄」進路切り開く種

 年末が近づくにつれ、高校3年生の進路にさまざまに関わる場面が増えてきます。筆者は生徒に対し、社会に目を向ける重要性から新聞記事の活用を薦めてきました。
 最近、自ら進路を決めていった生徒たちの中で印象に残っているのが、将来、地域に関わる公務員などの仕事に就きたいという生徒に対し、地元の問題になっている記事を継続的に読み取り、スクラップすることを薦めた場面でした。
 読者は見出しの大きさなどから新聞の一面に目を奪われがちですが、地域欄の地元の行事などの記事が将来の進路につながっているということに気付かせることも大切な関わり方だと考えています。
 2019年はラグビーワールドカップが本県でも行われましたが、官民がさまざまな形で協力する記事が連日、報道されていました。直接関わっていなくても、その事実を知ることが地域社会との関わりの大切な一つだとも思います。
 志望する大学に合格した喜びの笑顔の土台には、自身の生きてきた地域社会とのつながりがあることを、これからも記事の事実を通して伝えていきたいと思います。
 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=「秋の写真」選んで発表 新聞活用 伝達力磨く 論理的に考え主張 西伊豆・田子小

2019年11月02日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の西伊豆町立田子小は、論理的思考力や情報伝達力を磨くため新聞記事を活用している。同校は全校児童48人。小規模校ならではの柔軟な取り組みで、読み書きにとどまらない実践を展開。1、2年生では写真を使い、自分の意思を相手に分かりやすく伝えることを目指す。

 10月上旬に行われた1年生の生活科の授業。「秋を見つけよう」をテーマに、紙面から写真を選び、内容や感想、選んだ理由を発表した。松浦碧さん(7)はコスモス満開を告げる写真を取り上げ、「コスモスは秋に咲く花。ピンクと白の花びらがかわいい」と秋にふさわしいと主張した。発表を聞いて他の児童からは「花の近くにハチがいる」「他にもコスモスが多く咲いていてのどか」など一つの意見に対し、新たな発見や感想が上がった。
 同校では、単語や固有名詞をつなぎ合わせ、文脈があいまいな会話をする児童が多いことを、教職員が以前から問題視。平馬誠二校長は「論理的思考力の不足が原因」と分析し、「自分の意思を的確に主張できる力を身に付けさせたい」と、論理的に展開し、5W1Hの要素を含む新聞記事に着目し活用を始めた。
 NIEに取り組み始めて半年、児童が書くリポートは文章量が増え、色や大きさ、形など客観的な情報を盛り込めるようになったという。1年担任の落合つかさ教諭(26)は「物事の仕組みや問題背景を論理的に捉える力が養われる。コミュニケーション力や学力の向上につながるのではないか」と効用を強調する。
 同校は全校で学年に応じたNIEを展開し、高学年では総合的学習の一環で、小学生が犠牲になった交通事故の記事を用いて、自分たちの通学路に潜む危険箇所を調査したことも。教職員は新聞の一層の活用方法に知恵を絞る。

(松崎支局・市川幹人)

 

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新聞記事を活用し、論理的思考力を身に付ける授業=10月上旬、西伊豆町立田子小

 

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発表を聞いて自分の考えをまとめる児童(画像の一部を加工しています)

  
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■紙面授業-美術 キャラクターの力 常葉大菊川中・高 内山節男先生

 東京五輪・パラリンピックの開幕が間近に迫ってきました。昨年7月には大会のマスコットキャラクター、今年3月には競技種目のピクトグラムが発表され、新聞でも紹介されました。
 今では当たり前のように目にするピクトグラム。実は1964年の東京五輪でトイレや注意を示すための視覚記号(絵文字)として生まれたことをご存じですか。外国人観光客が一目で分かる案内表示として日本の家紋をベースに考え出されたそうです。それが今では世界中に広がっています。
 そして、五輪に欠かせないのが大会のマスコットキャラクターの存在です。東京2020大会の「ミライトワ」「ソメイティ」は、日本伝統の市松模様や桜を身にまとい、日本の文化や魅力を世界に発信する存在として重要な役割を担っています。
 五輪のような大きな舞台ではありませんが、私たちの身近にもキャラクターパワーを持ったものが数多くあります。その一つが地域の特性や情報を単純化して伝えるゆるキャラです。
 私の授業の中でも自分自身をゆるキャラ化する取り組みを行ってきました。メインである「自分らしさ」だけでなく、弱点や情けないところ、苦手なものなども表現するというところがゆるキャラならでは。自分を客観的に見ることにもつながります。
 数千字かけて熱心に自分をプレゼンテーションするよりも、一目で分かるキャラクターを用いた方が端的に伝えられるのではないでしょうか。作ったゆるキャラを紹介し合う活動では、生徒同士の交流を深めることもできました。皆さんも自分のゆるキャラを作ってコミュニケーションに生かしてみませんか。自己紹介・PRにうってつけですよ。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

  

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(32)生き方学べる「コラム」

 新聞を活用した「喜怒哀楽探し」という活動を知っていますか。「喜怒哀楽」を4人で分担して、それぞれに関係する記事を探し、どの記事が多いか比較する活動です。
 最初に、「一番多いのはどれか」と聞きます。すると、ほとんどの人が一面や事件・事故の記事の印象が強いためか、「哀しみ」や「怒り」に関係する記事が多いだろうと予想します。ところが実際に比べてみると、「喜び」や「楽しさ」の方が多い傾向があるのです。
 「喜び」に関係する記事は、特に地方版やスポーツ、コラムに多いように思います。中でも、「コラム」は前向きですてきな生き方に出合えます。文章量も少なく、読みやすいものが数多くあります。
 私が最近読んだ静岡新聞の夕刊コラム「窓辺」では、若月佑美さんの文章が印象に残りました。アイドルグループ「乃木坂46」を卒業した25歳の若月さんですが、自分の生き方について本当に深く考えていて、驚くと同時に勇気をもらいました。
 本と同様、「どんなコラムに出合うかは人生を左右する」と言えるかもしれません。このようなコラムを多数掲載している点も新聞の特徴の一つです。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞が教材 ワークシート 豊富に用意、学習支援 作成の矢沢校長(焼津 豊田中)紹介

2019年10月05日(土)付 朝刊


 2020年度から順次施行される新学習指導要領では、小中高全てで初めて「新聞の活用」がうたわれた。しかし授業で新聞を活用する経験のない教員にとっては、高いハードルに感じられてしまうだろう。そこで、手軽に使えるNIEとして、本紙はホームページで「NIEワークシート」を提供している。作成者の一人、日本新聞協会認定のNIEアドバイザーである焼津市立豊田中校長の矢沢和宏さんにワークシートについて原稿を寄せてもらった。

 「NIEワークシート」を知っていますか。新聞社のネット上に公開されたり冊子になったりしている、新聞記事を利用した便利なシートで、誰もが利用できます。新聞は生きた教材を提供してくれます。
 しかし、使いたい記事がタイミングよく掲載されるとは限りません。スクラップしておけば後で役立ちますが、狙いに合った記事を毎日探すのは大変ですね。
 そこで、このシートが「やさしいNIE」の実践を手助けしてくれます。シートを活用し、手軽に新聞の魅力に触れてみましょう。シートは全教科、道徳、総合的な学習、学級会・生徒会などで活用できるよう豊富に用意されています。
 子どもたちには、シートへの記入だけでなく、記入した内容をテーマに話し合わせたりすると深い学びにつながります。
 私の学校では、社会への関心と、読解力・文章力の向上を目的に自校でシートを作成し、「朝の新聞タイム」と名付けた活動を行っています。
 シート作成のポイントは「どんな目的で取り組むのか」です。子どもたちに、「社会や地域への関心を高めたい」「積極的な生き方を身に付けさせたい」「文章を要約する力や限られた字数の中で表現する力を伸ばしたい」など、目的によって選ぶ記事や問う内容は違ってきます。
 取り組んだ子どもたちからは、「いろいろな種類の記事があって、次にどんな記事と出合えるのか楽しみ」「新聞の良さや新聞学習の楽しさを知った」「違う立場から考え、いつも自分の意見をもつようになった」「文章を読んだり、書いたりすることが苦手でなくなった」「文章を読むのが速くなった」など、前向きな感想がたくさん寄せられています。

 

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矢沢和宏さんが作成した「NIEワークシート」の一例

 

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「NIEワークシート」を使った授業に取り組む生徒たち=焼津市立豊田中

  
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■紙面授業-家庭 紙の新たな可能性 沼津中央高 深沢園美先生

 私は家庭科の教師ですから、被服の新素材開発には興味があります。マニラ麻を使用した「紙の服」が最近作られ、若年層をターゲットに販売を展開しています。「紙」では洗濯すると溶けてしまうのでは? と疑問を持つかもしれませんが、紙繊維に撚[よ]りをかけて糸にしているので丈夫です。ジーンズ、ワイシャツのほか、帽子やバッグなども作られていて、微生物分解により環境への負荷が軽く、ゴミ問題にも配慮していること、高温多湿な日本の風土に対して吸湿性が高いことなどから人気があるようです。
 昨年7月に米コーヒーチェーンのスターバックスが2020年までに全世界の2万8千以上の店舗で、プラスチック製のストローを廃止し、紙製のストローに切り替えていくと発表した際は新聞でも大きく取り上げられました。いま、「紙」は環境面で注目されている"新素材"の一つです。
 本校では、毎年ファッションショーを行っています。エコを意識した生徒たちの発想はとても豊かで、花束を作る時に用いられるフラワーラップ素材や、英字新聞やトイレットペーパーを利用した衣装なども製作し、文化祭の演目に花を添えています。
 1ロールの長い紙(布)から、衣装が完成するまでは気が遠くなるほどの長い工程を要しますが、衣装を身にまとい、観客からの歓声を浴びる喜びは言葉にならないようです。
 「ものづくり」は文化です。古き良きものを受け継ぎながら、新しいものに形を変え、その時代をつくっていきます。県東部の私立学校の中で最も長い歴史を持つ本校は、間もなく100周年を迎えます。形を変えつつも、文化を伝承し、生徒達が新時代の礎を築けるように、私はカミ(神)に祈りながら、日々授業に向かうのです。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

  
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(31)考察の文章化 社説活用

 大学推薦入試の要項が発表になった。ここには、小論文が避けて通れない関門となって立ちはだかっている。今回は、その突破方法と新聞利用についてご紹介したい。
 「小」とついているが、れっきとした論文であることを認識しよう。
 論文とは事象から思考を経て文章化した場合、読んだ人が「確かにそう考えられるよね」と同意されるものである。「でも、こうも考えられるんじゃない?」となるのを論の発展と呼ぶ。故に、論理的な文章を書くことで最も重要なのは「理由」があるということだ。「こう書いてあるからこう考えられる」-これが考察の文章化であり、小論文たり得るのだ。
 しかし、この文体は練習しなければ獲得できない「技術」である。すなわちトレーニングが必要で、それには学校の先生に添削指導を頼むのが最も良い。
 具体的には、静岡新聞朝刊の社説を読み、この文体をまねるのがお薦めだ。考察とは主張であり、説得である。読み手に己の考えを納得させねばならぬ。社説は時事の諸問題に対して考察し、基本に則ったスタイルで発信している。
 ぜひともまねすべし。少し難しい内容かもしれないが、練習である。頑張ろう!
 (静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2019年09月07日(土)付 朝刊


■紙面授業-国語 怪談で伝え方学ぶ 静岡学園高 相原出帆先生

 8月はさまざまな記念日があります。
 広島原爆忌(6日)、長崎原爆忌(9日)、終戦の日(15日)。全国で犠牲者を悼み、恒久平和を誓う様子が新聞でも大きく報じられました。このほか、道の日(10日)、特許の日(14日)などもあります。

 怪談の日(13日)もそんな記念日の一つ。私は時々せがまれて授業の合間に怖い話をすることがあります。
 たとえば、こんな話があります。

 彼は大学に入り一人暮らしを始めた。夜部屋にいると、何かの気配がして気になる。そこで神社でお札をもらい、帰ってすぐに部屋の壁に貼ると、「無駄だよ」と耳元で声がした。

 一応、怖い話と言える内容になっていますね。細かく見てみると、いつ、どこで、誰が...という情報を述べ、最後のセリフにつなげています。必要な情報は整理して順番に伝える一方で、怖がらせるにはわざと分からないことを残す必要があります。セリフの前に「オバケの声が」などと入れたら、台無しでしょう。また、リズムや表情などの話し方も大切です。物音や、あえて何も話さない間を入れるのもいいでしょう。

 人を怖がらせるにはどうすればいいか、それを意識しながら講談や落語など古典芸能の名人が語る怪談を何度か聴くと、張り巡らされた工夫に気付けます。気付いたら真似てみる。他の話にも応用してみる。そうすると、どんどん上手に話せるようになるでしょう。
 皆さんが授業でする発表や討論も、目的をもって言葉を活用し何かを伝える、という点は同じです。怖い話が好きなら、楽しみながら言葉で上手に人に伝える訓練をぜひしてみましょう。それは言葉についての立派な学びになります。今から始めれば、来年の夏にはりっぱな怪談名人、そして人前で話す名人になっているかもしれませんよ。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

  
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(30)宇宙解説で興味深める

 2020年注目の話題はもちろん東京五輪ですが、小惑星りゅうぐうに着陸し、岩石採取実験を成功させた「はやぶさ2」の帰還も、注目するべきニュースです。
 今年4月5日に、「はやぶさ2」が小惑星に金属弾を撃ち込む世界初の実験を成功させたとき、新聞は実験内容をイラスト入りの、分かりやすい文章で解説しました。こうした記事を活用すれば、授業内の短時間で実験内容を紹介できます。
 20年に「はやぶさ2」が無事帰還した時には、研究上のチームワークの大切さ、リーダーの役割などに関する記事が掲載されるかもしれません。科学にあまり関心のない生徒も興味を持つでしょう。これらの話題は特別活動や総合的な学習の時間でも取り扱うことができます。
 「はやぶさ2」のプロジェクトは、学校理科の学習としては応用・発展的な内容ですが、新聞記事で学べば、子どもたちはスムーズに理解できて、宇宙への興味・関心を深めることができると思います。科学者の研究姿勢に、生き方を学ぶこともできます。記事を見逃さないで継続的にスクラップし、授業で紹介したいものです。
 (清水西高・吉川契子)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞通じ表現力向上 新規実践校が抱負

2019年08月03日(土)付 朝刊


 日本新聞協会はこのほど、2019年度のNIE実践指定校を全国で545校決定した。県内では、県NIE推進協議会が推薦した新規7校、継続7校が決まった。実践校には一定期間、県内で発行される7紙が無料提供され、NIE活動で活用される。新規7校に活動への抱負を寄せてもらった。

 

■多角的に物事捉える力育む 伊豆の国韮山南小 山本順也教諭
 読書好きな子が多く、休み時間になると、図書室前に行列ができている姿をよく目にします。活字に慣れ親しむことはよくできていますが、新聞はというと、読んでいる子どもはほとんどいません。
 だから、新聞をすぐ手にとって見られるようにしたり、新聞を見て考えたことを、朝の会でスピーチする時間を設けたりするなどして、新聞を身近に感じられるような環境を整えていきたいと思います。
 新聞を読むことで、世間に目を向けられるようになり、物事をいろいろな角度から考えてみる力が高まることを期待しています。また、新聞を身近なアイテムとして活用できるようになればと考えています。

  

■社会とつながる効果に期待 吉田自彊小 三津山一世教諭

 NIEの実践を始め、強く感じていることは、児童の新聞への興味の高まりです。本校は、18学級ありますが、全学級で、新聞コーナーを作り、日常的に新聞を読む環境を整えています。
 また、毎週金曜日の朝活動では、新聞ワークシートを活用し、社会で起きている出来事について、自分の考えを持ち、伝え合う活動に全校で取り組んでいます。児童は、毎週楽しみにしています。
 さらに、道徳の授業で新聞を活用することにも全教員で取り組んでいます。教員自らが多くの新聞記事から児童の実態に合う記事を選び、教材化することは、労力が要ります。しかし、社会と児童をつなぐ効果があるのではないかと、全職員で研修しています。これから、よりよい実践で、児童の学びの充実感を育んでいきたいと思っています。

 

■多くの言葉や考えと出合う 湖西白須賀小 加藤健太郎教諭
 「次の日、桃太郎が鬼を倒したことが村中に広まりました。中には、桃太郎とむすめを結婚させたいという人も少なくありません。~中略~年老いた両親に代わり、およめさんがくるくると働きました。~中略~それはそれは、かわいい赤ちゃんでした。~中略~」
 これは、6年生の家庭学習の一つで、児童が昔話の続きを考えたものです。「少なくありません」「くるくると」「それはそれは」など、一つ一つ言葉を選んで使っており、言い回しが見事です。
 本校では、朝活動に「言葉の時間」を新設しました。NIEの実践を通して、児童が多くの言葉や考えと出合い、新たな気付きにつながる取り組みをしていきたいと思います。

 

■役割に着目し生活で生かす 浜松城北小 稲田晴彦教諭
 本校は、新規校として2学期から本格的に始動できるように、現在取り組む内容を検討、準備しています。児童の中にも、新聞を定期購読していない家庭が増えていて、新聞離れが感じられます。
 そこで、中心的に進めていきたい内容は、新聞がこれまで果たしてきた役割を見つめ直す取り組みです。新聞が配達されるところから着目し、新聞がもたらす豊かな情報やその情報がもたらす効果はもちろん、読み終わった後の新聞が再利用されるところまで学習できればと思います。
 日本人の生活に溶け込んできた新聞がこれまで果たしてきた役割をクローズアップするとともに、今後も新聞を生活の中で生かす手立てを見つけだすことができればと願っています。

 

■五輪・パラ後の課題考える 小山中 寺田公紀教諭
 本校がある小山町は、来年開催される東京五輪・パラリンピックのロードレースの会場となっています。しかし、本校の生徒の様子を見ると、まだまだ盛り上がりに欠けているような現状があります。
 そのような現状の中で、今回、実践指定校となったことは本校にとってはチャンスだと捉えております。毎日の新聞に五輪・パラの記事が載っており、それを授業で扱うことで生徒の五輪・パラへの興味・関心を高め、五輪・パラ開催後の問題点などを考える機会になるのではないかと考えております。
 また、たくさんの新聞記事に触れ、生徒たちがその記事から自分たちが解決しなければならない課題を見つけ、自分たちで解決策を考える姿勢を養っていけることを期待しています。

 

■情報リテラシー身に付ける 浜松西高 吉田忠弘教諭
 公立小中高校の学校図書館への新聞配備に財政措置が採られるなど、教育現場における新聞の重要性がますます高まってきております。本校でも、新聞閲覧台に6紙を用意し、生徒・教職員に提供されています。
 現在では、さまざまなメディアが普及しており、それらが提供する情報に対して、その信ぴょう性や有益性などを判断し活用する力、いわゆる情報リテラシーを身に付けていくことがますます強く求められています。
 「ネットのニュースだけで十分」といった意見も聞かれますが、新聞を使って、「記事を正確に読み取り、その内容を要約し、それに対する自分の意見を持ち、他者に伝えていく」を繰り返すことによって、前述の能力を育む一助となればと考えております。

 

■世の動きに自分の意見持つ 常葉大付属橘中・高 塚本学教諭
 2020年のビッグイベントといえば東京オリンピック。その熱狂が通り過ぎたころ、大学入試が大きく変わります。1990年から30年にわたって受験生の学力を"測定"してきたセンター試験から、「思考力・判断力・表現力」中心の新テストへ変更します。
 生徒が置かれている環境もこのように変わるのですから、これを機会に生徒たちに、新聞を通じて社会や世の中の動きに関心を持たせたいと考えています。そして、調べ考えることで自分の意見を持ち、それを表現できるようにしていきたいと思っています。
 他者の意見を知り、自分の考えを深化させる喜びを味わい、生徒も教員も楽しくNIE活動を行っていきたいと思っています。

 

■2019年度NIE実践指定校
 【新規】伊豆の国市立韮山南小、吉田町立自彊小、湖西市立白須賀小、浜松市立城北小、小山町立小山中、浜松西高、常葉大学付属橘中・高
 【継続】(2年目)西伊豆町立田子小、静岡市立清水飯田小、菊川市立菊川西中、清水西高(3年目)富士宮市立西富士中、川根本町立本川根中、静岡聴覚特別支援学校

 

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県NIE推進協議会総会でNIE活動の抱負を語る新規実践指定校の教諭=6月、静岡新聞放送会館

 
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■紙面授業-日本史 国司に重要 神社参拝 富士見中・高 宮原一将先生

 先月下旬、参議院選挙が行われ、連日新聞で大きく報道されました。現代の日本では、議員や首長は選挙で決まります。でも、選挙でリーダーが選ばれるようになったのは明治になってからです。奈良時代以降、地方を治めるために六十余りの「国」が置かれていました。今の静岡県には伊豆国[いずのくに]・駿河国[するがのくに]・遠江国[とおとうみのくに]の三つの国がありました。国のリーダーは「国司[こくし]」といい、朝廷から派遣されていました。
 では、その国司にとって最優先の仕事とは何だったでしょうか。それは「神社への参拝」です。国司は赴任後、まずその国の神社に参拝するのが慣例でした。「政」は「まつりごと」とも読みます。当時のリーダーにとっては、神様をおまつりし、豊作や世の平安を祈ることが大切な仕事でした。私の趣味は神社巡りですが、国司にとってはそんな気楽なものではなかったようです。
 では、国司が参拝するのはどのような神社だったのでしょうか。答えは「国内の有力な神社全て」です。最も有力な神社を「一宮[いちのみや]」といい、国司はそこから順番に二宮[にのみや]、三宮[さんのみや]...と巡っていきます。富士見中・高がある駿河国の場合、一宮は富士宮の浅間大社、二宮は由比の豊積[とよづみ]神社、三宮は清水の御穂[みほ]神社です。平安初期の駿河には22の有力な神社がありました。万一これらを全て巡るとなれば、車も電車もない時代ですから、ほかの仕事ができなくなってしまったことでしょう。
 そこで登場したのが「総社[そうじゃ]」です。総社は国の全ての神様を集めた神社で、参拝すれば全ての神社を回ったことになりました。駿河国では、平安時代に静岡浅間神社(の中の神部[かんべ]神社)を総社としました。
 では、最後に宿題です。伊豆と遠江の一宮・総社はどこでしょうか。調べてみてください。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(29)一覧性がもたらす効果

 「小さな子どもたちには、NIEはできない」という概念を打ち破るべく、新聞コラージュを推進するきっかけとなったのが、現在、本紙夕刊「窓辺」を執筆中の新聞切り抜き作家マスダカルシさんとの出会いです。
 本紙日曜別刷り「週刊YOMOっと静岡」に、マスダさんの「見つけたチョキチョキ新聞アート」が掲載されています。それは、1枚の紙面に詰まっている情報の中から必要なものを取り出し構築する活動です。アートなので、本来は「考える図工・美術」として大変価値のあるものです。しかし、色・形・質感などの情報リテラシーとして捉えると、NIEの考えに基づき新聞アートの技法を取り入れた新聞コラージュは、語彙[ごい]が少ない子どもたちにとって学びの手法となります。
 新聞には文字だけでなく、写真・広告などもカラフルに紙面を飾っています。漢字が読めなくても、言葉の意味が分からなくても、小さなころから新聞に触れ、慣れ親しんでいくことで視野が広がり、自身で情報を取捨選択していく素地となります。
 これは、新聞の一覧性がもたらす大きな効果だと言えます。
 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載="学びに向かう力"新聞で 「感性揺さぶるツール」 帝京大・古家正暢教授 講演-県NIE推進協議会総会

2019年07月06日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会の2019年度総会がこのほど、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開かれ、帝京大経済学部の古家正暢教授が「今、ここにある現実と向き合うNIE」と題して講演した。古家教授は37年間の教員経験から得た実践事例や反省点を紹介。「学びを人生や社会に生かそうとする"学びに向かう力"を養うため、新聞の活用法を再考すべき」と主張した。

 東京都の中学や高校で社会科を指導してきた古家教授は、授業に新聞を取り入れ始めたきっかけとして、宗教に関する授業で新聞記事を用いたエピソードを披露した。生徒に配布した記事は、ヒンズー教徒の列車運転手が、神聖とされる牛を避けようと鉄橋の上で急ブレーキをかけ、列車が橋から転落した内容。生徒は記事を通し、ヒンズー教徒の宗教観や戒律は日本人とは異なることを実感したといい、新聞の有用性を説いた。
 古家教授は、生徒の自己主張を促そうと、新聞に意見を投稿することを推奨したという。その上で「実名を出して公の場に投稿することは、批判の対象になる可能性がある。そのことも生徒に伝えなければならない」と注意を促した。
 小学4年生の児童が作った新聞スクラップの作品も紹介。プラスチックごみをテーマに選んだ児童は新聞記事の読み込みから学習を発展させ、実際にリサイクル工場を見学したという。工場へ運ばれなかったごみは海外へ輸出されて海に投棄される恐れがある一方、工場に持ち込まれれば全てリサイクルされることを知り、工場の増設とプラスチックに頼りすぎない生活を提言した。古家教授は「新聞スクラップを契機に、より深い学びにつながることがある」と強調した。
 自らの経験を踏まえ、「授業で学んだことをより深く考えたり、その結果を発信したりと、感性を揺さぶる授業のツールとして新聞は有効」とNIEのさらなる発展を呼び掛けた。
 

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学びに向かう力を養うための新聞活用法を話す古家正暢教授=静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 
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■紙面授業-国語 思考実験のススメ 浜松学院高 仲手川裕史先生

 「先生、さっきの化学、実験とても面白かった」。私の現代文の授業が始まった時、生徒が開口一番に言った言葉です。理科の先生たちは、広い特別教室に豊富な実験器具、試薬、そして彼らの幅広い知識で、知的好奇心をくすぐるさまざまな実験を行っています。
 その生徒が「国語には実験ないからなぁ」なんて言っていたので、「実験もするよ」「本当に!?」―ということで、実験を行いました。実験と言っても「思考実験」というものです。「もし、こうだったら」と仮定し考える実験です。
 「水槽の中の脳」や「トロッコ問題」などを紹介し、生徒にテーマを設定してもらい、グループワークをしてもらいました。
 この思考実験。もちろん、国語だけでなく、他教科でも行っています。例えば、理科で出てくる「理想気体」や「摩擦のない水平な直線のレール」も、実際には存在しません。これら存在しない物体が「ある」と仮定して、科学の基本的な原理にのっとって「思考実験」を行い、それらを基にPV=nRTやx=vtなどの公式を導き出しています。仮定から理論を組み立てる能力は、さまざまな場面で役立ちます。
 最近、米中貿易摩擦や日韓関係などに関する記事が新聞に載らない日はありません。こうした国際情勢を考えるときに、「なぜこうしないのか」「もう、こうすればいいじゃん」と、思うことがたくさんあると思います。しかし、その選択肢をとった時に、「その後どうなる?」「さらにその後は?」と考えることが必要だと思います。
 安易で短絡的な結論に至らないためにも、常に考え続け、より良い「選択」や「結論」を導き出す能力。そんな能力を育ててくれる思考実験。ぜひ、皆さんもしてみてください。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(28)新聞情報 常に感度高く

 日々の授業で新聞を取り入れていく場合、さまざまな活用方法があるかと思います。「主体的・対話的で深い学び」を実践していくために、筆者が心掛けていることは、まず常に新聞記事に関する情報にアンテナを張っていることです。
 昨年NIEの公開授業を行う際、外国人労働者の問題が国会で議論になっていました。関連する新聞記事で授業計画を練っていたところ、就職氷河期世代に関する別の記事が目に留まりました。この時、新聞を読み比べたことで、労働者の問題を国内・国外の広い視点で考えることの大切さに筆者も気付くことができました。その結果、複数の記事で生徒が多角的な視点を得て、学びを深める授業づくりにつながったと思います。
 また、新聞記事の後追いも意識しています。先日の高1の政治経済の授業で氷河期世代雇用30万人増という政府の骨太方針案の記事を扱いました。公開授業で扱った記事のその後を生徒に示すことで、学びのつながりを意識することができたと思います。
 多角的な視点に立つことができる新聞記事を、これからも活用していきたいと思います。
 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=環境問題考える力 育む サクラエビ不漁 「週刊YOMOっと」活用 多彩な写真、解説 視野広がる-静大付属静岡中

2019年06月01日(土)付 朝刊


 静岡新聞社発行の子ども向け新聞「週刊YOMOっと静岡」を活用し、"駿河湾の宝石"とも呼ばれるサクラエビの記録的不漁の現状を学ぶ特別授業が5月24日、静岡大付属静岡中(静岡市葵区)で開かれた。身近な海を入り口に、世界の環境問題など正解のない問題を考え抜く力を育む狙い。同大の教育学部生や教育学研究科の大学院生ら5人が、同学部の藤井基貴准教授(43)の指導の下、授業を行った。

 「最近、駿河湾のサクラエビが不漁だそうです。どうして取れなくなってしまったんでしょうか」。学生が1年A組の約35人に呼び掛けた。サクラエビの食の現状を伝えるため、学生と同校教諭らで20年前と現在の静岡市の食卓を比較する寸劇を披露した後、生徒たちは4月28日付「週刊YOMOっと」の記事を熟読した。
 記事では、サクラエビが静岡を代表する味覚である一方、不漁に伴って、厳しい漁獲規制が敷かれていることや、一人一人が環境を大切にする意識を高める必要があること-などがカラフルな写真とともに記され、長きにわたり潤沢だった漁獲が近年、原因不明の不漁に陥っていることを学んだ。
 生徒はグループに分かれて、不漁と関連するキーワードを考えた。「YOMOっと」を読みながら、乱獲や環境汚染、気候変動などの単語を付箋に書き出し、理由を熱心に議論。その上で、漁師、東京五輪、工事、静中生(自分自身)など、学生が用意した10枚のカードを使い、不漁と関連が強そうな順に並べ替え、近い発想の付箋をカードに貼り付けたりカードを線で結んだりして、さまざまな要素が互いに関係し合っていることを視覚を通して確認した。
 「不漁の原因は取り過ぎだとばかり思っていた。新聞が手元にあると考える基になり、視野を広げて議論できる」と新聞の活用の良さを語る山口琳音[りんと]さん。柿平悠さんは「新聞記事が分かりやすくまとまっていて議論しやすかった。今後もサクラエビの記事を注目して読みたい」と授業を振り返った。
 (「サクラエビ異変」取材班)

 

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「週刊YOMOっと静岡」を活用しサクラエビの不漁について学ぶ静岡大付属静岡中の生徒=5月24日、静岡市葵区の同校

 

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「週刊YOMOっと静岡」を読みながら、サクラエビ不漁の関連要素を付箋に書き込む

 
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■22日にNIE講演会 豊富な実践例紹介-県推進協
 県NIE推進協議会(安倍徹会長)は22日、NIE講演会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。
 2019年度総会後の午後3時からで、帝京大学経済学部の古家正暢教授が講師を務める。演題は「『今、ここにある現実』と向き合うNIE-新聞とともに歩んだ社会科教師のライフヒストリー」。長年の教員としての経験を基に、豊富なNIEの実践例を紹介する。講演会だけの一般聴講も受け付ける。無料。
 問い合わせは同協議会<電054(284)9152>へ。

 
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■紙面授業-地理・歴史 文化財保護の意義 オイスカ高 谷野正成先生

 4月16日、フランスの有名な世界遺産であるノートルダム大聖堂が火災に遭いました。新聞でも大きく取り上げられ、記憶に新しいという方も多いのではないでしょうか。同じような悲劇が日本でもあったことはご存じですか。
 1949年に法隆寺の金堂壁画が焼損するという出来事が起きました。これを機に制定された法律が文化財保護法です。文化財を傷つけるということは誰もが無意識にでもやってはいけないということを理解しているでしょう。しかし、それが時として議論の対象になることがあります。
 沼津市の高尾山古墳の例を見ていきましょう。高尾山古墳は3世紀前半から半ばにかけて造られた前方後方墳です。3世紀前半から半ばというのは邪馬台国の女王卑弥呼が活躍をしていた時期と重なります。そんな時期の古墳が静岡県内にあるのです。ただ、そのような高尾山古墳も取り壊すことが決まっていた時期がありました。その理由は主要道路建設です。
 沼津市のホームページによれば、沼津南一色線という、国道と国道を結ぶ道路であるということが説明されています。その建設予定の道路が高尾山古墳と重なってしまったのです。これに対して、道路建設・古墳取り壊しを推進する団体と古墳の保存を推進する団体が生まれ、活発に議論が行われました。この議論は両方の団体の主張が通るように調整が行われています。
 今紹介した話は、文化財保護がより良い住民の生活と対立する例の一つです。本来、文化財は保護されるべきものですが、過去の遺産を守るのか、それとも現代の暮らしを良くするのか、あるいは両立する知恵を出すか、ぜひ皆さんも考えていただけたらと思います。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(27)記事を読み共感力醸成

 過日、おいの結婚式に出席した。その時の上司のスピーチは、NIEが社会人教育としても十分通用することを再認識させるものであった。外資系の最先端ビジネスで、最も重要な条件は「共感力」だとのこと。これは筆者がNIEを実践する上での最大テーマではないか! 日ごろのNIE実践における「目的」を明確にするため、概略を紹介したい。
 現在ビジネスの現場では、異なる領域の複数の専門家が協力してプロジェクトを遂行する。その場では互いの「共感力」が肝要で、それを醸成するには毎日の新聞購読が最も効果的というのだ。
 なぜなら記事の内容は悲喜こもごもである。悲しい出来事には心からかわいそうと思い、事件ならば原因を類推する。不祥事ならば、私ならどうしただろうと反省してみる。つまり新聞を読んで、自分以外の何者かになり、他人を思いやる訓練をすることが有意に働くそうだ。
 学校で新聞記事を読んで思考する、という練習を積むことがそのまま社会人になった際に有効なツールとなる。NIEは目先の教育効果ではなく、将来を見据えた学びの方法なのである。
 (静岡高・実石克巳)

 
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■2019年度しずおか新聞感想文コンクール 小中高生作品 9月9日まで募集

 静岡新聞社は、県内の児童・生徒を対象にした「2019年度しずおか新聞感想文コンクール」の感想文を募集している。
 同コンクールは、子どもたちが新聞を通じて活字に親しみ、読解力と表現力を養うとともに、地域や社会への関心を高めることを目的に開催。関心のある記事であればジャンルは問わない。「記事を読み、考えをまとめる機会として活用してほしい」と事務局は呼び掛けている。
 応募規定は以下の通り。
【対象】小学4年生~高校生
【部門】小学生の部、中学生の部、高校生の部
【課題】2019年1月1日~8月31日の新聞記事を読んでの感想
【応募方法】事前に事務局から応募要項を取り寄せ、応募する。要項は「静岡新聞NIE」ホームページ内からダウンロード可。
【締め切り】9月9日必着
【賞】各部門で最優秀賞1点、優秀賞2~3点、入選2~3点、奨励賞。応募者全員に参加賞を贈る。また、各部門から学校賞(団体賞)を選ぶ。
【発表】上位入賞作品は静岡新聞紙上に掲載
【表彰式】12月7日、静岡 新聞放送会館
【問い合わせ・要項請求先】静岡新聞社読者部内「しずおか新聞感想文コンクール」事務局<電054(284)8984>へ。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞記事 聞いて親しみ 要約し放送 学び深まる-静岡・清水飯田小

2019年05月04日(土)付 朝刊


 静岡市清水区の市立清水飯田小は5、6年生の放送委員が気になる記事を選び、お昼の放送で紹介する活動を行っている。放送委員にとっては新聞記事を通して読解力や要約力を養うことができ、放送を聞く児童は耳から情報を入れるという新しい新聞との関わり方で低学年でもニュースに関心を持つようになるという。

 月に1度の委員会の時間に、約20人の放送委員が1カ月分の新聞を点検。担当する小川訓靖教諭(43)は「見出しには記事の80%が詰まっている」とし、「まず見出しだけを見て気になる記事を見つけて」と指導する。子どもたちは新聞を読む際、文字の多さに抵抗感を覚え、全部を理解しようとして挫折してしまうという。見出しだけに注目させることで新聞そのものを遠ざけてしまうことを避けるのが狙いだ。
 次に取りかかるのが記事の要約。低学年にも分かるよう記事をかみ砕くことで内容をより深く自分の中に落とし込む。放送委員は記事の要約と感想をまとめ、給食の時間の校内放送で読み上げる。全校児童が耳から情報を取り入れて新聞に親しんでいる。
 放送をきっかけに他の授業での学びとつながったことも。東京五輪・パラリンピックのピクトグラム決定についての記事を放送委員が紹介した日、あるクラスでは道徳の授業でピクトグラムを取り上げていた。放送を聞いて、同クラスでは「これ、道徳で勉強したね」という声が生まれ、より学習が深まったという。
 放送委員の子どもたちは「新聞は図工の時、机に敷くものだと思っていたけどいろいろなことを知ることができて楽しい」、「家でも読むようになった」と新聞への抵抗感が減った様子。小川教諭は「自分で見つけて(要約を)書くことで新聞に親近感がわくのでは」と分析する。
 廊下にはNIEコーナーを設置し、災害やオリンピックなど社会の関心度が高い記事を紹介。子どもたちの興味を引く漫画に関する記事などを近くに置く工夫も。小川教諭は今後について「委員会だけでなくクラス、学年と実施する規模を広げたい」と意気込んだ。

 
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選んだ記事の要約や感想を放送する児童=3月中旬、静岡市清水区の清水飯田小

 

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学校の廊下に設置したNIEコーナーで新聞を紹介する小川訓靖教諭

 
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■紙面授業-国語 最適解を導く視点 島田樟誠高 小宮幸代先生

 変化の激しい今の、これからの社会を幸せに生きていくためには、さまざまな資質・能力が必要となります。その一つが想定外の出来事に対して、自ら考え、他者との対話を通して判断し、実行する力です。そこでは、正解のない問いに対してより良い答え、いわゆる最適解を導くことが求められます。現代社会で最適解を導くためには、主観的なものの見方ではなく、さまざまな視点から物事を客観的に捉える意識=他者意識が必要となります。
 例えば、近年、世界規模で発生している異常気象への対応として、全小中学校にエアコンが導入されることもその一つです。エアコンの設置が正解かどうかは分かりません。しかし、生徒や保護者、税金などのさまざまな視点から検討しながら、その時にとっての最適解を求め続けなければなりません。
 「グローバル社会を生き抜き、言語も文化も異なる"強烈な他者"に自分の意見を届けるためには、筋道を立てて伝える力=論理力が必要である」。これは、教育評論家の出口汪先生が講演会で語った言葉です。
 視点を変えることで、見え方・感じ方が変わります。自分の意見を相手に伝えるためには、社会の情勢を知ること(情報)+伝えること(テクニック)の両輪が必要です。
 新聞にはこの二つが備わっています。情報はもちろん、誰が読んでも発信者が伝えたい内容が伝わるような筋道=論理があります。新聞を読むことで、独りよがりにならない伝え方を学ぶことができます。
 新聞を活用して情報をキャッチすると同時に、他者意識をもった伝え方を磨くことが可能です。そして、他者意識をもち、最適解を求める場面を設定していくことが、これからの学校や授業者の役割であると感じています。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(26)新旧記事の比較読み

 「イチロー選手引退」は大きな記事になりました。その時、私は新聞スクラップで19年前の記事「イチロー選手、大リーグ挑戦」を見つけました。この新旧の記事を比較してみると、「イチロー選手が何より野球を愛し、アメリカで頑張る強い意志を最後まで貫いたこと」が実感でき、感動しました。
 新聞には即時性があり、最新の記事にはもちろん価値がありますが、古い記事でも活用の仕方次第で新たな価値が生まれます。まさに「古くても新聞」です。新旧の記事を比較したり、特定のテーマの記事を継続して読んだりすることで、変化や変遷が見つかり、面白さが倍増します。
 私が集めた野生動物の出没に関する記事からは、出没時期や場所、種類などに傾向があることが分かりました。訃報広告から、家族や社会の変化を読み解く方もいます。
 最近では、新元号、サクラエビ漁、オリンピック・パラリンピック、SDGs、プラごみ対策、iPS細胞治療、AI、18歳選挙権、消費税、はやぶさ2、藤井聡太七段など、追い掛ける価値がありそうな記事は数えきれません。
 そのためにも、関心を持った記事をとりあえずスクラップしておくと、後で大きな力を発揮すると思います。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践7校 成果と課題(下)

2019年04月06日(土)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2018年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた県内の小中高7校の担当教諭が、取り組みの成果や課題を説明した。全7校の概要を紹介する後半の今回は、静岡市立井宮小、浜松市立西都台小、静岡聖光学院中・高、県立遠江総合高。
 

■「歴史」と「今」つなぐ-静岡市立井宮小 西田亮子教諭 中村都教諭
 低学年では新聞を読み解くことよりも言葉遊びに重点を置いた。広告や写真を組み合わせるコラージュ作品作りや、文中から片仮名を探す言葉探しを行った。図工科目での活用により、言語的な部分だけでなく色や形、質感など感性を磨く要素を含ませた。
 中学年の児童は、取り入れた情報の共有と新聞作りなどに臨み、実際の新聞を手本に見出しや紙面構成を考えた。高学年の授業では、駿府城天守台の発掘調査で豊臣秀吉が家臣に築かせた城跡が見つかった記事を授業に取り入れた。教科書で学ぶ「歴史」と新聞が伝える「今」をつなげ、自分たちの話題として考えられるように意識した。
 新聞は授業だけでなく、日常的にあらゆる場面で活用できる。NIEは生涯学習になりうるテーマと考えているので、今後も自分たちなりに追求していきたい。

 

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■生活と絡めた学びに-浜松市立西都台小 鈴木秀平教諭
 「主体的に学びを求める子」の育成をテーマに展開した。新聞に距離感がある児童も多い。無理せずに新聞に触れられるようにするため、目に付きやすい場所に閲覧スペースを用意した。児童の発達段階に合わせて活用するようにした。
 2年生の授業は、記事を読んでクイズを出す形式で進めた。懸命に紙面から回答を探すなど、新聞に親しんでいる様子が見られた。6年生では、帰りの会での1分間スピーチで新聞を生かした。それまで授業の報告のみになるなどマンネリ化していたが、新たな視点が加わることでスピーチの質も上がった。生活と絡めた学びを進めることができた。
 教員の間でもニュースの話題が増え、時事問題への意識が高まった。学校生活の中で効果的に新聞を活用するには、使いたい場面に備えて記事を収集、整理しておく必要があると感じた。

 

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■社会への想像力育む-静岡聖光学院中・高 伊藤大介教諭
 楽しく易しいNIEを目指した。担当の自分が熱を持って取り組み、興味が強い生徒や教員を中心に他の生徒たちにも新聞の魅力を発信してもらおうと考えた。
 授業で使う記事は、学習単元に関連の深い内容に絞った。2紙以上を用意して比較することや、共同的な学びに向け討論の時間を確保するように努めた。夏季課題で切り抜き記事とコメントをまとめるノート作りを実施。外部の評価を受けようとコンクールにも応募した。奨励賞の受賞もあり、生徒の力が付いたと感じた。
 別の教員が自発的にNIEを取り入れ、職業体験学習を新聞形式でまとめる活動などにも発展していった。
 新聞は、事実の正確さと大切さを学ぶことができると思う。一度に多くの事実に触れる一覧性の機能もある。生徒たちが社会への想像力を育むことにつながった。

 

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■キャリア教育に有効-遠江総合高 江間喬教諭
 生徒に社会で自立する力を付けさせることを目標にした。新聞を読むことによって社会について考える機会になる。キャリア教育の展開を模索する学校には、NIEは有効ではないかと感じた。
 本校ではスクラップリレーを展開した。生徒が気になった記事をノートに貼り、別の生徒が意見を書き込む活動を続けた。他者の感想を読むことで、やる気が出たようだ。また、生徒が毎日通る階段に新聞掲示板を設置。コメント用紙を記事に合わせて貼ってもらった。教員からも「生徒の興味が分かる」と好評だった。
 生徒や教員へのアンケートでは「文章から必要な情報を取り入れる訓練になった」「深い学びにするために、もうひと手間が必要」などの感想や課題が出た。生徒の力を伸ばすことに一定の成果が出たと考えている。

 

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■紙面授業-美術 ざいんコトハジメ 知徳高 柴田寛志先生

 東京五輪・パラリンピックも1年後に迫りました。シンボルマークや新国立競技場の建築デザインの選定に関する一連の騒動は当時、連日新聞紙面で大きく報じられました。全国民がにわかデザイン評論家!?にでもなったかのような「炎上」ぶりは、生来のものぐさがたたってシンボルマークのデザインコンペに応募しそびれた私にとっても、非常に印象深い出来事でした。
 「デザイン」って何でしょう? 「デザイナー」って何をする人のことなのでしょう?
 人間が作り出したものは、カタチのある、なしにかかわらず、全てデザインされています。例えば今、私はこの原稿を、日本語をデザインしながら書いています。あなたは今朝、この紙面を見る前に、家族に「おはよう」と声を掛けましたか? その「おはよう」は通学中に友達に掛ける「おはよう」と、たぶん声のトーンなんかのデザインが違いますよね? こういった意味では、人はみんな、日々をデザインしながら生きるデザイナーといえます。明日からみんな、「パーソナルライフスタイルデザイナー」とでも名乗りましょうか。
 話が観念的になりすぎました。ここで少し、カタチのあるデザインの話を。
 ここに「日」という漢字があります。誰もが毎日何度も目にする、あるいは毎日自分の手で書く漢字ではないでしょうか。真ん中の横棒の位置に注目してください。実は横棒は「真ん中」にはありません。少し上にあるんですよ。気付いてました? ローマ字の「H」とか「X」の交点なんかもそうですね。「知ってるよ。あったりまえじゃん!」という人はグラフィックデザイナーの素質あり!
 こういった「気付き」がデザインの勉強の入り口です。
 めくるめくデザインの世界へようこそ。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(25)「令和」の時代予測 挑戦

 昨年から今年にかけて、「平成」という時代を振り返るさまざまな特集記事が掲載されてきました。特別活動や総合的な学習の時間、各教科などで、これらを扱い、新しい時代「令和」が、平和で明るく、希望に満ちた時代となるよう願って、30年後の未来を児童・生徒に予測させてみてはいかがでしょうか。
 教員の専門性や、児童・生徒の興味関心に応じて、「科学」「医療」「情報」「スポーツ」「防災」「農業」「工業」など分野を絞り、考えるヒントとなる記事を示して、具体的な予測をさせるとよいでしょう。
 記事を読んだ後、各自に考えさせ、それをメモした上で、小グループ内で発表させてみます。思考を整理し、相手に分かりやすく説明するために、メモさせることは大切です。友達の発表の要点も記録させます。各グループで出た意見をまとめ、代表者が発表するとクラス内で情報を共有できます。
 子どもたちの自由な発想を引き出し、新しい時代をつくりあげて行く担い手として活躍するために、日々の学びを地道に積み上げることの大切さに気付かせたいと思います。
 (清水西高・吉川契子)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践7校 成果と課題(上)

2019年03月02日(土)付 朝刊


 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2018年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた富士宮市立上井出小、静岡市立井宮小、浜松市立西都台小、静岡市立観山中、静岡聖光学院中・高、県立三島南高、県立遠江総合高の7校の担当教諭が、取り組みの成果や課題を説明した。全7校の発表内容の概要を2回にわたり紹介する。前半は、富士宮上井出小、静岡観山中、県立三島南高。
 

■「伝える力」を伸ばす-富士宮市立上井出小 杉山恵子教諭
 子どもの「伝える力」を伸ばすことを目指した。全校で関心のある記事を切り貼りするノート作成や、各学年の取り組み成果を紹介するコーナーの設置を進めた。
 新聞に不慣れな1年生の授業では、難しい言葉を教員が説明するなど工夫した。上野動物園でジャイアントパンダ「シャンシャン」が誕生したニュースに強い興味を示していた。2年生はファーブル昆虫記の記事を参考に、生き物に関する新聞作りに挑戦した。近隣の学校と協力し、記事の感想を言い合う活動も展開。他校と交流する手段として新聞を活用できた。
 NIEに関する全校アンケートでは、多くの児童が「勉強のためになった」「新聞を使った勉強は楽しい」と回答。文章構成力などが身に付き、国語の教科などに生きた。近隣の中学校とも連携を図り、9年間を通した活動を進めたい。

 

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■出来事知る 習慣付け-静岡市立観山中 滝志保教諭
 生徒のアンケートでは、新聞講読している家庭でも読んでいない生徒がいるほか、情報源はテレビやインターネットが多くを占めることが分かった。読書や会話の際に文脈を読み取る力を高めるため、語彙[ごい]力の育成を目標に掲げた。
 記事の見出しや「いつ」「どこで」などの5W1H、感想を書き出すノート作成を行った。記事の選択は教員が担当。日本でのカジノ開業の賛否など意見の対立があるものや、成人年齢の18歳への引き下げといった子ども世代と関わりがある内容を取り上げた。
 時事問題テストも実施。多岐にわたるテーマから出題し、期日に向けてニュースを把握しておくように呼び掛けた。重大な出来事を覚えようとする習慣が付いた。取り組みの結果、新しい言葉や知識に触れる楽しさを感じたり、何回も読み返して深く理解したりする生徒が出てきた。

 

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■小論文や面接対策に-三島南高 岩野隆教諭
 新聞を「あって当たり前のもの」にするのが狙い。NIEを実践する上でのターゲットとして、生徒よりもむしろ指導する教員側の意識改革に力点を置いた。小論文や面接対策としてNIEを導入し、進路実現に生かそうと呼び掛けた。
 3年生の選択科目の授業で、通年で新聞を活用した。紙面構成や読み方を学んだ後、討論や新聞作成を実施。情報活用力や発想力、対話力を身に付けてもらうことを目指した。学校全体でも、記事切り抜きを週2回ほどのペースで配布。新聞閲覧コーナーも設けた。
 生徒の活動が実際に新聞に載ると、喜びがじわじわ広がり、さらに前向きになる様子が見てとれた。授業を通して多くの人と関係を深めることができた。新聞には取材の手法や記事の書き方など、多くの技術が詰まっている。「守るべき伝統産業だ」との思いを持つようになった。

 

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■紙面授業-理科 現代も身近な恐竜 静岡聖光学院中・高 斎藤泰正先生

 今日、私たちの生活の中で多くの「恐竜」を見掛けます。公園の遊具になっている恐竜や文房具になっている恐竜、映画の中で活躍する恐竜もいます。ホテルの受け付けをこなすAI(人工知能)の恐竜の登場は、「変なホテル」として新聞紙面でも取り上げられ、関心を集めています。
 6600万年前に絶滅した過去の生物が私たちの見慣れた存在として普及しています。毎月、何かしら恐竜の話題がニュースになることから、恐竜に対する世の中の関心の高さが伺えます。
 中でも人気が高いのがティラノサウルス・レックスです。ティラノが暴君、サウルスがトカゲ、レックスが王という意味があります。大きな体と大きなアゴ、太い歯、獲物を狙う目などから、ハンターとして完成していたことが分かります。
 名前にあるように、サウルスがトカゲという意味であることから、恐竜を大きなトカゲと思われる人が多いかもしれません。トカゲが属する爬虫[はちゅう]類は体温が低く変動しやすく冬眠が必要な変温動物で、卵は産みっぱなしです。
 しかし、恐竜は体温が一定に保てる恒温動物であり、子育てをし、群れで生活をしていたことが昨今の研究で分かってきました。そうすると、トカゲというより、どちらかといえば鳥類の方が近いように感じます。1995年にはティラノサウルスの仲間の化石から羽毛の跡も発見され、大きな話題となりました。
 最近では鳥類の遺伝子を研究し、ニワトリの遺伝子から恐竜を再生できないかという研究が進められています。ひょっとしたら数年後には生きた恐竜をこの目で見ることができるかもしれません。今後も恐竜たちに関する新しいニュースを楽しみにしてください。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(24)字体、文字の形も情報源

 新聞の情報は記事だけと思って読んでいませんか。
 新聞記事の書き出しのそばにあって、色やデザインで目立たせているカットも大きな情報源なのです。カットのついた記事は連載の目印になるだけでなく、読者は色やデザインから受けるイメージで、記事の内容を一瞬で感じ取ることができます。
 さらに、担任している1年生と新聞の中のひらがな言葉見つけをした時のことです。「にほん」という言葉を幾つも切り抜いた子が、「字の形が違う」とつぶやきました。いわゆる明朝体・ゴシック体など、新聞の中にはさまざまな字体が存在し、それによっても印象が異なるということに気付いたのです。また、同じ字体を使った言葉でも、「適当」と書くのと「テキトー」と書くのでは視覚的に同じ意味の言葉とは受け取れません。情報に適した字体や文字を選択することで、伝えたい情報の微妙なニュアンスを読者に感じ取ってもらうことができるのです。
 情報は紙面全体のあらゆるところに存在します。記事だけでなく、色や形、デザイン情報にも注目してみてください。新しい発見があるはずです。
 (静岡井宮小・中村都)