一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2020年12月05日(土)付 朝刊


■紙面授業 宗教 身近な環境に関心を 静岡サレジオ高 内藤紗絵先生

 故郷の匂いが思い出せなくなった。大学進学と就職を機に地元を離れ、15年ぶりに戻ってきた私は、最近ふと、このことに気付きました。その匂いは、サクラエビを天日干しした時の匂いです。今でも富士川の河川敷で見られる光景ですが、幼少期は家の近所でも天日干しされているサクラエビが空き地を赤く染め、その匂いが一帯に広がり季節を感じる瞬間の一つでした。しかし、今ではその様子が近所では見られなくなり寂しさを感じます。

 近年、駿河湾の漁港を騒がせるサクラエビの水揚げ量の減少。そのニュースは、私が働いていた九州の職場にまで届きました。本質的な原因が何かはまだ解明されていません。駿河湾に流れ込む河川やその沿岸にダムなどが建設されたことで、川から駿河湾に流れ込みサクラエビの餌となっていた植物プランクトンが減っているのではないかという説もあり調査中です。こうした経過を追うニュースが度々、新聞紙面で報じられています。

 昨年、キリスト教ローマ教皇フランシスコが訪日されました。その根本的なテーマとなった回勅「ラウダート・シ」は、2015年に環境問題に対するカトリック教会の責任について述べられたものです。全ての命は神によって創造され、その中でも人間は神の似姿に造られています。そのため、人間には地上のものを従え、守る責任があります。しかし、人間は暮らしを良くすることだけを考え、環境への配慮が欠けてしまいました。その結果、改善が迫られています。

 私は故郷の匂いを忘れたことによって、改めて身近な環境問題に目を向けることができました。もしかしたら、それは私たちがともに暮らす地球からのメッセージだったのかもしれません。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(45)はやぶさ2 軌跡紹介を

 飛行時間6年、52億キロの長旅を経て、探査機「はやぶさ2」が地球に帰って来ます。6日未明に、小惑星りゅうぐうの石などが入っているとみられるカプセルを、オーストラリアに投下予定です。世界が注目しているプロジェクトであり、帰還を伝える新聞を教室に掲示し、紹介したいものです。

 天文分野の話題に興味を示す児童生徒は多いものです。この機会に、今までスクラップしていた記事を活用しましょう。理科の授業はもちろん、特別活動で取り上げることができます。

 手元に、2014年のはやぶさ2打ち上げ前や、タッチダウン成功時の感動の記事があります。折々に新聞はその軌跡を取り上げてきました。長期間に及ぶ旅路を振り返ると、宇宙の壮大さを実感できます。科学者の挑戦魂にも関心を向けさせたいものです。

 11月12日に亡くなられたノーベル物理学賞受賞者、小柴昌俊先生の追悼記事や、日本などの国際チームがブラックホール初撮影といった宇宙分野における日本人の活躍を報じる記事も示して、天文学者を夢見る子どもたちの未来にエールを送りましょう。

 (清水西高・吉川契子)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=社会問題 記事で気付き 吉田・自彊小で公開授業 「コロナ禍 自分にできることは」議論 深く読み込み視野広く

2020年11月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の吉田町立自彊小でこのほど開かれたNIE教育研究発表会。国語、社会、道徳の授業を同校教諭が公開した。新型コロナウイルス感染症に関する新聞記事を活用しながら授業を展開し、児童は多角的な視点から学びを深めた。

 社会科の授業は、森祐介教諭(34)が4年生約30人に対して行った。テーマは「コロナ禍の生活の中で自分たちにできること」。外出の自粛による家庭ごみの増加、マスクのポイ捨て、ごみを収集する作業員の感染リスクといった社会問題を伝える記事を選び、児童に読んでもらった。

 森教諭の音読に合わせて傍線を引くなどして記事に目を通した児童ら。「使い捨てではなく、繰り返し使える布マスクをなるべく使う」「マスクのポイ捨てをしないように周りの人に呼び掛ける」と、ごみを減量する方法を積極的に発表した。

 「新聞記事を根拠に考えてみて」。森教諭のアドバイスを受けてさらに記事を深く読み込むと、児童に新たな気付きが生まれた。ごみ収集の作業員や清掃員の感染リスクを踏まえ、「ごみ袋からマスクが飛び出さないよう、別の袋に入れてから捨てる」などと、違った視点からの意見が出てきた。

 県内小中学校の教諭など教育関係者約70人が参加した。自彊小は実践指定校2年目で、休み時間や読書の時間に新聞を読む児童の姿がよく見られるようになったという。森教諭は「子どもたちが自分の思い込みではなく、ニュースを読んで物事を考えることで、視野が広がっている」と効果を実感する。

 公開授業の後に行った全体会では、同校の取り組み状況を参加者が共有した。教室内に設けている「新聞コーナー」や、朝の会で日直が興味を持った記事をクラスメートに紹介する「新聞スピーチ」など、日常的に新聞に親しむことを目的とした取り組みを同校の担当教諭が説明した。

 

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森祐介教諭(右)の授業で新聞記事を読み込む児童ら=吉田町の自彊小

 

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■紙面授業 理科 陸守る茶草場農法  不二聖心女子学院中・高 平本政隆先生

 6月、コロナ禍で減少した茶の販売を促進するために、JA静岡経済連などが国の支援を活用し、県内の学校等に茶の配布を検討しているというニュースが新聞に掲載されました。既に各校への配布は始まっているようです。

 日本一の生産量を誇る茶どころである静岡の茶草場農法が世界農業遺産に認定されているのはご存じでしょうか。茶草場農法とは茶草場と呼ばれる草地から草を刈り取り、茶園の畝の間に敷き込む伝統農法で、土壌の状態が良くなり、おいしいお茶ができるといわれています。認定されているのは掛川地域4市1町ですが、県内で広く実践されています。本学院は裾野市にありますが、約69ヘクタールのキャンパス内にある不二農園でも100年以上前から茶草場農法で茶を栽培しています。

 茶草場は絶滅危惧種を含む豊かな生物多様性が見られる貴重な環境でもあります。毎年、人の手が入り、草刈りが行われる茶草場で豊かな生物多様性が見られるというと、意外に思われるかもしれません。生物基礎の授業では植生遷移を学びます。草地は時間がたつと、樹木が侵入してきます。樹木が育ち、地面に届く光が少なくなると、草地を好む多くの植物は生育ができなくなり、植物の種類は減ってしまいます。人が草を刈り、樹木が侵入する前に遷移を止めることで、地面に多くの光が届き、多様な植物が生育できる環境が保たれるのです。

 茶草場農法は、茶栽培という人間の営みと生物多様性とがうまく両立していることが高く評価され、世界農業遺産に認定されました。静岡のおいしいお茶を飲みながら、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、15「陸の豊かさも守ろう」や、人間と自然との共生について考えてみてはいかがでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(44)新聞で学んだ「音楽の力」

 このコロナ禍において、文化や芸術は不要不急なものとする向きがあります。私自身も「衣食住ではなく、娯楽のひとつ」と思っていた音楽。しかしこの時期に音楽と向き合う意味を考えさせてくれたものがあります。

 現在は歌うことも楽器で演奏することもままならず、音楽への取り組み方を見失っていた矢先、本校では音楽集会を開催することになりました。選曲する段階で、「この状況下で何ができるのだろう」と考えた時、ある新聞記事を思い出したのです。それは、小学校の音楽会で決して主役になれない地味な楽器カスタネットを主要パートにした小学生向けの合奏曲を紹介したものでした。子どもたちに記事を見せると「やってみたい...」と反応。そこでその合奏曲を音楽集会で演奏しました。

 いつもは脇役の子どもたちが飛沫[ひまつ]心配なしのカスタネットで主役になり、のびのびと自分の演奏表現ができたことが、音楽の楽しさへとつながったのです。

 最近は「コロナ禍に音楽の力」と銘打った見出しが目につきます。新聞記事で「音楽って楽しい」の気持ちを育ててみませんか。

 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=自宅学習にも新聞を スクラップ 記事と自分 結び付けて コラージュ 色、質感 選ぶ練習 静岡井宮小 中村都教諭 寄稿

2020年10月03日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルスの感染対策による休校や外出の制約は、自宅学習に取り組むきっかけになった子どもたちも多いことだろう。家で過ごす時間が多くなれば、じっくり新聞に親しむ好機。自宅で気軽に取り組める新聞を活用した学習を、NIEアドバイザーの静岡井宮小教諭、中村都さんに紹介してもらった。

 

 コロナ禍でも家庭でできる、新聞を使った二つの「自分の学び」を紹介します。

 まずは、切り抜いた記事を基に、自分の思いや考えを書き込んでいく新聞スクラップです。記事の内容と自分とを結び付けて、そこから見えてくるもの・考えられることをまとめていくものです。

 最初は、自分が気になる記事を集めていきますが、次第に自分がどのような分野に興味・関心があるのかが分かってきます。それが一つの分野に集中しているとすれば、次回からはそこに注目して見ていけばいいのです。例えばそれが食の分野ならば、今話題の、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)から食品ロスにつなげていくことができます。窓口を狭めると、事実を深く掘り下げて考えるために、記事から離れ新聞以外の手段での情報収集が始まります。それが自分の学びとなるのです。

 二つ目は、新聞から色鮮やかな写真や広告を好きな形に切り取りレイアウトする「新聞コラージュ」です。従来のコラージュと違い、そのままの形を切り抜くわけではないので、新聞という素材のどの部分から、どんな形を切り抜こうかと考えるのです。それは色・質感・形という情報を取捨選択する情報リテラシーとなり、幼い子どもたちでも十分に取り組めるNIEと言えるでしょう。

 「この洋服の模様はクラゲの体に使えるよ」「この丸いチョコレートは魚の目になるね」。このような会話を交わしながら、親子で取り組んでみると楽しいですね。

 幼稚園・保育園児や小学校低学年にお勧めのテーマは、「たのしいうみのなか」です。「スイミー」(レオ・レオニ作)の絵本を参考に海の中の様子がイメージできると、子どもたちは材料集めに動きだします。

 中学年以上は、自分のイメージをより明確に表現するために、新聞紙特有の柔らかな紙質や微妙な色合いを利用し、細かい作業に挑戦してみてください。きっと楽しい学びになるはずです。

 

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中村都教諭が作成した新聞スクラップ例。SDGsをテーマに記事から考えをまとめた

 

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海中をテーマに、新聞素材でコラージュした中村教諭の作品

 
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■紙面授業 家庭 食品選択の学び方 加藤学園高 坪内春花先生

 都心を中心に街でよく見かけるようになったウーバーイーツ。今年6月、静岡、浜松市の一部地域限定ではありますが、ついに県内でもサービスが開始され、新聞でも大きく取り上げられました。
 ウーバーイーツをはじめとするデリバリーやお持ち帰り文化が定着しつつある現代では、食べ物に簡単にアクセスできます。家にいながらスマートフォン一つで、家庭で作るのは難しい本格料理から海外の食事まで、簡単に手に入るようになりました。
 現在、高校生が使用している家庭科の教科書には、「食品の選択」という項目があります。期限表示やアレルギー表示、栄養成分表示などを学びながら、より良い食品選択ができるようになろうという内容です。この授業では、コンビニ弁当や菓子パンのパッケージなどを見て、一日に必要なエネルギー量と比較をしてみたりします。しかし、ウーバーイーツで頼んだ商品にはこの食品表示の記載はありません。栄養成分はおろか、期限表示の記載すらない場合も多いのです。
 実は現行の法律では、外食店でのデリバリーやテークアウトは店舗でのメニュー表示と同じ扱いとされ、食品表示法に基づく表示義務はありません(店舗内調理施設で調理した場合)。そのため、消費者は栄養成分やその他の項目を知らないまま、商品名や「映え」を意識した写真から注文をすることになります。
 時代が変化する中で生まれる、生活を助けるアイテムは活用すべきです。しかし、その中で健康な生活を送るためには、根本は見失わず、時代に合わせた生き方や学び方が必要なのかもしれません。
 私も、「映えた写真からバランスの取れた食事を選んでみよう!」なんて授業をしたら、面白いだろうかと、日々の生活の中で若者に合った学び方やネタを探し続けている最中です。
 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(43)新聞の面白さに気付く

 「これで、勝負しない?」。妻の手には毎週土曜日の静岡新聞別刷り「とっとこ静岡」に掲載されている数独の問題。試しにやるも悪戦苦闘。ほほ笑む妻の姿に悔しさ倍増といったところでした。私事ながら、このささいな出来事が、筆者のNIE活動に大きなヒントとなりました。

 例えば、先日高校1年生の政治経済の授業で安倍首相辞任会見の新聞記事の比較を行いました。生徒に意見を求めると、新聞による安倍首相の写真の大きさの違いや、政権への評価の記述の違いなどに関する発言もあり、非常に丁寧に生徒たちが記事を読み込んでいることが分かりました。

 数独の例と同じく、新聞には読者の興味をひくさまざまな要素があり、読者は新聞の面白さに気付く時間が少ないだけなのでは、と思いました。

 そこでこんな取り組みはどうでしょう。勤務校の新聞掲示板に今年、「社会の縮図 新聞を、味わおう!」という言葉を筆者は貼りました。1982年にコピーライターの糸井重里氏が世に出した有名な言葉「おいしい生活。」のように、新聞を生徒が味わえる、そんな現場を生み出していきたいと思っています。

 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=コロナ禍の社会 歴史に学ぶ 常葉高 関連記事で授業 公益、人権テーマに議論

2020年09月05日(土)付 朝刊


 静岡市葵区の常葉大常葉高で8月下旬、過去の感染症の世界的流行に今のコロナ禍をなぞらえた新聞記事を読む授業が行われた。「感染防止のための隔離政策」が「個人の自由を奪う」―という相克関係が主題。生徒は公益と個人の両方の視点に立ち、迷いながら議論を進めた。

 参加したのは1年生23人。20世紀初めのニューヨークで、健康保菌者として自覚がないままチフス菌を拡散し、島に隔離された米国人女性「メアリー」について取り上げた「大自在」(2月25日付)や、社会不安が差別や分断に転じていくカミュの小説「ペスト」の紹介記事を読んだ。生徒は関心ある部分に書き込みなどをしながら読み込み、社会不安を招く感染症の流行が世界で過去に何度もあったことに驚いていた。
 続いて、大自在の「感染拡大の防止という公益のためには個人の自由を奪ってもいいのか」との一文を重視し、グループワークで賛否を話し合った。「未来の自由のための我慢」「隔離するのは仕方ない」と個人の犠牲を消極的に肯定する意見がある一方、「健康保菌者になりたくてなったわけではないのに責任を取らされることは不条理だ」とメアリーの苦境に同情する意見も。「自由を奪われることはつらい。でも個人に自由を許せば感染が拡大してしまう」と、両立の難しさを実感する声も多く上がった。
 生徒の意見を集約したNIE担当の塚本学教諭は「社会の不特定多数の命を救うためには少数の人間の自由が制限されても仕方ないのかな、と私も思う」としつつも「ただ、弱者を虐げることをいとわない、そのつらさに気付きもしないことは大きな問題だ」と指摘。現在のコロナ禍に触れ、「記事をきっかけとした意見交換を通じて違う視点に触れ、自らの考えをバージョンアップしていくことがNIEの意義」と話した。

 

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記事のコピーで関心のある部分を囲ったり、関連して気付いたことを書き込んだりして記事への理解を深めていく

 

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感染拡大を防ぐために個人の自由の制限がどの程度まで許されるかについて、話し合う生徒たち=静岡市葵区の常葉大付属常葉高

 
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■紙面授業 地歴・公民 人類と感染症の戦い 藤枝明誠中・高 山内正邦先生
 新型コロナウイルス感染拡大のニュースが連日、新聞紙面を埋めています。振り返ってみれば、これまでの人類の歴史は、感染症との戦いの歴史でもありました。
 世界史上で有名なものはペストです。この病気は何度もパンデミックを引き起こし、特に中世ヨーロッパでは当時の人口全体の3分の1が失われたとされています。また、20世紀前半に猛威を振るったスペイン風邪では、全世界で5千万人以上が死亡したということです。
 日本史上の感染症としてまず挙げられるものは天然痘です。天平時代の8世紀前半に大流行、当時の日本人の3割以上が亡くなったとされています。その後、江戸時代のコレラ大流行など、感染症の影響は大きいものでした。
 しかし人類も負けてはいません。18世紀末、イギリスのジェンナーが始めた天然痘の予防接種を19世紀にフランスのパスツールが研究しワクチン開発に成功、医学発展につながりました。さらに20世紀前半にはイギリスのフレミングにより初の抗生物質ペニシリンが誕生、以降多くの薬学研究が進められました。
 病理学研究だけではありません。天然痘が流行した天平時代の日本では、社会不安を除く願いを込め、毘盧遮那仏[びるしゃなぶつ]つまり奈良の大仏や、国分寺を建立しました。また743年に発布された墾田永年私財法は、経済復興の手段でもありました。
 現在、私たちも先の見えない不安にさいなまれています。しかし、人類は多くの犠牲を払いながらも知恵と工夫、そして社会を変えようとする勇気により何度も立ち直ってきました。今回も日本、そして世界の明るい未来を信じ、人々が安心して手と手を取り合う世の中を私たち自身により再興できることを願ってやみません。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(42) 医学部入試対策にも新聞
 現在、筆者は2年連続で3年生の担任をしている。激動の卒業生を送り出したと思ったら、波乱の受験生を受け持つこととなった。さまざまな情報が飛び交い、刻々と状況が変わる昨今だが、受験生は一意専心、粛々と勉強にいそしもう。
 今年は特に、医師になることを希望している生徒が多いクラスを担当しているので、新聞を利用した医学部受験対処法を紹介したい。
 医学部は国公立・私立を問わず、面接と小論文の双方を課すところがほとんどだ。
 面接と小論文の対策は、実は表裏一体である。世間で話題になった医療ニュースについてはあらかじめ、しっかり自分なりの意見を持っておこう。スクラップノートを作り、考えをメモしておくと良い。難しいことを言ったり書いたりする必要はなく、新聞記事の書き方である「逆ピラミッド型」で対応するのだ。
 その体得は文体獲得という目的を持ち新聞を読む・情報取得からの思考形成ツールとして新聞を捉える、という意識醸成しかない。
 実際、過去に静岡新聞の記事より、浜松医科大学医学科の小論文の課題文が引用されている。医学部合格は、教科学習だけでは勝ち取れないことを肝に銘ぜよ。
 (静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=人思いやる大切さ学ぶ 掛川・桜が丘中 「コロナ差別」防ぐ道徳授業 新聞活用し意見交換

2020年08月01日(土)付


 NIE実践指定校の掛川市立桜が丘中で休校期間が明けた5月下旬、新聞を使い「コロナ差別」を防ぐ道徳授業が行われた。全校生徒が四つの新聞記事から差別が起きる理由を考え、人を思いやる大切さを学んだ。
 
 休校期間中に発熱者待機部屋を校内に設置した同校は、県内外で相次ぐ新型コロナウイルス感染症に対する差別が学校でも起こる可能性があると考え、授業を企画した。記事は長距離トラック運転手が差別を恐れる話、病院スタッフがタクシーの乗車拒否を受けた事例、感染者の家に落書きがされた被害、県外ナンバーの車に傷がつけられた事件の四つ。生徒はそのうち一つの記事を読み、感想を発表した。
 生徒からは「病院スタッフなど感謝しなくてはいけない人を傷つけるのはよくない」「人を傷つけているのはウイルスではなく人間だ」などの意見が上がった。さらに「自分が感染したくないから」「不安に思う気持ちがあるから」など差別が起こる仕組みも分析した。2年の鈴木煌也さん(13)は「感染した人はなりたくて感染者になったわけではない。差別をする人は相手を大切に思う気持ちが足りない。全ての人に感謝する気持ちを忘れないようにしたい」と意見を述べた。
 意見交換後、教員は生徒に空き教室に設置した発熱者待機部屋の写真を見せた。「クラスの仲間がこの部屋にいたらどうするか」という教員の問いに、生徒は「普段通りの態度をとる」「心配して嫌がるような発言は絶対にしない」と答えていた。
 NIE担当の石神克海教諭(27)は「生徒にはコロナに対する恐怖心があると思うが、怖さから人を差別してはならない。弱い心を乗り越え、他者を思いやって生活していくことを考えさせたかった」と授業を計画した狙いを語った。複数の記事を活用したことについては「生徒の視野が広がり、タイムリーな話題をさまざまな角度から考えることができたのでは」と手応えを感じたようだ。
 

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新聞記事を読み差別が起こる理由を考え、意見を共有する生徒=掛川市立桜が丘中
 

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空き教室に設置された発熱者待機部屋
 
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■紙面授業 化学 進化する単位の定義 磐田東中・高・外山昌介先生
 新型コロナウイルスが流行しなければ、ちょうど今ごろ、東京五輪・パラリンピックで盛り上がっていたことでしょう。何年もかけて鍛えた選手たちの100分の1秒や、1センチを競い合う熱い姿を早く見たいものです。
 さて、その時間や長さの定義が変更されたのはご存じでしょうか。世界では、国際的に統一された時間や長さ、質量などの七つの単位があります。2019年5月20日からその単位の定義が新しくなりました。例えば秒の定義は、「セシウム周波数Δν、すなわち、セシウム133原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位㎐(s-1に等しい)で表したときに、その数値を9192631770と定めることによって定義される」となりました。一度読んだだけでは、理解できないような内容です。以前の定義は、地球の自転や公転に基づくもので、1日の86400分の1を1秒とする、などでした。しかし、地球の運動周期も微妙に変動していることが判明し、もっと正確な1秒が必要となりました。今回の変更で1秒は、「セシウム133原子が91億9263万1770回振動するのにかかる時間」と新しくなりました。では、なぜセシウムが選ばれたのでしょうか? なぜ、9192631770回の振動なのでしょうか? 調べてみると面白いですよ。
 普段、何げなく使っている秒やメートル、キログラムといった単位は、不確かなものを排除して絶対的な基準を作り、細かな定義の上に成り立っているのです。今ではさらに研究が進み、300億年に1秒しかずれない時計がストロンチウムを使って開発されています。また定義が変更される日がくるかもしれませんね。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(41)記事読み 発想力育てる
 書く力の重要性は近年、とみに増している。それは入試ではもちろんのこと、「生きる力」にもつながる大事な力だ。しかし小論文指導をしていると、何を書いたらよいか分からないという生徒、そもそも課題文を読み取れない者などが続出である。
 そんな問題の解消のため、新聞記事を読ませ、感想を書かせている。新聞に載っている写真を見て、感想を書かせることもある。「感じる力」を引き出すためだ。「発想力」のウオーミングアップである。
 例えば、東日本大震災の「奇跡の一本松」の写真。あの写真を見て、「前の姿を知らない人からすれば、この一本松は希望の象徴に見えるかもしれない。でも、7万本もあった前の姿を知っている人からすれば、津波の威力を証明する以外の何物でもない」という感想があった。このように立場や視点を変えてみると違って見える。正解・不正解はないので自由に発想することから始め、自分なりに表現することの楽しさを味わってほしい。
 入試に使えるか否かを考えず、世の中のあらゆることに興味・関心を持たせたい。そのために新聞は有効なツールだ。
 (常葉大常葉中・高・塚本学)

 
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■NIE実践校 県内新規4校 本年度 日本新聞協会
 日本新聞協会はこのほど、2020年度のNIE実践指定校535校を決定した。新規指定校は227校で、県内からは県NIE推進協議会が推薦した新規4校と継続10校の計14校が認定された。
 県内の新規校は、三島南中、静岡大河内小中、掛川桜が丘中、清水特別支援学校。継続校は、2年目が伊豆の国韮山南小、吉田自彊小、浜松城北小、湖西白須賀小、小山中、浜松西高、常葉大橘中・高。3年目が西伊豆田子小、静岡清水飯田小、清水西高。
 実践期間は原則2年間で、新聞を活用してもらうため同協会と新聞社が購読料を補助する。

 

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■新聞感想文コンクール 児童・生徒の作品募集 来月、締め切り
 静岡新聞社・静岡放送は、児童・生徒を対象にした「しずおか新聞感想文コンクール」の作品を募集している。
 同コンクールは、児童・生徒が新聞を通じて活字に親しみ、読解力と表現力を養い、地域や社会への関心を高めることを目的に行われている。対象は小学4年生から高校生まで。小、中、高の3部門に分かれて審査し、上位入賞作品は新聞紙面に掲載する。応募者全員に参加賞を贈る。
 応募概要は次の通り。
 【課題】2020年1月1日~8月31日の新聞記事を読んでの感想
 【締め切り】9月7日必着
 【応募方法】応募要項を取り寄せて確認する。
 【問い合わせ・要項請求先】静岡新聞社読者部内コンクール事務局<電054(284)8984>へ。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2020年07月04日(土)付 朝刊


■紙面授業 数学 論理的思考力養う 御殿場西高・桑迫雄大先生
 「数学は何に使うの?」。教員になってまだ10年もたたないのですが、このような質問を何度も耳にします。中学校・高校で学習する数学は、移動する点Pについて考えたり、2乗してマイナス1になる虚数iについて考えたりと、算数とは違って日常生活から離れていることが多いのです。数学で学んだ知識を直接利用する人は限られています。「では、数学は習わなくてもいいのではないか」という問いには、そうではないと答えます。
 数学では「~を証明せよ」「(条件)を満たすaの値を求めよ」といった問題をよく目にします。答えが与えられていて、その過程を問われることが多いからです。これらの問題は一つ一つの工程で「~であるから、~になる」という根拠のある道筋を立てながら、論理的に解いていきます。根拠があいまいなまま進めてもどこかで矛盾が生じたり、欠点が見つかったりします。このように数学では、論理的に解くということを意識します。そのため、数学を学習していけば論理的思考力を養うことができるはずです。
 今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中が混乱状態になり、新聞には連日関連のニュースが掲載されています。非常事態の中では、原因と結論が結びついていないデマ情報に惑わされ、それによって日用雑貨の買い占めなど感情的な行動が目立ちました。自身を守ろうとする行動が他人を傷つけてしまい、多くの混乱を招いたりしてしまいます。
 コロナウイルスによる社会の混乱は誰もが初めての経験です。今後も、さらに初めてのことを経験するでしょう。人々が協力して生活しなければならないときこそ、感情的ではなく数学で学ぶ論理的な思考による正しい行動が大切になります。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(40)隠れた問題から気付きへ
 新型コロナウイルス関連ニュースが、連日報じられています。その中に「環境」分野に関するものが潜んでいます。教室で、「地球温暖化に関する記事を探してみよう」と呼び掛けました。
 夏の暑さが年々厳しくなり、熱中症対策が大切になっています。しかし今夏は、新型コロナ対策としてのマスク着用が求められ、熱中症リスクを高める、と指摘する記事に多くの生徒が関心を寄せました。生徒たちの感想は「こまめな水分補給などの熱中症対策を心掛け、健康管理に留意したい」と冷静です。
 個々のライフスタイルを工夫することも大切ですが、地球規模で考える対策にも目を向けさせたいものです。
 新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停止で、二酸化炭素排出量が減少する、と試算する記事に興味を持った生徒もいます。地球温暖化防止のために新しい生活様式をどのように生かすか、ということが、今後の課題と気が付いたようです。
 新聞を読み、考え、感想を書くという一連の作業を通じ、今年遭遇した局面を若い生徒たちが、柔軟な思考力で前向きに乗り切ることを期待しています。
 (清水西高・吉川契子)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=学校新聞 休校中ネット配信 3カ月56回 情報で生徒つなぐ 韮山高 写真報道探究部

2020年06月06日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休校期間中、県立韮山高(伊豆の国市)の写真報道探究部は学校新聞の速報紙「龍城学報」の発行を続けた。生徒たちの学校生活の情報不足や不安に応えようと、制作と配信はネットを活用し、3月から5月末までの約3カ月間で計56回発行。普段のペースを上回る充実ぶりだった。

 記事は新型コロナをテーマに、高校生活への関わりを切り口にした企画を打ち出した。オンライン授業やマスクの作り方、自宅での過ごし方といった身近な話題から、9月入学案や10万円給付金の使い道などを考える全校アンケート結果など社会情勢を踏まえた企画も展開した。
 入学後間もなく休校期間に入ってしまった1年生向けには、例年4月に地域を巡る遠足で訪問する予定だった史跡を写真付きで解説する回もあった。
 全国高校総体中止に伴う各競技の代替大会の動向や全国高校総合文化祭の縮小開催など高校生ならではの話題も記事化した。
 速報紙はこれまで週2回ほどのペースで制作して校内に掲示してきたが、休校中は生徒同士が顔を合わせられないからこそ、情報を積極的に発信して自粛生活に役立ててもらおうと、ラインやフェイスブック、ツイッターで生徒に配信した。
 部員は在宅でネタ探しや執筆を分担し、レイアウトは顧問の上杉剛嗣教諭とネットでやりとりして決定。4月18日以降は土日曜と祝日を含めて毎日発行を続けた。
 校内掲示だけでは見る生徒が限られていたが、ネット配信によって全生徒の元に届くため、読まれる機会が増え、「他の生徒の様子が分かり楽しかった」「ほっとした」といった反応が寄せられた。
 部員は「休校中も生徒やクラス、学校全体をつなげる役割を果たせた」と胸を張る。部長の鈴木翔馬さん(3年)は「これまでの速報紙発行の経験がネットでも生かせた。部員の企画力は確実に伸びた。今後の長期休業期間中の発行方法も変わってくる」と振り返った。情報発信の大切さを改めて感じたという次期部長の加藤大智さん(2年)は「これからはまだ活動できていない1年生のスキルアップに力を入れたい」と抱負を語った。

 

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休校期間中も発行を続けた学校新聞の速報紙を手にする鈴木翔馬さん(左)と加藤大智さん=5月、伊豆の国市の県立韮山高

 

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(左)9月入学案に対するアンケート結果を掲載した速報紙 (右)地域の史跡を紹介した速報紙

 
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■紙面授業 日本史 過去と現在 比較を 西遠女子学園中・高 氏原秀先生

 新聞を見ると、新型コロナウイルス関連の記事がほとんどを占めています。特に、一人の教員として学校の休校やオンライン授業関連の記事は見落とせません。
 ICT関連産業が発展した現代社会では休校によるオンライン授業の実施・導入が叫ばれていますが、昔の学生たちはどのような授業を受けていたのでしょうか。
 日本史の授業では、律令制下の大学や国学、空海がつくった綜芸種智院[しゅげいしゅちいん]に加えて足利学校や寺子屋など、さまざまな教育機関が登場します。そのうちの足利学校では、自学自習が中心でした。そのため、卒業のタイミングなども生徒一人一人に任されていたそうです。江戸時代の庶民の教育機関である寺子屋も、先生が一人に対して生徒複数の教育が行われていましたが、一斉講義ではなく、寺子屋の先生が生徒一人一人に対して個別の内容を教えていました。
 今、授業と言えば、教室で同時に同じ内容を学ぶ一斉講義型の授業を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、その歴史は実は浅いものです。18世紀中ごろから始まった産業革命がターニングポイントとなりヨーロッパで採用されたこの形式が、明治時代を迎えた日本にも導入されていった結果、今の学校教育が成り立っていきます。
 昔の学生たちは自ら学ぶ意欲に満ちあふれ、まさに主体的に深い学びに取り組んでいました。現代でも科学やテクノロジーが発達し、産業社会から知識社会に変化していく中で、対話的で主体的な深い学びが求められています。
 イギリスの歴史家E・H・カーの言葉、「歴史とは、過去と現在との絶え間ない対話である」の通り、今起きている事と過去の出来事を比較する視点を持って、過去と対話してみてはどうでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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NIEアドバイザーのワンポイント講座(39)新聞で培う「自分の学び」

 学校の休校措置が長引きましたが、「自分の学びができた」と前向きに捉える機会はあったでしょうか。
 娘が5年生の時、社会科「これからの食料生産」で「食」に関心を持ち、新聞を使って夏休みの自由研究を行いました。「食」に関する記事を切り抜いたものを分類(食生活・添加物・農薬・健康食品・その他)し、ジャンルを問わず気になった記事にはシールを貼ってスクラップしながら、記事の要約や感想などを書きました。そうすることで、自分が「食」のどの分野に興味があるのかが分かるだけでなく、社会の中での「食」の問題の傾向をつかみ、自ら追究していく内容を絞りこむことができました。
 当時59円に値下げしたハンバーガーの記事を基に、研究テーマは「59円ハンバーガーから見えてきたもの」となりました。
 最近の「食」の問題として、「食品ロス」が挙げられます。話題のSDGsと意識せず、「食」のテーマの一つと捉え、年齢に合った目当てを設定すれば、誰でも自分の学びができるのではないでしょうか。学び方の入り口が見つからなかったら、ぜひ、新聞を手に取ってみてください。
 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=矢沢さんのやさしいNIE こんな時こそ 新聞切り抜き 話し合いながら楽しく

2020年05月02日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルスの感染拡大により県内の小中高校も一斉休校となり、子どもたちが家庭で過ごす時間が増えた。この機会に、新聞を身近な学習素材として活用してはいかがだろう。在宅学習の助けになるだけでなく、家族とのコミュニケーションツールにもなる新聞の使い方を、静岡新聞NIEコーディネーターの矢沢和宏さんが紹介する。

 

 なんと言っても、おすすめは「新聞スクラップ」。家族でそれぞれが気に入った記事を切り抜きます。まずは、お父さん、お母さんから。楽しく、興味深そうに、お話ししながら、にぎやかに切り抜きましょう。

 とても楽しそうにやっていると、子どもたちは気になりますし、「自分もやってみようかな」という気持ちもわいてきます。そうなったら、声を掛けるチャンス。「一緒に切り抜きをやってみよう」と誘いましょう。

 スクラップには不思議な魅力があります。切り抜く前の記事はあくまで、新聞紙上の「他人事[ひとごと]」。ところが、切り抜いた記事を手にした瞬間に「自分事」になるのです。「自分だけの大切な情報」になるという魔法をもっているのです。各自が記事を切り抜いたら、それを家族で紹介し合いましょう。どんなところが気に入ったのか話したり、感想を伝え合ったり質問し合ったりすると、話が弾みます。それとともに子どもの個性や関心も分かってきます。

 切り抜いた記事はぜひ、スクラップノートに貼り一言感想を書いて残しておきましょう。価値ある家族の成長記録にもなります。大切なことは、あくまで「自分の好きな記事、気になる記事」とすること。そして、教え込んだり、叱ったりすることなく、楽しく話すための材料とすること。それが長続きさせる秘訣[ひけつ]です。このように、新聞記事を材料に家族で話す様子が寄せ鍋をしている姿に似ていることから、「家族・新聞鍋」と名付けた人もいます。

 「新聞スクラップ」はそんな家族の楽しい時間になると思います。

 

 やざわ・かずひろ 静岡新聞NIEコーディネーター。県中部の中学校校長を歴任したほか、焼津市教育委員会に勤務し、2020年3月、定年退職。専門は社会科。学校教育に新聞活用を広めるNIEアドバイザーを13年間務めた。同年4月から現職。歴史地理学会会員、元焼津市史編さん委員。焼津市在住。

 

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■紙面授業 英語 コトバは出合いの種 東海大静岡翔洋高・中 高塚純先生

 子どものころ、父親に「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引け」と言われました。おかげで人並みの語彙[ごい]力は手に入った気がします。英語の教師になった今も「分からない言葉に出合ったらすぐに辞書を引きなさい」と生徒には同じことを言っています。

 さて今、全世界が新型コロナウイルスの脅威にさらされており、新聞もテレビも関連ニュースでもちきりです。そんな中、よく見聞きする言葉がありますね。クラスター、パンデミック、オーバーシュート、ロックダウンなどがそうです。

 その時に皆さんはどうしますか。この言葉はそういう意味なのだと単純に理解しますか。それとも本当にこの意味でいいのかなと疑いますか。

 例えば、クラスターという言葉は「感染者の集団」という意味で使われていますが、もともとは花や果実の房という意味です。何となくイメージはできますね。ちなみに、英語のつづりは"cluster"です。

 では、オーバーシュートはどうでしょうか。言葉を聞いて、絵をイメージできますか。コロナウイルスの文脈においては「患者の爆発的急増」という意味で使われていますが、本来は、(場所を)うっかり通り越す、(予算を)使いすぎるなどの意味で使われています。

 また、アメリカ海軍の病院船「コンフォート」が医療支援を行うためにニューヨークに派遣されました。コンフォートとは快適さ、安らぎというまさに病院船にぴったりの名称で"comfort"とつづります。

 この度、学校が休校になり、自由に使える時間が増えたと思います。メディアで新しい言葉に出合ったら、ぜひ普段と違う角度から調べたり考えたり、接してみてほしいと思います。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(38)日常から世界を変える

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、筆者の勤務校では3月からオンライン授業が始まりました。4月も年度始めから生徒の自宅に向けてライブで授業を行っていますが、筆者の授業の中で早速、新聞を活用した場面がありました。

 高校1年生の政治経済の授業で、複数の新聞を手に取って1面を比較して画面に映しました。なかなか外出できないこのような状況だからこそ、社会をより広く深く学ぶチャンスであるということを伝えようとしたところ、画面越しの生徒が新聞の見出しを食い入るように見つめる姿が印象に残りました。

 また、別の場面では米大統領選挙の記事を生徒に見せ、時事問題に興味をもたせようと試みました。

 自分の目で文字を見て読み、考える。じっくり立ち止まって考えさせる新聞の良さを、現在のような厳しい環境だからこそ授業で再確認できました。

 以前、筆者が高校サッカー部の顧問として指導者講習会に参加した時、「日常から世界を変えていこう」という言葉を研修担当者から聞きました。現在の厳しい環境から、今度は新聞で日常を変えていきたいと思っています。

 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践4校 成果と課題

 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2019年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた県立静岡聴覚特別支援学校、川根本町立本川根中、富士宮市立西富士中、菊川市立菊川西中の4校の担当教諭が取り組みの成果や課題を説明した。

 

■プレゼン力の向上も 川根本町立本川根中 滝井玲緒教諭

 学年混合で新聞に触れる活動を展開した。全校生徒が20人の小規模校だからこそ、NIE活動でもそれぞれの生徒への丁寧な指導につながった。

 15分間の放課後学習で、新聞記事を紹介する取り組みを実施した。最初は苦戦した1年生も、上級生のプレゼンテーションを見て発表が上達した。コンビニ店の24時間営業問題の記事を題材にしたディベートではグループ内での話し合いが盛り上がりを見せ、生徒たちが自分の考えを固めていた。

 生徒と教員間でやりとりする「NIEノート」も作成。相手の価値観を理解する力が付いたほか、教員が生徒の考えを知ることにも役立った。複数の新聞を読み比べることで、一つのニュースへの異なる見方や微妙な言葉の違いを楽しむ姿勢が見られた。生徒には今後も、正しい情報収集や広い視野で考える力に身に付けてほしい。

 

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■多彩な情報得る力に 県立静岡聴覚特別支援学校 勝又一歩教諭 山根渉教諭

 自然に周囲の音が入ってこない聴覚障害児は、視覚で得られる情報で不足分を補うことが大切だ。一度に多彩な情報に触れられる一覧性や、何度も読み返せる確認性といった長所がある新聞は、非常に効果的な学習素材と考えられる。

 気になるニュースを子どもが選んで発表する学習では、初めて知る言葉を手話で説明する勉強につながった。サッカーワールドカップ(W杯)の記事を集めて結果を予想したり、紙面に出てきた地名を地図帳で調べたりする授業も行った。

 一方、子どもたちが手話でニュースを紹介し合う際、相手がニュースの文脈や意味を取り違えるケースも多かった。新聞を繰り返して読み、情報を正しく理解する力を養っていくべきだと実感した。実践を通し、指導する教員側がどのような効果を期待して新聞を取り入れるのか、明確に意識する重要性を感じた。

 

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■読解力の育成に効果 富士宮市立西富士中 大口拓真教諭 渡辺操教諭

 「読解力の育成」をテーマに文章の主題をつかみ、コンパクトに要約する力を養うことを目指した。テストでの無回答率が減少し、社会の動きに関心を持つ生徒が増える効果が出た。

 朝学習の時間では、教員が選んだ記事を題材に見出しづくりや語句探し、感想などを記入した。要約を行う際には、生徒たちが取り組みやすいように使用するキーワードを指定した。

 国語や社会だけでなく、数学や理科でも新聞を取り入れた。消費税に関する記事から、グラフを読み取る関数の学習に発展させた。リチウムイオン電池の研究で吉野彰さんがノーベル化学賞を受けた記事を使い、イオンを学ぶ授業で生徒の興味を引き出した。

 一方、記事と学習内容を関連付ける難しさなど課題も残った。新聞をさらに活用するための実践の必要性を感じた。

 

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■楽しめる活動を意識 菊川市立菊川西中 増田浩己教諭 丹所明日香教諭

 新聞を学習に取り入れる上で、生徒が興味を持ちやすいように"訓練のような雰囲気"を出さずにしたほか、教員も過度な負担なく楽しめる活動を意識した。教務主任をはじめとする7人の教員でNIE小委員会を組織し、このメンバーを核に展開した。廊下の掲示板に掲示する記事は、それぞれの個性や担当科目の話題があふれる内容になった。

 朝学習の時間には、記事を読んで質問に答えるワークシートを用意した。ニュースをテーマに自由な発想を求める取り組みも実践。若者を中心に人気が爆発したタピオカミルクティーに関する記事では、さらに売り上げを伸ばす方法を一人一人考えた。

 語彙(ごい)の増加やコミュニケーション能力の向上、知識の獲得という、読解力の素地になる三つの力が付いたと感じられた。

 

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■紙面授業 地歴 歴史を学ぶ意義は 誠恵高・木下佳也先生

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴うさまざまな動きは、新聞で連日大きく取り上げられ、一斉休校など教育界にも大きな影響が及びました。そうした中でフェイクニュースも横行し、トイレットペーパーの買い占めが行われました。しかし、このような騒動は今回が初めてではありません。1973年、第4次中東戦争の際の「オイルショック(石油危機)」がそうでした。日本ではこれを背景に、トイレットペーパーの買い占めが起こりました。

 ローマの歴史家クルチュウス・ルーフスの言葉に「歴史は繰り返す」がありますが、歴史の授業を展開していると、今回のようにかつての事象と同じような出来事に出合います。それは、私たちが歴史上の人物と同じ「人間」だからです。

 人の行動に影響を与える心理をまとめた「チャルディーニの法則」には、社会的証明(みんながしてるからOK)、権威(立場のある人の推薦)、希少性(残り○個)といったものがあります。今回われわれはフェイクニュースに引っ張られ、この原理に沿ってトイレットペーパーを買い占めました。この原理が「人間」にもともと備わっているものだからです。

 「歴史は繰り返す」。それは仕方のないことかもしれません。しかし、それでは歴史を学ぶ意味がありません。先人たちの「成功」は繰り返すために、「失敗」は繰り返さないために、「人間」は歴史を残し、歴史を学ぶのです。

 今回のトイレットペーパーの買い占め騒動はおおよそ終息しました。かつての「オイルショック」の失敗を学んだわれわれが冷静に対応できたからです。

 歴史は繰り返しますが、同じ結果にはなりません。なぜならば、われわれ「人間」は歴史を学んでいるからです。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(37)記事読み批評 小論文対策に

 筆者は、この3月に卒業生を送り出した。

 その際、小論文入試の受験指導を多く行ったが、己の進路に関連のある時事問題には常に関心を持ち続けていないと太刀打ちできない、と実感している。記事を読み、思考する。そして手を動かして「文章化する」という日々の訓練が大切だ。難関大学であればあるほど、付け焼き刃は通用しないのである。コツコツと努力する姿勢を、この4月から身に付けたい。

 では、その具体的方法はどのようなものか。 

 見出しだけで良い、毎日必ず新聞紙に目を通すのだ。まずは、紙をめくるという身体を獲得すべし。どんなに部活や課題で疲れていようとも、意地でやり続けよう。1カ月で完璧なNIEの身体を得ているはずだ。

 次に、ノートに記事内容への批判をヒタスラ展開しよう。本当はそんなに反対じゃないんだけど、と思ったとしても、とにかく、批評せよ。なぜならば、クリティカルシンキング的な記述は理由を伴わなければならないからだ。この理由がある文章こそ、論文と言えるのであり、その体得が現段階での目標なのである。

 (静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=気になる記事 地域とシェア 住民と交流、世代超え意見交換 裾野高「まわしよみ新聞」

2020年03月07日(土)付 朝刊


 新聞を通じた地域との交流手段として、県立裾野高が1月下旬、新聞の切り抜きを基に意見交換する「まわしよみ新聞」を同校で開いた。1年生約200人と住民約30人がグループに分かれ、気になった記事を紹介し合って、感想や意見を共有した。

 生徒らは机に新聞を広げると、スポーツや事件、事故、コラムや読者投稿など気になった記事をチェック。身近な話題から国際問題まで自由に選んだ記事を切り抜き、思い思いに感想を語った。
 中国・武漢市で発生した新型肺炎関連の記事を取り上げる参加者が特に目立った。「人が集まる場所に行かない方がよさそう」「治療法が見つかっていないが東京五輪・パラリンピックは大丈夫だろうか」など、さらなる流行拡大や国際イベントの開催を危ぶむ声が上がった。このほか、「プロ野球選手の契約更新。年俸をたくさんもらえてすごい」「振り込み詐欺で高齢者が被害に遭っている。おばあちゃんが心配」などと率直な感想を発表した。
 本田凜さん(16)は「まわしよみ新聞は同じ記事でも人によって違う感想を持って楽しかった」と話す。普段はスマートフォンのアプリでニュースを確認していて「アプリでは興味のあるものを中心に読む。新聞はいろいろな記事が目に入るので便利」と今回の経験を通じてそれぞれの媒体の長所、短所を実感した様子だった。
 裾野市の会社員菊池勇一さん(55)は「新聞は世代間の交流のツールになる。自分は生徒の親世代。新聞の面白さを伝えたい」と述べた。
 同校の大端大教諭は「生徒と地域の方が記事を読んで思ったことを言い合うことで、地域との親密度を高めたい」と活動の意義を説明。若者の新聞離れにも触れ、「大人がどのように新聞を読むかを学び、手に取るきっかけになれば」と期待を寄せる。

 

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切り抜いた記事を紹介し、感想などを話す生徒=裾野市の裾野高

 

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机に新聞を広げ記事に目を通す生徒

 
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■紙面授業 商業 近未来都市への道 浜松啓陽高 増田正一先生

 浜松市のゆるキャラ、出世大名家康くんと出世法師直虎ちゃんは今も大活躍です。徳川家康は浜松発展の礎を築き、井伊直虎は大河ドラマで脚光を浴びて、観光客が多数訪れました。観光面では浜松ギョーザも名物になっています。残念ながら、2019年の世帯当たりギョーザ購入額は2位で、宇都宮市に首位を明け渡したことは新聞でも取り上げられました。浜松地域の温暖な気候は綿花栽培に適し、「織機」から「機械」の発展につながりました。繊維、オートバイ、自動車、楽器、光学など高度な技術力は、世界に名だたる企業を誕生させています。
 温暖な気候と長い日照は、お茶、ミカンなどの農作物だけでなく水産物にも恵みをもたらしています。こうした恵まれた環境の中で、地域経済は進化、発展を遂げてきました。
 今後、都市構想を練る中で、浜松が近未来型都市として一層の発展を遂げるには、人と人、人とモノ、人と企業などの「つながり」が、緊密で円滑に機能することが一層必要になります。それは発電エネルギー事業、農林水産・自然環境開発、水質保全、AIとロボット技術の融合であり、さらには市内周遊周回無人モノレール、シェアカー輸送、ドローン輸送などに必要な法律やインフラの整備です。そして、ポテンシャル相応の着想と創意工夫が不可欠になります。
 人々が暮らしやすく、それぞれが関わりを深め合える社会の構築を期したいという思いがあります。そこで大切なことは、「経済は経世済民」ということです。常に経済は、生活の基盤として「人のため」のものであることが第一条件なのです。
 さて、家康くん、直虎ちゃんに続く、「近未来型主要都市#浜松」の創生に登場する令和の創造者の一人は、あなたかもしれませんね。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(36)「自分の個性」新聞で発見

 私の学校では、「個性輝く人」を目指しています。子どもたちには、「個性を輝かせ、新たな道をつくる人になろう」と言い続けています。
 ところで、どうしたら自分の個性を発見できるでしょうか。そんなとき、役立つのが新聞です。新聞は「社会の現実を知らせる窓口」であると同時に、「新たな生き方」を示し「未来を照らす希望」を伝える意義を持つと考えます。
 暗い記事が多いと思われがちな新聞ですが、実は未来を開く発見や個性的で魅力的な生き方がたくさん紹介されています。「新たな生き方に出合う」「自分の可能性に気付く」など、自分の個性を発見するチャンスが詰まっているのが新聞です。
 最近の記事でも、イモリ研究に情熱を注ぐ中学生「イモリ博士」、フランスで日本人初のミシュラン三つ星獲得など、「初めて」「挑戦」「個性」などを紹介した記事には魅力があります。自分にも新しい世界や新たな道を開く人になれそうな勇気が湧いてきます。
 そんな記事と出合い、「個性を輝かせて未来をつくる人」が次々と登場してくれることを心から願っています。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事基に考察、議論 現代文授業で新聞活用 受験多様化に対応 星陵高(富士宮)

2020年02月01日(土)付 朝刊


 富士宮市の星陵高で、現代文の授業に新聞記事を取り入れた実践的な試みが進められている。AO入試をはじめ受験形態が多様化し、大学が求める力も変化する昨今。記事を基に生徒が意見を交わし、問題を理解することで、小論文などに必要な考える力や社会への関心を養う場となっている。

 同校で行われた1月中旬の授業。英数科総合コースの文系2年生が、本紙に掲載された記事を基に考察を始めた。題材は「男性の美容への関心の高まり」。男性がメークをし、外見の印象を良くすることでビジネスや就職活動に生かす動きをまとめた記事だ。論文問題が添えられていて、各自がどう思うか賛成・反対の立場でまとめるのが終着点となる。
 生徒は早速、グループに分かれて議論を始めた。タブレット端末を活用し、裏付けとなる資料や文献を探していく。議論が進むと、各グループの代表が自身の考察に対して根拠となる情報を交えて発表し、クラス全体で共有する。
 議論は週に計4コマある現代文の授業時間を使う。賛否が分かれる題材を扱い、議論の途中で生徒の立場が変わる場合もある。
 この取り組みは5~6年前、現在は大学進学指導課長を務める奥村裕樹教諭が始めた。当初は生徒が新聞記事の要約や感想などを書き、奥村教諭が添削して返信する一対一のスタイル。そのやりとりを発展させ、クラス全体で議論を深める形式を確立した。
 取り組みを開始してから、難関とされる大学にAO入試や推薦で合格する生徒の率が上昇してきているという。2年の芦沢真優さん(17)は「視野や見聞が広がり、自然と力が伸びている」と手応えを語る。奥村教諭は「取り組みは畑を耕しているようなもの。新しい常識をつくっていく世代の生徒たちが今に対する疑問を持ってもらいたい」と話す。
 (富士宮支局・白柳一樹)

 

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新聞記事を基に議論を深める生徒たち=1月、富士宮市の星陵高

 

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自身の意見を述べる生徒

  
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■紙面授業 地歴・公民 入試 公平性保って 常葉大橘中・高 塚本学先生

 大学受験が本格的になり、受験生はラストスパートの時期です。昨年は大学入学共通テストの「英語民間試験導入」で、学校現場は混乱しました。文部科学大臣の「身の丈」発言により、導入が延期されたことは新聞でも大きく報道されました。
 私は地歴・公民の教師ですから、この件で中国の「科挙制」を連想しました。科挙制は、隋の時代の587年に始められ、清代の1905年まで継続された役人選抜試験です。その目的は、貴族の子弟の役人世襲を防ぐことです。科挙が万民に門戸を開放した制度であったことは画期的でした。家柄も血筋も問わず、誰でも科挙を受けることができるという精神だけでも、当時の世界では、類をみない制度といえましょう。それが極めて公平に行なわれたことも利点に挙げられます。答案審査は姓名を見ずに、座席番号だけで行われました。ペーパーテストで「公平」な選抜を行い、人民の中の最も賢明な者を登用しようとしたのです。
 今日の英語民間試験導入は、まさに「公平」という点が問題の一つではないでしょうか。経済力や住んでいる場所という、本人の努力だけではどうにもならない要素が結果の差に結び付きかねないことが問題なのです。
 科挙がかくも長く行われ、周辺地域にも影響を与え続けたことに注目する必要があります。この制度の永続を可能ならしめた中国の社会文化の基盤を著名な歴史家、宮崎市定は、「科挙なるものは本来、文を重んずる精神の上に成立した」と述べています。
 なるべく公平であり、また受験がゴールではなく、入学した大学で学問をスタートするんだという意欲がわく入試であってほしいものです。なぜなら大学こそが、文を重んじる世界の入り口になるのですから。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(35)チバニアン 地球史身近に

 理科の教科書にある、ただ一言で表現される結論を紡ぎ出すために、科学者は日夜研究に勤[いそ]しんでいる。研究が深まり、新しい言葉が生まれ、認められる。理科授業で、最新の科学成果を紹介すると、生徒たちは、目を輝かせて熱心に学ぶ。科学研究の最前線の話題を分かりやすく伝える新聞記事を探してみよう。関連する記事を読ませた後、生徒の理解に応じた補足説明を行うとよい。
 地球史の学習で、欧米の地名に由来するなじみのない名称を覚えるのに苦労する生徒もいるが、彼らに紹介したい記事が「地球史に『チバニアン』 千葉の地層から」(1月18日付静岡新聞)だ。国際地質科学連合が、約77万年前~約12万年前の地質時代を千葉県の地層から「チバニアン(千葉時代)」と命名することが正式に決定したのだ。
 記事の見出しに大きく「チバニアン」とあり、ユニークな名称なので、思わず声に出して読む生徒がいる。行政や地元の人々が一丸となって協力した命名に至るまでの過程やその他のエピソードも興味深い。
 地質分野の学習を、「覚えにくく暗記しなければならない学習」ではなく、「多数の人が関わる創造的な研究の成果を学ぶこと」と感じてもらえるのではないだろうか。
 (清水西高・吉川契子)

  
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■指定校が実践事例を報告 22日、静岡で県推進協

 県NIE推進協議会は22日午後2時から、実践報告会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。
 実践指定校としてNIEに取り組んできた富士宮市立西富士中、川根本町立本川根中、菊川市立菊川西中、県立静岡聴覚特別支援学校の担当教諭が、2~3年間の取り組みの成果や課題を発表する。
 参加希望者は14日までに、県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>へ申し込む。参加無料。

  
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■全国大会は11月都内で

 教育現場で新聞を活用する「NIE」の実践報告や情報交換をする「第25回NIE全国大会東京大会」(日本新聞協会主催)が11月22、23の両日、都内で開かれる。
 例年、全国大会は7月下旬~8月上旬に開かれるが、今年は東京五輪・パラリンピック開催と重なることから、時期をずらした。
 会場は、初日が日本大学文理学部百周年記念館(東京都世田谷区)、2日目が十文字中学・高校(同豊島区)。詳細は追って発表される。

 
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■19年、写真で振り返り 横浜、来月29日まで

 2019年の国内外の報道写真を集めた「報道写真展」(ニュースパーク、東京写真記者協会主催)が3月29日まで、横浜市のニュースパーク(日本新聞博物館)で開かれている。
 新聞、通信、放送の同協会加盟35社の写真記者が撮影した膨大な報道写真から300点を厳選。天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」やラグビーワールドカップ日本大会、台風19号の被災現場など、19年の時代をとらえた写真を、「一般ニュース」「企画」「スポーツ」「文化芸能」と多様な分野で紹介している。昨年8月に本紙夕刊で連載した「県鳥サンコウチョウ」の写真も展示している。
 開館時間は午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。入館料は一般400円、大学生300円、高校生200円、中学生以下無料。
 問い合わせはニュースパーク<電045(661)2040>へ。

月刊一緒にNIE@しずおか=読解、発信力 新聞で育成 社会に目を向ける契機に 常葉大橘高「タチバナクエスト」

2020年01月11日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の常葉大橘高(静岡市葵区)では、英数科の1、2年生を対象に、新聞を使った選択授業「タチバナクエスト」を毎週実施している。テーマに沿った新聞記事を読んで、自分の意見を他者に伝えることで、社会への興味関心を持つとともに、読解力や発信力を育むことが狙いだ。

 この日は大学入学共通テストの「英語民間試験導入延期」をテーマに授業を実施。生徒12人は3グループに分かれ、記事を読む前に自分の意見をワークシートに記入。その後、グループごとに英語民間試験の導入について論じた社説や記事を読み込んだ。分からない単語や面白いと感じた部分に線を引きながら内容を確認し、生徒同士で意見を共有。「英語新入試の問題点は」「英語力とは」など教諭が用意した設問を考え、代表生徒が他のグループの生徒に記事の内容をプレゼンした。
 生徒からは「試験費用を考えると所得によって格差が生まれる」「テストの種類が多いので評価が曖昧になるのでは」などの意見が上がった。その上で、テーマに対する自分の意見を再度、ワークシートにまとめ、記事を読んで考えを深めることができたかを確認した。同校2年の福井千晴さん(16)は「授業を通じて、自分の意見を自信を持って伝えられるようになった」と成長を語る。
 タチバナクエストは、NIE担当の塚本学教諭を中心に3年前から始めた。併せて、スクラップノートも作成し、タチバナクエストや他科目の授業でも活用している。生徒がテーマ設定し、自由に新聞記事を選択してノートに自分の意見を記す。
 「いずれも社会に目を向けるきっかけづくりに非常に有効」と評価する塚本教諭。社会の出来事に触れ、視野を広げることは「興味関心の域を大きく広げ、生徒の成長を後押しする力になっている」と強調した。

 

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新聞記事を活用して意見交換する生徒ら=2019年11月中旬、静岡市葵区の常葉大橘高

 

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生徒が新聞記事をまとめたスクラップノート

  
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■紙面授業 地理・歴史 世相を読み解く鍵 静岡大成中・高 山本翔生先生

 昨年6月から長期間続く「香港デモ」。新聞紙面でもたびたび大きく取り上げられました。6月、「逃亡犯条例」改正案に反対する抗議活動としてデモは始まりました。9月の香港政府による法案撤回表明後、大規模デモはより大きな民主化を求めるものへと変化し、現在も続いています。
 なぜ香港がこのような状況になってしまったのか歴史を見てみましょう。
 1840年に起こったアヘン戦争が大きく関わっています。当時の清国を破ったイギリスは、南京条約で香港島を譲り渡すことや貿易の拡大を認めさせました。さらに、1898年に残りの香港を99年間の期限付きで借りることを認めさせたのです。その後、1997年7月1日に香港はイギリス植民地から、中国の特別行政区になりました。長い年月をかけて香港は中国とは全く異なる形で経済発展を遂げ、今ではアジアNIES(新興工業国・地域)としてアジア最大の金融センター、かつ重要な港湾都市となりました。このように、香港は中国でありながら中国とは違う政治・経済政策が行われ、「高度な自治」が認められた「一国二制度」の状態にあるのです。
 では、中国はどのような政治・経済政策のもと建国70年を迎えたのでしょう。また、香港を長らく植民地支配してきたイギリスの議会制度はどのようなもので、EU(欧州連合)からの離脱問題(BREXIT=ブレグジット)は世界経済にどれほどの影響があるのでしょう。
 こうした世相を読み解く鍵を見つけたり身の回りで起きていることを解決したりするために、社会科目があります。地理分野と歴史分野の土台の上に公民的分野が存在し、土台部分をしっかりと身に付けることで、今後求められる「思考力」がより豊かになるのではないでしょうか。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(34)SDGs 付箋で「見える化」

 皆さんは、SDGsを知っていますか。2030年までに地球の問題を解決する取り組みのことで、未来を変える17のゴール(目標)を設定しています。そのゴールに向かって、一人一人ができることを見いだし、行動を起こそうというものです。そのためには、まず地球の問題を理解するところから始めなければなりません。
 そこで、新聞を使ったSDGsの「見える化」を紹介します。これは、神奈川県NIE推進協議会の公開セミナーで行われたものです。新聞には、この17のゴールと関連する記事が多数掲載されています。ゴールを意識し読み込むことで、おのずと課題が見えてくるので、それらを色分けして見える化していきます。SDGsのゴールには、全世界共通のアイコン(色とマーク)が決められています。そのアイコンを17種類のSDGs付箋として記事に貼るのです。
 同じ記事でも個々の読み方や問題の捉え方が異なると、同じ色の付箋が付くとは限りません。付けられた付箋の意味を皆で共有し、問題解決に向けて行動していくことは、物事を自分ごととして考えるきっかけとなるはずです。
 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=世界の問題 新聞と実験で「自分ごと」に 身近な体験とつなぐ 静岡・清水飯田小 「海洋プラごみ」テーマに公開授業

2019年12月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の静岡市立清水飯田小(同市清水区)でこのほど行われた、新聞記事を使った総合学習の公開授業。5年生27人が海洋プラスチックごみに関する新聞記事を通し、身近な環境問題を考えた。

 担任の小川訓靖教諭の狙いは、地球レベルで進む環境汚染を子どもたちに自分の問題として考えてもらうこと。新聞記事は、社会情勢に目を向け多角的な観点で考えるきっかけと位置付ける。
 小川教諭はまず、海洋ごみの影響で死んだジュゴンの記事や、マイクロプラスチックが人体に与える影響を説いた論説記事など3種類の記事をグループごとに配布、子どもたちは7分で読み込んだ。
 「分からない漢字は飛ばして、大体の内容をつかもう」。小川教諭の助言で、子どもたちは気になる部分に線を引きながら概要把握に取り組んだ。3人一組で記事に見出しを付ける場面では、なかなか答えを出せないグループも見られたが、子どもたちから「見出しに入れたい言葉に丸をつけよう」といった言葉も飛びだした。
 「記事をただ読ませるだけでなく、いかに自分ごととして考えさせられるかが重要」と言う小川教諭。子どもたちに「マイクロプラスチックって目に見える?」「私たちに関係あるかな?」と問い掛けた。最初はけげんそうな表情を見せた子どもたちも、以前、地元の山原川で自然探索を行ったワークシートを取り出すと「山原川にもごみが落ちていた気がする」との声が上がった。
 さらに、海洋ごみを子どもたちに身近な問題として捉えてもらうために、小川教諭が取り出したのは地元三保松原の海岸の砂。砂を入れたビーカーに水を入れてかき混ぜると赤や緑色のプラスチック片が浮かび上がった。子どもたちは「三保の海岸全部で考えたらすごい量」などと素直な驚きの声を上げ、海洋ごみが身近にも存在することを実感した。
 小川教諭は「新聞記事を通し、世界の話題と身の回りのことがつながる喜びを味わってほしい」と話した。
 

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児童が考えた見出し

 

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三保海岸の砂に水を混ぜる実験を行う児童=静岡市清水区の清水飯田小

  
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■紙面授業-美術 自分だけの表現を 藤枝順心中・高 佐藤滋先生

 新聞を開くと見開き2㌻に、SNS(会員制交流サイト)などインターネット関連の記事がありました。トランプ米大統領の投稿の半数以上が攻撃的内容であるという記事、その隣には時の人、環境活動家グレタ・トゥンベリさんの呼び掛けに援助の手を差し伸べる人々の記事、そしてその左側のページには文化芸術欄があり、美術雑誌出版社の新しいネット配信に関する記事が掲載されていました。こうした記事を比べてみると、SNSは一瞬で情報を発信し良くも悪くも変化を生みだすことが分かります。
 新聞記事はその配置によってもいろいろなアイデアにたどり着くきっかけになります。
 また、私が静岡新聞でよく読んでいるコーナーが「窓辺」という夕刊コラムです。以前、浜松アーツ&クリエイションディレクター菱沼妙子さんのコラムを読んで感銘を受け、実際に会いに行きました。それは「今なぜ芸術教育が必要なのか」という見出しがつき、自ら課題を見つけ、答えを生み出せる力を芸術によって強化できるのでは? という提案でした。切り取って今も手帳に挟んでいます。
 皆さんには、自分なりの表現方法がありますか? 美術デザインであったり、文芸であったり得意な分野で良いのです。自らの手でじっくりと作る姿勢を忘れず、スピード社会に押し流されないよう、しっかりと立ち行動するクリエイティブな力(創造力)をつけてください。これからの芸術教育は他の教科との共有性を持ち、実社会に問い掛けのできる教科になっていかなければならないと思っています。作品制作に頑張る生徒を見ていつも励まし、励まされている日々です。学ぶこと、創作することのすてきさ、素晴らしさをぜひ伝えていきたいと思っています。
 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(33)「地域欄」進路切り開く種

 年末が近づくにつれ、高校3年生の進路にさまざまに関わる場面が増えてきます。筆者は生徒に対し、社会に目を向ける重要性から新聞記事の活用を薦めてきました。
 最近、自ら進路を決めていった生徒たちの中で印象に残っているのが、将来、地域に関わる公務員などの仕事に就きたいという生徒に対し、地元の問題になっている記事を継続的に読み取り、スクラップすることを薦めた場面でした。
 読者は見出しの大きさなどから新聞の一面に目を奪われがちですが、地域欄の地元の行事などの記事が将来の進路につながっているということに気付かせることも大切な関わり方だと考えています。
 2019年はラグビーワールドカップが本県でも行われましたが、官民がさまざまな形で協力する記事が連日、報道されていました。直接関わっていなくても、その事実を知ることが地域社会との関わりの大切な一つだとも思います。
 志望する大学に合格した喜びの笑顔の土台には、自身の生きてきた地域社会とのつながりがあることを、これからも記事の事実を通して伝えていきたいと思います。
 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=「秋の写真」選んで発表 新聞活用 伝達力磨く 論理的に考え主張 西伊豆・田子小

2019年11月02日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の西伊豆町立田子小は、論理的思考力や情報伝達力を磨くため新聞記事を活用している。同校は全校児童48人。小規模校ならではの柔軟な取り組みで、読み書きにとどまらない実践を展開。1、2年生では写真を使い、自分の意思を相手に分かりやすく伝えることを目指す。

 10月上旬に行われた1年生の生活科の授業。「秋を見つけよう」をテーマに、紙面から写真を選び、内容や感想、選んだ理由を発表した。松浦碧さん(7)はコスモス満開を告げる写真を取り上げ、「コスモスは秋に咲く花。ピンクと白の花びらがかわいい」と秋にふさわしいと主張した。発表を聞いて他の児童からは「花の近くにハチがいる」「他にもコスモスが多く咲いていてのどか」など一つの意見に対し、新たな発見や感想が上がった。
 同校では、単語や固有名詞をつなぎ合わせ、文脈があいまいな会話をする児童が多いことを、教職員が以前から問題視。平馬誠二校長は「論理的思考力の不足が原因」と分析し、「自分の意思を的確に主張できる力を身に付けさせたい」と、論理的に展開し、5W1Hの要素を含む新聞記事に着目し活用を始めた。
 NIEに取り組み始めて半年、児童が書くリポートは文章量が増え、色や大きさ、形など客観的な情報を盛り込めるようになったという。1年担任の落合つかさ教諭(26)は「物事の仕組みや問題背景を論理的に捉える力が養われる。コミュニケーション力や学力の向上につながるのではないか」と効用を強調する。
 同校は全校で学年に応じたNIEを展開し、高学年では総合的学習の一環で、小学生が犠牲になった交通事故の記事を用いて、自分たちの通学路に潜む危険箇所を調査したことも。教職員は新聞の一層の活用方法に知恵を絞る。

(松崎支局・市川幹人)

 

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新聞記事を活用し、論理的思考力を身に付ける授業=10月上旬、西伊豆町立田子小

 

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発表を聞いて自分の考えをまとめる児童(画像の一部を加工しています)

  
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■紙面授業-美術 キャラクターの力 常葉大菊川中・高 内山節男先生

 東京五輪・パラリンピックの開幕が間近に迫ってきました。昨年7月には大会のマスコットキャラクター、今年3月には競技種目のピクトグラムが発表され、新聞でも紹介されました。
 今では当たり前のように目にするピクトグラム。実は1964年の東京五輪でトイレや注意を示すための視覚記号(絵文字)として生まれたことをご存じですか。外国人観光客が一目で分かる案内表示として日本の家紋をベースに考え出されたそうです。それが今では世界中に広がっています。
 そして、五輪に欠かせないのが大会のマスコットキャラクターの存在です。東京2020大会の「ミライトワ」「ソメイティ」は、日本伝統の市松模様や桜を身にまとい、日本の文化や魅力を世界に発信する存在として重要な役割を担っています。
 五輪のような大きな舞台ではありませんが、私たちの身近にもキャラクターパワーを持ったものが数多くあります。その一つが地域の特性や情報を単純化して伝えるゆるキャラです。
 私の授業の中でも自分自身をゆるキャラ化する取り組みを行ってきました。メインである「自分らしさ」だけでなく、弱点や情けないところ、苦手なものなども表現するというところがゆるキャラならでは。自分を客観的に見ることにもつながります。
 数千字かけて熱心に自分をプレゼンテーションするよりも、一目で分かるキャラクターを用いた方が端的に伝えられるのではないでしょうか。作ったゆるキャラを紹介し合う活動では、生徒同士の交流を深めることもできました。皆さんも自分のゆるキャラを作ってコミュニケーションに生かしてみませんか。自己紹介・PRにうってつけですよ。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

  

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(32)生き方学べる「コラム」

 新聞を活用した「喜怒哀楽探し」という活動を知っていますか。「喜怒哀楽」を4人で分担して、それぞれに関係する記事を探し、どの記事が多いか比較する活動です。
 最初に、「一番多いのはどれか」と聞きます。すると、ほとんどの人が一面や事件・事故の記事の印象が強いためか、「哀しみ」や「怒り」に関係する記事が多いだろうと予想します。ところが実際に比べてみると、「喜び」や「楽しさ」の方が多い傾向があるのです。
 「喜び」に関係する記事は、特に地方版やスポーツ、コラムに多いように思います。中でも、「コラム」は前向きですてきな生き方に出合えます。文章量も少なく、読みやすいものが数多くあります。
 私が最近読んだ静岡新聞の夕刊コラム「窓辺」では、若月佑美さんの文章が印象に残りました。アイドルグループ「乃木坂46」を卒業した25歳の若月さんですが、自分の生き方について本当に深く考えていて、驚くと同時に勇気をもらいました。
 本と同様、「どんなコラムに出合うかは人生を左右する」と言えるかもしれません。このようなコラムを多数掲載している点も新聞の特徴の一つです。
 (焼津豊田中・矢沢和宏)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞が教材 ワークシート 豊富に用意、学習支援 作成の矢沢校長(焼津 豊田中)紹介

2019年10月05日(土)付 朝刊


 2020年度から順次施行される新学習指導要領では、小中高全てで初めて「新聞の活用」がうたわれた。しかし授業で新聞を活用する経験のない教員にとっては、高いハードルに感じられてしまうだろう。そこで、手軽に使えるNIEとして、本紙はホームページで「NIEワークシート」を提供している。作成者の一人、日本新聞協会認定のNIEアドバイザーである焼津市立豊田中校長の矢沢和宏さんにワークシートについて原稿を寄せてもらった。

 「NIEワークシート」を知っていますか。新聞社のネット上に公開されたり冊子になったりしている、新聞記事を利用した便利なシートで、誰もが利用できます。新聞は生きた教材を提供してくれます。
 しかし、使いたい記事がタイミングよく掲載されるとは限りません。スクラップしておけば後で役立ちますが、狙いに合った記事を毎日探すのは大変ですね。
 そこで、このシートが「やさしいNIE」の実践を手助けしてくれます。シートを活用し、手軽に新聞の魅力に触れてみましょう。シートは全教科、道徳、総合的な学習、学級会・生徒会などで活用できるよう豊富に用意されています。
 子どもたちには、シートへの記入だけでなく、記入した内容をテーマに話し合わせたりすると深い学びにつながります。
 私の学校では、社会への関心と、読解力・文章力の向上を目的に自校でシートを作成し、「朝の新聞タイム」と名付けた活動を行っています。
 シート作成のポイントは「どんな目的で取り組むのか」です。子どもたちに、「社会や地域への関心を高めたい」「積極的な生き方を身に付けさせたい」「文章を要約する力や限られた字数の中で表現する力を伸ばしたい」など、目的によって選ぶ記事や問う内容は違ってきます。
 取り組んだ子どもたちからは、「いろいろな種類の記事があって、次にどんな記事と出合えるのか楽しみ」「新聞の良さや新聞学習の楽しさを知った」「違う立場から考え、いつも自分の意見をもつようになった」「文章を読んだり、書いたりすることが苦手でなくなった」「文章を読むのが速くなった」など、前向きな感想がたくさん寄せられています。

 

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矢沢和宏さんが作成した「NIEワークシート」の一例

 

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「NIEワークシート」を使った授業に取り組む生徒たち=焼津市立豊田中

  
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■紙面授業-家庭 紙の新たな可能性 沼津中央高 深沢園美先生

 私は家庭科の教師ですから、被服の新素材開発には興味があります。マニラ麻を使用した「紙の服」が最近作られ、若年層をターゲットに販売を展開しています。「紙」では洗濯すると溶けてしまうのでは? と疑問を持つかもしれませんが、紙繊維に撚[よ]りをかけて糸にしているので丈夫です。ジーンズ、ワイシャツのほか、帽子やバッグなども作られていて、微生物分解により環境への負荷が軽く、ゴミ問題にも配慮していること、高温多湿な日本の風土に対して吸湿性が高いことなどから人気があるようです。
 昨年7月に米コーヒーチェーンのスターバックスが2020年までに全世界の2万8千以上の店舗で、プラスチック製のストローを廃止し、紙製のストローに切り替えていくと発表した際は新聞でも大きく取り上げられました。いま、「紙」は環境面で注目されている"新素材"の一つです。
 本校では、毎年ファッションショーを行っています。エコを意識した生徒たちの発想はとても豊かで、花束を作る時に用いられるフラワーラップ素材や、英字新聞やトイレットペーパーを利用した衣装なども製作し、文化祭の演目に花を添えています。
 1ロールの長い紙(布)から、衣装が完成するまでは気が遠くなるほどの長い工程を要しますが、衣装を身にまとい、観客からの歓声を浴びる喜びは言葉にならないようです。
 「ものづくり」は文化です。古き良きものを受け継ぎながら、新しいものに形を変え、その時代をつくっていきます。県東部の私立学校の中で最も長い歴史を持つ本校は、間もなく100周年を迎えます。形を変えつつも、文化を伝承し、生徒達が新時代の礎を築けるように、私はカミ(神)に祈りながら、日々授業に向かうのです。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

  
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(31)考察の文章化 社説活用

 大学推薦入試の要項が発表になった。ここには、小論文が避けて通れない関門となって立ちはだかっている。今回は、その突破方法と新聞利用についてご紹介したい。
 「小」とついているが、れっきとした論文であることを認識しよう。
 論文とは事象から思考を経て文章化した場合、読んだ人が「確かにそう考えられるよね」と同意されるものである。「でも、こうも考えられるんじゃない?」となるのを論の発展と呼ぶ。故に、論理的な文章を書くことで最も重要なのは「理由」があるということだ。「こう書いてあるからこう考えられる」-これが考察の文章化であり、小論文たり得るのだ。
 しかし、この文体は練習しなければ獲得できない「技術」である。すなわちトレーニングが必要で、それには学校の先生に添削指導を頼むのが最も良い。
 具体的には、静岡新聞朝刊の社説を読み、この文体をまねるのがお薦めだ。考察とは主張であり、説得である。読み手に己の考えを納得させねばならぬ。社説は時事の諸問題に対して考察し、基本に則ったスタイルで発信している。
 ぜひともまねすべし。少し難しい内容かもしれないが、練習である。頑張ろう!
 (静岡高・実石克巳)