一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞活用 学年ごと工夫 語彙、読解力 向上狙う-森小の取り組み

2017年10月07日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校2年目の森町立森小では、学年ごとに趣向を凝らした新聞活用の取り組みが行われている。6年生を中心に同校の実践を紹介する。
 

 「日本と関わりある国の新聞記事や見出しを探して調べてみよう」。教室に、担任で同校NIE担当の兼子万紀郎教諭(32)の声が響いた。6年生は2017年度、総合的な学習の中で興味を持った国を調べ、文化などを学んでいる。
 児童は1人ずつ新聞を手にし、紙面から外国に関する情報を探し始めた。「沼津に住んでいるタイの女の人が囲碁のアマチュア6段になったんだって」「掛川でやった高校生のアーチェリーの全国大会に韓国の人たちも出場したみたいだよ」。本紙の記事中に国名を発見すると、互いに教え合って感想を発表した。
 「北朝鮮やアメリカのトランプ大統領のニュースが多い気がする」。ある児童の意見に、周囲もうなずいた。「新聞を見るといろんなことを知ることができる」と神田絢音さん。朝も自宅で新聞に時々目を通す。外国のニュースはもちろん、地元森町の話題も楽しみだ。
 兼子教諭がこの日の授業で新聞を使った理由に、国際や経済、地域欄など分野ごとに情報が整理されている点を挙げた。子どもたちが興味のある分野から読み始めるように促したいとの狙いもある。
 6年生では授業以外にも、担任の裁量で自由に使える昼休み直後の15分間の「スタディータイム」に、新聞記事や図表を8分間で読み解き、設問に回答する実践も。また、自宅では関心のある記事を探して要約し、独自の見出しづくりにも挑み、教室の壁に成果のプリントを張り出している。
 同様の取り組みは全校に広がる。16年度の3年生は総合学習で調査結果をまとめる際に新聞のレイアウトを参考にし、6年生は気になるニュースを毎朝当番が紹介、他の学年でも授業で新聞を取り入れた。本年度は5年生が図工で新聞紙面の写真を題材に絵画制作に挑戦するなどしている。
 これらの取り組みの背景には、児童の語彙[ごい]力や読解力の向上につなげる狙いがある。
 「日常の授業では児童が長い文章に慣れる機会が少ない」と兼子教諭。全国学力テストにおいても「そもそも問題で何が聞かれているか分からず、長文を目にしただけで抵抗を感じる子もいる」として、日常的に新聞を目にする有用性を強調し、分からない言葉があれば積極的に辞書で調べるよう呼び掛ける。
 児童には新聞を通じて知識を増やしながら興味の幅を広げてほしいと願っている。「自分たちの暮らすまちでどのようなことが起きているかも知ってほしい。新聞をどう使えば効果的なのか、私も考えていきたい」と兼子教諭は話した。
 

2017100701.jpg

本紙から外国に関する記事や見出しを探す6年生=森町立森小(写真の一部を加工しています)

 

2017100702.jpg

6年生の教室には興味を持った記事を児童が要約したプリントが並んでいる

 

 ■紙面授業=英語・家庭-モンゴルの食体験 城南静岡高・中 松下真弓先生
 歴史上、地続きで一番大きな国を造ったのはどこか分かりますか。モンゴルです。馬に乗って世界を席巻し、世界最強の帝国を造りました。紀元前から草原遊牧国家が建設され、人々は環境に適応した生活をしてきました。
 モンゴルの民の生活は馬と家畜に支えられ、それらの動物を育むのは大地の牧草であることから、モンゴル遊牧民は大地を尊重し、家を建てる時は地面に柱を刺さない、畑を耕さない、墓碑を立てる文化もないそうです。
 そのモンゴルをこの8月、川勝平太知事が訪れるのに合わせた訪問団に、私も私学教職員海外交流派遣事業の一員として参加しました。知事とモンゴル大統領との会談の内容などは新聞でも報じられましたが、ここでは「食」に絞ってモンゴルの様子を報告したいと思います。
 モンゴルの食の柱は、肉(赤い食)と乳製品(白い食)です。主食は19世紀末移住した中国人が自分用に栽培した小麦から作られた小麦粉です。
 「赤い食」は零下30度にもなるという冬の食で、私がモンゴルを訪れた8月は「白い食」が中心となります。モンゴル人は遺伝的に生乳を飲むとおなかをこわす「乳糖不耐性」ですから、生乳は飲まず加工されるのが特徴です。遊牧民のゲルを訪問した時に、朝搾りたての牛乳をまきストーブで沸かして、目の前でチーズを作って食べさせていただきました。
 また、夏の時期限定で作られる馬乳酒も頂戴しました。酒と言うもののアルコール度数は1~3%程度で、水分、エネルギー、ビタミンC補給源として赤ちゃんからお年寄りまで飲用され、ヨーグルトに近い乳飲料として1日0・5~3リットルくらい摂取しているそうです。結核やウイルス性肺炎、胃炎、胃潰瘍、さらには糖尿病や高血圧といった生活習慣病に対しても効果があるとされています。腸内環境の改善、老廃物の排せつといった効果もあり、私は馬乳酒を飲んでから約1週間、デトックス効果のためかほとんど飲食ができませんでした。農耕民族の日本人には、刺激が強すぎたのかもしれませんね。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(7)=ニュース発表 記事探しのこつ
 日々の社会の動きに興味を持たせ、自分が見つけたニュースを紹介することで情報活用の実践力を身に付けさせようと、多くの先生方が「ニュースの発表」に取り組んでいます。ぜひ気を付けて欲しいのが、次の2点です。
 1点目は、その日のニュースにこだわらないこと。先生方が、その日の新聞記事を授業に使おうとしても難しいと思います。「順番だから」と指名された子どもが戸惑うのも当然です。記事を探すのに数日余裕を持たせることで、「このニュースを皆に伝えたい」と意欲を高めることができます。
 2点目は、記事の一部の発表でも認めること。大きなニュースになると記事の量も膨大です。起承転結の文章表記に慣れた子どもは大切なことは最後だと信じ、文末に書かれているはずのまとめを探しがちです。新聞は、一番大切なことはリード文や第1段落に書かれています。見出しや写真、リード文などの紹介だけでも価値があることを教えましょう。
 1年を担任した時、切り抜き写真に一言添える取り組みをしたところ、子どもたちに好評で、成果も上がりました。
 (浜松与進北小・山崎章成)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=名古屋・NIE全国大会 新聞から 広がる世界

2017年09月02日(土)付 朝刊


 名古屋市で8月3、4の両日、「第22回NIE全国大会」(日本新聞協会主催)が開かれた。「新聞を開く 世界をひらく」をスローガンに、教材としての新聞の活用に関する発表や意見交換を展開した。初日には2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩・名古屋大教授=浜松市出身=の講演などが行われ、最終日には、県内からNIEアドバイザーの山崎章成・浜松市立与進北小教諭と、磐田市立城山中の萩田純子司書教諭がそれぞれ特別分科会に登壇し、NIEの裾野を広げる取り組みに向け意見を述べた。

 

2017090201.jpg

天野浩名古屋大教授も参加した「第22回NIE全国大会」=8月3日、名古屋市内

 

               ◇........................◇

 

 ■学校図書館 重要な役割 情報活用教育の中心に-萩田純子司書教諭(磐田・城山中)
 磐田市立城山中の萩田純子司書教諭は「学校図書館とNIE」に焦点を当てた特別分科会に登壇し、生徒の情報活用スキルを向上させる系統立てた指導法や、司書教諭の役割について考えを述べた。
 萩田教諭は「理想の学校図書館」として、各教科が関連し合い補い合いながら中心に図書館があるイメージを示した上で、互いの授業内容を知らない教科担任制、教科でばらばらに指導される情報活用スキルの学習-などをネックに挙げ、司書教諭が「つなぐ」ことの重要性を強調した。
 新聞について「社会で起こっている事実が載っている点で、それ自体が非常に重要な資料」と述べる一方、社説やコラムには意見が掲載されていることから「事実と主張のつながりを学習するのに適した教材」と語った。
 具体的実践として、世界遺産、AKB48、ディズニーランドの混雑度、地下鉄サリン事件-など知りたい情報の種類に応じ、図書、新聞、インターネットから最もふさわしいメディアを探る中学1年向けの授業を紹介。萩田教諭は「出来事の経過を詳しく知るには新聞」「概要を知りたいなら百科事典」など、指導内容を説明した。
 国語に関する世論調査の新聞記事を読み、自分の意見をまとめ、新聞各紙の社説や、友達が書いた意見文と比べる中学3年生向けの授業実践も紹介した。
 萩田教諭は「こうした実践は、現状では司書教諭である私が孤軍奮闘という感じ。全職員の共通理解としてできるようになったら、かなり変わってくると思う」と期待した。

 

2017090202.jpg

司書教諭の役割について語る磐田市立城山中の萩田純子司書教諭

 

               ◇........................◇

 

 ■販売店と連携 裾野広げて-山崎章成教諭(浜松・与進北小)
 NIEアドバイザーの山崎章成・浜松市立与進北小教諭がコーディネーターを務めた特別分科会「地域で支えるNIE-販売店との連携を考える」では、東海、関東地区の3人の新聞販売店主らが登壇し、地域や学校と協力したNIEの具体的取り組みを紹介した。
 店主の一人は、新聞を購読していない家庭が増加し学校の先生が新聞を使った宿題などを出しにくくなっている-などとNIE活動の障壁を挙げた上で、「学校と新聞社の2者によるNIEには限界があるのでは」と問題提起。別の店主は新聞記者との交流など地域に根差した活動として行っている「塾」の取り組みを挙げ、展開に期待を込めた。もう一人の店主は、オリジナルソングを使った新聞普及活動を紹介した。
 山崎教諭は「NIEを基盤として支えているのが新聞販売店だということを確認し、今後の実践に生かしてほしい」と呼び掛けた。
 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=国語-駿遠線に願う平和 静清高 曽根正明先生
 郷土の作家、小川国夫の初期の作品に「動員時代」があります。戦時下に用宗の造船所に勤労動員された時の経験をもとに、暴力が肯定される時代と青年期の反抗的な感情を描いた短編小説で、その中に「駿遠線」が出てきます。駿遠線については今年3月、最後の駅舎跡「藤枝本町駅」の木材が万年筆やボールペンとしてよみがえった、とのニュースが新聞で報じられ、鉄道愛好家らの関心を集めたことが記憶に新しいところです。
 私は小学校まで千葉に住んでいましたが、夏休みになると親の実家のある相良まで電車を乗り継いで行きました。途中、藤枝駅を降りると、東側に静岡鉄道の新藤枝駅がありました。紺と黄色がかったクリーム色の小さな汽車。地元の人たちが「けーべん」と呼ぶ軽便鉄道。それが駿遠線でした。駅から左へ行くと「動員時代」に出てくる大手線方面。私たちが乗った小さな汽車は右の本線をゆっくりと約20キロ先の相良まで約1時間かけて進んで行きました。駿遠線は、1913年に前身の藤相鉄道の藤枝~大手間が開業し、スタート。その後、周辺鉄道との合併などにより48年には総延長64・6キロに及び、日本一長い軽便鉄道、駿遠線となりました。しかし、70年7月31日に最後に残った藤枝~大井川間が廃止となり、57年間の歴史に幕を下ろしました。
 本校では毎年8月に静岡新聞社の後援を得て、その廃線跡を訪ねる「駿遠線跡を辿ろう」という企画を催しています。私がバスの運転をし、「歴史に残す 静岡鉄道駿遠線-日本一の軽便鉄道」(静岡新聞社刊)の著者、御前崎市議の阿形昭さんにガイドをお願いして、廃線跡を巡って今年で10年となりました。当時を知る年配の方から、この企画で駿遠線を知ったという小学生まで毎年数々の出会いがあります。
 皆さんの街の近くにあった駿遠線を少しでも知っていただければと思います。また、戦後72年がたち、再び小川国夫の「動員時代」のような勤労動員がないように、平和な時代が続くことを願っています。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(6)=記事から考える道徳授業
 学校の道徳授業が「考え、議論する道徳」に変わろうとしています。現実に起きている、答えが一つではない道徳的な課題に対して、子どもが自分の問題として向き合い、実践的に考え、議論し、生き方を深めていく道徳です。その際、社会の今を反映し、生きた課題を提示してくれる新聞は道徳の優れた教材として役立ちます。
 例えば、航空機に搭乗する際、車いすの男性が航空会社の人から「歩けないと乗れない」と言われ、タラップを腕だけではって上ったという記事。この記事をそのまま使って考えさせることもできますが、男性役、航空会社社員役、周囲の人の役などの役割を決めてロールプレイを行い、各立場から考えさせるのも効果的です。
 また、プロサッカー選手のなくした財布が中身もそのまま手元に戻ったという記事も使えそうです。
 他にも、新聞にはニュースだけでなく、魅力的な生き方をコンパクトにまとめたコラムもたくさん掲載されています。あまり難しく考えずに、新聞を教材にした道徳に挑戦してみませんか。
 (焼津大井川中・矢沢和宏)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新規実践校が意気込み 積み重ね、深い学びに

2017年08月05日(土)付 朝刊


 日本新聞協会はこのほど2017年度のNIE実践指定校を決定し、県内では県NIE推進協議会が推薦した14校に決まった。実践校には、県内で発行される7紙が一定期間無料で提供され、NIE活動に活用される。新規実践指定6校の担当教諭に活動の抱負を聞いた。

 

 【2017年度NIE実践指定校】 
 ■新規 浜松西都台小、富士宮西富士中、静岡観山中、川根本町本川根中、遠江総合高、静岡聴覚特別支援学校
 ■継続 富士宮上井出小、静岡井宮小、森小、裾野富岡中、浜松可美中、三島南高、静岡聖光学院中・高、東海大静岡翔洋小

 

 ■良い文章のお手本に-川根本町本川根中・羽入健太郎教諭
 中学生の頃、父親によく「新聞を読め」と言われていたことを思い出します。当時はインターネットも普及しており「なぜ大人は新聞を読ませるのだろう」と疑問を感じていました。その答えは自分が教壇に立ってやっと分かりました。
 国語の授業を担当する私は生徒たちの文章力に課題を感じています。文章の組み立てが破綻していて何を伝えたいのか分からない文章や、語彙[ごい]が少なく表現力に乏しい文章などを目にする中で、新聞記事(特にコラムや社説)は生徒にとって「良い文章のお手本」になると考えています。
 NIE教育を通して社会に対する見方や考え方を広げていくとともに、文章力を伸ばす取り組みも実践していきたいです。

 

 ■全職員が記事を紹介-静岡観山中・滝志保教諭
 観山中生の約3分の1の家庭は、新聞を購読していません。長い文章、難易度の高い言葉に、意欲を失う生徒が多いように感じます。
 昨年度より週1回「朝の新聞タイム」を設け、全職員交代で新聞記事を紹介し、一つの記事を全生徒で読む機会を持っています。
 職員が腐心している点は、記事の内容と難易度です。親しみやすく、分かりやすい内容で、思考を深め、新しい知識が得られる、そんな記事を取り上げようと心掛けてきました。これまで生態系、政治、情報化社会などさまざまな分野の記事が選ばれてきました。
 本校の研修テーマは「語彙[ごい]力の育成」です。新聞を楽しめる生徒を育てることで、語彙力の育成につなげていきたいと考えています。

 

 ■ひと手間掛け成長を-遠江総合高・小杉幸一教諭
 キャリア教育、生涯学習の観点から、毎週1回10分間「朝NIE」、毎日「スクラップノートリレー」を実施。1学期は3年生対象に取り組みました。2学期からは、1、2年生も実施予定です。
 「しずおか新聞感想文コンクール」には、全校生徒が参加予定。新聞を読んで記事にコメントできる力は、今日求められている能力です。国語科の協力も得て取り組みます。
 生徒も先生も多忙感から目の前のことにとらわれがちですが、NIEで、見えてくる世界が広がるに違いありません。「ひと手間掛ければ、ふた手間分育つ」「ひと手間掛ければ、ふた手間省ける」と関口修司氏(日本新聞協会NIEコーディネーター)。
 さあ今、NIEにひと手間掛ける時です。

 

 ■記事から共通点探す-富士宮西富士中・中嶋優貴教諭
 1年目の本年度は「NIE~新聞記事と自分を結ぶ~」をテーマとし、新聞記事から自分の体験や経験と比較したり共通点を見つけたりすることで自分の考えがもてるような実践に取り組んでいきます。
 本校では4年前から毎週金曜日を「新聞の日」と位置付け、朝の10分間で全校共通の記事を要約し、それに対する自分の考えを書く活動を行っています。また、新聞のコピーを校内各所に掲示したり、図書室に新聞コーナーを設けたりすることで、新聞がより身近に感じられる環境整備を行っています。
 新聞をきっかけとして自分の思いや考えを持ち、社会の動きを敏感に捉える生徒を育てるために、私たち教職員も新聞記事を生きた教材として活用させていきたいと思います。

 

 ■気軽に読める場作り-浜松西都台小・林裕一教諭
 インターネットが普及して、人々の情報を手に入れる手段が多様化している現在、子どもたちにとって新聞が遠い存在になっています。本校の児童も、新聞に目を通す習慣がある子が少なく、新聞をとっていない家庭も存在しています。
 まずは、子どもたちと新聞の距離を縮めたいと思いました。そこで、校内に新聞の立ち読み台を設置し、気軽に読める場を作りました。また、学年に応じて活用した活動を行っています。
 今後の実践を積み重ねることにより、新聞が子どもたちにとって身近な存在になるだけでなく、子どもたちが「気づく力」「調べる力」「伝える力」を成長させ、「深い学び」につながるように工夫していきたいと思います。

 

 ■情報に主体的な姿勢-静岡聴覚特別支援学校・山根渉教諭
 今回NIE実践指定校に選ばれたことで、NIE教育によって〝主体的に情報を求める姿勢〟を生徒に身に付けてほしいと願いました。耳の聴こえにくい幼児・児童・生徒には「受け身の姿勢になりやすい」という傾向があります。自ら気になったことを調べたり、情報を多角的に捉えたりすることが苦手です。それらの課題にNIEの実践によって取り組んでいきたいと思っています。
 まずは複数紙を読み比べることのできる環境を整えていただけるので、一つの記事について教室内で話し合う機会を設けることから始めようと思います。新聞という視覚情報を活用できるメディアを通して、社会を知ろうとする主体性が身に付くように尽力いたします。

 

20170622.jpg

本年度の抱負を語る実践指定校の教諭=6月、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=国語-近づく「終戦の日」 桐陽高 小池太一先生
 かつてロンドンを訪れたとき、帝国戦争博物館というところを見学したことがあった。戦車や戦闘機が展示されているフロアを漫然と歩き回っていたが、ある展示物の前で思わず足を止めた。本物の原子爆弾だった。それは深緑色に鈍く光る鉄の構造物であったが、他のどの兵器とも違っていて、なにか異様で、不気味な感じがした。こんなものを投下された日本という国の歴史を考えた。
 今年も「終戦の日」が近づいている。2016年8月15日付「静岡新聞」朝刊の社説にはこうある。「『二度と戦争はごめんだ』。戦後日本の平和国家の歩みは、71年前に国民が抱いたこの思いが原点だろう。...筆舌に尽くしがたい惨禍の歴史を問い直し、思いを引き継ぐ。終わりがあろうはずのない取り組みが揺らいでいないか」。
 何年も新聞を読み続けている読者には、もうすっかり慣れてしまって、決まり文句のように思えるかもしれない。しかし、日本が太平洋戦争で経験した惨禍と、失敗を繰り返すまいという決意はリアルなものだ。そのリアリティーを実感するには、自分が住んでいる地域が、当時どのように太平洋戦争をくぐり抜けたのかを調べてみるとよいだろう。
 桐陽高の地元、沼津市を例にとってみると、何度も米軍の空爆を受けている。爆撃、機銃掃射、焼夷[しょうい]弾といった攻撃で、300人以上の市民が亡くなっている。特に1945年7月17日の空襲は大規模なものであり、御前崎方面から沼津上空に侵入したB29爆撃機130機が行った9千発以上の焼夷弾攻撃によって、沼津市街は焼け野原になっている。戦前から沼津に住んでいる方なら記憶しておられるだろう。
 また、海沿いの地域には特攻兵器(「人間魚雷」と言われる「回天」、モーターボート特攻の「震洋」など)の格納庫があった。桐陽高がよく体育祭をしている愛鷹山には、帝国陸軍が本土決戦を想定した陣地を構築した。JR沼津駅北側には、レーダーなどの製造を目的とした広大な海軍工廠[こうしょう]があった。
 今年の「終戦の日」、「静岡新聞」の社説は、何を伝えてくれるだろうか。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(5)=習慣付ける題材選びを
 新聞を活用することで、子どもたちの学びが広がり、深まり、目標が効果的に達成される場合があります。そのために指導する側が、「新聞を活用して伝えたいこと」を明確にして指導することが大切です。
 子どもたちの実態に応じた適切な題材選びも大切です。最初から難易度の高い記事を取り扱うのではなく、新聞に慣れさせてから難易度を高めていくとよいでしょう。
 例えば写真には、多くの子どもたちが興味を示します。朝の学級活動や授業などの導入時に、その日取り上げたい新聞記事の見出しと写真を紹介して、一言添えます。「季節の写真」「行事の写真」「スポーツの写真」などは、さまざまな教科や特別活動の学習に関連づける展開が可能です。
 投書も使えます。静岡新聞の「ひろば」欄の10代の投書特集では、子どもたちに身に付けさせたいことが、同年代の子どもたちの素直な言葉で語られていることがあります。学級活動の時間に紹介すると、学校生活を考えて送るきっかけになります。
 最近は家庭でのNIEも注目されています。夏休みは取り組みのチャンスです。
 (清水西高・吉川契子)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=環境づくり 司書と連携 新学習指導要領に「新聞活用」 「教員無理しないで」-NIEコーディネーター関口さん講演

2017年07月01日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会総会がこのほど、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開かれ、日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さん(61)が「新学習指導要領とNIEの授業」と題して講演した。関口さんは「教育が変わりつつある今こそ、NIEが求められている。新聞の学力向上効果を明らかにするとともに、新聞が身近にある環境づくりを組織的に取り組むことが今後の課題」と強調した。

 文部科学省は2020年に施行する新学習指導要領に「新聞活用」を盛り込んだ。関口さんによると、背景には子どもの読解力低下などがある。近年はフェイクニュース(偽のニュース)などの問題が浮上し、調べ学習をはじめとした「主体的・対話的で深い学び」の重要性が高まっているという。
 関口さんは新学習指導要領に触れ、「NIEの存在意義はある」と指摘した。一方で教員の多忙化や教育に新聞を取り入れるノウハウが具体的に示されていないなどの理由で、NIE普及が進まない学校現場の現状を憂慮する。
 新聞を身近に感じさせる環境づくりを「新聞の日常化」と呼び、「NIE浸透の鍵になる」とみる。学校現場で長年、NIEを推進してきた経験から、学校での「日常化」に向けた方法として学校図書館の活用を挙げ、「司書といかに連携できるかがポイント。新聞に触れられるようコーナーを設けたり、複数の新聞を読み比べたりする環境づくりが必要」と訴えた。
 また、週に1、2回、15分の朝学習の時間を使って新聞をスクラップし、ワークシートに感想を記入する「NIEタイム」を紹介した。「教員が子どもの感想を褒めることで、初めは難しいとぼやく子どもたちが『楽しい』と口をそろえるようになる」と効用を説き、継続のこつを、すき間時間の活用などで「教員が無理しないこと」と強調した。
 NIEのさらなる浸透に向け、「学校内での取り組みにとどまらず、教育委員会やPTA、地域、家庭まで広げる必要がある」と述べた。

20170701.jpg

新聞が身近にある環境づくりの取り組みを強調する日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さん=静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 

               ◇........................◇

 

 ■新聞記事の感想文募集 児童生徒対象、静岡新聞社
 静岡新聞社は、県内の小学生から高校生までを対象に、第10回記念「2017年度しずおか新聞感想文コンクール」(県教育委員会など後援)の作品を募集している。児童、生徒が新聞を通じて活字に親しみ読解力と表現力を養うとともに、地域や社会への関心を高めることが目的。
 課題は、①2017年1月1日~8月31日の新聞記事を読んでの感想②新聞について思うこと(小学生は①か②を選択、中学生と高校生は①のみ)。部門は、小学生、中学生、高校生の3部門。賞は、各部門で最優秀賞1点、優秀賞2~3点などを選び、応募者全員に参加賞を贈る。
 要項の請求と問い合わせは静岡新聞社読者部内「しずおか新聞感想文コンクール」事務局<電054(284)8984>へ。

 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=社会-日常生活 環境に影響  不二聖心女子学院中・高 野村春美先生
 「環境問題」と聞くと自分の日常生活からは遠い世界のこと、と思ってしまいますが、毎日の買い物も「環境問題」に深く関係しています。
 信州大学が「生物多様性フットプリント」を利用して、日本の消費が世界の希少生物にどのくらい影響を与えているか分析した、との記事が2月、新聞に掲載されました。それによると、マレーシアなどでは日本での輸入木材の使用増加によりマレーグマの生息地が縮小し、エチオピアでは日本などへ輸出するコーヒー生産のための農地開発で、ヒョウやアフリカゾウの生息地が圧迫されています。
 ハウス栽培や生産地の多様化で季節を問わず野菜や果物が手に入れられるのは便利ですが、栽培で使われる石油ヒーターや照明、輸送用トラックのガソリンなどにより温室効果ガスである二酸化炭素が排出されています。この二酸化炭素によって温暖化が進み、自然環境の変化で絶滅危惧種となった生物もあります。またツバルなど太平洋の島国では、海面上昇や高波による浸水のため住民全員を別の島に移住させなければならない状況も生まれています。
 世界全体では、昨年11月に「パリ協定」が発効し、その直後モロッコで開かれた気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)で各国が温暖化対策の強化に取り組むことへ決意を示しました。
 日本も「パリ協定」を批准し、温室効果ガス削減に向けた計画を提出しています。一方、米国のトランプ政権は環境問題に懐疑的で、パリ協定から離脱すると6月に表明し、世界の温暖化対策に打撃を与えました。
 子どもたち、孫たちの世代も地球上の全ての生物と人々が安心して生きていけるよう、国際社会は今、「持続可能な社会」の形成に取り組んでいます。経済のグローバル化が進めば進むほど、買い物という私たちの小さな選択も世界のどこかに影響を与えます。商品がどこで作られ、どのように運ばれてきたかを考えながら買い物をすることで「持続可能な社会」をつくることに参加していきましょう。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(4)=感性を磨くコラージュ
 小学校低学年では新聞を使った活動ができないと思っていませんか。語彙[ごい]が少ない子どもたちでも、新聞を使って色や形、質感の感性を磨くことができます。新聞の写真や広告などに注目し、切り貼りしていく新聞コラージュを紹介します。
 新聞紙面には、カラフルな写真や広告がたくさん掲載されています。そこには、「緑」と言っても色鉛筆や色紙にはないさまざまな「緑」が存在することに気付くでしょう。その中から、例えば自分の葉のイメージに合った色や形を連想して選び、葉の形に切り抜きます。質感を考えて探す子もいるでしょう。白黒の素材を選んでも構いません。形そのものを切り取って構成する従来のコラージュとは異なり、本来の写真や広告とは全くの別物に大変身させてしまう新聞コラージュは「創作している」意識で取り組めます。静岡新聞の「週刊YOMOっと静岡」の新聞アート欄でも挑戦できます。
 新聞の情報は文字だけではありません。多くの写真や広告の中から必要なものを取捨選択していくことも、メディアリテラシーと言えます。
 (静岡井宮小・中村都)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞「読まない」38人→0人 苦手意識を克服 学ぶ力サポート-浜松・与進北小 教室常備1年半 

2017年06月03日(土)付 朝刊


 新聞を常時読める環境があれば、子どもたちは新聞を身近に感じるようになるか-。1年半の間、教室に毎日、新聞を置いた結果、新聞を全く読まない児童がいなくなり、新聞への苦手意識が克服されたというアンケート結果を、このほど浜松市立与進北小がまとめた。

 同校は、朝読書の時間や朝の会で新聞を活用する機会をつくってきた。そうした中で、新聞を自由に読める環境の有無が新聞の親しみやすさに影響するのではないか、ということにNIEアドバイザーの山崎章成同校教諭が着目。2015年9月から、5年生90人の全3教室に17年3月の卒業まで毎日、県紙や全国紙など複数の新聞を置き、昼休みや放課後などいつでも読めるようにして児童の意識の変化を追った。
 その結果、1年半で「週に3日以上読む」は5人から18人、「週に1、2日読む」は21人から32人と新聞に親しむ子が大きく増えた。また、「月に1、2日読む」は26人から40人に増えたものの、「読まない」は38人からゼロになり、ほとんど読まない子の総数が大きく減った。
 新聞を読む理由について(複数回答)は、「ニュースを知りたい」が18人から53人、「世の中のことが分かる」が14人から41人、「知らないことを知りたい」が13人から33人、「テレビ欄を見たい」が20人から38人と、新聞を情報収集ツールと理解して、社会への関心が広がり、情報アクセスに積極的になったことがうかがえる。その他にも、「一つのニュースが他のメディアより詳しく書いてあり分かりやすい」「広告で商品のことを知りたい」「地域であったことを知りたい」といった多様な声も出てきた。
 新聞があって良かったことは、「新聞を読んで文章を読む力がついた」「漢字や難しい言葉を覚えられた」「いろいろなニュースが分かった」「気になったことがすぐ読めた」「家族や友達に知らないことを教えることができた」「記事で友達と盛り上がった」など、話題探しから学力向上まで、子どもなりの〝収穫〟を実感していることが分かる。
 山崎教諭は「新聞を熱心に読む子もいれば、そうでない子もいたが、どの子もそれぞれに新聞から刺激を受けていたことは十分な成果。いつでも読める環境は、皆が読んでいるから自分も読んでみようという子のハードルを下げ、親しませるのに有益といえるだろう」とみる。
 新聞はただ置くだけでなく、教師が①最初は、新聞の読み方を教える②朝の会で記事を発表させるなど活用の場をつくる③習慣化してきたら、切り抜きなど子どものやりたいことに取り組ませる-よう指導すると、親しむ効果がより大きくなると山崎教諭は提案する。同校では現6年生にも5年次から教室に新聞を置き、本年度も継続して、子どもたちの学ぶ力のサポートに活用していく。

 

2017060301.jpg

朝読書の時間に新聞を読む児童ら=浜松市東区の与進北小

 

2017060302.jpg

グラフ=家や学校で新聞を読みますか?

 

               ◇........................◇

 

 ■静岡でNIE講演会-17日
 県NIE推進協議会(安倍徹会長)は17日、NIE講演会を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開く。2017年度総会後の午後3時からで、関口修司・日本新聞協会NIEコーディネーターが講師。演題は「新学習指導要領とNIEの授業」。講演会だけの一般聴講も受け付ける。問い合わせは同協議会<電054(284)9152>へ。
 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=音楽-世界に私だけの楽器 キラリ高 河一球先生
 昨年末の国民的アイドルグループ「SMAP」の解散は芸能ニュースの枠を超え、一般紙の1面、社会面などでも報じられました。そのSMAPのヒット曲「世界に一つだけの花」は、個性の大切さを訴える内容でした。人は皆、親から多くの宝物を授けられ生まれてきます。髪の色や爪の形、気質や好みなど十人十色、人の声もそれぞれ生まれながらに異なります。きれいな声、きれいではない声と言いますが、私は皆、親から授かった「いい声」を持っていると考えます。
 しかし、歌おうとすると体が力んでしまい、自分の思うような声が出ないということはないでしょうか。歌う時に大切なことは、いかに息を自在に操れるかどうかです。声楽は体が楽器です。楽器である体全体に息を回すためには、余分な力を抜いて体をリラックスさせる必要があります。
 そして、無理のない深い息にそっと声を乗せるためには、その息を支える筋肉が必要となります。さまざまな筋肉に意識を注ぐだけでは筋肉が硬直してしまい、かえってしなやかに機能することができなくなってしまいます。そこで重要なことは、自分がどのような声を出したいのか、明確なイメージを持つことです。そうすれば、必要な筋肉がおのずと機能していきます。
 さらに歌の歌詞に込められた意味を理解し、その情景をイメージすることで歌の意味と世界が外へと広がっていきます。きれいな声と声量のみに意識が傾いた歌には、何の意味も感動も生まれません。無理のない息の流れと支え、歌の世界をイメージすること、これらがとても重要になります。柔らかくて温かい息に、思いが込められた自分の声を乗せることができれば、相手の耳と心に心地よく届けることができます。
 皆さんも時々、心を解放し、気持ちよく歌ってみてはいかがでしょうか。これまで隠れていた感情が、歌の歌詞やメロディーと共鳴し、心と体を浄化させていくこととなるでしょう。「世界に私だけの楽器」で、自分にしか描くことのできない歌声を、思いっきり響かせてみましょう。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(3)=東大推薦合格を狙う
 現在、難関大でも推薦入試が実施され、進学手段の一つとなっている。
 要求されているのは受験科目以上の見識であり、共通するキーワードは基礎的学力に立脚した「自ら学ぶ意欲・幅の広さと奥深さ」。
 この入試方法を選択するならば、高校入学直後の早い段階から、己の求めるテーマに対し、問題意識の醸成を図っていかなければならない。その知見獲得と深化の対応策として、長期的な新聞記事の比較検証論文が最も有効と断言できる。
 具体的措置としては、新聞記事とキュレーションメディア(情報整理系のウェブサイト)の同時活用が欠かせない。第1回東大推薦入試に合格した本校卒業生は、紙媒体の新聞を毎日チェックするのはもちろん、テーマに関するニュースサイトの確認や論文検索サービスを利用することで、テーマについての知識や理解を深めていたそうだ。
 つまり、どのように新聞を読み、利用すれば進路実現に結びつくのか。その明確な具体策をわれわれ教員は生徒に向けて発信し続けなければならない、と痛感している。
 (静岡高・実石克巳)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新聞広告を教材に活用 自由な発想で効果分析-島田商業高の取り組み

2017年05月06日(土)付 朝刊


 NIEというと、ニュース記事の活用ばかり考えてしまいがちだが、新聞広告も格好の教材だ。2016年度まで3年間、NIE実践指定校だった県立島田商業高(島田市)では、総合ビジネス科3年の課題研究授業でNIEを展開した。担当の小平和美教諭によると、生徒はその中で、新聞広告を足掛かりに新聞に親しみ、理解を深めていったという。

 商業高校という専門性に加え、進学や就職活動に向けて時事力を磨くため、小平教諭は新聞を身近にさせようと考えた。授業で大切にしたのは「生徒の自由な発想」。講義形式は避け、生徒同士の意見交換を促すような授業にした。
 最初に生徒24人に、新聞を読んで思ったことを話し合わせると、「紙面の下部分は広告。他の新聞でもそうなのかな」「このサイズで、広告代はいくらかかっているんだろう」。多くの生徒が関心を寄せたのは記事ではなく、新聞広告だった。
 同校では、1、2年時に全員がビジネス基礎やマーケティングなどの商業科目で広告効果などを学ぶことから、「自然と目がいったのだと思う」と小平教諭は話す。
 小平教諭は生徒の関心を広げるため、授業ごと課題を設けて、関連する記事や写真など何でもスクラップさせながら、広告を題材にした生徒たちの会話に入り、学びの糸口を提供するようにした。
 例えば、米大リーグのイチロー選手を起用した栄養ドリンクの広告で盛り上がっていると、なぜ広告主はイチロー選手を選んだのか、なぜカラーで大きく扱うのかを考えさせた。
 生徒たちは「商品を買う人たちは、イチロー世代だから」「新商品の宣伝には、企業が投入する金額も多い。だからカラーで大きく掲載したのではないか」と感想を言い合うレベルから、広告の背景を探るようになった。
 こうした授業を積み重ねるうち、記事に興味を持つ生徒が小平教諭の助言で記事を理解する新たな取り組みを始め、それが広がっていった。米大統領選候補者の支持率に関する記事を読んでグラフ化したり、逆に記事中のグラフを文章化したり。また記事を視覚化しようと風刺画を描いたり、俳句にしたりとニュースへの接し方が積極的で多様になった。
 小平教諭は、自由な意見交換の場が後押しし、広告をきっかけに、新聞を"読める"から"深めていける"ようになったと実感したという。「学んできた商業科の知識を基に自分の意見を形成できるようになったのは、期待以上の成果。どの授業にも代えられない学びになったのでは」と振り返る。2017年度も新聞を使った授業は続け、新3年生の成長に期待を寄せる。

 

2017050601.jpg

生徒の取り組みを振り返る小平和美教諭=島田商業高

 

2017050602.jpg

興味を持った紙面について話す生徒たち=島田商業高

 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=英語-リスニングの妙味 浜松聖星高 中村隆之先生
 文部科学省が2月に公表した次期学習指導要領の改定案に、英語教育の前倒しなどが盛り込まれました。中学校では授業を原則英語で実施するなど、「読む・書く」力とともに「聞く・話す」力を身に付けることを求める内容となっています。
 私は仕事柄ここ十数年、アメリカ西海岸に2週間ほど生徒を引率しています。10年以上前、アメリカ人の友人とお互いの趣味について話していた時のことです。彼が「あなたはアイサキは好きですか?」と尋ねてきました。「誰のことですか?」と聞いたところ、ゆっくりと「アイス・ハッキー(アイス・ホッケー)」と言い直してくれました。
 似たような話ですが、段ボールとガムテープを買いにホームセンター行った時のことです。店内は途方もなく広く見つからないのでレジに行って場所を聞いたところ、「ペカシッ」と答えが返ってきました。「すみません、もう一度」と何度も聞いたのですが、店員の答えは相変わらず「ペカシ」でした。
 後で「ペカシ」は「パック・アン(ド)・シップ」(梱包と運送)のことだと友人に教えてもらい、アルファベットが見事に音と重なりました。
 初めてアメリカを訪問した30年前には、レストランで食事を食べ残すと「ドギーバッグ」と称する「お持ち帰り用の箱」をもらったものでした。最近では犬をだしに使うのはいかがなものかということで、呼び名が変わってきました。
 それに気付いたのも友人の一言でした。「トゥガバッ」をいただけますかと、レストランの店員に聞いていました。「何だろう」「トゥガバッ?」。しばし考えた後、それが「To go box」だと分かりました。店内に「TO GO」(お持ち帰り)と書かれた看板があったからです。これもまさに文字と音が一体化した瞬間でした。
 英語の発音は国や地域によって異なり、アルファベット通りに聞こえないことがよくあります。私の場合、こうした体験が病みつきになってしまい、新たな「音」を求めて毎夏アメリカを訪問している次第です。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(2)=新聞読む楽しさ伝える
 小学生にとって、情報の宝庫である新聞を読めるようになるのは、とても大切なことです。その一方で、漢字が難しいなどの壁があるのも事実です。そんな壁を乗り越え、積極的に新聞を活用する子どもを育てるために、取り組み始める時期に、ぜひ教えてほしいことがあります。
 その一つが、新聞を読む楽しさ、大切さを教えること。情報が手軽に手に入るため新聞の必要性を感じていない子がいます。そんな子にこそ、新聞が社会的に価値ある情報を正確に伝える媒体であることを教えましょう。写真だけ見ても分かることはあるはずです。
 二つ目が、新聞特有の表記を教えること。新聞は、大事なことを落とさずできるだけ簡潔に伝えるために、「いつ」「どこで」など5W1Hを踏まえた表記をしています。また、最初に一番大切なことを書き、その後、補説をする逆三角形の文型も特徴的です。新聞記事を最後まで読み通そうと四苦八苦している子に、記事の最初を読むだけで概要が分かることを教えれば、新聞の読み方が変わるはずです。
 (浜松与進北小・山崎章成)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=児童自ら新聞積極活用 興味広がり意識変化-富士宮・上井出小

2017年04月01日(土)付 朝刊


 2016年度、NIE実践指定校の1年目を終えた富士宮市立上井出小。1~6年生92人が新たに朝学習に新聞を取り入れ、それぞれの学習進度に沿った取り組みに励んだ。児童が自ら積極的に活用に乗り出すなど、目覚ましい効果を上げている。
 

 2月上旬の同校。毎週月曜日を新聞の日とし、午前7時50分から15分間、全校一斉に取り組む。この日も各教室で児童が一斉に新聞を手にし、学習に取り掛かる。1年生は新聞アート作り。本紙の子ども向け新聞「YOMOっと静岡」に掲載のコーナーがヒントだ。はさみで新聞の写真を切り抜き、色とりどりの"切り絵アート"を完成させた。
 4年生は新聞づくり。スポーツや車、動物など興味のあるテーマごとに関連記事を切り取り、見やすい配置を考えながら新聞形式にまとめていった。6年生は家庭で新聞を読んで関心を持った記事を持ち寄り、グループごとに情報共有。エジプトでの新壁画発見のニュースからカピバラの長風呂対決まで、題材は多種多様だ。代表児童が全員の前で感想や意見を発表した。
 4年(当時)の佐野嵩太君(10)は「知らなかったことが分かるので楽しい。新聞が好きになってきた」と話した。6年(同)の斎藤菜月さん(12)は「いろいろな人の体験を知り、自分の生き方に反映させることができる」と振り返った。
 ほかにも授業で習ったカタカナや漢字を新聞から探したり、気になる記事をノートにまとめ、担任と感想のやりとりをしたり。1年を通して子どもたちが飽きないように工夫を凝らし、学年ごとの学習課程に沿った題材提供を心掛けてきた。
 そんな中、教諭たちが思いもよらぬ成果が表れた。1年(同)の渡辺健君(7)が、廊下に張り出された上級生の新聞形式の掲示を見て「僕たちもやりたい」と言い出し、児童の間に活動が広がった。
 NIE担当の望月真澄教諭は「やらなければいけないという意識ではなく、自発的に動いている」と驚く。学校が児童に聞いたアンケートでも、「語彙[ごい]が増えた」「コミュニケーション力が高まった」と高評価を集めた。
 「新聞に興味を持つ」を目標に掲げた1年。そこからさらに慣れる、活用する-につなげていってもらおうという狙いで始めた当初は手探りの状態だった。だが児童からの反響が思ったよりも大きく、新聞の日がない時には「今週はやらないの?」という声も。望月教諭は「特別なことはしていないが、児童は新聞に新鮮さを感じたようだ。確実に意識の変化につながっている」と手応えを語る。
 佐藤正和校長は「新聞を活用した学習が教師と子どもたちのキャッチボールになっている。学校での学びと社会で起きている出来事とのつながりができ、教育へのプラスアルファの波及効果もある」と話した。

 

20170401_01.jpg

興味を持った記事を持ち寄り、グループ内で発表する6年生=富士宮市立上井出小

 

20170401_02.jpg

テーマごとに記事をまとめ、新聞のつくりを学ぶ4年生=富士宮市立上井出小

 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=英語-国際理解の原動力 静岡英和女学院中・高 滝本真琴先生
 イスラム圏7カ国からの入国禁止を指示した米大統領令をはじめ、移民に関するニュースが紙面をにぎわせています。学生時代に1年ほどイギリスでパキスタン人の家庭にホームステイしたことがあります。その家庭には私と年齢の近い娘さんがいて、すぐに仲良くなりました。
 しかしある日突然、彼女が私に家出の計画を打ち明けたのです。敬虔[けいけん]なイスラム教徒の両親が娘の将来にレールを敷いていたことが理由でした。本当は心理学に関心があり、大学進学を望んでいましたが、両親は女性にそのような教養は不要であると、美容の学校に行かせていました。
 当時の私はなんとか思いとどまるよう伝えたかったのですが、今思うと、何の束縛もなく自由に外国で過ごす日本人の私の言うことには説得力などなかったでしょう。結局何の力にもなれず、私が帰国する直前に彼女は家を出てしまいました。
 現在、日本ではさまざまな留学プログラムが推奨され、中学生、高校生のうちから海外で学ぶことも珍しくありません。
 例えば、私の勤務校の姉妹校があるカナダはまさに移民の国で、学校、寮、ホームステイ先のどこに行っても他国の文化を体験することができます。ステイ先の家庭がシリアからの移民を受け入れており、彼らが抱える問題や文化の違いを身をもって体験した生徒もいます。
 こうした経験は単に言語を学ぶだけでなく、その国の歴史や文化、宗教などの背景に関心を寄せ、同時に自分の環境や日本という国を外から眺めることにつながります。「外国語を話せるようになりたい」。この気持ちはとても大切で大きな原動力となります。
 今そのような考えがある中高生の皆さん、ぜひ一歩を踏み出してみてください。国や地方公共団体の留学プログラムや、各学校が主催する国際理解のための行事もあります。また日ごろから海外のさまざまなニュースに目を向けてみましょう。何か新しい未来へのヒントが得られるかもしれませんね。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

               ◇........................◇

 

 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(1)=毎週「朝新聞」で文章題(矢沢和宏/焼津大井川中)
「やさしいNIE」を知っていますか。「誰でもどこでも可能」で、「生徒にも教師にも楽しく長続きする」といった新聞活用が「やさしいNIE」です。
 私が勤務する中学校では、「読解力や文章力(表現力)を向上させる」「社会・地域・他校への関心を高める」「魅力的な生き方を学ぶ」という狙いで、さまざまな「やさしいNIE」の実践を工夫しています。
 その一つに、全校で定期的に取り組む「朝新聞」と名付けた実践があります。生徒に読ませたい新聞記事を選び、その切り抜きを基に字数を制限した文章記述式の問題を作成します。毎週金曜日、生徒は朝読書の時間に記事を読んでこの問題に取り組みます。そして、解答例と解説を使って確認し、自己評価します。
 「朝新聞」の問題作成は教師だけでなく、生徒自身も行います。問題作成に取り組むことで、読解が深まり、表現力の育成にも結びついています。
 「やさしいNIE」の実践はほかにもたくさんあります。順次、紹介していきます。
 (焼津大井川中・矢沢和宏)
    ◇
 県内のNIEアドバイザーがNIE実践のこつを交代で執筆します。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=4校が活動事例、成果報告

2017年03月04日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2016年度NIE実践報告会を静岡市駿河区で開いた。14年度から3年間、実践指定校として新聞を活用した教育を推し進めてきた小学校と中学校、高校の計4校の担当教諭が活動事例や成果を報告した。発表内容の概要を紹介する。

 ■放送で「記事クイズ」-富士田子浦小・矢部紗也佳教諭
 全校児童の約3分の1は家庭で新聞を取っていないが、新聞を使った学習は多くの児童が楽しいと回答した。子どもの発達段階に応じて新聞を活用すれば、魅力的な教材になり得ると考え、学習意欲を高め、読解力や表現力を身に付けようと実践に取り組んだ。
 校内に「NIEコーナー」を設置し、保護者ボランティアが、子どもたちに興味を持ってもらいたい新聞記事をスクラップして掲示した。
 実際に起こった事件や米大統領選などを題材にして授業に取り入れ、2~6年生は朝の会で気になった新聞記事を発表するなどした。アナウンス委員会は記事のクイズを作り校内放送で出題した。
 新聞が少しずつ身近なものとなり、表現力が高まった。難しい言葉は辞書を活用するなど、読解力や言葉への関心も高まってきた。

 
2017022401.jpg

 

 ■歴史と「今」結ぶ道具-南伊豆中・一森康佑教諭
 生徒にとって新聞を身近なものに―。そんなテーマの下、手に取りやすい場所に新聞を置き、授業や学校生活の日常で取り入れた。
 閲覧スペースでは、その日の新聞を一列に並べ「一面記事」「同じニュース」「割り付け」「子どもを扱った記事」に注目した。読み比べ、伝えたい内容や読みやすさの工夫に差があることを意識すると、社会的事象を多面的に見るきっかけになった。ホワイトボードに教員のおすすめ記事とコメントを添えると、生徒の感想や意見も出るようになった。
 3年生の歴史の授業「第2次世界大戦と日本」では「昭和天皇実録」の内容が公開された記事を紹介するなどした。特に社会科の授業では新聞は「教科書に書いてあること」と「現実の世界で起きていること」をつなぐツールとして活用できるとわかった。
 

2017022402.jpg

 

 ■英語の授業とも連動-駿河総合高・深沢邦洋教諭
 信頼性の高い情報源である新聞を、SNSなどのように親密性の高いものにしていきたい―。このような目標を立て、授業や総合学習、部活動「報道部」の活動で取り組んだ。
 総合学習では静岡新聞夕刊のコラム「窓辺」を読み通し、執筆者本人に講演をしてもらった。現代社会の授業では、18歳選挙権の同じ記事を教材に使用。英語の授業では、静岡大学が関わる「宇宙エレベーター」を取り上げた記事を活用し、予備知識を付けた上で英文を読むと、読みやすく理解を深めることができた。報道部では、学校紹介の壁新聞を作成した。部員が見出しを付けて紹介したい記事を掲載し、昼の校内放送で新聞記事ダイジェストの放送なども行って活動の幅を広げた。
 派手さはないが、3年間でNIEの裾野が広がった。持続して発展させていきたい。

 
2017022403.jpg

 

 ■広告への理解も深化-島田商業高・小平和美教諭
 試行錯誤しながら3年間取り組むと、生徒が自発的にニュースについて考えるようになり成長が見られた。
 「広告と販売促進」という授業で企業が莫大[ばくだい]なお金を広告に投入していると学んだため、新聞広告に注目した。企業側がどう広告費を投入しているかを考えた。生徒が興味関心のある記事について、スクラップしたり語り合ったりすると、スポーツ面や広告、テレビで見た話題を選ぶなど、生徒の好みが分かれた。
 記事からグラフを作り、グラフ化したものを文章で表現した。容易ではなかったが、生徒主体の積極的な授業が展開できた。記事を一文でまとめてみたり、同じ記事でもどんな違いがあるか読み比べもしたりした。
 生徒が自発的に考えるようになることが、NIEの大きな魅力だと感じた。

 

2017022404.jpg

 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=聖書-人間とは何か 聖隷クリストファー中・高 大野和男先生
 「自分は何者か」、人は生きる意味・存在する意味を考え、求める生物です。全ての生物の中で、人だけがそのことを問題にして生きています。
 昨年7月26日、相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が殺害され、26人が重軽傷を負った事件は、新聞紙面でも大きく取り上げられました。この事件で逮捕、起訴された被告は、「障がい者は不幸だ」「生きる意味がない」と主張しました。
 ただ、そのような考えは第2次世界大戦中のナチス・ドイツの優生思想をはじめ、いつの時代も私たちの中にあります。人は自分の生きる意味を求める一方、いじめのように他者の存在を否定し自分と他者を比較せずにはいられないのです。
 旧約聖書イザヤ書に「わたしの目にはあなたは値高く、貴い」という言葉があります。人は偶然の積み重なりの中でたまたま生じてきた存在ではなく、一人一人価値ある貴いものとして、明確な意思により存在していることを聖書は伝えます。
 この思想は聖書にとどまらず、トーマス・ジェファーソンらの記したアメリカ独立宣言にも、また日本国憲法の中にもみられるものです。人が一人一人意味ある存在として創造された、ということは自分という存在の支えであり、また他の人の存在意味を人が決めることはゆるされない、という人としての責任を持つことを意味します。
 責任は英語でresponsibilityですが、response(応答)とability(能力)という言葉からなっています。つまり責任は「応える能力」なのです。
 人としての責任とは何でしょう。人は何に応える能力を持つべきなのでしょうか。聖書は、人は神の愛に応える存在だと伝えます。愛に愛で応える存在ともいえるでしょう。これもまた現代社会に既に広く行き渡った思想かもしれません。
 さまざまな価値観があふれるかに見える現代だからこそ、一見当然に思えても、実は大切なことがあります。その大切さの根拠はどこにあるのか考えてみてはどうでしょうか。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=社会の情勢 記事で学ぶ 生徒に意見表明の力-静岡聖光学院高

2017年02月04日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校、静岡市駿河区の静岡聖光学院高は、生徒たちにより深く社会への理解を促すため、学習内容と関連が深い新聞記事を活用した授業に取り組んでいる。このほど行われた政治経済の授業では、1年生が国の来年度予算について書かれた記事を参考に主体的に学習するアクティブ・ラーニングを実践した。

 「歳入が歳出を上回るにはどうしたらいいんだろう」「何の費用を減らそうか」
 財政の仕組みや働きについて学んでいる生徒らは3~4人一組になり「自分が政治家になったとしたら、来年度の予算編成をどうするか」というテーマで話し合った。
 授業はグループに分かれ、最後に発表する形式。事前に配布された国の予算編成や税制改正に関する新聞記事を活用して現状や問題点を整理したり、タブレット端末を用いて主張を補強するデータなどを探したりしながら、グループごと意見をまとめ上げた。
 「歳入を増やして赤字国債を返済するには、社会保障費を抑えて、富裕層の所得税や消費税を上げるべきではないか」。あるグループの代表者が意見を述べると「それでは、高所得者は海外へ逃げてしまうのではないか」「高所得者の所得税や、法人税は下げた方がいいと考える」などとそれぞれの主張がぶつかり、活発な議論が繰り広げられた。
 授業に出席した風間悠平さん(16)は「新聞などを活用して、みんなで意見を交換し合うのは面白かった」と満足そうに語った。尾藤悠貴さん(16)は「日本の現状を知ることができた。普段の授業で習う知識にプラスアルファで学べるものがあったと思う」と話した。
 授業を担当した伊藤大介教諭(42)は、同校がNIE実践指定校として2016年に認定を受ける前から新聞を政経の授業で活用してきた。理由は「事実として、社会で何が起こっているかを知ってほしいから」。新聞を購読しない家庭が増える中、「ネットで何でもすぐに分かる時代だが、一方で情報をえり好みしてしまう側面がある。一覧でき、さまざまな情報が載る新聞は今の時代こそ貴重なのではないか」と考える。
 以前は、授業の前振りとして「こんなニュースあったよね」と生徒に発信する形で新聞情報を取り入れていたというが、記事を教材として扱い始めてから生徒の社会への理解が深まり、「受け売りではなく、彼らなりの意見を表明する力は、小さいながらもついてきている」と手応えを感じている。
 実際、「時事問題について"新聞で読んだ"と話す生徒がいたり、普段新聞を読まないような生徒が校内で新聞を手に取る姿を見かけたりした。影響があると感じる場面はある」とNIEによる生徒の変化を実感する。
 記事を通し、事実や人の主張を理解することで自分なりの意見を形成できるようになることが理想だといい、「18歳選挙権も導入された。在学中に社会的な目を養って、自分で政治や経済について判断できるよう視野を広げてほしい。考えさせる授業を続けていきたい」と力を込めた。

 

20170204_01.jpg

新聞やタブレット端末を活用して意見交換する生徒と伊藤大介教諭(奥)=静岡市駿河区の静岡聖光学院高

 

20170204_02.jpg

グループの主張を発表する生徒=14日午前、静岡市駿河区の静岡聖光学院高

 

               ◇........................◇

 

 ■紙面授業=日本史-城下町沼津を歩く 加藤学園高・森聡太郎先生
 大河ドラマ「おんな城主 直虎」の放送が始まりました。舞台である浜松市を中心に観光客も増加傾向にあるようです。放送開始前から、大河ドラマ館やマスコットキャラクター「直虎ちゃん」の話題が新聞紙面をにぎわしていました。
 直虎で沸く浜松市は、浜松城の城下町として発展した町です。江戸時代、天領(幕府直轄領)が多かった静岡県内でも、掛川や静岡(府中)などが城下町として思い当たりますが、実は沼津もれっきとした沼津藩水野家5万石の城下町でした。水野家は於大の方(徳川家康生母)の実家であり、何人もの老中を輩出した名門譜代なのです。
 実際にかつての沼津領内を歩いてみましょう。そこには江戸時代の城下町沼津のわずかな痕跡を認めることができます。
 まず中央公園、ここが沼津城本丸の跡地であり「沼津城本丸址」という石碑もあります。中央公園のすぐ南西に狩野川が流れ、狩野川を外堀に見立てて築城されたことが分かります。大手町に鎮座する城岡神社は城の守護神として奉られた稲荷神社です。城は破却されてしまいましたが、神社を取り除くことはできなかったようです。
 大手町という地名も城址に由来します。大手門は城の正門に当たり、現在の大手町交差点より少し南に沼津城大手門が存在しました。
 藩政時代の遺構が残る場所もあります。沼津の中心街より国道1号線を東へ進んでみましょう。東下石田の交差点を右折、県道145号(旧東海道)を清水町方面に向かうと左手に榜示杭[ほうじぐい]という石柱があり、「従是西[これよりにし]沼津領」と刻まれています。ここは沼津藩領の東端、境界線を表すいわばカントリーサインです。西端の榜示杭は沼津市西間門の八幡神社境内に残っています。
 他にもかつての寺社地(末広町・浅間町周辺)に今も寺社が集中する様子や、旧沼津宿に残る本陣跡(本町・下本町)など、よく見てみると城下町を感じることができます。
 「人に歴史あり」といわれますが、「わが町にも歴史あり」です。少し目線を落とし、足元を見直してみるのも意義あることではないでしょうか。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事要点 的確に紹介 説得力ある意見 主張も-東海大静岡翔洋小で公開授業

2016年12月03日(土)付 朝刊


 NIE実践指定校の東海大静岡翔洋小(静岡市清水区)でこのほど、新聞を題材にした公開授業が行われた。5年生が「ハッピーニュース」を発表したり、関心の高い話題をテーマに討論を行ったりした。

 児童16人が記事を活用した国語科の授業に臨んだ。前半の「ハッピーニュース」の発表では、犬の訓練インストラクターの紹介記事など、児童6人が新聞を読んで幸せな気持ちなった記事を示しながらニュースの要点と選んだ理由などを説明。クラスメートも友だちがどんな記事を選んだのか興味津々の様子だった。
 児童の選んだニュースの多くは動物の話題が占めた。そこで担任の松本傑教諭(42)は、子どもの関心の高い動物を切り口に「動物園の生き物は、野生に返すべきだろうか」と問題を提起。授業後半のディベート(討論)が始まった。
 「野生に返すべきではない」の反対グループは、動物園での平和で安全な暮らしなどの利点を主張。一方、「返すべき」の賛成派は、誰にも縛られない自由の大切さを訴えた。「どんなに安全でも親と離れて動物園で暮らすのは嫌」と、立場を自分に置き換えて反論する場面もあった。
 審判団のジャッジは野生に返すべきの「○」が3、返すべきでないの「×」は2と僅差だった。「×」の札を上げた審判役の横塚芯和君(11)は「野良猫が死んでしまう確率が高いというデータがあると知ってなるほどと思った」と理由を説明。一方、最後に「○」を上げた岩井美姫さん(11)は「『もしも自分が動物だったら、一生おりの中は嫌』という賛成グループの主張に説得力があった」と判断の根拠を示した。
 今回の授業の狙いは、人前で新聞記事の要点を的確に紹介すること、討論会で説得力のある意見を主張する力を付けることだった。
 松本教諭は今の5年生が、2年生の時も担任だった。「高学年になり発表の回数が明らかに減ったと感じていた。だが、討論を重ねるごとに、人前でも自分の意見をしっかりと発言する習慣が身についてきている」と手応えを語る。
 小寺建仁校長は、新聞を取り入れた授業を続けていることについて「日々の学習に対する関心を膨らませ、仲間と話し合いをするきっかけになる」と指摘。「児童の社会への関心を高め、自主的に学習に取り組む姿勢を育んでいくことができれば」と語った。

 

2016112301.jpg

自分で選んだハッピーニュースとその理由を発表する児童=静岡市清水区の東海大静岡翔洋小

 

2016112302.jpg

「○」「×」の札を上げてディベートのジャッジを行う児童ら

 

               ◇........................◇

 

 □NIE・Q&A
 ■新聞紙面で発信したい
 子どもたちが取り組んだ内容を、新聞紙面で発表する機会などはありますか?
 (静岡・小学校教諭)

 

 ■取材依頼や投稿欄に応募
 【答】子どもたちの取り組みが広く知られて価値付けられれば、子どもの自信や自己肯定感につながりますね。このようなとき、新聞は大いに役立つ発信手段となります。子どもたちの取り組みを新聞紙面で発信する方法にはさまざまありますが、ここでは、三つの方法をお勧めします。
 まずは、学校から新聞社(記者)に直接働きかける方法です。この方法には二つあります。一つは、学校に近い新聞社や支局に子どもたちの取り組みを知らせて「取材を依頼」し、紙面に掲載してもらう方法です。市町で学校の取り組みを集約して記者クラブなどに紹介している場合もありますので、それも利用します。もう一つは、子ども新聞などの「記事募集」に応募する方法です。この場合、写真も含めて学校で記事の形式にして送ることが多いようです。
 次に、読者の「投稿欄」を利用する方法です。子ども自身が取り組みの様子や成果を400字程度にまとめて新聞社に投稿します。全員が掲載されるわけではありませんが、10代の投稿コーナーもあり、掲載されると地域からの反響も多く、子どもの喜びも大きいと思います。
 最後に、コンクールなどに積極的に応募して作品や取り組みを掲載してもらう方法です。例えば、「学校新聞」や「新聞切り抜き」「ハッピーニュース」「新聞感想文」「いっしょに読もう・新聞コンクール」など、数多くあります。
 もちろん、NIE以外にも多くの応募機会がありますが、自分の名前が掲載されるだけでも誇りに感じることができるのが「新聞の効果」です。
 (焼津市立大井川中・矢沢和宏=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=学校図書館 積極活用を 新聞と向き合う「学びの基地」-担当教諭ら 三島で研修会

2016年11月05日(土)付 朝刊


 新聞を教育に生かす「NIE」について学校図書館の担当教諭や司書が学ぶ研修会がこのほど、三島市立北上中で開かれた。講師を務めたのは焼津市立大井川中校長の矢沢和宏さん。日本新聞協会NIEアドバイザーでもある矢沢さんは多様な情報が集まる学校図書館を"学びの基地"と呼び、「NIEに最適」と積極活用を呼び掛けた。

 

 研修には、三島市内の小中学校21校の関係者約50人が参加した。矢沢さんはまず、学校図書館の空間を「新聞とじっくり向き合える場」「主体的で対話的になることが可能な場」と評価し、学校図書館の利用方法として、例えば新聞記事の感想を個々に答えさせる取り組みを提案。「感想には不正解がなく、どれも正しい。子どもたちが自己肯定感を持つ一層の後押しになる」と強調した。
 参加者はNIEを実践するには自ら新聞に親しもうと、新聞の基礎を学んだ。結論から書く記事の逆三角形の構成、記事によって見出しの大きさが異なる点など。見出しでしりとりをするゲームは夢中になって楽しんだ。
 見出しについて、記事内容を凝縮し、かつ読み手の関心をつかむ役割から「新聞の命」と断言する矢沢さん。「新聞は、見出しと、冒頭部分を指すリードを読めば内容がほぼ分かるといわれる。記事を全て読み込めば文庫本1冊から1冊半ほどの分量になる」という明快な指摘に、教諭らは「なるほど」とうなずいた。
 矢沢さんはこうした見出しの特性を踏まえ、「子どもたちには新聞を『読む』でなく『見る』と教えることも、親しみを持つきっかけになるのでは」とアドバイスした。
 一方で、限られた文字数で記事を表現する見出しは、人によって受け止め方が分かれることがあるのも事実。「読み比べができるよう複数紙を講読するなどの工夫も必要」と紹介した。
 最後に、新聞には「人」を紹介する記事が多くある点に触れ、「伝記を読ませるより端的でいい。子どもたちに、いろいろな生き方に出合わせることができる」とし、道徳や総合の授業での活用を挙げた。
 受講した北上中の和智俊明校長は「各学校の実態に合った形で図書館を通してNIEを広めたい」と意欲を語った。

 

IP161020TAN000026000_00.jpg

新聞を教育に生かす方策を考えた研修会=10月中旬、三島市立北上中

 

IP161020TAN000027000_00.jpg

講師を務めた焼津市立大井川中の矢沢和宏校長

Q&A(月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載から)
=少人数のゼミスタイル

2016年10月01日(土)付 朝刊


 本校には教師を囲んだ少人数のゼミナール活動があります。新聞記事を使うゼミは、広い意味でNIE実践の一つと考えていいのでしょうか。
 (静岡・中学校教諭)


 

 ■最も効果的な実践方法
 【答】いやいや、少人数で新聞記事を使ったゼミといえば、これはNIEの本道でしょう。人数が少ないと生徒同士の横の関係・教員との縦距離・濃密なゼミ時間というNIEの四次元空間を構築でき、最も効果が望めるスタイルですね。私が前々より提唱している、バズ学習(Buzzはざわめきの意味)としても理想的です。
 お勧めのやり方は、まず、これは進路実現に結びつける授業であると目的を明確にする。生徒が自分でテーマを決めるが、あらかじめ、途中変更可と伝達。利用した記事は各自でスクラップし、推薦入試などの際、いかに長期的スパンで考察してきているかをアピールする。さらに、データベースとして利用可能なように、系統ごとに付箋で色分けしておくと見栄がえする。時間を常に意識して話し合いさせる。教員が、さりげなく会話をリードする。これが一番難しいですね。話をしながら聞きながら、メモを取る訓練を課す。記事は明るい、将来に希望を持てる内容のものを選ぶ。授業の度に、教員も生徒も落ち込んでいたらシャレになりません。
 最終的に生徒の到達目標を次のように設定しましょう。新聞に書かれた事実を基にし、なぜそのような状況・状態に至ったのか、理由・原因を考える。根拠を明確にして、字数配置なども考慮しながら文章化する。関連する図表資料を作成し、提示しながらプレゼンテーションとして発表する。
 難しいかもしれませんが、ゼミ形式ならば大丈夫、できるはずです。頑張ってくださいね。
 (静岡高・実石克巳=NIEアドバイザー)

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=教室にいつも新聞 発表や記事掲示 社会を知る好機-浜松与進北小の取り組み

2016年10月01日(土)付 朝刊


 新聞を教育活動で活用するNIE。関心はあっても、実際にどのように取り組めばいいのか悩む学校現場も少なくない。ハードルを上げすぎずに取り組むポイントやその効果を、NIEアドバイザーの山崎章成浜松市立与進北小教諭に寄稿してもらった。

 「6年1組の新聞係ですが、今日の新聞を取りに来ました」。
 本校の朝は、こんな言葉でスタートします。5、6年の新聞係は、職員室から全国紙3紙、ブロック紙、県紙を自分の教室に運びます。
 登校してきた高学年の子供たちは、その日の新聞を自由に読むことができます。大きな出来事があった翌朝は、各社の新聞を広げ、記事を読みながら話し合う姿をよく見かけます。
 子供たちが自由に新聞を読むことができるのは、登校してから朝の会が始まるまでの時間、朝読書の時間、休み時間、昼休み、放課後と、下校するまでさまざまな時間帯があります。
 教育活動の中での活用方法としては、授業での活用をはじめ、朝読書の時間、朝の会での紙面から見つけたニュースの発表、注目してほしい記事の掲示、ワークシートの活用等が日常的に行われています。
 授業では、新聞記事そのものを活用するだけでなく、伝えたいことを分かりやすく簡潔に表現する方法や写真の撮り方など新聞の機能や作り方は大いに参考になります。
 朝読書の時間では、本を読む子に混じって新聞を読む子もいます。短時間でも気になるニュースを二、三読むには十分で、紙面をめくる音が教室のあちこちで聞かれます。
 朝の会のニュースを発表する活動は、学校の学びを家庭や社会と結び付けることができます。「ニュースの発表をきっかけに親子の会話が増えた」「家でも新聞やテレビのニュースを意識するようになった」など、うれしい声を保護者から聞くこともあります。紙面から記事を選び短時間で発表する活動を通し、価値ある情報を選択し聞き手を意識した発信力を鍛えることもできます。質疑応答を行うことで、読み取りを深め合うこともできます。
 記事を掲示するコーナーを常設すると、興味を持った子が集まるようになりました。教師が意図的に考えてほしい記事を掲示すると「先生はどうしてこの記事を貼ったのかな」と疑問を持って読んだり、互いの思いを話し合ったりするようになりました。大事件が起きた時は各紙を並べて貼ると、子供たちは事件の大きさを改めて感じ取るとともに、多様な捉え方があることに気付くことができるようになりました。
 新聞記事のワークシートは、学校でも家庭でも行うことができます。子供が関心を持ちそうな一つの記事の問題を解く形式になっているため、新聞の読み方を学ぶ教材にもなります。また、教科書を繰り返し学ぶ学習とは違い、初めて読む文章から必要な情報を得る活動は普段の学習とは違った学力を身に付ける貴重な機会にもなります。
 本校では、図書室、職員室などにも新聞を常備し、タイムリーで多様な学びの日常化を図っています。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=組織的な取り組み訴え 小学校で効果表す数値-大分でNIE全国大会

2016年09月03日(土)付 朝刊


□本県参加教諭の一言


■佐藤正和校長(富士宮上井出小)
 「新聞は発想の源。小説を書くときのきっかけや素材」「新聞は世界への最大のアクセスポイント」「NIEは学校での学びと実社会をつなぐ窓」「新聞には未知との出合いがある」「NIEを通して友達と意見を交わすことが楽しくなった」「新聞は自分と社会とをつなぐ扉」などの言葉に触れ、NIEの大いなる魅力と可能性を再認識した。今後も「わくわく、どきどき」と新聞を読み語り合う子どもの姿を目指し、NIEを推進していきたい。

■望月真澄教諭(富士宮上井出小)
 今大会に参加し、数々の姿や言葉が胸に残った。幼少期に目にした祖父母の新聞を読む風景が作品に投影されているという作家小野正嗣さんの講演。公開授業での新聞を使い生き生きとフリートークをする子どもたちの姿。「未来のための種まきになるNIE活動」という教師の言葉。過去に作った新聞スクラップを今開くと「過去の自分が分かる」と話す中学生。NIEの意義と本校における実践の方向性を再確認する貴重な時間となった。

■兼子万紀郎教諭(森小)
 今大会のテーマは「楽しくなければNIEじゃない!」であったが、会場の掲示物や実践報告からも、生き生きと取り組んだ事が伝わった。何より、高学年が黙々と食い入るように新聞を読む姿は印象深かった。また、大会で聞いた「NIEに失敗はない!」という言葉はとても励みになった。児童が新聞を身近に感じる環境づくりのヒントや、学年に応じたNIEの実践例も多く、刺激を受けた2日間となった。

■村松聡一郎教諭(浜松可美中)
 今後の活動の方向性を模索するために今大会に参加したが、「NIEの活動には達成すべき目標はない」という示唆があった。そこで、大会で披露された優れた実践を参考に、今できる活動をし、生徒の成長につなげたいという思いを強くすることができた。また、本校区の小中学校でNIEのつながりをつくり、NIEの教育効果を共通理解した上で実践していければと考えている。

■米山沙希教諭(裾野富岡中)
 「楽しくなければNIEじゃない!」。大分大会でよく聞いた言葉だ。公開授業を参観させていただき、理解できた。生徒が楽しそうに授業に取り組んでいた。保健体育では、新聞のスポーツ関連記事を活用して健康とのつながりについて考えていた。大分県民の運動状況を取り上げたその記事は、生徒の興味関心を大きく引き、活発な話し合いが展開されていた。新聞を効果的に活用することによって、生徒が自発的に考えたくなるような授業ができることが分かり、実践したいと思った。

■伊藤大介教諭(静岡聖光学院中・高)
 初めて参加した全国大会は、有意義な2日間となった。まず初日の講演で小野正嗣立教大教授の「新聞は文学に比べて文体は没個性だが、社会の現実をあぶり出しすべてを包摂するもの」という言葉にしびれた。そして2日目の、大分舞鶴高2年の公開授業では地元大分の未来への熱い思いが伝わり、舞鶴小6年の平和を考える授業でも活発な発表が目を引いた。新聞記事の「事実」から想像力を広げるNIEの魅力を私自身もぜひ伝えていきたい。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=全国大会静岡大会から3年 パネリスト その後

2016年08月06日(土)付 朝刊


 2013年のNIE全国大会静岡大会からこの7月で3年がたった。「NIEのすそ野を広げるために」をテーマに行った討論でパネリストを務めた松岡賢史朗さん(当時静岡西奈小6年)、小関萌可さん(同静岡高松中3年)、山内花緒さん(同清水東高2年)、稲村明教諭(町立清水小)、高塚陽子教諭(浜松積志中)、尾崎行雄さん(元静岡市PTA連絡協議会長=同市葵区)にその後の新聞との関わりについて寄稿してもらった。

 ■意見発信の方法学べた-松岡賢史朗 付属静岡中3年
 僕はこの3年間で新聞から少しだけ遠のいてしまいました。スクラップは続けていますが、頻度は落ちました。バスで通うのに時間がない、部活で忙しいというのが主な理由です。しかし、それでも新聞の国際欄、社会欄、日曜日は書評欄を読んで情報を集めています。
 パネリストとしての経験は、生徒会活動を重視する僕の学校の校風において、自分の意見を言うことに大いに役立っています。その意見の中にも、国会や世界情勢での出来事を照らし合わせたりしています。最近は総会がありませんが、もしあったなら英国のEU離脱や参院選と照らし合わせていたと思います。
 その中で大きいのは、大会に来て僕に手紙を出してくれた方がいたことだと思います。その方と文通しているうちに、自分の意見をよりはっきりと持てた気がします。そして、新聞の読み方、新聞からの意見の発信の仕方を学べたと感じます。その方に感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。

 ■記事を題材にスピーチ-小関萌可 静岡高3年
 NIE全国大会から3年が経ち、私は高校3年生になりました。大学受験を約半年後に控え、毎日勉強に励んでいます。
 高校に入学してからも、私はなるべく毎日、新聞を読むように心がけています。あまり時間は取れませんが多くの記事を読むようにしています。また、高校3年生になってから、倫理の授業の始めに、生徒が新聞記事を題材にスピーチをして、それを聞いている人は感想や意見を書き、時事問題について考える、という活動が行われています。今年の4月から行われている活動ですが、熊本県の地震や参院選、英EU離脱などさまざまなニュースがスピーチの題材とされました。
 学生は勉強や部活に忙しく、ゆっくり新聞を読む機会があまり多くはないと思います。だから、このように授業を通して新聞に触れ合えるというのは良いことだと感じています。このような活動がさまざまな所で広がると、より多くの学生が新聞に親しみを持てるのではないでしょうか。

 ■新聞読む機会 大学で増-山内花緒 金沢大2年
 NIE全国大会静岡大会のパネル討論に出場して3年。当時は清水東高で新聞部の部長をしていたが、その後部活を引退し、卒業後は金沢大学に進学した。今は考古学を専攻しており、講義や実習などを楽しんでいる。
 新聞部を引退してからは新聞を作ることはなくなった。大学にも校内新聞があるが、主観的な意見を述べることを主旨としていて肌に合わず、入部しなかった。一方で新聞を読む機会については、高校時代よりも増加した。大学の図書館では、喫茶スペースに幾つかの新聞が置かれていて、自由に読むことができる。私に限らず、この場所で新聞を読む学生は多い。また、講義で新聞記事が教材として用いられることも少なくない。概して、大学生になってから新聞を読むことが増えた、という人が多い。
 NIEを通じてより早く新聞に親しんでもらうのが一番だが少なくとも大学生のうちに新聞を読む習慣がつくよう、さらに工夫していくことが大事だと思う。

 ■最新性に富む学習資料-稲村明 町立清水小教諭
 当時、静岡大会でお世話になった皆さま方には研修の機会をいただき感謝申し上げます。
 あの場でパネリストとして発言させていただいた、新聞記事も学習資料の一つ、という思いに今も変わりありません。特に社会科では教科書や市販の資料集よりも地方性、最新性に富んだ新聞の活用は不可欠です。使いやすいのはアットエスのワークシートです。発達段階に応じてルビもふられ、設問も付いて一人学習としても活用しやすいのですが...。
 昨年度、4年の社会科で河津桜の授業をすることになった時のこと。河津桜で町を活性化しようと努力や工夫をしている河津の方々の思いを伝える記事を探そうとアットエスを検索したのですが残念ながら適応資料なし。
 結局、河津桜を扱った県内ニュースやちびまる子ちゃんなどの映像を資料にしました。
 アットエスのワークシートの更新に期待を寄せながらも、私自身が資料となる新聞記事に日々敏感であらねばと思う今日この頃です。

 ■気軽に楽しくプチ実践-高塚陽子 浜松積志中教諭
 「『火星の衛星、天体衝突で誕生』この記事読んだ?」帰りの会でクラスの生徒たち(中3)に語りかけたのは、国語の授業で、小久保英一郎さんの書いた「月の起源を探る」を学習して間もない頃である。子どもたちは口々に自分の思ったことを言い始めた。
 私が、NIE全国大会静岡大会にパネリストとして参加させていただいてから、早3年が過ぎた。当時の私は、「生きた教材」である新聞の素晴らしさを実感しているものの、タイミングがつかめず、実践することは難しいと感じていた。
 3年たった今も実践発表をしてくださった先生方のような立派な実践はないが、日頃からいろいろな場で、臆することなく気軽に新聞を活用するようになった。実践してみると、思っている以上に活用の場が多いことを知った。また、そうしたプチ実践や新聞活用を楽しく感じている自分がいることも知った。この意識の変化こそ、自分にとっては大きな進歩であると感じている。

 ■家庭での有用意識向上-尾崎行雄 静岡市葵区
 NIE静岡大会の折に新聞活用についてさまざまな角度から学ばせていただいたことは、その後の新聞への関心をさらに高めてくれている。子どもにも読ませたい記事はコピーして、いつでも読めるようにして勧めている。
 進学した娘に尋ねると、大学でも授業に関連する記事を紹介するときに先生が新聞を使ったり、本人がレポート課題作成で利用したりしているようだ。息子の高校のPTA講演会でも塾の講師が、言語感覚を磨き表現力を身につけるために新聞コラム・社説の活用を勧めていた。新聞を読むことでコンテンツ(素養・背景知識)を豊かにし、語彙[ごい]を増やすことができ、その読書量と記述力は比例するということだ。ぜひ新聞活用で記述力もつけてほしい。
 また新聞は生き方をも学ばせてくれる身近な資料、そしてコミュニケーションツールとして小中学校での活発な利用と、家庭での有用意識を高めていくことが必要と感じる。

 最近は高校生新聞の記載面が気に入っている。今後も新聞の質を高め、NIEのさらなる推進を願っている。

 

IP160831ZZA152006000_00.jpg

NIE全国大会静岡大会では、パネリストが教育現場で新聞を活用する課題や方策を議論した=2013年7月、静岡市内