一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

県内教諭の実践
=身近に接する環境大切

2013年02月24日(日)付 朝刊


 前任の大里西小で全校でNIEに取り組むことを通し、子どもたちが日常的に新聞を目にする環境をつくること、無理せず「必要だ」「有効だ」と思ったところで新聞を取り入れることが、実践の継続、日常化のために大切であると感じました。
 本校では、子ども向け新聞を、全校児童が通る場所に置き、いつでも読めるようにしています。毎朝届く新聞をセットする図書委員が読んだり、通りかかった子が立ち止まって読んだりしています。自然に目に入り、さっと手にとれる環境が、新聞を身近なものにするためには有効であると改めて感じています。
 5月に金環日食を学校で見ました。全員で共有した出来事が新聞に載るめったにない機会です。記事を切り抜いてきて、みんなで読みました。写真を見て思ったことを出し合い、本文は私が解説しました。実際に見た時には分からなかったことが写真から分かったり、自分が知らなかったことが本文から分かったりと、新聞から情報を得る体験をし、新聞への興味が高まるきっかけになりました。その後も、金星の太陽面通過、スカイツリー開業、オリンピックなど、視覚的にインパクトのある出来事がありました。そういう写真の効果が大きい話題については、記事を切り抜いてきてみんなで読みました。長期休業には、保護者の方にも協力していただき、心に残った記事を選び感想を書く課題を出しました。
 今担任している4年生では、一般紙の記事の本文を読んで理解するのはまだ大変です。でも、内容を選べば、写真や見出しからさまざまな情報が得られます。そのようにして新聞に触れ、よさを味わうことで、新聞が、そして社会の話題が身近なものになります。私が学級で話をした時、「それ、新聞に載っていたよ」という声が増えたのは、うれしいことです。子どもたちが視野を広げる手段の一つとして、これからも、これはという機会に柔軟に新聞を取り入れていきたいと思います。
(望月三千代/静岡賤機中小)

県内アドバイザー講座
=最新知見で「環境」学ぶ

2013年02月17日(日)付 朝刊


 理科の教科書に環境問題を学習する単元がありますが、気になる関連記事が新聞に掲載されたときには、年間計画にこだわらずに、教室に切り抜きを持参し、紹介すると良いでしょう。教科書の資料よりもデータが新しく、子どもたちが短時間で理解できる分かりやすい文章表現等が使われており、身近に感じられたり興味関心を持てる話題がしばしば掲載されます。
 最近の静岡新聞から関連記事を拾ってみましょう。
 北半球の高緯度地域の年平均気温は昨年までの最近10年間で0・3~0・5度高くなり、積雪面積が、20%も減少しました(記事①)。
 また、南米アンデス山脈の氷河が最近30年で最大50%縮小し、各地の平均気温は1994年までの44年間で0・7度上昇しました(記事②)。
 過去100年間に地球の平均気温は0・74度上昇しました。高緯度地域の気温上昇はそれをはるかに上回り、雪氷は急速に溶けています。
 積雪面積の減少・氷河の融解が進むと、周辺の水循環が変化し、植生・動物に影響を与え、集落は水不足に陥る可能性があります。
 氷や雪は極めて高い割合で太陽放射を宇宙空間に反射しています。このまま積雪域や氷の面積が減ると、宇宙に反射される太陽エネルギーが減り、地表はより多くの熱を吸収してさらに気温が上昇し、より多くの雪氷面積が減少する、という悪循環が起こると心配されています。影響は周辺地域に止まらないのです。
 地図で対象地域を確認し、イラストを黒板に描いて分かりやすく解説します。地球温暖化についての教科書単元を、予習復習すると理解が深まります。
     ◇
 環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定し、ドジョウも絶滅の危険性があると発表しました(記事③④)。
 養鰻業の発祥地静岡県の「浜名湖うなぎ」は全国的にも有名です。近年、シラスウナギの不漁が続き、漁獲量が低下しているとのこと。また、ドジョウは、かつて、田圃[たんぼ]にごく普通に見られた魚ですが、田圃は年々減少しているため、住みかを追われているのでしょう。
 ウナギもドジョウも古くから庶民に親しまれてきた魚ですが、絶滅の危機が忍び寄っていることに子どもたちは驚くことでしょう。ウナギの生態は解明されていない点が多いのです。生物が好きな子どもがいれば、将来、研究に取り組み、彼らを絶滅の危機から救えるかもしれません。
 静岡県は豊かな自然に恵まれているため、自然の良さを知る子も多く、彼らは、自然のバランスが崩れて起きているさまざまな環境問題に心を痛めています。記事を見ることで、自然保護のために、自分たちにできることは何かを考えるきっかけにしたいものです。

(吉川契子/静岡中央高)

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県内教諭の実践
=防災学習で地域の力に

2013年02月10日(日)付 朝刊


 NIE実践校として、取り組んできた2年の間、年2回、7社の新聞が学校に配布されました。そこで本校は、朝読書の時間に読む活動を実践しました。生徒は20分間、集中して読んでいました。新聞購読をしている家庭でも、読む時間がないという生徒が非常に多いのですが、時間を確保することで、新聞の面白さに気付くきっかけになったようです。
 また、各教科では、教材として新聞を活用する授業を実践しました。国語科では、新聞感想文コンクールに応募したり、世相かるた作りに新聞を活用したりしました。同じ事柄を取り扱っていても、新聞によって報道の仕方が違うことに気付き、記事別にスクラップする生徒がいました。また、感想を書くだけでなく、自分の思いを発表する場面を設定、同じ記事を選んでも、人によって考え方が違うことを知る貴重な学習となりました。
 英語科では「新聞記事の感想を伝えよう」という課題で授業を行いました。新聞の記事を電子黒板に映し出し、その記事の概略と感想をALTに伝えるというものです。生徒たちにとっては非常に難しい課題でしたが、自分の好きなサッカー選手や日本の自然についてALTに一生懸命思いを伝えようとしました。
 総合的な学習の時間においても、キャリア教育を実践する上で、新聞は大切な役目を果たしています。3年生の学習として「5年後の自分を想像しよう」というテーマで学習を進めた時、生徒たちのモデルになるような大学生の生き方についての記事を導入として扱い、生徒の学習意欲を高めました。また、本年度の1年生は、総合的な学習の時間において防災学習を行い、地震についての記事や防災訓練、防災学習についての記事を読むことで「防災の目」をもつ良いきっかけとなりました。また、防災学習のまとめとして防災新聞を作成しました。地震が来たときは自分たち中学生が地域の力になりたいと多くの生徒が考えていました。今後、表現するための手段としての新聞活用も考えています。
(橋立宏子/吉原三中)

県内アドバイザー講座
「はがき新聞」書いて発信

2013年02月03日(日)付 朝刊


 お正月は年賀状をパソコンで書いた人も多いだろう。そこで今回は、年賀状ソフトで作る「はがき新聞つくり」を紹介する。離れて暮らす祖父母への近況報告や、同居している親に郵送してみても面白い。
 まず、表側の宛名面は横書き設定にする。この下半分に、図のような縦書きの消息欄を提示。差出人の生の筆遣いで個性をアピールし、記述する内容もオリジナリティーを追求しよう。
 次に裏面。上半分は写真だ。デジカメや携帯からも手軽に写真印刷ができるはず。写真の撮り方は、プロが撮影し、デスクが掲載を精選している手元の新聞をお手本にすべし。集合写真的なものではなく、対象がズームアップされているものを選択せよ。
 下段の最初は見出し。記事の内容をそのまま要約するのではなく、内容に関係のある韻文(俳句など)を作成してみよう。俳句形式の見出しは意外に好評で、まとめ作用と表現教育の一挙両得である。記事内容は図に書いた通り。学校生活での行事や授業内容・特別活動の記録などを対象とすると良い。
 このはがき新聞の目的は、何はともあれ表現し発信してみること。①記事を書く目的をはっきりさせる②取材する対象を決める③取材対象を調べる。ただし、インターネットで安易に検索するのではなく、取材の対象としての人物や事物に直接向き合う必要がある。生の情報でなければ、新聞とは言えない。以上3点を重視し、とにかく書いて、発信をしてみよう。
 対象が身内なだけに、反応もストレートで己の向上につながるはずだ。そしてなによりも喜ばれること、間違いなし。
(実石克巳/静岡市立高)

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