一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=実践校 成果と課題(上)

2022年04月02日(土)付 朝刊


■実践校 成果と課題(上)

 教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2021年度NIE実践報告を静岡市で行い、実践指定校として2、3年間活動してきた6校の教諭らが取り組みや成果を発表した。本年度は新型コロナウイルス感染対策で動画での配信となった。各校の実施概要を2回に分けて紹介する。前半は小山中、静岡大河内小中、浜松城北小(所属校は3月時点)。
 (社会部・中川琳)
 
 SDGsへの理解深める 小山中 鳥越諒教諭
 教育目標の一つに位置付けられている持続可能な開発目標(SDGs)への理解を深めるために新聞を活用した。記事をスクラップし、感想を記す「NIEタイム」を設けた。当初は興味がある分野が多かったが、環境やエネルギー問題のスクラップが増えた。
 総合的な学習では、スクラップノートを使って、他の学年と意見交換した。SDGsの17の目標を達成するためにできることについても話し合った。他の生徒の意見を読むことで、自分では気付かない多様な情報に触れることができた。
 実践を通じ、地域社会や国内外の出来事に対して生徒の関心が高まった。SDGsに関連した、さらに深めた学習をしようとする様子が見られ、新聞は効果的だった。

 

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鳥越諒教諭

 
 

 「新聞の一生」題材に展開 浜松城北小 稲田晴彦教諭
 新聞は読むだけでなく、生活の中でさまざまな活用の仕方がある。新聞の魅力を知るため、4年生の総合的な学習の時間に「新聞の一生」をテーマに学習を展開した。
 新聞が完成するまでに焦点を当て、記事の書き方や見方、配達方法などを学んだ。記者を講師に招き、ネット情報と新聞の違いを学習したり、見出しを考えたりする学習をした。新聞は学校では図工の材料、家庭では野菜の保存など、日常で有効に活用されていることへの理解も深めた。
 児童が「5W1H」を意識して記事を読むようになり、新聞を身近に感じられたのは成果。教材として多様な活用ができたのも良かった。一方で、自ら新聞を手に取って読むまでの「意欲付け」はできなかった。

 

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稲田晴彦教諭

 
 
 社会の出来事 自分ごとに 静岡大河内小中 山内俊治教諭
 学校の研修テーマ「『人・もの・こと』とかかわり深まる授業」のうち、「もの」との関わりの一つを「新聞」と位置付けて実践した。
 中学部は興味のある記事を読んで感想を書く取り組みを継続した。知事選や衆院選の記事の見出しに注目し、見出しから受ける印象や投票行動に影響を与えるかを意見交換した。小学部は新聞への抵抗をなくすのが大事。興味のある話題だけでなく、関連する別の記事も読むようにした。社会科見学の内容をまとめた新聞の作成では、内容だけでなく見出しや写真の位置など、紙面の構成も工夫した。
 児童や生徒は活字に親しみ、社会の出来事を自分ごとに置き換えて考えられるようになった。ただ、教材として使える記事をどう探すのか教員側の課題が残った。

 

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山内俊治教諭

 

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■紙面授業 福祉 認知症を知り考える 知徳高 佐野智哉先生

 新型コロナウイルスの関連のニュースが連日報道されています。ワクチンや治療薬の開発について、関心が高いのではないでしょうか。そんな中、昨年12月、「アデュカヌマブ」と呼ばれる、「認知症」の進行抑制薬の国内承認の可否が新聞等で取り上げられていたことを知っていますか。
 既に日本では四つの薬が認可されており、今回は五つ目の新薬誕生かと、注目されていました。しかし、残念ながら承認は見送られました。100年以上も前から世界中で研究されている認知症ですが、今なお根本的な治療薬はなく開発が待たれています。
 認知症とは、身に付けた認知機能に障害が出た状態を言います。私たちは、日時、状況、記憶などを正しく認識した上で、その後の言動を判断しています。相手や場面によって言葉遣いを変えられるのも認知機能のおかげなのです。ですが、認知症の方は、そこに障害が生じるため、日常生活に支障が出てしまいます。
 2025年には高齢者の5人に1人の約700万人が認知症を発症すると言われ、その後も増加する傾向です。今後身近な人が、そして自分が認知症を発症する可能性は十分にあるのです。
 来る社会を目前に、ただ薬を待つだけではなく、私たちにできることは何でしょうか。一つ提案するとしたら、「知ること」がお勧めです。認知症を自分のこととしてとらえ、自分ならどのように過ごしたいか、どのように対応してほしいかを考えることが大切なのです。理解が深まると、認知症の方の言動の表面的な部分だけでなく、その背景に目が行くようになり、受け入れられるようになれます。
 認知症でも安心して自分らしく生活できる社会-地域共生社会-を作っていくのは私たち自身なのです。

 

県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(58)図書委員とICT活用(実石克巳/静岡高)

 いよいよ新年度が始まる。担任になった先生は、学級経営の端緒として、クラス役員を決めなければならない。その際、今年度は図書委員という人的資源とICT(情報通信技術)という情報資源を組み合わせて、NIEに応用するという目標を立ててみたらいかがであろうか。
 GIGAスクール構想を、教科面だけではなく生徒のキャリア形成と自己実現の場として捉えるのなら、図書委員に多様な視点が獲得できそうな記事を選ばせ、教員はそれを全員に配信・他の人の見解の回覧・初発意見の深化という過程を踏ませよう。ただし、初発の意見提出はアナログの紙と鉛筆にすべき。なぜならば、大学入試の小論文は今のところ手書きだからだ。思考して手を動かすという訓練は、いつの世でも避けて通ることはできない。書いた原稿は写真に撮って配信すればよい。
 このシステムの構築は、初期指導が肝心であり、図書委員も生徒も習慣化するまでは教員の指導が必要である。各学校で導入しているアプリの特徴をよく踏まえ、教員の負担にならぬよう新しいカタチのNIEを実践しよう。