2023年11月30日(木)付 朝刊
新聞を教材として活用するNIE実践指定校の藤枝市立広幡中で29日、研究発表会が開かれた。1~3年全10クラスの授業を公開し、数学や保健体育、英語などさまざまな教科での実践例を紹介した。
記事からキーワードを抜き出し、要約する生徒=29日午後、藤枝市上当間の市立広幡中
1年生の国語の授業では、26人が新聞記事を要約する作業に取り組んだ。イスラエルとイスラム組織ハマスの対立や米大リーグ大谷翔平選手に関する記事の内容をタブレット端末を用いてまとめた。グループごとに互いの文章を読み、感想を述べ合った。石橋直明教諭(27)は、文章の意味と発信する意図について考えたり接続語の役割を学んだりしたこれまでの授業を踏まえて「大切な事柄はキーワードを盛り込んだ短い文章で伝えると効果的」と説明した。
市内外の教員ら約20人が参観した。同校では全教職員がNIE実践に取り組み、同日以外も新聞を活用した事例を校内発表する。
2023年11月06日(月)付 朝刊
県NIE推進協議会は29日午後1時半から、藤枝市立広幡中の全10クラスで、新聞を活用した授業を公開する。授業後は意見交換会も開く。
同校は日本新聞協会のNIE実践校として指定を受け2年目。11月のNIE月間行事として行う。参観希望者は15日までに、県NIE推進協議会事務局<電054(284)9152>に申し込む。
2023年06月25日(日)付 朝刊
2023年02月26日(日)付 朝刊
教育に新聞を活用する活動に取り組む県NIE推進協議会(安倍徹会長)は25日、静岡市駿河区の静岡 新聞放送会館で、県内の実践指定校8校による報告会を開いた。河津南小、静岡中島小、牧之原萩間小、浜松上島小、静岡大成中、浜松学芸中・高、御殿場南高、藤枝東高が登壇した。
自校での取り組み事例を発表する教員=25日午後、静岡市駿河区の静岡 新聞放送会館
小学校では、まだ漢字が読めない1年生の場合、目を引いた掲載写真を探すことを通して新聞に触れる機会を設けるなど、学年ごとの学習内容や成長段階を踏まえた取り組みが報告された。3年生の算数で紙面で洋数字と漢数字の表記の違いを見つけるなど、教科と連動した授業展開も目立った。6年間の系統性を見据えて授業に工夫を凝らす半面「学年によっては漢字や内容を理解するのに支援が必要になる」との指摘もあった。
中学校ではSDGsやキャリア教育など多様な分野で生徒自身が記事を選び、理由を語る場を設けるなどして主体性を伸ばす試みが多かった。高校では、生徒が新聞に親しむ行事を発案した事例や、地域社会の課題を議論する際に新聞を参考資料として活用したり、大学入試対策に利用したりしたケースが発表された。ICT(情報通信技術)教育が普及する中「紙媒体よりも記事データベースの方が使い勝手が良い」など、教育現場からの感想も報告された。
(社会部・大須賀伸江)
静岡市内で2023年2月25日に開催された、静岡県NIE推進協議会主催「2022年度NIE実践報告会」の報告動画です。2年間のNIE実践を終了する小学校・中学校・高校の計8校が報告しました。学校での新聞活用の参考事例としてご覧ください。
▽河津町立南小学校(土屋晃子教諭)
▽静岡市立中島小学校(伊東一磨教諭)
▽牧之原市立萩間小学校(絹村雅昭教諭)
▽浜松市立上島小学校(笠原吏沙教諭)
▽静岡大成中学校(片井奈美教頭)
▽浜松学芸中学校(大場裕幸教諭)
▽静岡県立御殿場南高校(芹澤光教諭)
▽静岡県立藤枝東高校(深澤拓教諭、矢代哲子教諭)
2022年10月29日(土)付 朝刊
NIE(教育に新聞を)実践指定校の静岡大成中(静岡市葵区)で28日、新聞記事を教材にタブレット端末を使った授業が公開された。県内の小中学校の教員ら約30人が参観し、教育現場での新聞の活用法について理解を深めた。
新聞記事に対する意見を英語でまとめた生徒=28日午後、静岡市葵区の静岡大成中
吉永光希教諭(48)は3年生約20人に対して、世界のニュースを紹介する英字新聞を活用した英語の授業を展開した。ペアになった生徒らはタブレット端末で「エリザベス女王国葬」「ロシアがウクライナ侵攻」などの記事を熟読。英語で関係代名詞を使うことを意識しながら意見をまとめた。
生徒は今後、学習ゲームアプリを使い、記事に関するクイズを英語で作成する。吉永教諭は「楽しみながら新聞を読み、長文を速く読み解く力を身に付けさせたい」と話した。
新聞の天気図と観測データを使った理科の授業も公開された。
2022年06月26日(日)付 朝刊
新聞を学校教材に活用するNIE(教育に新聞を)の普及に取り組む県NIE推進協議会は25日、本年度総会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開き、実践指定校14校を選定した。
安倍徹会長は「各校で新聞に接した教員が、子どもたちに問いかけ、子どもたち自身も自ら考え発信するような教育活動が求められている」と述べた。
本年度は、8月に宮崎県でNIE全国大会を3年ぶりに対面で開催するほか、10月下旬にNIE教育の公開授業も行う予定。
実践指定校に選出された14校は、7月の日本新聞協会NIE委員会で正式に承認を受ける。実践指定校の担当教諭は「キャリア教育の柱として取り入れる」などと抱負を述べた。
指定校は次の通り。
▽新規 伊豆土肥小中一貫校、富士見中、静岡清水飯田中、藤枝広幡中、浜松春野中、静岡北特別支援学校南の丘分校▽継続 河津南小、静岡中島小、牧之原萩間小、浜松上島小、静岡大成中、浜松学芸中・高、御殿場南高、藤枝東高
実践指定校として抱負を述べる教諭ら=25日午後、静岡市駿河区の静岡 新聞放送会館
2022年04月21日(木)付 朝刊
NIE(教育に新聞を)の取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)は20日、静岡市駿河区の静岡聖光学院中・高で幹事会を開き、参加者らが新聞を活用した授業を見学した。
同校は2017年、18年度に実践指定校を務めるなど、NIEを継続的に行っている。高校3年の日本史の授業では「戦争遺跡」に着目し、御前崎市池新田の旧陸軍遠江射場の観的所に説明板が設置された記事などを教材にした。生徒たちはグループワークで「残したい戦争遺跡」とその方法を考えた。
多くのグループが防空壕(ごう)や原爆ドームを取り上げ「VR(仮想現実)を作って体験し、遺跡を知ってもらう」などの継承方法を発表した。伊藤大介教諭(NIEアドバイザー)は「戦争遺跡を振り返り、後世に伝えていってほしい」と語り掛けた。
幹事会では2022年度の事業計画を承認。新たに6校を実践指定校に推薦した。
「戦争遺跡」について発表する生徒。県NIE推進協議会のメンバーが見学した=20日午後、静岡聖光学院中・高
2022年2月19日開催の「2021年度NIE実践報告会」の模様を、ウェブ公開します。2~3年にわたってNIE(教育に新聞を)の実践をしてきた6校が、特色ある取り組み内容を報告しています。
◆2021年度の実践報告校は以下の6校です。
▽小山町立小山中学校(鳥越諒教諭)
▽三島市立南中学校(野口厚校長)
▽静岡県立清水特別支援学校(川上健治教諭、松原悠馬教諭)
▽静岡市立大河内小中学校(山内俊治教諭)
▽掛川市立桜が丘中学校(石神克海教諭)
▽浜松市立城北小学校(稲田晴彦教諭)
2021年10月28日(木)付 朝刊
新聞を教材として活用するNIE実践指定校の掛川市立桜が丘中で27日、授業研究発表会(県NIE推進協議会主催)が開かれた。地方自治や差別と偏見、エネルギー変換技術などをテーマにした8授業を公開し、担当教諭が教育現場での新聞の活用法を披露した。
溝垣駿教諭(33)は「地方自治と私たち」と題した社会科の授業を展開した。過去の新聞報道を基に、行政に住民の意思を反映させる直接請求権を行使した実例を挙げ、生徒は首長の解職請求や条例制定の手段と効果について意見を交わした。
住民投票で建設反対の民意が示された御前崎市の産廃処理施設に関する報道も題材にした。溝垣教諭は「建設に反対する市民の立場から、どうすれば意見が通るかを考えよう」と問い掛けた。生徒は課題解決に向けたアイデアを出し合い、グループ内で議論した。
同校のNIE実践の取り組みは2年目。市内外の教員ら約50人が参観した。
行政に住民意思を反映させる手段についてグループで議論する生徒=27日午後、掛川市立桜が丘中
2021年07月10日(土)付 朝刊
日本新聞協会は9日、学校の授業など教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の、2021年度実践校541校を発表した。前年度から1校増えた。
内訳は、小学校219校、中学校181校、高校110校、小中連携2校、中高連携20校、特別支援学校8校、高等専門学校1校。実践は原則2年間で、21年度からの新規校は243校、継続校は298校となる。協会と各新聞社が購読料を補助する。県内の実践校は14校。新規は静岡中島小、浜松上島小、牧之原萩間小、河津南小、静岡大成中、浜松学芸中・高、御殿場南高、藤枝東高。
協会とは別に、14道県のNIE推進協議会が小中高校など57校を独自に認定した。
今年のNIE全国大会は8月16日にオンラインで開催。全体会は札幌市内の会場からライブ中継し、分科会や公開授業は同日以降に順次オンデマンドで配信する。視聴は11月30日まで。
2021年05月01日(土)付 朝刊
教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2020年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた8校の担当教諭が、取り組みの内容や成果、課題を説明した。全8校の発表概要を紹介する後半の今回は、湖西白須賀小、清水西高、常葉大付属橘高、浜松西高の4校。
■情報を取捨選択し表現 湖西市立白須賀小 鈴木芳樹教諭 加藤健太郎教諭
本校児童が長文を読むことや端的に文章にまとめることを苦手とする実態を踏まえ、新聞を活用した言語能力の育成を目標にした。
「新聞クイズ」は記事の内容からクイズを出し、答え合わせをしながらどんな記事だったか児童が説明した。関心を持って楽しみながら取り組み、文字数が多くても正確に情報を読み取ろうとしていて非常に効果的だった。見出しが隠された記事の見出しを考え、実際のものと比較する実践では情報を取捨選択して簡潔にまとめ、表現を工夫しようとする姿が多く見られた。
新聞の概念が「大人が読むもの」から「自分たちでも読めるもの」に変化したと感じる。説明文への抵抗感が減り、長文の要約力も向上した。リアルタイムを意識した上で各発達段階に適し、目的に応じた記事を選択、教材化することは難しかった。
■切り抜いて自分ごとに 常葉大付属橘高 塚本学教諭 杉山光輝教諭
新聞記事を通じて生徒が自分と社会を結び、自分の意見をまとめて表現する力を養成することや、自分にできることを見つけて取り組んでいくことを狙いとした。
授業の一環で、興味を持った記事の感想を書く「NIEノート作り」を実施した。スクラップすることで人ごとから自分ごとになる。記事について意見交換も行い、生徒からは受験の小論文や面接で役立ったと評価された。
本校独自の課題探求型授業「タチバナクエスト」にもNIEを活用し、SDGs(持続可能な開発目標)の中から一番関心のあるテーマに関する記事を集め、掘り下げた。自分の身近なことで、どんな課題があるのかも考えてまとめた。
生徒の様子や感想から、社会や世の中のことに関心を持つようになったと感じる。自分の言葉で意見を持てるようにもなった。
■即時性が学習意欲喚起 清水西高 吉川契子教諭
一般教養や生活の知恵を身に付ける姿勢を養うために、理科の授業や自然科学部の部活動、進路指導などで新聞を活用した。
授業では単元に応じてスクラップした記事を提示した。即時性が学習意欲を喚起するので、台風や地震などのニュースの記事は学習順序にかかわらず年間を通じて紹介した。6年ぶりに地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ2」に関しては、生徒に興味を持たせる上で新聞が非常に適切な教材だった。生徒がスクラップをして感想を書いたり、災害対策を話し合ったりもした。
ニュースを生活に生かす習慣ができ、学習意欲の向上にもつながった。文章を読んで理解する力、書く力が向上し、誤字が減ったとも感じた。新聞の活用はさまざまな学習が深まり、広がる上で非常に重要だと考える。
■文章要約する能力向上 浜松西高 吉田忠弘教諭
情報リテラシーの向上を目的とし、学習面では各教科の内容理解の深化、進路関係では大学入試の小論文や面接試験対策として効果を期待した。
現代社会の授業の中で10分間の「新聞タイム」を設け、生徒が興味、関心を持った記事を選び、意見や感想を記録用紙にまとめた。夏休み中も新聞に触れる機会を持たせるため、「しずおか新聞感想文コンクール」への挑戦も課題とした。
生徒へのアンケートでは文章を読み取る能力について約半数が、文章の内容を簡潔にまとめて表現する力は約6割が高まったと回答した。
成果としては、実社会への興味の高まりや情報リテラシーの向上が挙げられる。ただ授業進度を落とさずにNIE活動を行うことは大変だった。今後はデジタル化の進行に対応したNIEの検討が急務だと感じる。
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■紙面授業 英語 自分の考え表現しよう 静岡英和女学院中・高 スチュアート・フレッチャー先生
日本で働き始めた頃、日本とイギリスの生徒の違いをよく聞かれました。そんな時はいつもイギリスでは生徒は教室を掃除せず、テストも少ないと答えていました。しかし、8年近く日本での経験を経た今、日本の生徒は自分の意見を述べることが少ないと感じています。
この違いは、両国の教え方の違いに原因があると思います。イギリスの授業では、考えることと話すことに重きを置きます。まず教師がトピックを示し、知識と理解度をチェックするための質問をします。そして生徒は議論に集中します。一方日本では、教師が講義をして、生徒がノートを取る形が続いていました。そのせいか日本人は知識を暗記することは得意ですが、自分の考えを表現することが苦手です。近年、文部科学省はアクティブラーニングの概念を「主体的・対話的で深い学び」として新学習指導要領の柱の一つに据え、この問題に取り組み始めました。最近は実践事例を紹介する記事も新聞紙面に掲載されています。
しかし、その方法が曖昧なため教育現場は悩んでいます。イギリスでは"Pause Procedure"(一時停止法)がよく用いられます。この指導法は、教師が短い話をした後、いったん話を止め生徒にノートをチェックする時間を与えます。教師はwhyやhowのような自分の考えを深めるための質問をし、生徒同士が活発に意見を交換する場を作ります。この方法なら、授業のスタイルを大幅に変えずに実施できます。
日本の生徒たちは自分の考えが欠けているのではなく、自分の意見を話す機会が欠けているのです。話し合いによって生徒は理解が深まり、教師も共に学ぶことができるのです。「教師は生徒の議論から学ぶ」=ラシ(フランスの神学者)=。
県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(49)「声」が社会を動かす
今年4月、約70年ぶりに新しい1円切手が発行されました。日本郵便の公式キャラクターのクマをデザインしたもので、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密を描いた現在のものと並行しての限定販売です。きっかけは新聞の投書欄。日本郵政の社長が「他の絵柄も欲しい」といった1円切手に対する投稿に目を留めて、新切手誕生の検討を促したといいます。
静岡新聞4月7日付の1面コラム「大自在」では、「情報源は新聞の投書欄。そこにはドラマがいっぱい転がっていますよ」という脚本家橋田寿賀子さんの言葉を紹介していました。橋田さんは投書を読みながら、人々の生活の営みや心の動きを感じ取り、ドラマ作りに反映していったのでしょう。視聴者は、主人公と自分とを重ね合わせて一喜一憂し、それがいつしか社会現象となりました。
提供される情報に好奇心を持って向き合うと、感想以外に疑問や要望が生まれてくることがあります。それをぜひ「あなたの声」として発信してみてください。あなたの意見に共感した人々が新たな形で発信を続け、社会を動かすきっかけになるかもしれません。
(静岡井宮小・中村都)
2021年04月21日(水)付 朝刊
NIE(教育に新聞を)に取り組む県NIE推進協議会(安倍徹会長)は20日、静岡市葵区の常葉大常葉中・高で幹事会を開き、新聞を用いた現代社会の授業を見学した。
実施したのは「リニア中央新幹線工事と大井川水問題」を調べている同高の2年生。オンラインの意見交換会や署名活動などに取り組む県立大の女子学生の記事を読み「社会課題を人ごとと思っていない」「同世代が興味を持つきっかけを作っている」などと感想を述べた。塚本学教諭(NIEアドバイザー)が「自分ごと」という言葉に着目。社会課題を自分ごととする「主権者教育」を紹介する別の記事につなげ、生徒は若者の社会参画のあり方について意見交換した。
幹事会には県内の教育委員会や新聞社の関係者らが出席し、2021年度の事業計画案を承認した。
グループワークで意見交換する生徒=20日午後、静岡市葵区の常葉大常葉高
2021年04月03日(土)付 朝刊
教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)はこのほど、2020年度NIE実践報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。実践指定校として2~3年間活動してきた西伊豆町立田子小、伊豆の国市立韮山南小、静岡市立清水飯田小、吉田町立自彊小、湖西市立白須賀小、清水西高、常葉大付属橘高、浜松西高の8校の担当教諭が、取り組みの内容や成果、課題を説明した。全8校の発表概要を2回にわたり紹介する。前半は西伊豆田子小、伊豆の国韮山南小、静岡清水飯田小、吉田自彊小の4校。
■情報伝達力向上に効果 西伊豆町立田子小 土屋由子教諭 落合つかさ教諭
小規模校であることを強みとして全教職員でNIEに取り組み、自分の学びを他の人に理解してもらう力、情報伝達力の向上を目指した。新聞が子どもたちの身近なものになるような環境づくりから始め、授業での活用、学習ツールとしての定着を進めた。
1年生の授業では新聞から季節が分かる写真を探し、そこから感じたことを書く活動を行った。児童は写真が同じでも、いろいろな表現があることを学んだ。社会科で特色ある地域の暮らしについて学び、新聞形式でまとめた5年生は新聞のレイアウトや見出しを手本にし、読者の興味を引き、分かりやすくなるように生かした。
児童は自分の思いを分かりやすい文章で書き、情報の取捨選択もできるようになった。情報伝達力の向上にNIEが大きな効果を発揮したと感じる。
■環境問題の視野広がる 静岡市立清水飯田小 小川訓靖教諭
知識や体験、社会事象などがつながり、自己の中で再構築、系統化されていく「喜び=目標達成から生まれる自信」を味わうことが、知識獲得や語彙(ごい)力向上、豊かなものの見方を育むことにつながると考え、そのための資料やツールとして新聞を活用した。
「なぜ水は飯田にとって宝なのか」をテーマにした総合的な学習の締めくくりに新聞を用いた。地元の川にはごみが多いと気付いた児童に海洋プラスチックに関するいくつかの記事を提示した。地域から世界的な環境問題へと視野を広げ、自分事として考えられた。
毎週1回、共通の記事を読んで要約し、自分の考えを書いてまとめる活動も行った。家庭学習としても取り組み、知った事実や考えを家族に伝える児童も多く見られた。新聞への抵抗感が薄れ、親しみを抱くようになった。
■多面的に考える力養う 吉田町立自彊小 大柳知穂乃教諭 森祐介教諭
校内研修にNIE教育を効果的に絡めることにより、本校が目指す「対話を通して、より客観性のある考えをつくる授業」に迫ろうと考えた。各学年、道徳科とそのほか各教科の重点単元に絞り、身に付けさせたい力を押さえた上で記事内容を選定して活用した。
4年生の道徳科では、発達障害のある子が特別席でJリーグを観戦するという記事について考えた。児童が多面的、多角的に考える姿が見られた。授業以外にも日常的に新聞を身近に感じる環境づくりを進めた。いつでも新聞を見られるようにし、新聞切り絵作家を招いた授業で新聞に対する親しみを育んだ。
児童からは「内容が面白くて思うことがたくさんあったから、学習に役立っていると思う」などの感想があった。子どもの成長と教員の授業力向上につながった。
■自分なりの考え深める 伊豆の国市立韮山南小 山本順也教諭
「自分の考えを深め、広げるNIE」をテーマに実践を重ねた。新聞は情報を詳しく知ることができ、時間をかけて何度も読み直せる良さがある。世の中の出来事に対する関心が高まり、考えを深め、広げていけるのではないかと考えた。
児童が新聞をいつでも手に取れることを第一に考え、昇降口に新聞コーナーを設置した。ジャンルを決めずに教員が興味を持った記事も掲示し、児童がいろいろな出来事に関心を持てるようにした。近くに付箋を置き、記事についての感想を書けるようにもした。これによって自分なりの考えを持つ子が増え、考えを深めることにつながった。
関心が高まれば成果が表れることは実感できたが、自主的に新聞を読む児童はまだ少ない。授業で新聞を計画的に取り扱うことが今後の課題になると感じた。
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■紙面授業 理科 シラスに混じる生物 島田樟誠高 近藤正先生
春の風物詩として、静岡県ではシラスがその一つに挙げられます。近年は不漁続きで心配ですが、幸いに今年も県内のシラス漁が解禁になり、新聞紙面でも大きく取り上げられました。
シラスは、主にカタクチイワシの稚魚です。県内では釜揚げシラスとして売られているのをよく見掛けます。カタクチイワシの稚魚は群れで生活していますが、イワシだけを狙って取るのは困難でさまざまな生き物が混獲されます。
それらは、独特な形をしているものが多くチリメンモンスターと呼ばれて観察会が行われています。私も以前、授業で扱うためにシラス漁の混獲物を業者の方からいただき、朝から晩までピンセットでつまみ続けたことがあります。その中からは、魚類だけでなく甲殻類、頭足類、底層を引いたわけでもないのに貝類まで出てきました。さらに詳しく調べていくと、この小さなチリメンモンスターがあの成体になるのかという驚きがある一方で、種を判別できないこともありました。知識や経験が不足していることは否めませんが、ウナギがそうだったようによく知られている生物の子どもがどんな形をしているのか、いつどこで産卵するのかいまだに分かっていない場合があるのです。
何の子どもかを明らかにするためには、海で採集した標本から少しずつ小さく未熟な個体を見つけてつなげていくか、親から卵をとって飼育した結果と比較をする必要があります。DNAを調べることができればより正確に種を判別することができます。購入したシラスからよく知られた生物の子どもが初めて発見されることも十分に起こり得ます。まだ誰も知らないチリメンモンスターの正体を明らかにするのは、これからシラスを食べるあなたかもしれません。
県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(48)想像力を深める契機に
20年ほど前、筆者が教員を目指し再入学した大学では、鳴門教育大学の大学院生との間で行われる「遠隔授業」という科目がありました。大学院でさらに深く学ぶ現職教員もいて、そうした院生と大学3年生が、徳島と京都を映像を介してつなぎ、チャットを使って教育に関して討論するというものでした。それが現在のオンライン授業の先駆的な取り組みであったことを、最近の記事を読み込む中で振り返りました。
新聞に日常的に接していく意義は、読者が過去の自身の体験を振り返ったり未来の社会の姿を思い描いたりと、想像力を深めるきっかけを与えてくれることです。
そのような新聞に興味をもった生徒の1人が、この春メディアを研究する大学に進学しました。彼は総合学習の一環であった筆者のゼミ活動に参加し、静岡新聞社を訪問した際にも記者の方の話に熱心に耳を傾け、より積極的に新聞を探究していました。
彼の進路に一つのきっかけを与えた新聞の魅力、想像力を深める魅力をこれからも伝えたいと思います。
(静岡聖光学院中・高・伊藤大介)
2021年02月21日(日)付 朝刊
教育に新聞を活用する取り組みを展開する県NIE推進協議会(安倍徹会長)は20日、県内の実践指定校による報告会を静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開いた。小学校5校と高校3校の計8校の教諭が活動内容を発表し、読解力や情報リテラシーの向上、自分の考えを積極的に発言する子どもの増加などを成果として挙げた。
報告したのは西伊豆田子小、伊豆の国韮山南小、静岡清水飯田小、吉田自彊小、湖西白須賀小、清水西高、常葉大橘高、浜松西高。
発表者は、新聞記事の内容からクイズを出題して知識を深める学習や興味を持った記事について意見や感想を10分以内にまとめる「新聞タイム」などの取り組みを紹介した。
教諭からは「NIEによって子どもたちの知識や体験がつながっていく喜びを間近で見られた」「実社会への関心が高まった」などの報告があった。授業で活用できる新聞記事選定の難しさや活動継続のための新聞確保を課題とする指摘もあった。
新聞を教育に活用した取り組み内容を紹介する教諭=20日午後、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館
2020年11月07日(土)付 朝刊
NIE実践指定校の吉田町立自彊小でこのほど開かれたNIE教育研究発表会。国語、社会、道徳の授業を同校教諭が公開した。新型コロナウイルス感染症に関する新聞記事を活用しながら授業を展開し、児童は多角的な視点から学びを深めた。
社会科の授業は、森祐介教諭(34)が4年生約30人に対して行った。テーマは「コロナ禍の生活の中で自分たちにできること」。外出の自粛による家庭ごみの増加、マスクのポイ捨て、ごみを収集する作業員の感染リスクといった社会問題を伝える記事を選び、児童に読んでもらった。
森教諭の音読に合わせて傍線を引くなどして記事に目を通した児童ら。「使い捨てではなく、繰り返し使える布マスクをなるべく使う」「マスクのポイ捨てをしないように周りの人に呼び掛ける」と、ごみを減量する方法を積極的に発表した。
「新聞記事を根拠に考えてみて」。森教諭のアドバイスを受けてさらに記事を深く読み込むと、児童に新たな気付きが生まれた。ごみ収集の作業員や清掃員の感染リスクを踏まえ、「ごみ袋からマスクが飛び出さないよう、別の袋に入れてから捨てる」などと、違った視点からの意見が出てきた。
県内小中学校の教諭など教育関係者約70人が参加した。自彊小は実践指定校2年目で、休み時間や読書の時間に新聞を読む児童の姿がよく見られるようになったという。森教諭は「子どもたちが自分の思い込みではなく、ニュースを読んで物事を考えることで、視野が広がっている」と効果を実感する。
公開授業の後に行った全体会では、同校の取り組み状況を参加者が共有した。教室内に設けている「新聞コーナー」や、朝の会で日直が興味を持った記事をクラスメートに紹介する「新聞スピーチ」など、日常的に新聞に親しむことを目的とした取り組みを同校の担当教諭が説明した。
森祐介教諭(右)の授業で新聞記事を読み込む児童ら=吉田町の自彊小
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■紙面授業 理科 陸守る茶草場農法 不二聖心女子学院中・高 平本政隆先生
6月、コロナ禍で減少した茶の販売を促進するために、JA静岡経済連などが国の支援を活用し、県内の学校等に茶の配布を検討しているというニュースが新聞に掲載されました。既に各校への配布は始まっているようです。
日本一の生産量を誇る茶どころである静岡の茶草場農法が世界農業遺産に認定されているのはご存じでしょうか。茶草場農法とは茶草場と呼ばれる草地から草を刈り取り、茶園の畝の間に敷き込む伝統農法で、土壌の状態が良くなり、おいしいお茶ができるといわれています。認定されているのは掛川地域4市1町ですが、県内で広く実践されています。本学院は裾野市にありますが、約69ヘクタールのキャンパス内にある不二農園でも100年以上前から茶草場農法で茶を栽培しています。
茶草場は絶滅危惧種を含む豊かな生物多様性が見られる貴重な環境でもあります。毎年、人の手が入り、草刈りが行われる茶草場で豊かな生物多様性が見られるというと、意外に思われるかもしれません。生物基礎の授業では植生遷移を学びます。草地は時間がたつと、樹木が侵入してきます。樹木が育ち、地面に届く光が少なくなると、草地を好む多くの植物は生育ができなくなり、植物の種類は減ってしまいます。人が草を刈り、樹木が侵入する前に遷移を止めることで、地面に多くの光が届き、多様な植物が生育できる環境が保たれるのです。
茶草場農法は、茶栽培という人間の営みと生物多様性とがうまく両立していることが高く評価され、世界農業遺産に認定されました。静岡のおいしいお茶を飲みながら、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標のうち、15「陸の豊かさも守ろう」や、人間と自然との共生について考えてみてはいかがでしょうか。
県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(44)新聞で学んだ「音楽の力」
このコロナ禍において、文化や芸術は不要不急なものとする向きがあります。私自身も「衣食住ではなく、娯楽のひとつ」と思っていた音楽。しかしこの時期に音楽と向き合う意味を考えさせてくれたものがあります。
現在は歌うことも楽器で演奏することもままならず、音楽への取り組み方を見失っていた矢先、本校では音楽集会を開催することになりました。選曲する段階で、「この状況下で何ができるのだろう」と考えた時、ある新聞記事を思い出したのです。それは、小学校の音楽会で決して主役になれない地味な楽器カスタネットを主要パートにした小学生向けの合奏曲を紹介したものでした。子どもたちに記事を見せると「やってみたい...」と反応。そこでその合奏曲を音楽集会で演奏しました。
いつもは脇役の子どもたちが飛沫[ひまつ]心配なしのカスタネットで主役になり、のびのびと自分の演奏表現ができたことが、音楽の楽しさへとつながったのです。
最近は「コロナ禍に音楽の力」と銘打った見出しが目につきます。新聞記事で「音楽って楽しい」の気持ちを育ててみませんか。
(静岡井宮小・中村都)