一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=環境づくり 司書と連携 新学習指導要領に「新聞活用」 「教員無理しないで」-NIEコーディネーター関口さん講演

2017年07月01日(土)付 朝刊


 県NIE推進協議会総会がこのほど、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で開かれ、日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さん(61)が「新学習指導要領とNIEの授業」と題して講演した。関口さんは「教育が変わりつつある今こそ、NIEが求められている。新聞の学力向上効果を明らかにするとともに、新聞が身近にある環境づくりを組織的に取り組むことが今後の課題」と強調した。

 文部科学省は2020年に施行する新学習指導要領に「新聞活用」を盛り込んだ。関口さんによると、背景には子どもの読解力低下などがある。近年はフェイクニュース(偽のニュース)などの問題が浮上し、調べ学習をはじめとした「主体的・対話的で深い学び」の重要性が高まっているという。
 関口さんは新学習指導要領に触れ、「NIEの存在意義はある」と指摘した。一方で教員の多忙化や教育に新聞を取り入れるノウハウが具体的に示されていないなどの理由で、NIE普及が進まない学校現場の現状を憂慮する。
 新聞を身近に感じさせる環境づくりを「新聞の日常化」と呼び、「NIE浸透の鍵になる」とみる。学校現場で長年、NIEを推進してきた経験から、学校での「日常化」に向けた方法として学校図書館の活用を挙げ、「司書といかに連携できるかがポイント。新聞に触れられるようコーナーを設けたり、複数の新聞を読み比べたりする環境づくりが必要」と訴えた。
 また、週に1、2回、15分の朝学習の時間を使って新聞をスクラップし、ワークシートに感想を記入する「NIEタイム」を紹介した。「教員が子どもの感想を褒めることで、初めは難しいとぼやく子どもたちが『楽しい』と口をそろえるようになる」と効用を説き、継続のこつを、すき間時間の活用などで「教員が無理しないこと」と強調した。
 NIEのさらなる浸透に向け、「学校内での取り組みにとどまらず、教育委員会やPTA、地域、家庭まで広げる必要がある」と述べた。

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新聞が身近にある環境づくりの取り組みを強調する日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さん=静岡市駿河区の静岡新聞放送会館

 

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 ■新聞記事の感想文募集 児童生徒対象、静岡新聞社
 静岡新聞社は、県内の小学生から高校生までを対象に、第10回記念「2017年度しずおか新聞感想文コンクール」(県教育委員会など後援)の作品を募集している。児童、生徒が新聞を通じて活字に親しみ読解力と表現力を養うとともに、地域や社会への関心を高めることが目的。
 課題は、①2017年1月1日~8月31日の新聞記事を読んでの感想②新聞について思うこと(小学生は①か②を選択、中学生と高校生は①のみ)。部門は、小学生、中学生、高校生の3部門。賞は、各部門で最優秀賞1点、優秀賞2~3点などを選び、応募者全員に参加賞を贈る。
 要項の請求と問い合わせは静岡新聞社読者部内「しずおか新聞感想文コンクール」事務局<電054(284)8984>へ。

 

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 ■紙面授業=社会-日常生活 環境に影響  不二聖心女子学院中・高 野村春美先生
 「環境問題」と聞くと自分の日常生活からは遠い世界のこと、と思ってしまいますが、毎日の買い物も「環境問題」に深く関係しています。
 信州大学が「生物多様性フットプリント」を利用して、日本の消費が世界の希少生物にどのくらい影響を与えているか分析した、との記事が2月、新聞に掲載されました。それによると、マレーシアなどでは日本での輸入木材の使用増加によりマレーグマの生息地が縮小し、エチオピアでは日本などへ輸出するコーヒー生産のための農地開発で、ヒョウやアフリカゾウの生息地が圧迫されています。
 ハウス栽培や生産地の多様化で季節を問わず野菜や果物が手に入れられるのは便利ですが、栽培で使われる石油ヒーターや照明、輸送用トラックのガソリンなどにより温室効果ガスである二酸化炭素が排出されています。この二酸化炭素によって温暖化が進み、自然環境の変化で絶滅危惧種となった生物もあります。またツバルなど太平洋の島国では、海面上昇や高波による浸水のため住民全員を別の島に移住させなければならない状況も生まれています。
 世界全体では、昨年11月に「パリ協定」が発効し、その直後モロッコで開かれた気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)で各国が温暖化対策の強化に取り組むことへ決意を示しました。
 日本も「パリ協定」を批准し、温室効果ガス削減に向けた計画を提出しています。一方、米国のトランプ政権は環境問題に懐疑的で、パリ協定から離脱すると6月に表明し、世界の温暖化対策に打撃を与えました。
 子どもたち、孫たちの世代も地球上の全ての生物と人々が安心して生きていけるよう、国際社会は今、「持続可能な社会」の形成に取り組んでいます。経済のグローバル化が進めば進むほど、買い物という私たちの小さな選択も世界のどこかに影響を与えます。商品がどこで作られ、どのように運ばれてきたかを考えながら買い物をすることで「持続可能な社会」をつくることに参加していきましょう。

 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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 ■NIEアドバイザーのワンポイント講座(4)=感性を磨くコラージュ
 小学校低学年では新聞を使った活動ができないと思っていませんか。語彙[ごい]が少ない子どもたちでも、新聞を使って色や形、質感の感性を磨くことができます。新聞の写真や広告などに注目し、切り貼りしていく新聞コラージュを紹介します。
 新聞紙面には、カラフルな写真や広告がたくさん掲載されています。そこには、「緑」と言っても色鉛筆や色紙にはないさまざまな「緑」が存在することに気付くでしょう。その中から、例えば自分の葉のイメージに合った色や形を連想して選び、葉の形に切り抜きます。質感を考えて探す子もいるでしょう。白黒の素材を選んでも構いません。形そのものを切り取って構成する従来のコラージュとは異なり、本来の写真や広告とは全くの別物に大変身させてしまう新聞コラージュは「創作している」意識で取り組めます。静岡新聞の「週刊YOMOっと静岡」の新聞アート欄でも挑戦できます。
 新聞の情報は文字だけではありません。多くの写真や広告の中から必要なものを取捨選択していくことも、メディアリテラシーと言えます。
 (静岡井宮小・中村都)