「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。
「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。
2025年12月08日(月)付 朝刊
■浜松・浜北北部中 記事読み意見交換 「探究する力」磨く 社会課題に自ら問い立て
NIE実践指定校の浜北北部中(浜松市浜名区)は社会の授業で、新聞記事を読んで意見を交わす取り組みを展開している。生徒が社会の課題に自ら問いを立て、物事を探究する機会につなげている。
10月中旬、3年生は新聞記事のスクラップと記事に対する問いや意見を書いたプリントを持参した。
原田直樹教諭は、掛川市が小学校1~3年生の通知表を県内市町で初めて廃止する方針を決めたという記事を紹介。児童一人一人に対応した学習支援を図る上で人工知能(AI)を生かすといった記事の内容を踏まえ、「学習状況をAIに評価してもらうのは賛成かどうか」と生徒に質問した。通知表廃止の理由として教諭の業務負担を減らす狙いがあることを説明し、「記事を通して社会の課題を見つけることが大事」と強調した。
生徒は3、4人の班をつくり、関心を持った記事の紹介と記事に対する自身の考えを発表した。
鈴木楓麻さんは、愛知県豊明市でスマートフォンの利用について1日2時間以内の使用を目安とする条例案が市議会に提出された時の記事を取り上げ、条例の賛否を班のメンバーに尋ねた。鈴木さんは「2時間は短い。スマホの使いすぎもよくないが見直した方がいい」と条例を批判し、別の生徒は「短いと思う」と共感した上で、「勉強の邪魔にならない程度に使うなら問題はない」と述べた。
生徒の関心は職業にも広がる。内山晴登さんは、AIの関連求人が数年で増加していることを伝えた記事を取り上げ、AI関連の仕事の将来性を班のメンバーと議論した。班の生徒は「AIで人の生活はますます便利になるからしばらくは増え続けると思う」と述べ、もう一人の生徒は「仕事が増えるならばAIを学ぶ機会がもっと必要になる」と話した。
新聞を活用した授業は3年生を対象に実施している。原田教諭は「新聞から問いを探し、自分なりの意見を持つことが大事。さまざまな意見を交わすことで問いをさらに磨いてほしい」と狙いを述べた。
(浜松総局・大沢諒)
スクラップした記事を見て意見を交わす生徒=10月、浜松市浜名区の浜北北部中
スマホの使用制限に関する記事を取り上げる生徒(写真の一部を加工しています)
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(97)大学受験対策でも記事活用
先日、高校3年生のラグビー部員の生徒が、筆者に大学入試の総合型選抜対策の依頼に来ました。県大会決勝も近づき、花園出場を目指して放課後の練習を続けながら、小論文対策や面接対策を行うという厳しい状況でしたが、彼の挑戦を具体的にサポートする取り組みとして活用したものの一つが新聞記事でした。
大学への志望動機の一つに地元、ラグビーリーグワン1部の静岡ブルーレヴズへの憧れを面接練習で語っていたため、本紙11月1日付に掲載された記事を本人に知らせました。ホームゲームのチケットと限定グッズ代の一部を試合運営における二酸化炭素相殺のために使う「エコグッズ付きカーボン・オフセット付き観戦チケット」を販売する内容です。
スポーツと環境問題で地域貢献を目指す地元チームの取り組みは、志望動機に関連ある内容として本人の興味を深めたようです。受験後聞いたところ、小論文を書く上で社会に対する幅広い視点が大切だと感じる記事だったと話していました。
会場で応援した決勝戦は準優勝の結果でしたが、その後本人から、志望大学合格の報告を受けることができました。生徒との対話を交えた新聞記事活用の取り組みは、大学受験の現場でも生かすことができます。
(伊藤大介教諭/静岡聖光学院中・高)