一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

御前崎中 地元のニュース SDGs視点で 総合学習、国際的な考え方養う

2025年10月05日(日)付 朝刊


■御前崎中 地元のニュース SDGs視点で 総合学習、国際的な考え方養う 

 

  NIE実践指定校の御前崎中(牧之原市)は総合学習の授業で、持続可能な開発目標(SDGs)を学ぶために新聞を活用している。地元のニュースから取り組み事例を知ることで、貧困や環境問題など国際的な考え方を身に付けている。

 「SDGsに関連すると思う記事を探してみましょう」。3年生の授業で教員が呼びかけると、生徒たちが一斉に新聞を広げた。
 生徒は選んだ記事をスクラップし、それぞれの記事が17ある開発目標のうちどれに関連するか、番号を記していった。ダイバーが海底にあるごみを引き揚げたという話題は「目標14 海の豊かさを守ろう」、介護施設を巡回する移動販売車の記事は「目標2 飢餓をゼロに」などと、記事をSDGsに結び付けた。 

 

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    スクラップした新聞記事を発表する生徒 

 

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    新聞記事とSDGsとの関連を議論する生徒 


 4~5人のグループを組み、自分が選んだ記事について、記した番号とその理由を説明していった。同じニュースでも生徒によって付けた番号が異なることもしばしば。議論が白熱するグループもあった。
 例えばコメの価格が高騰しているという話題。コメが高くなり食べられなくなる人が出てくるため「目標2 飢餓をゼロに」と関連する-という消費者目線の主張があった。これに対し価格が安いままでは農家が苦しいとして「目標8 働きがいも経済成長も」に当たるのではないか-という生産者目線の意見も出た。 


 取り組んだ藤原伊吹さんは「SDGsと聞くとスケールが大きく難しい話だと思っていたけれど、県内の話題も関係していると知ることができた。グループワークでは一つの記事でも多様な考え方が出てきて勉強になった」と振り返った。
 3年生は本年度、総合学習の授業を通じてSDGsについて学んできた。自身が関心のある目標項目を選び、実現に向けた課題などをリポートにまとめた。今回の授業はこれまでの学習の応用に当たるという。
 3年学年主任の山口祐輔教諭は「実際に地域で行われている具体的な活動を知ることで、SDGsの国際的な考え方を身近に感じてほしい」と狙いを話した。
 (榛原支局・沢口翔斗) 

 

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SDGsに関連する記事に付箋を貼る生徒=6月、牧之原市の御前崎中 

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(95)新聞投稿から交流に発展(塚本学教諭/常葉大常葉中・高) 

 

 日本は今年、戦後80年という節目を迎え、新聞には戦争に関する記事や写真がたくさん掲載されました。そこで、「焼き場に立つ少年」という写真から戦争について高校の生徒に考えさせました。
 米従軍カメラマンが原爆投下後の長崎で撮影したとされ、10歳くらいの少年が、口を固く結びながら真っすぐ立っています。少年は亡くなった幼子を背負っていて、その火葬の順番を待っているとされます。生徒の一人が、「戦争ではどちら側も『正義』を主張する。立場や見方、考え方で正義は変わってくるから、私にはどちらが正義か分からないが、苦しむのはいつも社会的弱者だと分かった」と感想を書きました。
 この文章を新聞に投稿したところ、読まれた方から新聞社を通じて手紙をいただきました。「若い方々に戦争の悲惨な現実を知ってほしい。この写真に関する資料を持っているのでお譲りしたい」とのことでした。生徒は「私が持っているよりも、授業で活用してほしい」という希望がありましたので、学校の預かりにしました。
 投稿が本当によく読まれていることを再認識したのと同時に、新聞を通じた交流ができたことを大変うれしく感じた出来事でした。