「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。
「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。
2025年07月06日(日)付 朝刊
■沼津・桐陽高 学校司書が主導 小論文対策 記事から学び 探究力鍛える
2024年度からNIE実践指定校の桐陽高(沼津市)は、図書室を拠点に、学校司書の浅井みゆきさん(57)を中心に新聞を活用した小論文対策を進めている。特別進学コースの生徒は始業前に新聞を読み、記事から自身の考えをまとめる学習「マインドベクトル」に取り組む。学習を通じて、小論文対策の入り口となる「探究する力」を鍛える。
5月下旬、朝学習の時間を知らせるチャイムが鳴ると、同コースの1~3年生が1部ずつ配布された新聞を真剣な表情で熟読した。月1回、朝学習の20分間で新聞を読む「Nタイム」。生徒はその時間などで読んだ新聞から記事を選び、2週間かけて自身の考えや疑問に思ったテーマについて自分なりに調べ、新たに気付いた事実や意見をまとめる。
Nタイムは新聞に親しんでもらおうと、浅井さんが約10年前から始めた。これを新聞を読んだだけで終わりにせず学びとして発展させるため、希望者が夏季に受講する小論文対策のマインドベクトルを、4月からコース全体の取り組みにした。
浅井さんは「新聞から自分がひっかかったことを調べ、ニュースが持つ意味と学校で学んだことをつなげられれば、それが小論文を書くときの知識になる」と意義を語る。
さらに図書室には小論文や面接対策などに役立ててもらおうと、災害、教育など10テーマに分けた記事のスクラップを常備する。4紙分の記事をテーマごとに振り分け、ここ2年前後の社会の動きが分かるようにしているという。スクラップ作業は図書委員が毎日行っていて、同コース3年で委員の伊藤玲那さんは「ニュースに目を通す機会になる。スクラップはこれからの小論文対策に活用していきたい」と話す。
浅井さんは教材としての新聞について「一覧性があるため入手できる情報が偏らず、信頼性もある」と評価する。「生徒がいざというときに新聞を使える環境を醸成するために、種をどうまいていくかを大事にしていきたい」と強調する。
(東部総局・五十嵐美央)
生徒が新聞を読む「Nタイム」=沼津市の桐陽高
記事をスクラップする図書委員の生徒と見守る浅井みゆきさん(右から3人目)
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(92)災害の記憶つなげる意義(塚本学教諭/常葉大常葉中・高)
梅雨に入り、豪雨災害の対策がより求められるようになってきました。県内の豪雨災害と言えば、「七夕豪雨」(1974年)が思い浮かびます。地震災害について調べていた時、ベテランの先生から「昭和東南海地震」(44年12月7日)について教えていただきました。「歴史総合」の授業で、この県西部で起きた地震の被害を伝えるとともに、1944年がどのような年だったかを考えさせました。
袋井市の袋井西小に残る被害を伝える石碑には、被災した1年生から4年生までの児童と集団疎開児童の氏名が共に刻まれていることを紹介しました。発生当時の全国紙のコピーを配布し、生徒に確認させましたが、地震の記事は見つけられませんでした。戦時中のため情報統制が行われていたことを伝えました。
生徒たちの記憶の中には、大きな災害体験はなく、もちろん戦争もありません。しかし過去にも今も実際に体験した人たちがいて、私たちや、未来を生きる人たちのために悲惨な記憶を言葉や形にして残してくれました。大切な記憶のバトンを未来に渡さなくてはと、生徒たちは感じてくれたようです。石碑のタイトルは「つゆ光る」。この「つゆ」とはどういう意味か考えさせて授業は終わりました。
(塚本学教諭・常葉大常葉中・高)