「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。
「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。
2024年12月01日(日)付
■同じ農産品でも記事に地域差 静岡と鹿児島 茶生産の特徴読み比べ 静岡サレジオ小・中 公開授業
NIE実践指定校の静岡サレジオ小・中(沼波岳臣校長)で11月に行われた公開授業。中学1年の社会の授業では、茶生産が盛んな本県と鹿児島県で発行される新聞紙面を比較し、同じ産業でも地域ごと異なる特徴について生徒が理解を深めた。
日本の諸地域を学ぶ単元で、お茶を軸に据えた。温暖な気候や水はけの良い土壌など、茶生産に適した両県の共通点をおさらい。その上で、本県が生産量で鹿児島県に抜かされそうになっている理由を探った。
生徒はグループに分かれて複数の記事を分担して読み、キーワードを押さえて要約。需要が拡大するペットボトル茶向けに注力し、平地で大型機械を使って大規模栽培を行う鹿児島県の現状を捉えた。一方、香りやうまみにこだわり寒暖差のある山あいで生産している▽急斜面の茶園が多く機械化が難しい▽高齢化による離農で栽培面積が減少している-など、本県の特徴や課題も読み解いた。
田辺朱里教諭(23)は静岡新聞や鹿児島県を拠点とする南日本新聞、全国紙を示し、読者の生活圏や関心事によって記事で強調する内容を変えている点を紹介。「どの視点で書かれた記事なのかにも注目して」と指摘した。授業後、近藤吏矩さん(13)は「自分とは違う視点を探すため、情報は複数の資料から探すように心がける」と意欲を述べた。
小学6年の国語の授業では、パリ五輪のメダリストに贈られた賞金への賛否を紹介する記事を読み、児童が自分の考えを発表した。「選手の努力にも経費がかかっているから賛成」「メダルの価値はお金で表せないはず」など、両方の意見が飛び交った。伊藤燦里さん(12)は「いろいろな意見を知ることができて面白い」と新聞の魅力を語った。
同小・中は朝活動で、記事の要約を取り入れる。小学生は辞書で言葉を調べ、テーマに対する自らの意見を書き出す。中学生は新たな問いを立てて情報収集して思考を深め、専用ノート「ソクラテスのノート」にまとめている。
国語の授業を担当した倉橋雅教諭(41)は「さまざまな見方を知って自分の考えを構築し、論理的な文章を書く力をさらに養ってほしい」と話している。
(教育文化部・鈴木美晴)
記事に線を引き、キーワードを探す生徒=静岡市清水区の静岡サレジオ中
パリ五輪メダリストへの賞金について自分の意見を発表する児童=同区の静岡サレジオ小(写真の一部を加工しています)
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(86)共生や多様性 考える糸口(中村都教諭/静岡千代田小)
小学校4年生の総合的な学習で、福祉教育に取り組んでいます。お年寄りや聴覚障害のある方との交流、福祉用具の体験などを通して、子どもたちは福祉を身近に感じ、調べ学習を進めています。さらに福祉の現状を見据えることで、最終的には「自分はどう考えるのか」「自分に何ができるのか」までを見通した学びを目指します。
そのために福祉の授業と並行して、先に行われたパリパラリンピックの記事を使い、競技について調べました。競技そのものを知ることで、共生社会や多様性についても学ぶことができ、子どもの考える力をつけていくのにふさわしいと判断したからです。特にルールを知ることで、障害の程度によって出場人数が決められていたり、選手を補助する人がいたりするなど、誰もがスポーツを楽しむために、たくさんの工夫があることが分かりました。障害者の可能性や社会参加について考える機会も得ることができたのです。
1年後には、デフリンピック(4年に1度開催される聴覚障害者の国際スポーツ大会)が県内などで開催されます。障害や福祉という枠を越え、多様性のある社会で、皆が幸せに暮らしていくにはどのようにしたらいいか、考えられるといいですね。
(中村都教諭・静岡千代田小)